【感想・ネタバレ】桜の森の満開の下・白痴 他12篇のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年04月07日

情痴作家って言葉、すごいなって思ったけどたしかに恋愛、女、情欲にかかわる話が多かった。そういうのを選んで編纂したんだろうか。エロいし浮気なのに爽やか、誠実、孤独、悪魔的という感じの女性像。
谷崎潤一郎や泉鏡花を読んでみようと思った。不連続殺人事件と私は海を抱きしめていたいも読みたい。

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Posted by ブクログ 2023年07月10日

一篇目の『風博士』で狐に摘まれたような気分になり、はやくも頭の中では仕事帰りにBOOKOFFで売り払うこと考えつつ、しかし頑張ってのりこえ、そこから先は天国。痴情作家といわれるらしいが、個人的にはそうは思わなかった。男女の関係はいわば生物学の基本で、人間感情の基本でもあるわけで、言ってしまえば政治小...続きを読む説とかの方が異常。それはさておき、痴情というからテッキリ小澤さん甘いよ、甘すぎるよーな筋かと思いきや、自分が完全にこの作家に対して無知から入った所為もあるが、戦争と切っても切れないような作品ばかりで、面食らった。解説曰く、作者は谷崎潤一郎に若い頃憧れていたらしく、言われてみれば系統的に似ていると思うが、同じく解説曰く、系統は似ていても中身はやはり違う、具体的には、谷崎文学は被虐愛で、作者のは奇怪な性格の女性を前にして聖のような主人公の性格が浮き彫にされる感じらしい。確かに、別に被虐愛に溺れている感じではない。『卍』のようなヒョエーな感じはない。思うに、太宰治とは別系統ながら女性に対する観察が鋭いのかなとも思った。思っただけ。期待せずに、それどころかむしろ恐る恐る読んだのでほとんどメモも何ものこさなかった。また近いうちに再読したい。

総じて言えるのは、男女関係の深層に孤独が巣食っている感じ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年03月22日

女は空で男は鳥だったその表現が綺麗でした
男は女にとって綺麗で記憶からも話せないそんな存在
それを桜で例えててると解釈しました。桜と散る男を見ると彼はもう恐るものはないと思いました

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Posted by ブクログ 2022年11月12日

坂口安吾を初めて読んだ。なんと粒揃いの短編集! デビュー作から、耳男まで、どれもひとつひとつ深い。坂口安吾の書いたものすべて読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2022年01月10日

坂口安吾の女性像はどこか観念的で、愛情と不信感のアンビバレントがすごいなぁ…などと思いながら読んでいたら、『青鬼の褌を洗う女』の中で作家自らそれを告白していた。

“彼のような魂の孤独な人は人生を観念の上で見ており、自分の今いる現実すらも、観念的にしか把握できず、私を愛しながらも、私をでなく、何か最...続きを読む愛の女、そういう観念を立てて、それから私を現実をとらえているようなものであった”

女を畏怖するのは孤独な彼の生い立ちからきているのだろうか?
坂口安吾を『夜長姫と耳男』の耳男と重ねてみると、夜長姫のことばにぐっとくるものがある。

“好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして”

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Posted by ブクログ 2018年11月07日

坂口安吾は初めてちゃんと読んだ。
どの作品もそれぞれ心に小さな石のようなものや、温かいものや、鮮烈で繊細なものを残していった。
今まで縁がなかったので読んでこなかったが、じわじわと好きになりそうだ。

「桜の森」の最後は美しい。

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Posted by ブクログ 2017年12月11日

『不良少年とキリスト』で坂口安吾を初めて読んでひきこまれ、胸にくるものがあったので他のも読んでみたいと思って堕落論などの〇〇論を読んだけどどうにもとっつきにくく…。

こういった小説だったらどうだろうと思いこの本を読んでみたら、こっちはどの話も好きだったしとても読みやすかった。

戦争と男女関係の話...続きを読むが多いので結構辛い場面もあるけど、なんだか綺麗に感じる。
出てくる女の人たちはみんな違った魅力があって好き。
彼女たちは残酷になればなるほど澄んだ美しさがある気がする。

