坂口安吾のレビュー一覧

  • 桜の森の満開の下(乙女の本棚)

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    鈴鹿峠に住む山賊は、新しいたいそう美しい女房をさらってきた。彼女は彼のことを恐れないばかりか、わがままを言い、そして……。

    桜の森の満開の下で人は狂わされる。
    なかなか残酷でグロテスクな物語だった。

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    2023年07月01日
  • 堕落論

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     堕落論について卒業論文を書いた。
     戦前、戦時中の日本にとっての天皇制や武士道の精神は日本の体裁上必要なものであり、それらを高貴なものとしてその姿勢を守り続けていくことで支配のバランスを保っていたともいえる。ある意味日本で大事にされてきた決まり事を守って、自分たちはしっかりやれている。と、既存の物に頼りきりで堕落するのではなく、そのバランスを崩し「自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすために」は、自分自身を再発見する必要がある。
     戦後の混乱している社会の中に身を置いて自分自身を見つめ直すこと。それこそが安吾の唱える「堕落」なのだと考えた。

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    2023年04月22日
  • 白痴

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    6冊目『白痴』(坂口安吾 著、1948年12月、1996年6月 改版、新潮社)
    坂口安吾の代表作「白痴」を含む、全7編が収録された短編集。
    全ての作品に共通して描かれるのは堕落と肉欲。
    人間の生の本質を、男女のまぐわいを通して描き出そうとする安吾。明確な答えを読者に提示するタイプの小説は一つとしてない。執筆をしながら作者本人が自問自答を繰り返し、その答えを探求しているかのような印象を受ける作品が揃っている。

    「火も爆弾も忘れて、おい俺達二人の一生の道はな、いつもこの道なのだよ」

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    2023年02月12日
  • 白痴

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    大東亜戦争末期、敗戦直後の作品ならではの退廃感に満ちた作品群。 『堕落論』の実践、と言われる小説のようだが、堕落論を読んでいてもよく分からないところが多く、少々ぶっ飛んだ感ある。

    表題作の「白痴」では、ブラックジャックの「白痴」の回を思い出した。小学生の時に「白痴」ということばをそのとき初めて聞いたので。

    人間は堕落する生き物である、というよりは、楽をしたいプログラムが埋め込まれているから省エネで餓死せずに生き残ってきたのだろうとおもう。

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    2023年01月24日
  • 白痴

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    長らく積みっぱなしだったものより。積読崩しの一環として。坂口安吾ってやっぱ人としてどうかしてる(ここでは誉め言葉として使う)んだろうけど、だからこそこういう文章を書くんだろうなと。

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    2023年01月20日
  • 堕落論

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    本書に収録されている「戦争論」などを読むと、坂口安吾は確かに戦争を厭う人だったのだろう。「兵器の魔力が空想の限界を超すに至って……もはや、戦争はやるべきではない」とある。世界単一国家などの概念は私も賛同する。しかし、「戦争の果たした効能」を是とするあたり、読んでて苦々しく思わずにいられない。「特攻隊に捧ぐ」で特攻隊を「可憐な花」であると讃美し、「愛国殉国の情熱」を偉大と見るあたり、読んでいて薄ら寒くなる。本書には興味深い論考やエッセイも多いだけに(論旨が読み取れないエッセイもあるが)、戦争関連の項が持つ欠点が惜しい。

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    2023年01月03日
  • 肝臓先生

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    身体を売りながら逞しく生きる女を描いた「行雲流水」がお話としては一番わかりやすい。

    表題作の「肝臓先生」は名医なのか藪医者なのかいまいち分からなったが、仁徳を慕われていたのは確かのようで、散り際も美しかった。

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    2022年12月14日
  • 堕落論

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    この一、二ヶ月、私は堕落している。元々、社会的ポジションなど無かったのだから、内々で堕落している。ほんの数ヶ月前、長年続いた精神的肉体的拘束が、突然無くなり、日常生活に制約が無くなった。(介護生活だけどね)どーしたものかと省みても、堕落中。
    安吾さんは、おっしゃる。人間だから堕ちるんだ。俗物なんですよ。
    堕落するとは、自分に正直に生きること。そして、それは、人間復活の条件になること。
    敗戦後の堕落中の日本人に、肯定的堕落論ですよ。
    そして、堕ち続けるのも、鋼のメンタルが必要で、永遠に堕ち続ける事はできないと。堕ち切って自分自身を発見して、自分で救わないといけませんって。それでは、しばらくは、堕

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    2022年10月05日
  • 人間・歴史・風土 坂口安吾エッセイ選

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    坂口安吾氏(1906年生まれ)は日本史の「謎」を探求し続けた文学者であり歴史家。それは「異端の日本史」にあるように日本は疑史、偽史の類の捏造された文献が多くあることから探究心旺盛な人だったとある。文中にある伊勢神宮、天皇系絵図、聖徳太子など歴史を紐解く「古事記」「日本書紀」「風土記」「万葉集」「台記」「玉葉」などの文献からのもので疎い私には理解できない事柄が多く割愛です。が、気になったのが隠れキリシタンのその後、埼玉県の入間郡高麗神社など先祖は朝鮮半島からの今でいう移民の人たちだったのも興味深いものがあった。

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    2022年09月04日
  • 不連続殺人事件

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    坂口安吾さんの作品は初…これから読んでいいのだろうか?

