坂口安吾のレビュー一覧
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坂口安吾は、残酷でセンセーショナルな作品を書くイメージがあったが、この恋愛論は真面目な論説文でそのギャップに驚いた。
物語でない論説文にイラストが入ると、物語を読んでいるような気分になり不思議な感じがした。普段とっつきにくい論説文もこのようにコラボして、イメージが広がる形でどんどん読めたらいいのに、と思った。
恋と愛のニュアンスの違い、日本語の多様な同義語が雰囲気的過ぎるという話には、納得感があった。万葉集や古今集の恋歌が、動物の本能の叫びに過ぎないと切り捨てるのも、なんとも清々しい。人生とは、その本能の世界から抜けてめいめいが世界を建設するもの、常識という規則で満たされなくなった心が、良俗に -
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坂口安吾を一冊通して読むのは初めて。十月桜が咲いている今日この頃、有名な表題作が気になっていたところ、たまたま書店で面だしされていたので読んでみようかなと。
驚いたのが、著者は歴史小説を書いていたんですね。知らなかったです。
『二流の人』では、大河ドラマの黒田官兵衛のシーンが脳裏に浮かびましたが、小西行長に関しては、日本の会社の駄目な部分の走りを感じました。話しは時間軸が前後しながらも、内容が破綻せずに無理なく読み進められます。『梟雄(きょうゆう)』は、斎藤道三の一代記が書かれており、最後の描写には男気を感じますね。
さて、表題作ですが、女性の残酷な行動が、なんともまあ…。ともあれ、不器用 -
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純文学作家の印象が強い坂口安吾の書いた、人間の行動心理の隙をつくトリックで有名な推理小説の名作。戦後まもなくの田舎の山奥に、奇人変人ぞろいの文壇や演劇界の著名人が招待され次々と殺されていくいわゆる「館もの」で、ちゃんと「間取り図」もある本格ものだが、館の建造物としての構造や特殊な道具などのトリッキーなトリックに頼らず、ある状況下において「ふつうの人間ならとるはずのない不自然な仕草」だったり、どんなに疑り深い人でも「これだけは絶対大丈夫」と思い込ませる詐術がトリックになっており、それは読んでいてふと感じる程度の違和感か、言われるまで全く不自然さを感じさせないほど巧妙なもので、私は前者だったけどそ
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京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困るのだ。
親子二人恭しく拝礼していたが、得体の知れぬ悲願を血につなごうとしているようで、痛々しかった。
人間の、又人性の正しい姿とは何ぞや。
欲するところを素直に欲し、厭な物を厭だと言う、要はただそれだけのことだ。
好きなものを好きだという、好きな女を好きだという、大義名分だの、不義は御法度だの、義理人情というニセの着物をぬぎさり、赤裸々な心になろう、この赤裸々な姿を突きとめ見つめることが先ず人間の復活の第一条件だ。
元より人間は思い通りに生活できるものではない。愛する人には愛されず、欲する物は我が手に入らず、手の中の玉は逃 -
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一篇目の『風博士』で狐に摘まれたような気分になり、はやくも頭の中では仕事帰りにBOOKOFFで売り払うこと考えつつ、しかし頑張ってのりこえ、そこから先は天国。痴情作家といわれるらしいが、個人的にはそうは思わなかった。男女の関係はいわば生物学の基本で、人間感情の基本でもあるわけで、言ってしまえば政治小説とかの方が異常。それはさておき、痴情というからテッキリ小澤さん甘いよ、甘すぎるよーな筋かと思いきや、自分が完全にこの作家に対して無知から入った所為もあるが、戦争と切っても切れないような作品ばかりで、面食らった。解説曰く、作者は谷崎潤一郎に若い頃憧れていたらしく、言われてみれば系統的に似ていると思う
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「堕落論」などのエッセイを読んでから小説を読んだ。坂口安吾がどんな考え方をする人なのか大体分かった状態で読んだので面白く感じた。どの話も彼自身の哲学が反映されていて、ここまで一貫に徹して己を曝け出している人も珍しいんじゃないかと思う。何か一つのゴールを見据えている感じがすごく伝わる。
また、文体も肌に合っていた。純文学の抒情的表現や、…みたいな感じ、分かるでしょ…??といったような文体に馴染めない(私自身が鈍感だからだと思うが…)人間なので、坂口安吾の文体が心地よかった。特に心地よかったのは「青鬼の褌を洗う女」で、サチ子目線から語る心の機微の言語化や考え方がすごく面白かった。
どの話でも語り -
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もともと人間は長く生きれば、光り輝いていた頃から徐々に堕落してくものなのだ。赤穂浪士の志士を処刑したのは、長く生きながらえて生き恥をさらないようにしたため。軍人の妻で未亡人となった者の結婚をしばらく禁じ得たのは、時期がたてば不倫をしてしまうため。もともと二人の君主に仕えるな、それなら潔く死なば諸共、一つの君主に仕えよという武士道の教えは、こういう規律でも作らない限り、やすやすと他の君主に願えることを見越していたため。こんな元々の人間の行動・思考特性にそぐわない旧来の価値観に縛られるな一度人間の本性というものに立ち返って堕落してみよ、というのがこの本で述べている堕落の意味。とても面白い。