『桜の森の満開の下』と『夜長姫と耳男』に出てくる二人の女性は特に残酷だけど、無邪気で気高い美しさもあってすごく惹かれるものがある。
この二作はこの短篇集の中で特に好き。
夜長姫の最後の言葉はとても頭と心に残る。

『アンゴウ』は一番爽やかな切なさがあって誰にでも勧められそう。

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Posted by ブクログ 2015年12月27日

様々な「女」をめぐる物語。

「恋をしに行く」は、純粋ながら人間らしい、この話自体に恋をしてしまうようだった。
「続戦争と一人の女」は、女の孤独と愛情に共感さえ覚えてしまうほど、胸が苦しく愛を感じた。
「傲慢な眼」は、不器用さと甘酸っぱさがとても愛くるしい。
「アンゴウ」は、どんでん返しの結末に、胸...続きを読むが熱くならずにはいられなかった。

私はこの4つの物語に特に惹かれたが、きっと女性のタイプと同じように、好みは分かれるであろう。

「女とは?」という問いかけにも似た、多面性を見せる「女」たち。
皆それぞれ魅力があり、とても引き込まれる短編小説集でした。

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Posted by ブクログ 2015年03月15日

坂口安吾が1931年に発表した"風博士"から1952年に発表した"夜長姫と耳男"まで代表的な短編14篇を集めた短篇集です。これ1冊で安吾の世界を堪能できる素晴らしい内容です。2015年3月10日に東京大空襲から70年が経過したり、そろそろ桜が咲く時期になったり...続きを読むと、ここに収められている作品に縁の多い時期になったので読みました。個人的に好きな作品は、"桜の森の満開の下"と"夜長姫と耳男"のような幻想文学です。ちょっと血なまぐさいですが、何度読んでも、ここに描かれている妖しい雰囲気に魅了されてしまいます。

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Posted by ブクログ 2015年01月03日

主人公や出てくる女性は皆それぞれに孤独だけれど、それはどうしようもないのだと退屈しているけれど、それでも恋をする、虚しさが愛おしいと思います。激しい恋の物語なのに、どこまでも孤独。「桜の森の満開の下」は最後のシーンがとても綺麗でした。愛おしいのは「恋をしに行く」の信子、素敵なのは「青鬼の褌を洗う女」...続きを読むのサチ子、悪魔的なのは「夜長姫と耳男」の夜長姫、共感しやすいのは「戦争と一人の女」の女。

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Posted by ブクログ 2014年05月29日

「恋をしに行く」を読んだあと、
何とも言えない放心状態に陥った。

世界観?雰囲気?
そういう抽象的な表現しか思いつけないのだけど、
凄く自分にぴったりときた素敵な作品でした。

もちろん表題作も素晴らしい。
ぜんぶおすすめ。

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Posted by ブクログ 2013年11月28日

坂口安吾作。
不思議な世界観。何が起こっているのかよくわからないラストなのに、引き込まれて何故か切なくなった。読み終わった直後に解説をあさらずにはいられなかった作品。他の短編を読んでいないので読もうと思う。

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Posted by ブクログ 2013年07月25日

表題作と「夜長姫と耳男」がお気に入り。
他の12編もいい。手元において何度でも読もうと決めた。タブレットにも入れてあるけど、やっぱり「紙の本」がいい。

美しく高貴で可憐で無邪気、そして我がままで残虐な狂気の夜長姫。
最強のヒロインだ。

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Posted by ブクログ 2023年08月26日

 坂口安吾の世界観にとても惹き込まれた。限りある人生のなかで心をかきむしり続ける恋の不思議に触れたように感じました。
 プラトニックか肉欲かという葛藤、人の浮気性、利己的か利他的か、人間のもつ苦しい業をここまで描くのかと驚きでした。しかもそれらを批判的ではなくて人間の美しさとして肯定的なところがどこ...続きを読むかしら感じられました。読み終わって安吾の堕落論にみられる人間が持つ欲するものを欲する精神の悲しさと美しさがわかった気がしました。
 個人的には『恋をしに行く』と『夜長姫と耳男』が好きでした。恋をしに行くは最後まで精神か肉体かの対立が明確で、それを踏まえて迎えるラストは清々しくもどこか虚しい。夜長姫と耳男は終始グロい黒さが漂うのにとても静謐な感じが好きでした。

