【感想・ネタバレ】堕落論【語注付】のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年01月02日

「堕ちきる」という言葉が印象的な作品。人間、堕ちずにいられるほど美しくもないし、堕ちきることができるほど強くもない。ただ、どうやら重力という普遍のものが働いている以上、前者への努力は徒労であり表面的なものにすぎないので、いかに後者の「堕落」を甘受できるか。生きることは、堕ちることだ。

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Posted by ブクログ 2020年08月02日


いわゆる堕落と、坂口安吾の説く「堕落」は種類が違う。

坂口安吾の説く「堕落」とは、習慣や制度から逃れ堕ちること。例えば、所謂日本人然とした、苦労を厭わず、倹約に地道に努力することから逃れ、楽をしようとすること。家庭を持ち清廉潔白に暮らすのではなく、情欲を受け入れ過ごすことである。それは決してネガ...続きを読むティブな行いではなく、それが人間の実質であり、それで人間が発展する。「堕落」は制度の母体なのである。

なぜ坂口安吾が「堕落」という言葉を使ったのか。それは、習慣に囚われた人々が、坂口らに対して向けた、「お前達は堕落している」といったレッテルに対して、「堕落こそ結構。それこそ人間の本質であり、中身の伴う行いなのだ」と、言葉そのままに言い返せるからなのだろう。

文中でよく出てくる宮本武蔵の例えも、習慣や形式に囚われた剣術に対して、その場その場で生き抜くことを第一に掲げ、生き残ってきた宮本武蔵の在り方が、まさに坂口安吾のイメージする「堕落」だからなのだろう。

芸術や文学も同様で、表面だけさらって言葉遊びや形式遊びに興じるようではいけない。そういった習慣に対して「堕落」をすることで、本質の伴ったものが生まれる。

私は「堕落」出来ているのか?そう思った。

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Posted by ブクログ 2019年07月07日

堕ちるところまで堕ちたら、あとは上がるしかないっていう。でも堕ちきるにも覚悟が必要だと。
中途半端な堕落がいちばんダメです。

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Posted by ブクログ 2015年10月05日

久保帯人先生作画版の表紙のを購入。
小説…?かと思いきや、タイトルのとおり、随筆でしたね。
現代文学って、文章がかたくて読みにくいイメージだったのですが、安吾の文章はとても読みやすくて、現代文学に対するイメージを払拭される思いでした。
堕落論は、すごく共感する思考で、自分の中にあるものに言葉を与えて...続きを読むくれる本だなあと思いました。

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Posted by ブクログ 2013年11月27日

堕落は一言で言うと、無為自然なのだろうと思った。坂口安吾と言う人物は、そのように凝り固まった常識や、あまつさえ価値観と言うものでさえ超越し、あらゆる物事の枠を外し、冷静なまなざしで物事と対峙する、そう言う鋭い感性を持っている人間だと感じた。これは堕落論だけではなく、日本文化私観における文化と言うもの...続きを読むへの冷静な姿勢、ファルスについてにおける、戯作文学、道化に対するスタンスにも共通していた。常識や社会と言うものに骨の髄まで侵されてしまっている人間から見ると、いささか逆説的過ぎるように見える彼の文章も、冷静に読み解いていくと決してそれが逆説を弄しているわけではないことに気付かされる。どこまでも冷静で、冷徹で、独立した強靭さを備えた彼の精神が見ている世界を考えると、我々こそ、我々の社会こそ下らない逆説に満ち溢れているものであった、そう言う気持ちが伝わってくる。

また正直に言うと、戯作文学を重視する無頼派として、彼のことを誤解していた、むしろ見くびっていたと言う面を反省させられた。
彼の記していた文学観は、私が常々持っていた芸術論とピタリと一致していた。むしろ彼は、私の芸術論の最大の理解者の一人と位置づけるほうが正しいものだと思った。やはり思想と言うものは、直接触れて見なければいけないのである。
色には色、音には音、文字には文字の、代用としてではない純粋で絶対的な領域があるはずである。芸術表現が何かの代用になってしまっては終わりなのである。彼はそう言う風に思っていた。現実を表したければ地球にカバーをかけるのが一番良いというのは、本当に痛切な言葉である。

