【感想・ネタバレ】堕落論【語注付】のレビュー

あらすじ

「日本は負け、そして武士道は亡びたが、堕落という真実の母胎によって初めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

感想会での選択本。戦後直ぐに出版された本。敗戦によって180度思想が変わった日本。戦前は武士道を基本として、天皇陛下のために奉仕をしてきた。が、戦後、男は闇市、女性は亡くなった夫から区切りをつけ新しい恋愛を夢見る。これぞ著者の言う堕落。堕落とは自分のため、欲求のためにしたいことをすること。ある意味人間らしく生きること。しかし、堕落(人間らしく生きること)は「孤独」が付きまとう。人間そんなに鉄のハートを持っていない。なので堕落は辛いこと。でも、これこそが人間の本質だ。とことん堕ちよう。自分のために。⑤

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天才すぎ。
坂口安吾の解体に次ぐ解体。身の回りにすでに地盤を固めて安定している美徳や観念規範と、現実の人間の様相を、純粋素朴な安吾の目で捉えて比較し、それらを再構築していくといった名エッセイ集。
安吾が純粋すぎるが故の求道的文学者であったと感じる。ただ、彼にとっては文学は自身の生き方を見つめる上での副産物でしかなかったのだろうな。、
安吾流の美観に喰らいすぎた2023でした。
自分の美観を確立したいと思う今日この頃。

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2023年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

長い感想。

自分が何を欲するか分かるためにはまず堕ちないといけない。けれど、堕ちぬくほど人間は強くない、という安吾の指摘。
これを終戦後に読んだ人たちは
なんてクールなんだ!という気持ち反面、そんな事言われても自分が何がしたいか分からないよ、なんて思ったのではないかと。
戦争前、天皇制のもと、このように生きてください、こうすればあなたはいい国民です、こういう悪いことしたら非国民です、と導いてもらってきた日本国民。
だけど敗戦した、では今後どう生きればいいんだろう。ここで、安吾は「いっかい堕落してみろ。そうすれば、再生できるんじゃないの?」と言いたかったのかなと思った。
安吾のいう堕落って、自堕落な生活みたいなイメージよりかは
「私は○○がしたい」→「そのためには○○が必要だ。」みたいなことを自分で考えて生きていこ、ということが言いたかったのでは。

それから続堕落論の農村の精神なんて最高!
言い切ってて爽快!ごもっとも!と拍手したくなってしまった。
現代の日本にもそういうメンタル、あるのでは?と感じた。たとえば公(オフィシャル)と私(プライベート)という二面性があるとき、私を犠牲にして汗流して時間かけて苦労してガンバッてます!みたいな。そういうお話に「いいね〜」と思う自分もいるよな、と気付かされた。
日本は変化することを得意としない国とおもっているけど、そんな昔の人もそう思っていたのね、という衝撃も受けた。

以下、好きなところを抜粋。
・終戦後、我々はあらゆる自由を許されたが、人はあらゆる自由を許されたとき、自らの不可解な限定とその不自由さに気づくであろう。

・人間は可憐であり脆弱であり、それゆえ愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。

続堕落論
・農村の美徳は耐乏、忍苦の精神だという。乏しきに耐える精神などがなんで美徳であるものか。
・日本の精神そのものが耐乏の精神であり、変化を欲せず、進歩を欲せず、〜〜。
・ボタン一つ押し、ハンドルを廻すだけですむことを、一日中エイエイ苦労して、汗の結晶だの勤労のよろこびなどと、馬鹿げた話である。しかも日本全体が、日本の根底そのものが、かくのごとく馬鹿げきっているのだ。

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2021年07月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

(趣旨)
1. 人間は堕落する。そんな人間を戦闘にかりたてる為に、武人は武士道をあみだし、軍人政治家は天皇を担ぎ出した。

2. 敗戦後、天皇の絶対性は廃止され象徴化に変わり、武士道は滅びた。町に目をやれば、未亡人は新たな出逢いに胸を膨らませ、特攻隊の勇士は闇屋に転じている。

3. このように人間が堕落したのは戦争に負けたからではない。人間だから堕落したのだ。

4. しかし人間は困難には脆弱なため、堕落し切るには弱すぎる。弱いから統率を図るため結局また武士道や天皇を担ぎ出そうとするだろう。

5. 人間が本当の自身を発見するためには堕落し切ることが必要だ。これが自身を救うことにつながる。天皇の絶対性及び武士道の復活、また政治による救いなどは愚かである。

(個人的な意見)
1. 人間は堕落するものである。そんな自分を律するのは、自身の持つ強い心である。

2. とはいえ、人間は常に強い心を持てるわけではない。

3. そこで大事なのは自身を励まし応援してくれる友の存在である。落ち込んでいるとき、友の信頼に応えようとするこで自分を奮い立たせる勇気が湧き、自分を律し前進することができるはずだ。

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2020年01月11日

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