坂口安吾のレビュー一覧
-
購入済み
戦後すぐのお話
数編の「人生相談」の形を取った短編からなる作品である。戦後すぐだから男女同権の話はそれなりに新鮮味があったのだろうな。この話は隔世の趣がある。戦争に関する話、天皇制に関する話は、戦後スグだけに迫力 切迫感がある。しかし、戦後70年以上も経ってしまった今、読んで感銘を受けるかというと、ピンとこない というのが実感である。
-
購入済み
70年前の本だが
70年前の本だがそれほど古さを感じさせない。主人たち夫婦の考え方や言動、生活苦や浮気 など新聞への投書をSNSにするなど小道具をちょっと入れ替えればそのまま現代でも通用する話である。ただいかにもユーモラスに書こうとしている作者の衒い 作り物感がどうにも鼻につく。
-
購入済み
象徴的な寓話
日本の古い伝承 言い伝えの形を借りた幻想的な物語である。残虐さを持ったサイコパス的なヒロインの存在が同じ作者の『桜の森の満開の下』と通じるものがある。象徴的な寓話であるだけに様々な解釈が可能とは思うが、私はそのまま素直に読んだ。
-
購入済み
戦中戦後の女たちの話
全編、主人公ヒロインの女性の独白で描きあげられた作品である。戦中戦後の女たちの戦争や貧乏に負けないたくましい生き方が印象的である。東京大空襲の話も、淡々と書いているだけに逆にその惨状が印象に残る。作者坂口安吾の語り口の上手さ 女性心理描写の巧みさに感銘を受ける。
-
購入済み
斎藤道三評伝
坂口安吾による斎藤道三の短い評伝である。同じ坂口安吾が書いた「織田信長」と対になる作品で語り口や内容も非常によく似ている。ともに当時としては珍しい合理的精神の持ち主であったようだ。同じ斎藤道三を題材として描いた司馬遼太郎の「国盗り物語」と比較して読むのもなかなかに面白い。
-
Posted by ブクログ
作者の青春は芥川の家にありました。
彼の家で毎日の様に翻訳に明け暮れる日々。
元々作者は翻訳が好きではなかったようで、だから主題が暗い青春なのかと冒頭で解釈しましたがそんなに単純なものではなかったようです。
「青春は絶望する。なぜなら大きな希望がある。少年の希望は自在で、王者にも天才にも自ら化して夢と現実の区別がないが、青春の希望の裏には
、限定された自我がある。我が力量の限界に自覚があり、希望に足元が失はれてゐる」
青春の理想は大きく手に届かないところにある為に絶望する。
少年の頃は空想でどんなものにでもなれるが青年になると希望を持ってもそこに自分があり、己の出来る限界が分かるようにな -
購入済み
エンタメもの
坂口安吾の作品の中でも気楽に読めるエンタメものである。勝海舟が世間に流布しているイメージと違ってとぼけ役を演じているところが面白い。連続ものシリーズものに特有の毎回同じの定形パターンが続くが、それなりに楽しめる。
-
Posted by ブクログ
①白痴
主人公は、死ぬかもしれないと思うことで生きていることを感じ、白痴の女を肉の塊と呼んですすんで愛することを恐れている。臆病だなー。結局死への恐怖を抱いている。でもそんなこと気にしない(気にできない?)白痴の女をやれやれ、って見下しつつもどこか癒しだったり愛情を見出してるんじゃないか。
白痴って現代ことばに置き換えると何になるだろう。軽く言えばメンヘラかな。チキンとメンヘラの風変わりな生活。
②女体
傷つく、いけない、と思っていても素子を本能的に求める谷村と、彼の全てを愛し身を尽くすことすらも愛する素子。純愛だなぁ、二人の夜の遊びは情欲のぶつけ合いでなく愛の確かめ合いのような感覚なので -
Posted by ブクログ
どんなに世界に呼びかけても世界は応答をせず、救いやチートも与えてくれない。それが徹底的にわかってる深い絶望。安吾の描くこの絶望はなぜか清々しいものが感じられて、人生なんてそんなもんだと悲嘆した心に快い風が吹き抜けるような気分になる。
個人的に「二流の人」と「紫大納言」はそれを感じて本書のなかではお気に入りの部類でした。
黒田官兵衛/如水のイメージは戦国BASARAのせいで運のない男という感じなんだけれども、二流の人の黒田如水もやはり天運に恵まれない男という風に思う。天下への気力や智力をもっていながら、天下に挑む挑戦権すら手に入らなかった。もう本当に茶番としか思えないが、その姿は秀忠が感じるよ -
Posted by ブクログ
長者の美しい娘のために弥勒を彫ることとなった、馬のように耳が長い仏師の青年の話。
彼が、弱冠13歳の夜長ヒメの闇深いサイコパスっぷりに振り回される姿は、悲惨でありながらもなぜかそこに愛おしさを覚える。
ヒメを憎み恐れながらも離れられない。彼女は彼女で、自分が彼に呪われていることを知りながらも処刑したりなどしない。
そんな歪な関係を築く二人はついに……。ヒメはただどこまでもずっとヒメらしいままで、勇ましさ、芯の強さすら感じた。
「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。」
彩鮮やかでファンシーな表紙からは想像もできない話……と思ったけれど、よくよく見たら上から無数の蛇が吊るされてい