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Posted by ブクログ 2022年11月09日

文庫は、ナンセンス文学である「風博士」から始まる。
どこかドグラ・マグラ的な匂いを感じなくもない。
幾度も同じ単語を並べ立て、強調に強調を重ねた「僕」の語り口に、だから何なの?と言いたくなる。
演説のような「僕」の熱弁ぶりと反比例して、読者は段々とバカバカしい思いに捕らわれていく。
それでも何か意味...続きを読むがあるに違いないと私達はページを繰る。
しかし坂口安吾は、深読みしたがる読者を煙に巻くのだ。

さて、読みたかった「桜の森の満開の下」。
昔話のような語り方で、美しい桜の木のもと、人の業が描かれていた。

青空のもと見上げる満開の桜は春の喜びを感じるのに、
ハラハラと散る桜は儚げで美しいのに、
月明かりに照されて闇夜に滲む桜は、何故妖しさを纏うのだろう。
美しく小さきものは可愛らしいのに、何故満開の大木は恐ろしいのだろう。

あの花の下でゴウゴウという風の音を聞いた時、花びらが散るように魂が衰えてゆくと感じた時から、山賊は自分の中の「恐怖」を実感する。
美しくも残忍な、あの女は何者だったのか。

山賊は女との出会いを切っ掛けに、女が着飾る「美」を知ってゆく。
人其々の「価値観」も知っていったのかもしれない。
そうして山賊は、「知」が増すことで逆に「知らない」ことへの羞恥と不安も湧いてくる。

物語は、美しすぎるものには恐怖すら感じてしまうという人間の不思議な感覚を、
桜の妖艶な美しさを効果的に使いながら展開していた。
「知」を得たからこその「未知への恐怖」
物では満たされぬ「欲求」
それ故に「狂気」にも陥りかねない「際限のない欲求」と「退屈」
それらに飲み込まれ自分を見失ってしまった者に訪れる「孤独」と「空虚」
失って気付く「悲しみ」

山賊は、もはや自分自身が「孤独そのもの」であることを知り、自分の胸に生まれた「悲しみにさえ温かさを感じる」のだ。
そして消えてゆく。
全ては桜の花が魅せた幻影だったのか。
それは桜の花だけが預かり知るところ。
残るはハラハラと散る桜と、冷たい空虚のみだ。
しかし読者は、その恐ろしいラストシーンにさえ美しさを感じてしまう。
何度も読み返したい、坂口安吾の傑作だ。

他に収められている物語も「女性」を絡めつつ「欲求」や「エゴ」を描いている。
表現方法は実に巧みで、読み返すほどに味わいの増す1冊。

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Posted by ブクログ 2022年08月28日

江戸時代より前は、満開の桜は美しい物ではなく、恐ろしいと考えられていたという

今でこそ「儚さ」というものは美を感じる事が出来るが、大昔は今より遥かに「死」というものが身近であったであろう

「儚さ」は「死」を想起し恐ろしさを感じたのではないだろうか

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Posted by ブクログ 2022年03月06日

 作者の女性像がひしひしと伝わる話。誰かに夢中になる、嫌いになることは、周りが見えなくなるまやかしにかかっているのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年11月20日

坂口安吾の短編が14作収録されています。
特に氏の代表作として一般的に著名な"風博士"、"白痴"、"桜の森の満開の下"が抑えられていて、他にも有名作、傑作が複数収録されているため氏を知るためには十全な短編集と思います。
坂口安吾作品は時期に...続きを読むよって、ファルスだったり、痴情作家と揶揄されたり、戦争の影響が出たり、推理小説を書き始めたりするなど、大きく移り変わります。
"ファルスに就て"や"堕落論"、"文学のふるさと"、"余はベンメイす"などなどの評論を読んでいると、執筆時に何を思っていたのかがリンクして、より興味深く読めると思います。

