あらすじ
戦後間もないある夏、詩人・歌川一馬の招待で、山奥の豪邸に集まった様々な男女。作家、詩人、画家、劇作家、女優など、いずれ劣らぬ変人・奇人ぞろい。邸内に異常な愛と憎しみが交錯するうちに、世にも恐るべき8つの殺人が生まれた。不連続殺人の裏に秘められた悪魔の糸は何か――鬼才安吾が読者に挑んだ不滅のトリック! 多くのミステリ作家が絶賛する、日本推理小説史に輝く傑作。第2回探偵作家クラブ賞受賞作。
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坂口安吾が書いた懸賞付き推理小説。一癖も二癖もある登場人物たちが絡み合い、混沌としたなか、一人また一人と殺人が行われていく。かなり多くの人物が登場しますが、ある意味類型的でそれなりに区別はつきます。
ですがまともに読んでいては、全てを把握するのは難しいでしょうから、人物相関図的なものは必要でしょう。
アガサ・クリスティーの某作品と同じという話もあります。確かに素材は同じです。ですが、その味付けは全く別物です。肉じゃがとカレーのようなものです。犯人当てという点では、この不連続殺人事件の方がテクニカルで、動機や殺人の流れも理屈に合っているようにも思います。
犯人当てに傾いた分、途中の物語としての面白さはどうしてもクリスティーの作品の方が抜けていますが、それでもこの不連続殺人事件のラストシーンは素晴らしいです。
むしろ途中の混迷極まる雑多な展開で、いったい何を見せられているのかと半ば呆れる感覚だったのが、その揺り戻しで大きな感動を呼んでいるとさえ思えます。すごい作品です。
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純文学作家の印象が強い坂口安吾の書いた、人間の行動心理の隙をつくトリックで有名な推理小説の名作。戦後まもなくの田舎の山奥に、奇人変人ぞろいの文壇や演劇界の著名人が招待され次々と殺されていくいわゆる「館もの」で、ちゃんと「間取り図」もある本格ものだが、館の建造物としての構造や特殊な道具などのトリッキーなトリックに頼らず、ある状況下において「ふつうの人間ならとるはずのない不自然な仕草」だったり、どんなに疑り深い人でも「これだけは絶対大丈夫」と思い込ませる詐術がトリックになっており、それは読んでいてふと感じる程度の違和感か、言われるまで全く不自然さを感じさせないほど巧妙なもので、私は前者だったけどそこにこそ謎解きの鍵があるなんて微塵も思わなかった。探偵役の登場人物が館もののお約束の一同前にした謎解きの場面で、第一線の文士たちである館の客たちのことを「日本第一級の心理家」と名指しし、小説家とはすなわち最高の心理通、人間通であるべきはずで、その人たちでも見落とした「心理の痕跡」があったことを宣言する。それはとりもなおさず文芸作品で扱われる「人間の心のあや」は、探偵小説のトリックにすら成り得るものなのだ、という純文学の作家でもある作者の気概を感じるのだ。
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「心理の足跡」! 言われてみれば「そうだよなあ」と思うのだが、思いつきませんね。この小説のトリックは海外の女流作家にも例があるが、こちらの方が上手く使っていますね。
しかし、医者が気◯いなのには閉口しました。
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戦後まもなくに出版された日本の推理小説の傑作。坂口安吾作。
犯人のトリックや動機は、アガサ・クリスティーの「ナイルに死す」をかなり参考にしている。ただし、事件の背後を取り囲む登場人物は、焼け野原になった日本の戦後の退廃的な雰囲気、投げやりな雰囲気を反映していて、アガサ・クリスティーの小説に出てくる人物像とはかなり異なる。
この本で最も印象的な点は、戦後まもなくという世相も反映してか、人が死んだときに他の人物が受けるショックの薄さである。
(それがあるから8人も人が死んでしまうのであろう。1人1人の死にその都度衝撃を受けていたら8人の死までは、なかなか到達しない。)
素晴らしい名作だが、もう少し個々の人物のこれまでの生き様を取り上げてくれていればなおよかった。
また、この小説は2回テレビドラマ化されているが、動機として「遺産」を強く押し出すか、「愛」を押し出すか、脚色を変えている点が興味深い。
実際、坂口も最後のエンディングをどうもっていくか迷ったのではないか。本当は、「愛」に真の動機があるように仕向けたかったがそれを照れ隠しで隠したのかもしれない。
そこにこの小説の現在まで続く日本らしさがある。
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読友さんが読みたいと言っていた本、何故だか気になってしまって先に読んでしまった。うむっ、壮絶な正統派ミステリー作品だった。多分これまでの読書人生の中でも一番の正統派。昭和23年発表、殺人が次々と行われ、8人が殺害される。歌川多聞をはじめ、歌川家にまつわる男女関係は破廉恥すぎる。そこに小説家、弁護士、刑事、看護師、歌川家に住む面々が登場。全員怪しい。自分の推理は完全に坂口安吾の餌食に。。。魅力ある女性陣、バカな男性陣の対比が際立つ。犯人はそう来たか!つい唸ってしまう、が、ラストの犯人には潔さを感じた。
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安吾節炸裂!
