芥川龍之介のレビュー一覧
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店番の若い女性
店番の若い女性への観察が、微に入り細にわたっている。そして、観察者は彼女に対してずいぶんな思い入れがあるように感じられる。ところがしばらく店で彼女を見なかったら、今度は赤ん坊をつれて登場してきた。そして、恥じらっていた以前の面影はなく、強い母親になりきっていた。表題の「あばばばば」に主人公そして作者の哀惜の念が込められていると思う。
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寸鉄
おとぎ話や昔話を題材にして洒落た話やウイット アイロニーに満ちた作品にするというやり方は、多くの近代作家がやっているが、芥川龍之介もその代表的な作家である。イソップ物語の多くのエピソードの中からこのエピソードを拾い出し、寸鉄人を刺すような短文に仕上げている。
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平安時代、とある侍の死をめぐる短編。
死骸の発見者の木樵り、強盗を捕らえた放免、侍の妻の母親らの証言から始まるミステリ仕立てで面白かった。
また、捕らえられた強盗、侍の妻、侍の死霊によって語られる内容も三者三様の矛盾ばかりなため、殺害事件の真相は一切の不明。
藪の中ではほんとうには何が起こっていたのだろう?真犯人は誰なのだろう?と、謎が多くて闇深さがあり、とてもワクワクさせられるラストだった。
挿絵もたっぷりで、セリフ一文だけの頁も結構あってめちゃ贅沢。
芥川が地の文に書き添える『(皮肉なる微笑)(陰鬱なる興奮)(快活なる微笑)(昂然たる態度)(突然迸るごとき嘲笑)』とかが、なんか厨二っぽくて -
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懐かしい雰囲気
東京下町の典型として本所両国界隈を題材に描き出された、芥川龍之介のエッセイである。大正年間に明治時代や江戸時代の名残を「懐かしい雰囲気」と表現しているところが、いつの世も変わらない解雇のセンチメンタリズムを漂わせているところが面白い。令和時代の今日、本所両国界隈を歩けば、大正年間は愚か昭和時代の名残でも「懐かしい」という評価になるのだろうな。
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大人の童話である。
短編の名手 芥川龍之介の書いた大人の童話である。どの作品もひねり 皮肉が効いていてできの良いショートショートの味わいがある。とりわけ桃太郎は悪役と英雄の逆転に、幻想味を付け加えて出色の出来だと感じた。
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中学、高校時代に芥川龍之介を貪るように読んだ。
ほとんど文庫で読んだのだが、どうしても書簡集も読みたくて、全集の書簡集の巻も愛読した。
好きな作品はいくつもあるが、あまり取り上げられることのない、「袈裟と盛遠」(1918)に非常に感銘を受けた。
袈裟と盛遠、共に人の名前だ。
つまり、「トリスタンとイゾルデ」(「イゾルデとトリスタン」)と言ったようなタイトルだ。
袈裟は袈裟御前、女性の名前。
「盛遠」は、出家する前の文覚のことだ。
だから、袈裟は女性の名前と共に、後の盛遠の出家を象徴している。
文覚は、伊豆に流罪となった時に同じく伊豆に流されていた源頼朝と知り合う。
頼朝にその父義朝の髑髏を -
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文豪6名の最後を飾った作品を集めたもの。同じような趣旨で、デビュー作代表作を集めた「文豪誕生」も読んで出版社の策にとても共感している。
表装は今風というかアニメタッチな文豪が1人、芥川だろうかと想像する。
登場する6名の文豪、初めましての方もいて、読書の門扉が少し開けた気がする。
それでも好きになったかと言うとそこまでではないが、この点が点と合って線になっていくんだろうなと思う。
特に芥川龍之介はこの作品でちょっと興味をもった。そして梶井基次郎は檸檬の他に機会があって良かったと思う。
文豪死すも文豪誕生も、名前は知っているけどそこまでじゃないと言う人にはぴったり。機会があったら読んでみると良 -
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ネタバレ「羅生門」
主人公が、死人の髪を抜いている老婆を見つけた時は、自分の正義のもとに怒りを露わにしながら老婆を捕らえるが、その死人は罪人であり、こうなるのも仕方がないと老婆が説明すると、主人公は老婆の服を剥がして盗み逃げてしまう。正義の揺らぎがすごくわかりやすく描かれている作品だと思いました。
「鼻」
大きな鼻がコンプレックスの主人公がなんとかして鼻を小さくするも、依然として周囲から笑われる。そしてある日突然鼻がまた大きくなると主人公は安堵感を覚える。
人にはコンプレックスが大なり小なりあり、たとえそれが解消されてもコンプレックスは尽きない。と言うことを言いたかったのかなと思いました。