また彼は文学が専門性を失うレベルまで、表現者が大衆に合わせて降りていく必要はなく、そのレベルまで読者が届いていないというのなら、自らがそのレベルまで上がっていく努力をしなければならないと述べている。これは正に現代に必要とされる警句である。池上彰のわかりやすい解説などと言うものが持て囃されているが、そう言う一種の反知性主義による大衆への迎合は、世界をどれだけでも歪めてしまっている。『世界は思ったほどに複雑ではない』と言う逆説は一人歩きをし、『誤解を恐れずに言うと』が誤解を無視する免罪符へとなっている現代において、大衆が顧客の地位に胡坐をかいているお陰で専門家は専門家たるプライドをかなぐり捨ててでも大衆と言う巨大な凡人のおこぼれ預かろうと必死になっている。奇怪で歪な光景である。このような風潮の走りを、坂口安吾は正確に見抜き、鋭く指摘していたのである。

桜の森の満開の下は、『文学のふるさと』で述べられていた、透明で、切なく、悲しい『ふるさと』の姿を鮮やかに描き出していた。最後の場面、桜の森の満開の下での透明な悲劇的結末に、我々は突き放され、文学のふるさとを見せられるのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2010年11月13日

旧表紙版。堕落論は色々な形で色々な本に収録されているけれど、作品バランスでは集英社文庫の作品の選び方が一番好き。
「文学のふるさと」を読んだとき、自分が普段思っていることと当に被っていてとても嬉しかった記憶がある。今も一番好きな作品。
アウトローで潔くて男前で、ちょっとキザで、そんな自分をコンチクシ...続きを読むョウとばかりに罵倒する、そんな姿勢がたまらなく格好良い。その反面、心の琴線の涙もろいところをふいにぎゅっと鷲掴む…そんな繊細さも隠し持っていて本当ににくいヒトだなあと思う。

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Posted by ブクログ 2010年03月26日

あまり、長々と書かない方が しっかりレビューできそうなので、簡潔に。

大雑把だけれども、見るとこ見てます。
臆面もなく、おそらく言葉もあまり選ばず、言う。
彼は 自身をさらけ出すことを厭わない。

このおっさん、ロックです。

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Posted by ブクログ 2013年03月01日

「堕落は制度の母胎」「必要ならば、法隆寺をとりこわして停車場をつくるがいい。我が民族の光輝なる文化や伝統は、そのことによって決して亡びはしないのである。」「孤独は、人のふるさとだ。恋愛は、人生の花であります。いかに退屈であろうとも、このほかに花はない。」
新鮮な言葉がありすぎて、読んでいて自分の価値...続きを読む観が大崩壊・再構築されていく感じがした。「桜の森の満開の下」目当てで購入したが、他の作品も読めて本当によかった。太宰のことも前よりも好きになった。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

きっかけは、日本文学特有の雰囲気を克服する為に読み始めたもの。
今では坂口安吾ファンになるきっかけになった本。

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Posted by ブクログ 2021年01月26日

戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。
終戦後翌年発表され影響は凄かったらしい。
自死した太宰治を分析した不良少年とキリスト他。
ちょっと賢いジャイアンがぶった斬る戦後。
戦後75年経った今日にも通ずるかも

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Posted by ブクログ 2021年01月13日

坂口安吾の代表作を収録した一冊。「堕落論」は昔読んだことがあったけれど「桜の森の満開の下」はちゃんと読んだことがなかったので読んでみた。「堕落論」に始まる数々の評論は深く頷けるものもあればいまいちピンとこないものもあったが、全編に通じて頻繁に登場する「孤独」というキーワードとそれにまつわる感情はとて...続きを読むも面白く感じられる。「孤独は、人のふるさとだ。」なんてかっこよすぎてビリビリきちゃう。

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Posted by ブクログ 2021年01月11日

いやぁ、知らなかった。
ついぞ知らなかった、坂口安吾がこんなに面白いとは。堕落論、続堕落論他七篇からなる作品。
ラジカルというより率直、堕落というより追求である気がする。
武士道、貞淑、封建を日本人の性における橋頭堡というみなしかたは「男らしくしなさい」と母から言わなけれるか弱い男の特性と似ている。...続きを読む

