坂口安吾のレビュー一覧

  • 堕落論 アニメカバー版

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    読んでよかったと心底思えた。彼の言葉には全て噛み砕かれた理由があった。左翼思想でありながらも、決して伝統自体は否定していない。彼が言っていたのは、何も考えず古くからあるものが正しいと思い込み生きることへの批判だった。このように個人的には腑に落ちるようなことが多々あり今まで言語化出来なかった自分の心のモヤモヤが晴れた気がした。
    戦後の日本は特攻隊故なのかやはりどこか"死"に対する美徳精神のようなものがあったのだろう。ただ、坂口安吾は自殺はしょうもないという。この彼の芯の強さとそこにある悲しみにものすごく胸を打たれた。
    限度を知ること。これは現代日本においても学習で得るべき重要なことだと思う。

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    2025年01月27日
  • 桜の森の満開の下(乙女の本棚)

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    森見登美彦と文スト経由で坂口安吾、初めて読みました。『桜の木の下には死体が埋まっている』イメージはあったものの、予想を超える恐ろしい話だった。ラストが幻想的でとても好き。タイトルもいいし、ちなんでピンクが基調なのもよかった。イラストがいいのはもちろん、このフォント正解。文字がうっすらピンクだったり、黒や赤のページとか、薄気味悪さと綺麗さが表裏一体の別世界にいるみたいだった。
    乙女の本棚シリーズいいですね。

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    2025年01月15日
  • 堕落論 アニメカバー版

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    これを読むと敗戦直後の日本にタイムスリップします。
    読んだその日から私のバイブルになりました。とりあえず生きろ!とこの作品で坂口安吾はずっと言っています。口悪いのにめちゃくちゃ頭良くて、器デカいのに鬱で、なんかとても魅力的な人物でした。
    まんが版もあるので難しくて読む気失せそうという方はまんが版から入るとエッセンスが分かりやすいです。私も最初はまんが版で読みました。墜落論、続墜落論と2つで一つの作品と思います。
    「不良少年とキリスト」では友人だった太宰治の死を受けて悔しい気持ちが感情のままに綴られているようで涙が出ました。ここでも、「自殺なんてするなよ、俺はお前の分まで生き抜いてやるからな!」と。
    坂口安吾のエッセイは難しい表現も多いのですが時々すごく感情的でそこがとても刺さるのです。

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    2024年12月19日
  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    妖しげな姫様(?)の絵が好みでジャケ買い。近代文学史に名を残す文豪たちによる怪作集。「桜の森の満開の下」「芋虫」「夢十夜」は以前読んだことがありましたが、今回も変わらずおもしろくて好きな作品です。個人的には「白蟻」のいい意味で「何を読まされているんや…?」という気持ちになり印象的でした。

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    2024年11月05日
  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    改めて読むと、夏目漱石や江戸川乱歩の文章のなんと読みやすいことか。

    個人的には夢野久作の瓶詰地獄が、短編のなかに、考えさせられる構成の工夫があり、謎解きのようで面白かった。
    わかりやすさや時系列がシンプルな今時には見られない昨日だった。、

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    2024年10月27日
  • 白痴

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    自分に重ねて、主人公の反省がまるで自分のように感じるのを楽しんだ。欲情に埋もれる過程が生々しくも表現され、それが別れを際立たせる。

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    2024年10月05日
  • 不連続殺人事件 附・安吾探偵とそのライヴァルたち

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    作品そのものの面白さは説明するまでもないのでおいといて、不連続に関連して、安吾の友人達(ライバル探偵たち)の回想・証言が巻末におまけとしてくっついてきているのがすばらしい。戦中戦後の辺りのあの時代、安吾達が愉快に過ごしていた様子が語られており「不連続執筆に至った安吾」の話が堪能できる。
    また、この不連続関係者に特化した関連年表も凄いですね。あちこちの書簡から引用してきて、当時の時系列みたいなのがよく分かる。

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    2024年10月01日
  • 不良少年とキリスト

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    その時代の

    現在では国語の教科書の中に偉そうな顔をして座っている太宰治や芥川龍之介、そして小林秀雄や志賀直哉が、現役で良い点も悪い点も世に見せながら、いきいきと活動していた時代の話である。特に同じ匂いのする作家 破滅型 無頼派ということなのだろうが、太宰治に対しての論評が質量ともに多い。なるほどなと思わせるところがある。

