坂口安吾のレビュー一覧
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読んでよかったと心底思えた。彼の言葉には全て噛み砕かれた理由があった。左翼思想でありながらも、決して伝統自体は否定していない。彼が言っていたのは、何も考えず古くからあるものが正しいと思い込み生きることへの批判だった。このように個人的には腑に落ちるようなことが多々あり今まで言語化出来なかった自分の心のモヤモヤが晴れた気がした。
戦後の日本は特攻隊故なのかやはりどこか"死"に対する美徳精神のようなものがあったのだろう。ただ、坂口安吾は自殺はしょうもないという。この彼の芯の強さとそこにある悲しみにものすごく胸を打たれた。
限度を知ること。これは現代日本においても学習で得るべき重要なことだと思う。
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これを読むと敗戦直後の日本にタイムスリップします。
読んだその日から私のバイブルになりました。とりあえず生きろ!とこの作品で坂口安吾はずっと言っています。口悪いのにめちゃくちゃ頭良くて、器デカいのに鬱で、なんかとても魅力的な人物でした。
まんが版もあるので難しくて読む気失せそうという方はまんが版から入るとエッセンスが分かりやすいです。私も最初はまんが版で読みました。墜落論、続墜落論と2つで一つの作品と思います。
「不良少年とキリスト」では友人だった太宰治の死を受けて悔しい気持ちが感情のままに綴られているようで涙が出ました。ここでも、「自殺なんてするなよ、俺はお前の分まで生き抜いてやるからな!」と。
坂口安吾のエッセイは難しい表現も多いのですが時々すごく感情的でそこがとても刺さるのです。 -
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その時代の
現在では国語の教科書の中に偉そうな顔をして座っている太宰治や芥川龍之介、そして小林秀雄や志賀直哉が、現役で良い点も悪い点も世に見せながら、いきいきと活動していた時代の話である。特に同じ匂いのする作家 破滅型 無頼派ということなのだろうが、太宰治に対しての論評が質量ともに多い。なるほどなと思わせるところがある。
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二十歳のときの自伝
無頼派の呼び名の通り日常性が破綻していた坂口安吾が、二十歳のとき教師をやっていたと知って驚いた。およそ子供を教え育てることなどできないと思われる経歴だからである。教員生活を割合淡々と描いているが、生徒への考察や生徒の個性特徴に合わせた接し方には、100年近く経った現在でも参考になるような気がする。
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狂気と幻想
梶井基次郎に 桜の樹の下には という好短編があるが、満開の桜には人々を狂気に誘う何かがあるような気がする。この作品も様々な葛藤の原因が満開の桜の木であり、最後にその桜とともに消えてしまう。素直に読めば 悪女に翻弄された愚かな男の話であるが、狂気と幻想を含んで印象的な作品になっている。
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「堕落させたくないもの程、益(ますます)堕落させたいのです。」
美しい顔をした悪魔はこう言って、涙を流した。
美しいものはそのままにして愛でたい、という思いはあるのに、それを汚してしまいたいと思う己の醜さに悪魔は涙した。悪魔は、人を堕落させるのが仕事なのだろうから、そう思い悩んでしまう辺りが悪魔に似つかわしくなく、哀れんであげたい気持ちになった。
大切にしたいけど、悲しませたい。
清くいてほしいと思うけれど、真っ黒にしたい。
この欲望はどこから来るのだろう。
占有したい感覚、所有して支配したい気持ちは、どうして生まれてくるのだろう。
どうして、美しいものほど、汚したくなるのだろう。
多分、それは、自分を汚れたものだと心のどこかで思っているから。美しいものを妬ましく思っているから。
プライドが高くて自己肯定感低めの私と、この悪魔はシンクロするところがある。
自分より優れているものは、そのまま清く気高くいてもらいたい。だけれど、引きずり下ろして、結局自分と同じ場所の人だったと思って安心感を得たい思いも持ち合わせている。
そして、自分が引きずり下ろしたという、自分の影響力に優越感を感じたくもある。
毒された相手が回復しようものなら、嬉しい反面、より多くの苦しみを与えて堕落させたいと思ったりもする。
自分に満足していれば、そんな酷いことはしない。
でも、誰かに愛されたくて、かまってほしくて、仕方なくそうしてしまうこともあるのも、分かる気がする。
勿論讃えることはできないけれど、こういう矛盾や葛藤が人間らしさなのだと思う。だから真っ向から否定はしたくない。
悪魔も人間も、自分は醜いと思って涙できるのなら、醜くなんかなく、寧ろ美しい部類に入れるという考え方もありそうだ。
湧き上がる気持ちを無理に矯正しようとするのではなくて、自分を含めた悩める人に対し、手を差しのべて、理解しようとする人になりたいなと思った。 -
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読み始めて、昔、犯人当ての懸賞キャンペーンをやった推理小説があった、ということを思い出した。この本だったのか。合間合間に、読者を煽る坂口安吾のコメントが挟まれていて面白い。
そういうわけで、自分も犯人当てしながら読んで、当てました!ふふん。
推理小説がごまんと溢れる令和においては、そんなに物珍しいトリックではないのかもしれないけど、たぶん日本の推理小説黎明期のこの時期においては、一級の推理小説なんだなと思った。もちろん、今読んでもとても面白い。解説まで読んで、この面白さは、ただトリックや事件がミステリアスな魅力をはらんでいるからだけじゃなくて、人物がひとりひとり際立って魅力的なのだ。だから、人間が引き起こしたミステリーとして、心理的な面白さがある。坂口安吾もそれでこそミステリーだと言っていたそうだ。
一緒に掲載されていた短編「アンゴウ」もとてもよかった。これもやっぱり、一人の男の心理をしっかりと捉えていて、読者にその視点から真実に辿り着かせる構成になってることによって、最後に辿り着く真実に胸をハッとつかれる。 -
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時代を超えた科学的精神
坂口安吾による織田信長への短い評伝である。全体の構成はこれと言って整っていない。思いつく都度、順不同で書き散らしている感じ。従って未完であっても気にならない。書いてある出来事は当時史実と信じられていた伝統的なものであるが、その時の信長の精神の評価は時代を超えて現代でも十分に通用する。印象的な言葉が数多くある。ウヌボレと同量の怖れを持っていた とかである。何よりも印象的なのは、「時代を超えた科学的精神」を持っていた というところである。
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爽快な批評
作者坂口安吾が世間の凡百の日本文化論 芸術論を非難する。しかし、全面否定するのではなく、良いものは良い と自らの感性に托んで評価している。読んでいて実に気持ちの良い批評である。同時代人の難解 晦渋な小林秀雄と比べてみても、より一層現代の感性にあっているような気がする。