登場人物が騒がしく戯れている、丁々発止を読んでるだけで満足感が味わえる上に、女性陣は妖艶で淑女のようでもありいわゆるファムファタール的要素が多分に溢れているので、この異次元世界の参加者(もしくは傍観者)で交ざりたい!って想いです。
ミステリーということで、いやはやこちらもしっかり練られていて読者挑戦物だったのも頷ける見事な仕上がり。
世界観に騙されていたのだなぁと、確かに犯人特定のヒントは作中にしっかり表現されてるんだなぁと感心の極み。
坂口安吾の意外な一面が盛りだくさん。時代背景が古いので多少取っつきにくいけどバリおすすめ。
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戦後まもない頃、山奥の豪邸に集まった作家や画家や女優などなど。そんな彼らの間で次々と殺人が起こります。いったい誰が、どんな動機で、どのようにして行ったのか。探偵小説愛好家だった純文学作家・坂口安吾による推理小説の名作。
多人数でてきますが、個性の強いキャラクターばかりでした。アクやクセが強く、変人とくくってしまえそうだったりする人たちしかいません。そして彼らの関係が痴話がらみでフクザツです。そんな異様な小世界を設定したからこそ、8人も殺されるこの「不連続殺人」の、大いなるトリックを物語の中に隠せたのだと思います(このあたりは、巻末のふたつの解説と本文の読後感とを照らし合わせたうえでの感想です)。
謎を解くキーワードは、「心理の足跡」。作者は、自ら紙の上に出現させたキャラクターの心理造形、そして動き出した彼らの心理追跡に余念のないなかでトリックをこしらえていて、ネタバレになってしまいますが、その心理操作の破れを、巧みに流れさせたストーリーに隠して、解決編でそこを持ち上げてみせるのでした。
推理小説って、読者にわからせないために、合理性だけでは明かせない作りになっている、と解説にあり、僕はほとんど推理小説を読まないけれども、それでも思い当たりはするのでした。そこに、作者のズルさがあるのです。それが性に合わない人が、推理小説を手に取ることをしないのかもしれない。
女性キャラクターは性的な魅力にあふれる人ばかりが出てきます。これは、女性礼讃的な作者の性格がでてるんじゃないのかな、と思ってしまいました。
というところですが、以下におもしろかったセリフを引用します。
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「然しなんだね。矢代さん。あなたは、どう思うね。人間はどういつもこいつも、人殺しくらいはできるのだ。どの人間も、あらゆる犯罪の可能性をもっている。どいつも、こいつも、やりかねない」(p94)
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→何人か集ってなんやかやすれば、各々の心理に他殺や自殺の動機が疑われないことってないんだと思います。これは以前、西加奈子さんの『窓の魚』を読んだときに感じたことでもありました。
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「ともかく、田舎のアンチャン、カアチャンの犯罪でも、伏線、偽証、却却<なかなか>額面通りに受け取れないもので、必死の知能、驚くべきものがあるものですよ」(p232)
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→これ、ほんとにそうです。こっちが侮っていたような相手が、裏で、真似できないくらい高等な細工を弄していたりする。それも、最初から言葉でぜんぶ論理を組み立てていくっていうのではなくて、あるときに閃くみたいにして感覚的に勘所がどこかをみとって、そこから柔らかく論理を編んでいっている感じだったりします。僕自身も、論理の組み立てはそういう田舎のアンチャン的要素ってけっこうあるような気がします(まあ、そもそも田舎人でもあるし)。バックグラウンドとしての知識はないのに、日常の知性だけでぽんと飛翔するみたいなのってあります。それはそれとして、人間の「必死の知能」って、こりゃかなわん、ってくらいすごいものが出てきてたりするものですよね。
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ずっと読みたいと思いつつ、読めていなかった作品。
登場人物が多い上に色恋沙汰が複雑ではじめはかなり読みにくさを感じた
