坂口安吾のレビュー一覧
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ネタバレ『日本文化私観』
秀吉の駄々っ子精神の部分がいまいち理解できなかった。三十三間堂の太閤塀を実際に見ていないからということもあるだろうが、自分にはそれも金閣銀閣と同じように金持ちの道楽的なものと区別がつかない。両者ともにそれそのものに意味などなく、他者に対して威厳を示したいだけの俗物だったのではないかと思った。
文化を形成するのはあくまで人間だという考え方はとても的を得ていると思う。自分に置き換えると、確かに人から見られるのは過去に生み出した作品や過去の行動であるかもしれないが、「自分」というものはその作品ではなくてこの私自身であるということに改めて気付かされた。
日本文化私観は日本の西洋化を「 -
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ネタバレ(趣旨)
1. 人間は堕落する。そんな人間を戦闘にかりたてる為に、武人は武士道をあみだし、軍人政治家は天皇を担ぎ出した。
2. 敗戦後、天皇の絶対性は廃止され象徴化に変わり、武士道は滅びた。町に目をやれば、未亡人は新たな出逢いに胸を膨らませ、特攻隊の勇士は闇屋に転じている。
3. このように人間が堕落したのは戦争に負けたからではない。人間だから堕落したのだ。
4. しかし人間は困難には脆弱なため、堕落し切るには弱すぎる。弱いから統率を図るため結局また武士道や天皇を担ぎ出そうとするだろう。
5. 人間が本当の自身を発見するためには堕落し切ることが必要だ。これが自身を救うことにつながる。天 -
Posted by ブクログ
若い頃大好きだった安吾をひさしぶりに読む。
安吾は構成なんか考えない人だったから、長編はことごとく失敗しているし、短編だって、きちっとまとまっているわけではないのだが、何とも言えない魅力がある。
これは自伝的小説を集めた本だが、今の感覚で読むと、名前や場所など、今ならぼかしたり変えたりするところがそのまんまであることに驚く。当時の純文学は私小説が多かったとは言え、ここまでストレートに書かれては、身内や文壇仲間はともかく、小説家とは知らずに関わった一般人はたまらないな。今なら訴訟ものだ。伏見の下宿屋一家の話なんか、とんだプライバシーの侵害。(夫婦の下世話なところが面白いけどね。)
若い頃はそん