作品数が多いので、各作品で感想を書かず、ある程度まとめて感想を書きます。
各作品の感想は以下です。

・風博士 ...
坂口安吾が文壇に認められるきっかけとなった作品で、また、氏が"芸術の最高形式"であるとまで述べた『ファルス』文学です。
坂口安吾といえばファルスであり、坂口安吾のファルスといえば風博士というほど、氏を代表する作品です。
風博士が自殺したことについて嫌疑をかけられた主人公が、風博士は蛸博士との確執により自殺したということを語る内容で、風博士とは?蛸博士とは?といった説明はなく、どこかミステリアスで何のメタファーを匂わせるような作品です。
ただ、氏の著書『FARCEに就て』でも述べている通り、本作は"ファルス文学である"というのがその答えなのかと思いました。

・傲慢な眼 / 姦淫に寄す / 不可解な恋愛に就て / 南風譜 ...
4作とも男女の関係を描いた作品です。
執筆時期は全て戦前で、4様のストーリーですが全て名著でした。
坂口安吾は評論を先に一通り眼を通して、最初に読んだ小説が"風博士"だったので、坂口安吾作品は全てこういう感じかと思ったのですが、難解な言い回しもない普通に楽しんで読める小説だったので、逆に驚きがありました。
ただその作品も、少し非日常的なところがあって、氏の作風を感じる4作だったと思います。

・白痴 ...
坂口安吾の代表作の一つ。
堕落論の後に書かれた作品で、堕落論に並び、坂口安吾作品では著名な一作だと思います。
戦時下、映画監督で見習い演出家をしている伊沢は、生活が困窮していて、魂のない制作会社にしがみついていた。
そんな折、遅く帰ると、隣家に住む気違いの白痴の女房が隠れていて、奇妙な共同生活が始めるというもの。
"白痴"ではあるがその女性の顔立ちは美しく、そんな彼女に対して肉欲を超えた何かを感じ始めます。
風博士は、あるテーマに沿った、坂口安吾を象徴する代表作ですが、本作は堕落論と併せて戦後日本の人々に方向性を示した、人に感動を与える作品であり、また、坂口安吾の地位を築いた作品です。
序盤、評論じみた読みにくいセンテンスがありますが、中盤以降の展開は見事で、封鎖的で耽美な雰囲気の名作です。

・女体 / 恋をしに行く ...
"女体"は長編連作の予定だった作品の1作目で、"恋をしに行く"は、女体から3,4ヶ月後に発表された2作目です。
2作共に主人公は「谷村」という男で、他の登場人物も共通して登場する者はあるのですが、作品の雰囲気がガラリと変わるため、別作品として読んだほうが良いと思います。
"女体"というストレートな作品名で、性をテーマにしてはいるのですが、行為そのものの露骨な描写はなく、心理描写がほぼ全てです。
谷村の連れ添った妻である「素子」や、夫妻の絵の先生である「岡本」に対するヒネた心理、精神、感想を述べる内容で、非情に読みにくい作品に感じました。
"恋をしに行く"は女体に比較すると、幾分読みやすく感じます。
「信子」という、岡本の弟子に惹かれた谷村と信子のやり取りが主ですが、ただこちらも比較的読みやすいというだけであって、個人的にはあまり楽しんで読める作品ではないと感じました。

・戦争と一人の女 / 続戦争と一人の女 ...
戦時中、小説家の男「野村」という男と、同棲中の不感症の女を主役に据えた小説。
女性は酒屋の主人の妾上がりで、その間、少しでも気に入った客とはすぐに寝る淫奔な性質だったが、戦時中でどうせ未来はないのだからと、野村は一緒に住むことにします。
戦争が終わるまでの関係性と考えていたのですが、やがてお互いが奇妙に惹かれ合う内容で、坂口安吾らしい、肉体を伴わない精神での結びつきについて書かれた作品に想いました。
"女体"はいまいちでしたが、こちらは読んでいて夢中になれる内容でした
なお、本作も含めて氏の作品は男女の関係を描いたものが多いため、"痴情作家"と揶揄されはじめます。
確かに本作は比較的過激さを感じましたが、明確なテーマもまた感じました。
男女の関係を描いていますが、官能的な部分はなく、極めて真面目な作品だと思います。