「不良少年とキリスト」は太宰への愛あふれる弔辞だし、「日本文化私観」では美を意識していては美は生まれないと言い切る率直さに思わず手を叩きそうになる。

もっと坂口安吾を読みたくなる。

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Posted by ブクログ 2017年09月09日

‹内容紹介より›
「日本は負け、そして武士道は滅びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。

ーーー...続きを読む
☆4の評価は、『堕落論』と『続堕落論』に関してです。そして『日本文化私観』も参考になる作品でした。
他の作品群については、「読みにくいなあ」という印象で、正直なところ、坂口安吾の作品が好きなのかどうか、と言われると迷いが残ります……。

ただ、『堕落論』と『続堕落論』については、すごい作品だと読むたびに感じます。
世間で広く言われているような「道徳的」な振る舞いや思想は、そもそも人間の本質から外れている、という安吾の主張には、ハッとさせられます。
「農村の美徳は耐乏、忍苦の精神だという。乏しきに耐える精神などがなんで美徳であるものか。必要は発明の母という。乏しきに耐えず、不便に耐えず、必要を求めるところに発明が起こり、文化が起こり、進歩というものが行われてくるのである。日本の兵隊は耐乏の兵隊で、便利の機械は渇望されず、肉体の酷使耐乏が謳歌せられて、兵器は発達せず、根柢的に作戦の基礎が欠けてしまって、今日の無残きわまる大敗北となっている。」
天皇制についても、国民も支配者も"システム"としての天皇制を知りながらそれに進んで騙されていた、と喝破します。
「自分自らを神と称し絶対の尊厳を人民に要求することは不可能だ。だが、自分が天皇にぬかずくことによって天皇を神たらしめ、それを人民に押し付けることは可能なのである。そこで彼ら(歴史上の支配者たち)は天皇の擁立を自分勝手にやりながら、天皇の前にぬかずき、自分がぬかずくことによって天皇の尊厳を人民に強要し、その尊厳を利用して号令していた。」

そして安吾の求める"堕落"とは、
「人間の、人性の正しい姿とは何ぞや。欲するところ素直に欲し、厭な物を厭だと言う、要はただそれだけのことだ。好きなものを好きという、好きな女を好きだという、大義名分だの、府議はご法度だの、義理人情というニセの着物をぬぎさり、赤裸々な心になろう、この赤裸々な姿を突き止めみつめることがまず人間の復活の第一の条件だ。そこから自分と、そして人性の、真実の誕生と、その歴史が始められる。」
ということでした。

おためごかしや建前、メンツなどにこだわらず、自身の欲求に素直に生きることが大切だ、という安吾の主張は、今の社会でも十分に通用するものではないでしょうか。

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Posted by ブクログ 2016年05月05日

敗戦によって、近代日本の茶番劇だったことは暴露されたが
それだからといって卑屈になることはない
背を向けるにせよ、居直るにせよ
誰もが地に足をつけて生きる必要にかられている
その真摯さを堕落と呼ぶならそれもいいだろう
ならば我らは生きるために堕ちるべきなのだ
といったような
茶番をなつかしむ感情と否...続きを読む定する感情の錯綜するうちに
混乱の中で編まれたエッセイ・短編小説集

「桜の森の満開の下」
美は崩壊する茶番劇にほかならない
それにとりつかれ、翻弄されて、茫然自失の男を描いた本作は
決戦を避けて生き延びた日本男児たちの戯画である
現実がそんな美しいものではなかったにせよ
太宰の「桜桃」と並べ、戦後無頼派の代表作と呼ぶにふさわしい

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Posted by ブクログ 2015年01月04日

圧倒的否定力。それが彼の強みなのではないだろうか。世間の常識を撃ち抜く透徹とした視線。戦後悲嘆にくれる社会にあって彼の論説はスカッとさせるものでもあり、彼自身抑圧されてきた民衆にとっての代弁者であったに違いない。

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Posted by ブクログ 2013年10月21日

評論から短編まで、けっこう盛りだくさんな内容です。
どれをとっても痛快です。
書かれた時期を考えてもすごいですね。

日本文化の見方は目から鱗。

太宰の話もおもろい。

しばらくしてから、また読もう。
5年後くらいかな…。

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Posted by ブクログ 2012年08月07日

無頼派の一人として、題材治と同じ時代を生きた作家、坂口安吾による書。

狂人でありつつも、世を俯瞰した文章で綴られた「墜落論」と「続墜落論」。
思考を戦時中、戦後にスリップさせて読んでみると、その時代の価値に真っ向反逆したような論説。そして現代に貫かれる視線を感じることができる。

むしろ、坂口安吾...続きを読むが見通した価値が現代に活性されたような感さえある。
人間は合理的に生きているんだなと感じる。
坂口安吾は墜落のススメを書き通したのだが、どうだろう、その墜落の果てのようなの現代を、彼はどう見るのだろうか・・・?

