芥川龍之介のレビュー一覧
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陰鬱で不気味な羅生門。人生に詰んだ下人の心が行ったり来たりする。生きていくために盗人になろうか、どうしようか。(若いんだから、真っ当に働けよ、と思ったのは私だけではないはず)
羅生門の二階で罪深い老婆の悪行を見て、人の心を取り戻し正義を守ろうとする。
が、その老婆の言い訳を聞いて反転する。
コロコロ心変わりをしていくさまに、読んでる私も右往左往してしまう。
気持ちがひっくり返るのが面白い。そして最後は…。
「羅生門」は昔、読んだ記憶があるものの今イチ面白さがわからなかった。そして大人になった今、マイ芥川ブームで作品の読み直しを始めて改めて物語の深さに気づいている。どの作品も面白過ぎる。人の心 -
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『地獄変』は中学生くらいの頃に読んだんだけど今回読み直したら思ってたのと違った…多分『宇治拾遺』とごっちゃにしちゃってたんだな〜
解説に
『地獄変』の良秀は、他の思う通りの傑作を完成したが、しかしそのためには最愛の娘の生命を犠牲にするという残酷な所業をあえてした。絵を完成したのち、一たん道徳的な気もちに立ちかえると、くびれ死なざるを得なかったというところに、芥川の芸術家としての、また同時に人間としての、生き方なり、立脚地なりがあった。
って書いてあって、宇治拾遺の方も『地獄変』も「芸術と道徳の相剋・矛盾」が語られるイメージがあるんだけど『地獄変』はちょっと違う気がする。
確かに良秀は芸 -
Posted by ブクログ
『河童』・・・面白おかしく読み進めていたら、なんだか所々、重く暗くなってきて、後半は心がざわざわしてしまった。産まれるか否かを自分で決めることになっていること、また、産まれた時が老人で徐々に若返っている河童が、だから欲に囚われずに幸せだというのが印象的。
他の二篇も薄暗い話なのだけど、妙な綺麗さがあって良かった。
映画館でアクション映画を観た後の街中で、何か危険が迫っている気がしてしまう私。この本を読み終わったばかりの今、自分の作品の評価を死後に気にする河童と芥川龍之介が重なって、ここの私の感想が届いたら何か起こるんじゃ?とそわそわしている。
世界に入りすぎ(笑) -
Posted by ブクログ
主に地獄変の感想となります。
モデルとなる宇治拾遺物語は何となく知っている程度です。それを元に描かれた画師・良秀の芸術と狂気の紙一重の描写が重く思えました。
作品を生み出すため自身の愛情を込めた人物が犠牲となった際の良秀の情景描写で、人としての良心と芸術家としてのエゴが相反し、複雑に混ざりながら葛藤している様子が痛いほど伝わります。
その後、事象を経て描いている良秀の様子は忘我の状態と表現すべきか、神懸かり的な様子で描写されていました。その場面は読んでいて、ついに作品を生み出すために犠牲を厭わなく思ったのかと怖さを抱きました。その一方で、常人では到達できない所に辿り着いたのかとも思いました。 -
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今日3月4日は、半村良のご命日
龍ちゃんのレビューしている時では
ないのですが、龍ちゃんと仲良しは誰?論争に
どうしても参戦したくなってしまったのです
時は平安
事実とみなされる事は二つ
侍が死体で発見された事
結婚したばかりの嫁の行方がわからぬ事
この侍の死を巡る七つの証言や告白で小説と成す
検非違使に問われたるは
死体を発見した木樵
死ぬ前の夫婦を見た旅法師
侍を殺したと思われる盗人を捕らえた放免
不明の嫁の母親
そして盗人の自白
不明の嫁らしき女の清水寺での懺悔
殺された侍の死霊が巫女を通し告白
何回か読み直すたびに発見がある
そしてそれぞれが語る状況が見事に折り合わない
そ -
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悪魔の賭けと煙草の伝来を描いた「煙草と悪魔」、題の通りさまよえるユダヤ人当人の語った話を描いた「さまよえる猶太人」、「ろおれんぞ」と呼ばれる少年がキリスト教寺院を追われ薨るまでを描いた「奉教人の死」、悪の権化として単純に描かれがちな悪魔の奥行きを描く「るしへる」、「強い者に仕えたい」と考え、高名な王、王が恐れる悪魔を経て主上へとたどり着く山男の「きりしとほろ上人伝」、黒衣の観音像とそれに纏わる親子の祈りの話を描く「黒衣聖母」、キリスト教の伝来を阻害あるいは侵食しようとする日本の神々の攻防のさまを描く「神神の微笑」、大泥棒の恩返しと、更にその恩に報いる男の「報恩記」、洗礼を受けた少女と養父母の信