・桜の森の満開の下 ...
本作も坂口安吾の代表作として上げられることが多い作品。
文芸雑記に掲載された短編で、元々あまり注目されていなかった作品ですが、坂口安吾の死後に文芸評論家により再評価されて有名になった作品です。
満開の桜が咲き誇る森という、幻想的で恐怖を感じる場所を舞台にした幻想小説で、内容は極めて残酷です。
罪のない人々の首を集めてお人形遊びをする描写等があり、私的には大人向けのおとぎ話のような雰囲気を感じました。
妖艶な美女に言われるがまま殺戮を繰り返す山賊だが、最後は以外にも使われていただけではなかったという話で、ファルス文学や、氏が『文学のふるさと』で書いた、"文学の出発点"に通じるものを感じる作品でした。

・青鬼の褌を洗う女 / アンゴウ / 夜長姫と耳男 ...
"青鬼の褌を洗う女"は、坂口安吾が多忙を極めた1947年代に書かれた作品で、氏の代表作として上げられることもあります。
坂口安吾の妻『坂口三千代』をモデルにした女性「さち子」を主人公にしており、母の束縛を受けながら成長したが戦争でその母を失ったことで奔放に生きる女性の姿が描かれています。
三千代への想いが強く伝わる作品ですが、読み物としては、正直なところ読み難さを感じました。
"アンゴウ"は、戦士した戦友の蔵書を偶然街の古書店で見かけ、懐かしさから購入してみると数字の羅列の書かれた切れ端が現れる。
その切れ端から始まるミステリー調の作品で、追っていくことで判明したことから妻の不貞等を疑っていたのですが、ラストは心温まる終幕となっていて、個人的には本短編中で一番好きな作品となりました。
隠された名作と思います。
"夜長姫と耳男"も坂口安吾の代表作として上げられることがある作品で、"桜の森の満開の下"のような説和風の作品です。
ただ、個人的には"風博士"のようなファルス文学な感じを受けました。
極めて抽象的で何でもありな感じがあり、面白くないわけではないのですが、"桜の森の満開の下"のような感動はなかったです。

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Posted by ブクログ 2021年03月31日

私は作品を読むときに「どう死なすか」を重点的に見ているのだが,その視点からすると,坂口安吾の作品は随分と手ぬるいものだ。とはいえ無意味に死なす近年の感動を求める風潮?に比べればはるかにマシ。現代において,坂口安吾の示す姿勢は参考になるだろう。

以下主要作品についての感想。

「白痴」

戦火と微睡...続きを読むみが両立する世界観に単純に惹かれた。理知に対するカウンターとしての白痴の女が終始まとわりつく,感情は古い。p94「その戦争の破壊の巨大な愛情が,すべてを裁いてくれるだろう」しかし,いつだって破滅的願望は叶わないものだ。

「戦争と一人の女」

p163「女は戦争が好きであった。〜爆撃という人々の更に呪う一点に於いて,女は大いに戦争を愛していたのである」一種の破滅的願望なのだろうが,やはり成就しない。アンバランスが女の構成要素だとするのなら,先の長いだけの平和には何の意味も見出せなくなる。死を間近に控えた生命は眩い。そこに肯定も否定もなく,ただ孤高であるばかり。

「桜の森の満開の下」

「夜長姫と耳男」

共通して古風ファンタジー?なのでまとめて感想を。何も美しいというのは感動だけではない。畏怖だ。内面で昇華しきれない情動による畏怖である。しかし,それは女の像を更に曖昧にしてしまう。おそらく元とする古典作品があるのだろうが,坂口安吾のそれは遥かに内面的で,当時代の精神分析を思わせるようだ。なお,背景を抜きにして,安易に幻想とか狂気とか言う風潮はいかがなものかと……