(巻頭の登場人物表は、情報が薄すぎてほとんど役に立たない・・・)が、
各キャラクターの特徴が分かってくると、面白く読めるようになってきた。
本格推理物として普通に楽しめるが、やはり「読者への挑戦状」の部分が”推し”。
個人的に、坂口安吾の不遜・傲慢な物言いがたまらなく好き(笑
同時代に生きて、謎にチャレンジしてみたかったな。
99.999%解けなかったと思うけれど。
こういった試みの推理小説を、また誰かが書いてくれないかなぁ、と期待。
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現在の「推理作家協会賞」の前身にあたる「探偵作家クラブ賞」第二回受賞作品。
名前だけは知っている「傑作」は一通り読んでおこうと思って、手に取った。
犯人も動機も犯行手順も全く想像外。
作中の探偵が「心理の足跡」と呼ぶ、推理のキッカケとなる点は、指摘を受けた後だと、なんで気付かなかったんだろう、と思うくらいシンプルな手掛かりだった。
戦後僅か2年で、こういう作品が世に出た、という点も意外だった。
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とてもよくできた推理小説だった。公募形式で犯人と推理の過程を募るという趣向も面白い。
でも正直に言うと、登場人物が多すぎて、誰が何を話してどういう動きをしているのかよく分からなくなってしまい、推理に参加するどころではなかった。
あと、現在ではとても受け入れられない表現や人物描写ばかりだった。
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山奥の屋敷で殺人事件が起こる。
犯人に目処がつかず動機も定かでは無い。
坂口安吾の本格推理小説です。
純粋に面白かった。
この時代の方々が残した話しはよくできていて、興味深いものが多いです。
小説は楽しい。
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次々に人が死んでいくのに全然緊張感が無くてコメディかと思った
最後まで全然犯人が分からなくて悔しかった
人もいっぱい出てくるからてんてこまいだったけど面白かった
安吾が「推理小説」の先駆けになったというか読者視点として面白みを見つけ出したのがすごいなと思った
年譜を見てて安吾の破天荒ぶりにすげえ笑った
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総勢35名のワケアリ男女が繰り広げるハチャメチャ奇想天外事件に翻弄されっぱなし。
不連続殺人というカモフラージュ戦法でとても難解でしたが、ラストはかっこよくまとまっていて、読後感が最高です。
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戦後間もない頃に書かれた作品で、かなり際どい言葉が沢山出てくるが、妙なユーモアがあり面白い。謎解きも満足。登場人物が意外と多くて、少し戸惑いますが。
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奇人変人と思われる人が、田舎の一家に集まり、連続殺人事件が起こる。いかにも、といった設定だが、犯人の見当がつかない。
最後の事件で、何となく犯人が分かった。なかなかのトリック。
時代がかった表現は作品当時を反映したものだろうか。登場人物の相関関係が、なかなかつかめず苦労した。
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おもろいわ。
しかし本筋から逸れますが、とても今では使えない言葉が生き生きと溢れかえっており、遥かにクリーンな現代の文章の水面下にはこんなあられもない姿の心が波打ちのたくりまわっているのだなと思うとゾクゾクしますね。
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坂口安吾といえば『堕落論』しか読んだことがなく、そのイメージしかなかったのですが、ミステリーも書いている、というのを知ってすぐに購入。
とある別荘にひと夏を過ごすこととなった男女の一団。1人また1人と殺されていくが、同一犯による連続殺人なのか、それとも、数名もしくは数組の犯人がいる不連続殺人なのか、謎が深まっていく。。
一言でいうと、とても面白かったです!