「日本文化私観」もそうだが、彼の目でみた日本文化はもはや伝統文化を遺棄して、今を生きるナマモノの文化を滑稽に語っておられるし、「恋愛論」も、もはや諦観の域に達しており、その「恋愛」という言葉に魅力を感じることができない・・・。が、同時にそこにはウソがない。そんなもんだと思えてしまう。
「不良少年とキリスト」では太宰治(の死)について言及しつつ、逆ベクトルの「生」について力強く書かれている。「戦う」だなんて、なんと強い言葉だろうか?
「FARCE(ファルス)について」では、低く見られがちな道化をより高みに持ち上げている。というか芸術の最高形式とまでいっている。
喜劇や悲劇を包含した観念としてのファルス。その具体については理解しきれなかった。
「文学のふるさと」でいう”ふるさと”はもはや「ふるさと」の定義すら代えてしまいたくなる。
坂口安吾は言いきる。「むごたらしく、救いのないもの」だと。
「救いがないこと自体が救いなのだ」という。

「風博士」・・・衝撃の結末にあっけにとられた。なんというダジャレだ!しかし、そこに落としどころを持っていくなんて、反則だろうと言いたくなる。

もはや狂人めいた「桜の森の満開の下」では、狂人が狂人に喰らわれる浮遊観のようなものを感じる。
桜を子のように表現する人もいないだろう。
この狂気には不気味さを感じない。
鬼、とでも言うのだろうか。

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【目次】
墜落論
続墜落論
日本文化私観
恋愛論
不良少年とキリスト
FARCE(ファルス)について
文学のふるさと
風博士
桜の森の満開の下
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Posted by ブクログ 2011年07月28日

「日本は負け、そして武士道は亡びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。エッセイと物語。

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Posted by ブクログ 2010年10月01日

旧表紙版。
っちゅーか、この表紙はちょっと違うだろ…と集英社に言いたい。
代表作とその続編よりも、他の短編の方が面白かった。とても、面白いオッサンだと思います。アウトローで、図太くて、爽快で、とっても面白いオッサンだと。
この時代の小説の中ではかなり読み易い方なのではないでしょうか。代表作の二作以外...続きを読むは。
というかこの人の「桜の森の満開の下」が、こんなにあっさりと読めるものだとは思いませんでした。名前と時代的な文章のイメージから、もっと、かっちりした文章かと思っていたのに、十分程度で読めてしまって、肩透かし。
ちゃんと、面白かったんです、よ?

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

■目的
堕落論とは? 「2009 夏の文庫フェア」8冊目。


■本の内容・特徴
受け身に安住するな。堕落自体は悪であるが、人間は本来堕落するものである。まずはそこから目を背けるのではなく肯定すること。堕ちるところまで堕ちることによってのみ、自分自身を発見することができる。そして自分自身を救えるので...続きを読むある。


■感想
いわゆる「ご立派な教え」というのは、人間性というものを無視したものが多いですよね。私はこれらは苦手です。見苦しいものに蓋をして上辺を取り繕うだけのキレイ事だと思うからです。上辺をいくら取り繕っても根本的な解決にはならないと思います。机上の空論やキレイ事では何も救えない。

なので、著者の言う人間性そのものを肯定する、という考え方はとても納得がいきます。そう、人間は見苦しいもの、堕落するものなんです。でも、完全に堕落することはなかなか難しい。そこに救いがあると著者も言います。同感です。
上辺だけの理想論には説得力がない。単なる空論、だから救いにもならない、何も解決しない。堕ちるところまで堕ちて、地獄を見て這い上がってくる力こそ本当の強さ・問題解決能力ではないでしょうか。救いは美しい言葉などではなく、「経験から得た力で自助すること」だと思います。

価値のあるものが、一瞬にしてその価値を失ってしまうような今の世の中だからこそ、こういう底から這い上がる力が必要なのではないか、と感じました。いい教えでした。

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