    クセのある人達が都会から離れた邸宅に集い、殺人事件に巻き込まれていく。数ページ読んだ時点で二十人近くの人が出てきて、関係が嫌らしく絡み合っている。

    人の関係が乱れ過ぎているので、そこだけで読む人を選ぶと思う。
    上記で書いた通り人が多いのだが、個々の人を最後までどんな人なのかわからないまま深く掘り下げないまま終わるのも辛い。

    読んでいてやはり「犯人当てゲーム」という印象が強くなる。(それはそういう作品なので仕方がないとは思うのですが)
    ちょっと体調不良が続く中での読書だったため、頭も働かず馴染めぬまま読み終えてしまった。推理モノはやは

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    2022年08月25日
  • 桜の森の満開の下

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    寓話物なら表題作の「桜の森の満開の下」よりも「夜長姫と耳男」の方が断然良かった。設定もセリフも気迫が満ちていて読んでいて心地よい。

    「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして・・・」
     
    歴史物なら「二流の人」という黒田如水の話が良かった。上杉謙信→直江兼続→真田幸村の系統が「横からとびだしてピンタをくらわせてやろう」という「風流人で、通人で、その上戦争狂」という分類がなるほど。これも主題とは関係ないが、豊臣秀吉が甥の秀次を殺して自分も

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    2022年06月12日
  • 続 明治開化 安吾捕物帖

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    まず、続編は12話、600ページのボリュームに圧倒された。前巻より新十郎さんや勝先生の出番は少なくなり、また、時代背景もあるが、同じくグロテスクな表現は多用されている。好き嫌いはあるが、私は、冷笑鬼、ロッテンナム美人術、赤罠、トンビ男は、先が気になる面白い話だった。

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    2022年03月01日
  • 白痴

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    戦時中の描写が多く後半のほうで書かれていた。このようなところから、当時の戦争の様子が垣間見え、知ることができた。
    この小説は正直よくわからなかったけど、小説の中の中心的な人物たちは淡々としている印象だった、どこか冷めたような感じがした。ただただ現実を見ている。
    窮すれば通ず、ピンチな時でも、焦らず、ただそのときの現実を受け入れ、淡々とした精神でいるもでも良いと思った。
    一番最後の青鬼の褌を洗う女の話が気に入った。どこか冷め感じ、淡々としている。

    戦争のよる腐敗した様子をイメージした。終戦したと同時に期待もあったと、、

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    2022年01月06日
  • 堕落論【語注付】

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    ●最後

    人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。 戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに

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    2021年12月29日
  • 白痴

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    甘美であるが、腐っている。腐っているから、隠している。隠しているけど、持っている。
    そんな心持ちになる一冊でした。

    「いずこへ」で、スタンドの女性と関係でも持とうかというシーンで、なぜか痴人の愛のダンスホール帰りの電車を思い出しました。
    誰かに対して悪罵を浴びさせたいような、この世の不出来を蔑みたいような、そんな気持ちだったのかと考えてしまいました。

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    2021年12月18日
  • 桜の森の満開の下(乙女の本棚)

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    イラストに惹かれて読み始めた。美麗なイラストもあってか読みやすく、30分ほどで読めた。坂口安吾の作品を初めて読んだが、独特の世界観の中で桜の森に対する妖艶さと畏怖を感じた。
    桜=恐怖の対象という見方があることを初めて知った。

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    2021年10月23日
  • 不連続殺人事件

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    坂口安吾が初めて書いた推理小説で、雑誌連載された作品。連載時には読者への挑戦として真犯人当て懸賞金が掛けられたという(ちなみに正解者は4名で、安吾が自腹で支払ったそうだ)。

    歌川家という資産家の一族がいる。1年前に当主の多門の妻、梶子が亡くなり、その法事を行うことになる。
    多門とは旧知であり、その息子の一馬とも友人である作家の「私」(矢代)は、一馬に頼まれて、歌川家で一夏を過ごすことになる。「私」の妻・京子は、一馬の異母妹である加代子と旧友であったため、病気の彼女の無聊を慰めてやってほしいというのだ。
    一方、一馬は妙な手紙を受け取っていた。
    お梶さまは誰に殺されたか。
    すべては一周忌に終わる

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    2021年10月07日
  • 不連続殺人事件

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    (あらすじ)
    作家の矢代寸兵は親友の詩人・歌川一馬の招待で山奥の豪邸で一夏過ごす事になる。一馬の実家は酒造業を営む大地主で大富豪。一馬の父・多門はやり手なだけに女関係も派手で、矢代の妻・京子も何を隠そうかつて多門の愛人だった。

    そこに招かれたのは作家、劇作家、画家、女優など個性豊か、というよりクセの強い面々。おまけに一馬の妹・珠緒はその中の2,3人を手玉に取るし、一馬の元妻の秋子や現在の妻・あやかの元同棲相手の土居など複雑な人間関係が絡んでいる。

    そんな中、次々と殺人が起こる。
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    昭和22年が物語の舞台。古いけど江戸川乱歩や横溝正史のようなおどろおどろしさは

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    2021年08月29日
  • 不連続殺人事件

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    坂口安吾が推理小説も書いていたことを意外に思い、興味を持ったので購入。
    犯人になりそうな登場人物が多く、それぞれ複雑な人間関係(特に男女の)があるものの、次々殺されどんどん人数が絞り込まれていく。それでも真犯人がなかなかわからない。
    事件の犯人やトリックは、種明かしされてみると特別驚くものではないかもしれないが、様々な人物とその表向きの人間関係にとらわれていた自分は、終盤までそれに気づかなかった。

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    2021年07月31日
  • 復員殺人事件

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    坂口安吾の未完作品を高木彬光が完成させたもの。
    こういうのは初めて読んだので、どうなるのかドキドキしましたが、途中から作者が変わってる割にはうまいこと終わったのかな?と。

    でも坂口安吾ならどんな風に終わらせたのか、終わるつもりだったのか。一応犯人も分かってるのに、返って気になる作品となりました。

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    2021年07月11日