色々面白かった点があるのですが、まずは登場人物たちの魅力溢れるキャラクターでしょうか。文士や絵描きなど、芸術家が多く一癖も二癖もある人たちばかり。それぞれの際立ったキャラが丁寧に書かれており、また、文士同士の抜き差しならない妬み・僻み、嫉妬といったことが、よく描かれていました。当時の文学界の人間関係の様子を垣間見ることができたように思います。
あとは警察側のキャラクターもあだ名の付け方が秀逸で、ベタといえばベタなんですが、やはり物語に立体感を出すには、登場人物たちを、その存在を具体的にイメージ出来るように描くことが大切なのだなと。
もう1つは、いかに犯罪を成し得ることができたか、、というネタ、トリックの部分ですが、そのミソが人間の心情や心理を探求し、その盲点をうまく突いたところにあったということです。なので、逆に金田一とかコナンとかでよくでてくる難解な密室トリックとかはでてこないので、素人でも十分可能な、すごくリアリティのある仕上がりになっています。
人間心理を逆手にとったトリックやネタばらしにしたのは、坂口安吾のこだわりなのでしょう。
1こだけ、物足りなかったと感じたのは動機について。作中でも、動機がわかれば犯人はわかる、といように伏線とおもわれる箇所が何個かあったのですが、ミステリー通的にいうと、回収しきれていないのでは?と思ってしまいました。これはあえてこうしているのですかね。
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すっごい多くの人たち、全員個性の塊みたいな人たちなのだが、この人たちが集まった屋敷の中で次々に事件が起こるといった古典的ミステリーの定番の型が取られている。
多すぎて人を覚えられない!と思ったが安心してほしい、この事件は次々に人が死んでいく。やはりそこにあるのは「動機」、特に今回は多くの事件が起こったのでその犯行が「計画的なのか」「突発的なのか」に分けて考えるとすっきりとする。
「計画的」なものは「愛情」「復讐」「金銭」などが多くあり、「突発的」なのは「保身」「気が触れた」「疑心」などから起こりうる。今回もそういったものに分けて考えると良いと読みながら思った。そうすれば屋敷に集められた人々、一番屋敷で偉い人、そういった人々を「殺める」までの「動機」が浮かび上がってくると思うし、複雑なトリックや展開ほど、真相はわかりやすいものであると思う。
犯人の動きを思い返すとこの物語で重要視されている「心理トリック」、特に周りの人が真犯人に対してこの事件の間どのようなイメージを抱いているかを読み解いていってほしい。
Posted by ブクログ
坂口安吾さんの作品は初…これから読んでいいのだろうか?
クセのある人達が都会から離れた邸宅に集い、殺人事件に巻き込まれていく。数ページ読んだ時点で二十人近くの人が出てきて、関係が嫌らしく絡み合っている。
人の関係が乱れ過ぎているので、そこだけで読む人を選ぶと思う。
上記で書いた通り人が多いのだが、個々の人を最後までどんな人なのかわからないまま深く掘り下げないまま終わるのも辛い。
読んでいてやはり「犯人当てゲーム」という印象が強くなる。(それはそういう作品なので仕方がないとは思うのですが)
ちょっと体調不良が続く中での読書だったため、頭も働かず馴染めぬまま読み終えてしまった。推理モノはやはり肌に合わないのかもしれない。読んだ時に本筋のトリックよりも余分な描写(たまにトリックに紐づくケースもある)に目がいってしまう。
作者の位置付けからして、大きく話題になった作品であること、推理小説に対する想いから生まれた探偵像など解説を読んでようやくちゃんと理解したような気がする。
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坂口安吾が初めて書いた推理小説で、雑誌連載された作品。連載時には読者への挑戦として真犯人当て懸賞金が掛けられたという(ちなみに正解者は4名で、安吾が自腹で支払ったそうだ)。
歌川家という資産家の一族がいる。1年前に当主の多門の妻、梶子が亡くなり、その法事を行うことになる。
多門とは旧知であり、その息子の一馬とも友人である作家の「私」(矢代)は、一馬に頼まれて、歌川家で一夏を過ごすことになる。「私」の妻・京子は、一馬の異母妹である加代子と旧友であったため、病気の彼女の無聊を慰めてやってほしいというのだ。
一方、一馬は妙な手紙を受け取っていた。
お梶さまは誰に殺されたか。
すべては一周忌に終わるであろう。
憎しみも呪いも悲しみも怒りも。
「私」は、妻と共に、元弟子で今は探偵をしている巨勢も伴って歌川家を訪れることにする。
だが、その夏、歌川家にやってきたのは彼らだけではなかった。
ぞろぞろと大勢がやってくる。口々に一馬に手紙で招かれたというが、当の一馬はそんなものは出していないという。
大勢がひしめき合う田舎の豪邸で、ついに第一の殺人が起こる・・・。
安吾はなかなかの探偵小説好きだったようで、好きが高じて自分でも書いてみようと思い立ったようだ。どうせなら本格推理=パズラーで、かつ誰にも真相が当てられないものを、と意気込んで生まれた作品。