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年02月15日

 「夜長姫と耳男」と「桜の森の満開の下」のみ。後者は再読。
 「夜長姫と耳男」はあらすじは知っていたものの、やっぱりじわじわくる怖さ。まともな感覚がだんだんなくなってくる。耳男は最初は夜長姫のことを「あいつ、むかつくー」と思ってたろうけれど、弥勒を掘り始めるあたりから、一種の(勘違いから生まれたかも...続きを読むしれない)恋だったのかなーとか。特に笑顔に縛られているあたりは。最後のシーンは客観的にはグロテスクではあるけれど、それだけでは収まりきらない妖艶さ?美しさ?があると思った。
 その後に「桜の森の満開の下」を読むと、女が夜長姫よりちょっとマシだけど、やっぱり狂ってるって印象が強くなる。特に首を求めるところからは。最後の桜のところは一種浄化とも捉えられるかも。

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Posted by ブクログ 2018年11月29日

すべての短編に女性が登場します。
耽美的な短編集です。耽美、というと谷崎潤一郎が真っ先に思いつくかもしれませんが、谷崎とは少し違う方向で、一線を画している感があります。
しかし、女性の美しさを描く言葉の端々に、作者の女性に対する一種の崇拝のようなものを感じ、そこは谷崎作品と通ずるところがあるのではな...続きを読むいでしょうか。
谷崎好きなら、ぜひ。

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Posted by ブクログ 2017年09月06日

男と女。退屈、悲しみ。狂気。行きつく先を探しても、見つからないけれどそれでも生きる。安吾の魅力満載の短編集。

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Posted by ブクログ 2015年01月12日

女にまつわる作品が数多く載せられている。爽やかな作品もあれば、幻想的かつグロテスクな作品もある。いづれを読んでも、その作品世界の奥行きに感動させられるものばかりである。

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Posted by ブクログ 2013年12月30日

青鬼の褌を洗う女が、大好き。
こんな淡々とけだるくて色っぽい女になりたい!
「私は男に肩を抱かれたり、手を握られたりしても、別にふりほどこうともしないのだ。面倒なのだ。それぐらいのこと、そんなことをしてみたいなら、勝手にしてみるがいいじゃないか。」
「返事の代わりに笑うのだ。」
わたしはすぐ、嫌だと...続きを読むいったり、照れたり焦ったり、笑ったりするから、こんなふうに人を惑わす女の人にすごく憧れる。男の人といっしょにいると、この話の一文を思い出すくらい。
ラスト3ページが死ぬほど大好き!

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Posted by ブクログ 2017年05月11日

全14編のうち既読6編、今回初めて読んだのが8編。
「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」「アンゴウ」の3編(いずれも既読)が
入った1冊はないかと探したら、この本が見つかったので購入。
テーマは戦争と恋愛に傾いている印象。
もっとも、執筆・発表年代を考えたら戦争が取り扱われているのは当然だし、
明日...続きを読むにも焼け出されるかもしれないといった危機感の中で男女が愛欲に溺れる、
というのも、まあそうか、そういうものかな――と、呟きながら、
バタイユ『青空』を思い浮かべたが、ともかくも、
極限状況の中で男より女の方が肝が据わっているというのは、
リアリティがあって頷ける(笑)

久しぶりで特に楽しみにしていたのが推理掌編「アンゴウ」。
タイトルは暗号、暗合、そして作者の名「安吾」のトリプル・ミーニング。
主人公の疑問・疑惑が氷解した瞬間、こちらの涙腺も緩んでジーンと来てしまう。
青空文庫にも入っている、ごく短い小説で、未読の方にもお勧めしやすい佳品。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年02月02日