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    2024年09月03日
  • 風と光と二十の私と

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    二十歳のときの自伝

    無頼派の呼び名の通り日常性が破綻していた坂口安吾が、二十歳のとき教師をやっていたと知って驚いた。およそ子供を教え育てることなどできないと思われる経歴だからである。教員生活を割合淡々と描いているが、生徒への考察や生徒の個性特徴に合わせた接し方には、100年近く経った現在でも参考になるような気がする。

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    2024年09月03日
  • 暗い青春

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    安吾の持つ心の切なさや虚無感、その原点に迫るような短編集。

    安吾自身の半生が綴られている短編がまとめられている本作。
    生まれて以来ずっと心に持ち続ける悲しさや寂しさ、そうした感情が心のなかで重くのしかかり切なくさせる感覚になりました。

    どの作品も読む人のなかにもある寂寥感の輪郭を浮き彫りにするような話の進め方で、自分がたまに感じる切なさと向き合うきっかけをくれるました。

    とくに『石の思い』は虚しさと向き合うことが心の故郷に帰ることになるような一種の安心感を与えてくれる作品でした。

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    2024年09月01日
  • 不連続殺人事件(新潮文庫)

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    昭和22年頃の作品ということで、今ならなんとも思わないかもしれないけど、当時だったら滅茶苦茶面白く読んだんじゃないかと思う。
    登場人物は多いけど、連載だったら次の号の発売まで、時系列でメモを取ったりしたはず。

    そういう意味では、文庫で通勤の合間に読み切ってしまう現代を少し勿体なく感じたりもする。立ち止まって深く考察したりもできないし…

    犯人当ての懸賞もあったので、年代を考慮して評価を高くした。

    ちなみに作品としては、合わせて収録されていた「アンゴウ」がとても良かった。

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    2024年08月24日
  • 桜の森の満開の下

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    狂気と幻想

    梶井基次郎に 桜の樹の下には という好短編があるが、満開の桜には人々を狂気に誘う何かがあるような気がする。この作品も様々な葛藤の原因が満開の桜の木であり、最後にその桜とともに消えてしまう。素直に読めば 悪女に翻弄された愚かな男の話であるが、狂気と幻想を含んで印象的な作品になっている。

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    2024年08月07日
  • 堕落論・日本文化私観 他22篇

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    エッセーとしてとても面白かった。
    共感できる部分が多く、わかるわあ、ってさせられたので、エッセーの文章としてのクオリティが高いんだと思う。
    基本的なスタンスとして、自分に正直であれ、曝け出せ、くだらない体裁が一番ゴミだ、っていう感じなので読んでて気持ちいいよね。元気が出る。

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    2024年07月28日
  • 白痴

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    戦争時代でのお話で、主人公の感情変化や周りの人々の人間的生々しさがひしひしと伝わる物語でした。戦争時の環境やそこでの人々の感情といい、戦争についてとても考えさせられ、爆弾が降り注ぐ街、生死を彷徨う中、主人公の感情に移入し手に汗握る思い出読み切りました。

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    2024年07月26日
  • 悪魔 乙女の本棚作品集

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    「堕落させたくないもの程、益(ますます)堕落させたいのです。」
    美しい顔をした悪魔はこう言って、涙を流した。

    美しいものはそのままにして愛でたい、という思いはあるのに、それを汚してしまいたいと思う己の醜さに悪魔は涙した。悪魔は、人を堕落させるのが仕事なのだろうから、そう思い悩んでしまう辺りが悪魔に似つかわしくなく、哀れんであげたい気持ちになった。

    大切にしたいけど、悲しませたい。
    清くいてほしいと思うけれど、真っ黒にしたい。

    この欲望はどこから来るのだろう。
    占有したい感覚、所有して支配したい気持ちは、どうして生まれてくるのだろう。
    どうして、美しいものほど、汚したくなるのだろう。

    多分、それは、自分を汚れたものだと心のどこかで思っているから。美しいものを妬ましく思っているから。

    プライドが高くて自己肯定感低めの私と、この悪魔はシンクロするところがある。

    自分より優れているものは、そのまま清く気高くいてもらいたい。だけれど、引きずり下ろして、結局自分と同じ場所の人だったと思って安心感を得たい思いも持ち合わせている。
    そして、自分が引きずり下ろしたという、自分の影響力に優越感を感じたくもある。
    毒された相手が回復しようものなら、嬉しい反面、より多くの苦しみを与えて堕落させたいと思ったりもする。