とにかく登場人物が多くて面食らう。そしてその人間関係が異常に入り組んでいる。「私」の妻の京子は多門の元・妾だし、一馬の妻あやかは招かれざる客の土居光一と以前同棲していた。一馬が気にしている異母妹の加代子は実は一馬を慕っている。
作家・芸術家が多いのも特徴で、仏文学者の妻は女流作家、劇作家の妻は女優、他に流行作家に詩人に画家といった具合。で、それぞれが乱倫というか、結婚していても浮気相手がいたりとややこしい。あいびきはあるわ、派手な喧嘩は起こるわ、激しい。
20人を超える主要登場人物のうち、何と8人が殺される。
途中からは警察も介入してくるのだが、殺人は続く。いや、いい加減止めろよ、と思うのだが、犯人はなかなか尻尾をつかませない。
最後の最後に、探偵・巨勢が、犯人の残した「心理の足跡」を手掛かりに、真相を語り始める・・・。
いや、なるほど。そうきたか。
実のところ、この舞台設定そのものが本作の鍵だったともいえる。
ガチャガチャした雰囲気に飲まれて何となく読んでいると、真犯人の不自然な行動をつい見落としてしまうのである。
真相、そしてその陰の動機は意外にシンプルなものなのだ。
でもこれ、当てた読者は偉いと思うなぁ・・・。
現行の角川文庫には、昭和49年の高木彬光の解説と2006年の法月綸太郎の解説がつく。
高木の処女作「刺青殺人事件」は、第2回探偵作家クラブ賞で安吾の本作に敗れたのだそうである。そんなこんなの安吾との因縁話がなかなかおもしろい。
乱倫もどうかとは思うが、不美人とかセムシとか不適切な表現が多い点は時代を感じさせる。いや、時代だけの話でもないのかもしれないが。
安吾、今ならどんな作品を書くのかな。現代は安吾にはいささか窮屈かもしれない。
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(あらすじ)
作家の矢代寸兵は親友の詩人・歌川一馬の招待で山奥の豪邸で一夏過ごす事になる。一馬の実家は酒造業を営む大地主で大富豪。一馬の父・多門はやり手なだけに女関係も派手で、矢代の妻・京子も何を隠そうかつて多門の愛人だった。
そこに招かれたのは作家、劇作家、画家、女優など個性豊か、というよりクセの強い面々。おまけに一馬の妹・珠緒はその中の2,3人を手玉に取るし、一馬の元妻の秋子や現在の妻・あやかの元同棲相手の土居など複雑な人間関係が絡んでいる。
そんな中、次々と殺人が起こる。
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昭和22年が物語の舞台。古いけど江戸川乱歩や横溝正史のようなおどろおどろしさはなく、松本清張のようにシビアでもない。けど面白い。ユーモラスでもある。
矢代夫妻と一馬を除いたら高感度の低い癖ありの面々、大人のくせに面と向かって悪態をつきあう(笑)殺人事件そのものよりも、このアクの強いキャラクター達が話を面白くしているんだろうな。
連続殺人事件なのになぜタイトルが『不連続殺人事件』なのか?探偵の巨勢が述べてるけど…それはちょっと納得出来ない。
Posted by ブクログ
坂口安吾が推理小説も書いていたことを意外に思い、興味を持ったので購入。
犯人になりそうな登場人物が多く、それぞれ複雑な人間関係(特に男女の)があるものの、次々殺されどんどん人数が絞り込まれていく。それでも真犯人がなかなかわからない。
事件の犯人やトリックは、種明かしされてみると特別驚くものではないかもしれないが、様々な人物とその表向きの人間関係にとらわれていた自分は、終盤までそれに気づかなかった。
Posted by ブクログ
ミステリーは久々に読んだ。文化的背景を理解しきれず、ついていけなかった部分もある上に、時代的に仕方のないことだが差別用語の多さに辟易としてしまった。
登場人物も多く、人物相関図を参照しないと難しかった(笑)最後のタネ明かしには驚いたが。
Posted by ブクログ
面白かったのは、坂口安吾が読者に挑んでいる「付記」の部分のみ。
感情の欠落した描写は、敢えてなのだろうけれど
あれほどの殺人事件に対する恐怖その他の感情が
ほぼ皆無で、皆々だらだらと遊び呆けている日々が
読んでいてどうにも納得できなかった。
私はこの手のパズルのような推理小説は好まない。
Posted by ブクログ
目次の一、俗悪千万な人間関係
ここがこの本の中での一番の難関(^_^;)
一体何人登場するのだ!?という登場人物の数。
誰が誰なのか?さっぱり覚えられず、三回は読み直したか。
クイーンのYの悲劇のような、私の好きなクローズドサークルもの。
事件が起こってからの展開はなかなか早かった。
半分を越えたあたりからはどんどん面白くなっていく。
今風な文章に変えたらかなり面白い物語だろうと思う。
ただ、少し下品かなぁ(^_^;)
Posted by ブクログ
もう何十年前に読んだ作品だろうか、、、、
書店で気になって購入した。2度目というよりは初めて読む感覚ではあったが、不思議とポイントとなる所は覚えているものだと我ながら感心した。
戦後の昭和の雰囲気が漂う作品で、その時代の感覚を楽しむのにも良い。