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Posted by ブクログ
「堕落論」などのエッセイを読んでから小説を読んだ。坂口安吾がどんな考え方をする人なのか大体分かった状態で読んだので面白く感じた。どの話も彼自身の哲学が反映されていて、ここまで一貫に徹して己を曝け出している人も珍しいんじゃないかと思う。何か一つのゴールを見据えている感じがすごく伝わる。
また、文体も肌に合っていた。純文学の抒情的表現や、…みたいな感じ、分かるでしょ…??といったような文体に馴染めない(私自身が鈍感だからだと思うが…)人間なので、坂口安吾の文体が心地よかった。特に心地よかったのは「青鬼の褌を洗う女」で、サチ子目線から語る心の機微の言語化や考え方がすごく面白かった。
どの話でも語り手たちは(作者は坂口安吾なので…)理路整然とした雰囲気で語っていく。それでもふとした拍子に目の前の女をかわいいと言ったり、男をわけが分からず愛しいと言ったりする。そこがすごく好きだし、かわいい。
好きな作家に出会えて嬉しくなった。
〜メモ〜
「私は海を抱きしめていたい」
私は物その物がその物であるような、動物的な真実の世界を信じることができないのである。 私は最も好色であるから、単純に肉慾的では有り得ないのだ。
「青鬼の褌を洗う女」
私は現実はただ受け入れるだけだ。呪ったり憎んだりせず、呪うべきもの憎むべきものには近寄らなければよいという立前で、けれども、たった一つ、近寄らなければよい主義であしらうわけには行かないものが母であり、家というものであった。
Posted by ブクログ
感想・考察(一番心に残ったポイント):
女を単なる「豚」のような存在とみなしていた伊沢が、極限の空襲の中で「一生俺が守る」「俺についてこい」と変化した一瞬。戦争という絶望的な窮地の中で、誰かを守り、すがりつかれることで、伊沢自身もまた「人間らしさ」を取り戻し、人間になれた一瞬だった。この覚悟を決めた伊沢の姿は、純粋にとてもかっこいいと感じた。
【全体の結末に対する感想】
大空襲の渦中で見せた熱い覚悟や「愛おしいものを守りたい」という人間らしさも、猛火が過ぎ去れば、またいつもの日常と「豚と同等の扱い」へと戻っていく。その落差が切なく、何とも言えない余韻を残す。
熱狂と冷却、極限状態での強い人間らしさと、すぐに戻ってくる冷酷な現実。一瞬の熱量とその後の冷めやられた日常の対比が、まさにあの「戦争という時代そのもの」を如実に表していると感じられる、非常に深い小説だった。
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