    自分に満足していれば、そんな酷いことはしない。
    でも、誰かに愛されたくて、かまってほしくて、仕方なくそうしてしまうこともあるのも、分かる気がする。

    勿論讃えることはできないけれど、こういう矛盾や葛藤が人間らしさなのだと思う。だから真っ向から否定はしたくない。

    悪魔も人間も、自分は醜いと思って涙できるのなら、醜くなんかなく、寧ろ美しい部類に入れるという考え方もありそうだ。

    湧き上がる気持ちを無理に矯正しようとするのではなくて、自分を含めた悩める人に対し、手を差しのべて、理解しようとする人になりたいなと思った。

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    2024年06月24日
  • 不連続殺人事件(新潮文庫)

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    読み始めて、昔、犯人当ての懸賞キャンペーンをやった推理小説があった、ということを思い出した。この本だったのか。合間合間に、読者を煽る坂口安吾のコメントが挟まれていて面白い。
    そういうわけで、自分も犯人当てしながら読んで、当てました!ふふん。
    推理小説がごまんと溢れる令和においては、そんなに物珍しいトリックではないのかもしれないけど、たぶん日本の推理小説黎明期のこの時期においては、一級の推理小説なんだなと思った。もちろん、今読んでもとても面白い。解説まで読んで、この面白さは、ただトリックや事件がミステリアスな魅力をはらんでいるからだけじゃなくて、人物がひとりひとり際立って魅力的なのだ。だから、人間が引き起こしたミステリーとして、心理的な面白さがある。坂口安吾もそれでこそミステリーだと言っていたそうだ。
    一緒に掲載されていた短編「アンゴウ」もとてもよかった。これもやっぱり、一人の男の心理をしっかりと捉えていて、読者にその視点から真実に辿り着かせる構成になってることによって、最後に辿り着く真実に胸をハッとつかれる。

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    2024年06月16日
  • 堕落論・日本文化私観 他22篇

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    自己啓発やら有名人の名言やら科学的にどうとやら
    上に向かっていこうぜっていう本が多い現代。
    それ自体は良いも悪いもないのだが、肉ばかり食ってないで魚も食わないとバランスが悪い。

    堕落論には、そうゆう役割もあると思うし、そうでなくとも単純に読み物として面白い。でもどう見ても野菜ではない内容である。

    戦争を経験しながら、多くの人とは違う視点で生活してきた著者の魅力が詰まっている。それでいて、これをこの時代に言ったのか。という一言に尽きる。何度も読み返したい。

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    2024年05月30日
  • 恋愛論(乙女の本棚)

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    今まで、色んな本や漫画で、困難な道とそうでない道があれば困難な道を選ぶ方が良い、と書いてあっても、意味がわからなかったが、
    本著にあるように(あくまで私の理解だが)、困難な道と無難な道であれば困難な道の方が乗り越え甲斐がある、という区分なら、理解できる。無難ではないのだから、凸と凹があって、刺激と刺激に伴うレスポンスがあるよなぁ。何もなければ何もないままだから。
    結局は何を求めるかだと思うけど、どうしても得たいことがあるなら、覚悟決めて無難な道は選ばないほうが善きにしろ悪きにしろレスポンスが得られると理解した。

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    2024年05月19日
  • 織田信長

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    時代を超えた科学的精神

    坂口安吾による織田信長への短い評伝である。全体の構成はこれと言って整っていない。思いつく都度、順不同で書き散らしている感じ。従って未完であっても気にならない。書いてある出来事は当時史実と信じられていた伝統的なものであるが、その時の信長の精神の評価は時代を超えて現代でも十分に通用する。印象的な言葉が数多くある。ウヌボレと同量の怖れを持っていた とかである。何よりも印象的なのは、「時代を超えた科学的精神」を持っていた というところである。

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    2024年05月03日
  • 日本文化私観

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    爽快な批評

    作者坂口安吾が世間の凡百の日本文化論 芸術論を非難する。しかし、全面否定するのではなく、良いものは良い と自らの感性に托んで評価している。読んでいて実に気持ちの良い批評である。同時代人の難解 晦渋な小林秀雄と比べてみても、より一層現代の感性にあっているような気がする。

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    2024年05月02日