『風博士』
遺言を残し自殺した風博士。死体のない自殺にライバルである蛸博士の名誉を傷つけることが目的と言われ・・・。助手による反論。

『傲慢な眼』
田舎にやってきた県知事の娘。皆が彼女を賞賛する中ただ一人彼女を傲慢な眼で見つめる一人の学生。彼のモデルとして会話を始める娘との関係。

『姦淫に寄す』...続きを読む
自殺した隣人の部屋に引っ越した村山玄二郎。彼が参加する日曜の教会で彼に恋をした女・氷川澄江。彼女との付き合い。彼女が所有する別荘で一夜。2人の関係の変化。

『白痴』
戦争中深夜に帰宅した伊沢の家に入り込んだ白痴の女。家人いじめられ逃げ込んだと思った伊沢。2人の関係。東京大空襲の夜の彼らの逃亡。

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Posted by ブクログ 2017年11月09日

ぱっと美しく咲いて、あっという間に散るその潔さが
日本人にも好まれる桜の花。
あたたかくなると桜が咲き始め、
満開の桜並木や公園でお花見をしたくなりますが、
美しい桜の花には要注意です。

この小説の作者は『白痴』などでよく知られた坂口安吾さん。
『昔、鈴鹿峠の満開の桜の下を通ると、旅人はみな気が変...続きを読むになる』と書き、
物語はそこから始まります。
恐ろしいほど美しい桜の魔力に見せられた男性が、
拾ってきた美しい女の言うがままに、
次々と殺人を犯し略奪を繰り返します。

満開の桜の森の下に怖くて行けないことが、
この作品のなかでのキーポイントですが、
よく考えてみると、本当に美しく咲き誇っている桜ってなんだか怖い。
この世のものとは思えないからでしょうか。
そこに人の力ではどうしようもない大自然の力を感じるからでしょうか。

小説の中ではその謎は解かれていません。
主人公の男性の桜にたいする
哀しいまでの執着と狂気があるのみ、なのです。
それがかえって人間の弱い心理を深くえぐりだし、
しらっと咲き続ける桜の森のものすごい美しさを連想させます。

お花見で浮かれてドンチャン騒ぎをするのは、
江戸時代以降のことで、それまでは、
満開の桜は気が変になるといわれ、人々は避けていたそうです。
坂口安吾さんは鬱病的精神状態から薬を常用しながらも
このような作品を次々と書かれていました。
幻覚や幻聴もあったといいますから、
この作品の「狂気」はそのまま作者の狂気だったのかも。
私もそれに近いものを美しい桜に感じています。
「はかない美しさ」だとも思っているのです。
怖いのだけれど毎年桜は見たくなるから不思議です。

それにしてもこの小説のタイトル、優雅に思えて読みたくなります。
これも・・・桜の魔力、なのでしょうか。
お花見の前にぜひ読んでみてほしい一冊です。

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Posted by ブクログ 2022年10月13日

なかなか読めずにいた坂口安吾の作品。面白かったです(^^)内容を理解出来ていたのかと問われれば理解出来てはいないような気がするのですが、物語としてはすんなりと頭に入ってきて、おどろおどろしい感じもして、ぐいぐいーっと引き込まれました!(漠然としたレビュー)

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Posted by ブクログ 2020年04月04日

森見登美彦の「新釈 走れメロス 他四篇」を読んで、原作版の「桜の森の満開の下」がどんな話なのか気になってここにたどり着きました。「全然ちがうやないか!」と思いました。いや、それはもちろん森見さんが原作を大いに自由に解釈した結果だということは重々承知していたわけですが、それにしても原作がまさかあんなエ...続きを読むゲツナいおはなしだったとは驚き。

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Posted by ブクログ 2013年06月05日

 坂口安吾の短編集、中身が濃い。収録作品は下記のとおり。

風博士/傲慢な眼/姦淫に寄す/不可解な失恋に就て/南風譜/白痴/女体/恋をしに行く/戦争と一人の女〔無削除版〕/続戦争と一人の女/桜の森の満開の下/青鬼の褌を洗う女/アンゴウ/夜長姫と耳男

 淫蕩、可憐、遊び、退屈、肉欲、死、エロス・・・...続きを読む演劇作の鑑賞したことがある作品も多数収録されており、読みごたえがあります。

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