芥川龍之介のレビュー一覧
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芥川、晩年の作品。芥川の神経のすり減っていく様、精神のバランスが崩れていく様が描かれている。
産まれたばかりの自分の子を見て「何のためにこいつも生れて来たのだろう?」と思いそれをわざわざ書き残す深刻さといい、なぜこの人はいつも何かに打ちひしがれているのか。なぜこんなに罪悪感に駆られているのか。と正直度が過ぎており理解の範疇を超えていると思っていた。しかし、小林敏明氏の評論に或る「露出する神経」というワードがしっくりきて、腑に落ちた気がした。
小説というより彼の遺書のようで、重々しい内容だった。この精神状態を書き残せること事態が並々ではないからこそ、後世に伝えられる作品なのかなと感じた。 -
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ネタバレ表題作「杜子春」は幼い頃に読んだ記憶はありますが、今読むとより胸にくるものがありました。子供のころより、両親の死を近く感じるからかもしれません。
他の話で印象的だったのは「南京の基督」と「影」。あとは随筆も楽しく読みました。
「南京の基督」は娼婦、娼館が題材なわりにさすが芥川!と言わざるを得ない美しい文章で感嘆しました。夢物語のようで背景には暗澹たる現実が広がっている、でもそれに娼婦は気づくことなく朗らかに笑っているその対比がよかったです。
「影」が印象に残ったのは、私自身が乱歩が好きで、ミステリ小説に惹かれたからです。
ミステリとしては、あまり出来がいいとは言えないかもしれませんが…芥川が書くミステリという新鮮さがよかったです。 -
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芥川のミステリ風の作品というと「藪の中」や「開化の殺人」が挙がると思うのですが、「未定稿」を収録してくれたのが嬉しいです。この魅力的な物語の冒頭の書き方、さすが探偵小説も読んでいた芥川と感心しますし、『新青年』辺りに掲載されてたんじゃ?と思わせる完璧な探偵モノのお作法にのっとった設定で、ほんとうにこの冒頭部分だけで続きが書かれていない未定稿…ってのが残念な作品で。
他には、「奇怪な再会」「妙な話」「報恩記」辺りも面白くて私の好きな作品です。
あとがきにある通り、このラインナップで、とある事情により「奉教人の死」が収録できなかったのは残念です。あれも面白い良い作品なので、本当はここに収録される筈だったんだな、と思いながら併せて読むのオススメです。(青空文庫で読めますので) -
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偸盗は黒澤明が映画にした藪の中(映画のタイトルは羅生門)よりも、よほど活劇にしたてあげられる作品ではないか。登場人物の悪役がみな生き生きしているし、荒廃した京都の描写も羅生門に匹敵する。ぜひ映画化してほしい。
地獄変は高校の教科書以来だが、絵師の良秀が絵の題材にしたくて好んで牛車に載った娘を焼き殺したのでなく、大殿からの命令で見たものしか描けない絵師なのでやむなく娘を火にかけたものの、その有り様を見ているときに恍惚を感じてしまったという作品だったのですね。竜は嘘から出た実という寓話、藪の中はタイトルとおりの事象を読者としては受け入れるしかない技巧の極致のような作品、六の宮の姫君は男性に捨てられるまま何もできないまま衰退してしまうお嬢様の話ということでそういうことも昔はあったのだろうねという次元の話。ということで、意外にも著者が悪作品とののしる偸盗が一番きにいりました。 -
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ネタバレ読みやすかったし面白かった!芥川が書いたのは今からおよそ100年前?人間の普遍性を感じた。
ひとこと感想
⚪︎大川の水…日常のほんの一部の話をこんなにも豊かに書くことのできる表現力おそるべし。
⚪︎羅生門…アイデンティティとは
⚪︎鼻…コンプレックスを受け入れることの大切さ
⚪︎芋粥…人は簡単に手に入れられるものには惹かれない、努力して手に入れられるものに憧れる
⚪︎地獄変…欲望によって理性のコントロールは効かなくなる
⚪︎蜘蛛の系…自分だけ徳をすることを望むと返り討ちにあう
⚪︎奉教人の死…偏見という悪
⚪︎蜜柑…一瞬で人を判断してはいけない、一瞬で人の評価は変わる
⚪︎舞踏会…儚くて美しい恋。実は有名人だった、みたいなオチも現代っぽい
⚪︎秋…これが一番現代ぽかった。姉妹で同じ人を好きになった行く末。俊吉は妹と結婚するが結局愛し合っているのは姉。すごく切なくて、美しい、、、
⚪︎藪の中…みんな自分を主人公にしたがっている?何が真相なのか、芥川は何を伝えたかったのか全然わからない。
⚪︎トロッコ…はじめてのおつかい、冒険のような感情が鮮明に書かれている -
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芥川龍之介、最晩年の作品集。
「大導寺信輔の半生」という、冒頭の小説の書出しが好きだ。自叙伝的なものだと思うのだが、「大導寺信輔の生まれたのは本所の回向院の近所だった。彼の記憶に残っているものに美しい町は一つもなかった。…」で始まり、生まれた辺りには、穴蔵大工や古道具屋や泥濘や大溝ばかりで美しいものが何もなかったにもかかわらず、信輔は物心ついた時からその町を愛していたこと、毎朝、父親と家の近所へ散歩に行ったことが幸福だったことが書かれている。
美しくないと断言しているのに、幼い時から愛着を持った町は、回想することが美しい。映画の回想シーンのように、淡い光に包まれている感じがする。
標題作の一つ、「河童」は登山中に河童を発見し、追いかけた所、河童の国に迷い混んだ男の話。目が覚めると河童の医者が彼を診察しており、以外にも彼は河童の国で好待遇で歓迎される。河童の国にも医者も社長も技術者や詩人も音楽家も哲学者もいる。人間の暮らしと殆ど変わらないのだが、河童の国では、雌が気にいった雄を見るとなりふり構わず、追いかけて飛びつくことなど、人間と異なる部分もある。
人間より技術が進んでいるので、次々新しい機械が発明され、工場の生産が上がると要らなくなった労働者は解雇されるどころか、殺され、食肉にされてしまうなど、残酷だが河童からすると「合理的」らしい面もある。解説にスウィフトの「ガリバー旅行記」のようなジャンルに属する作品らしいが、なるほど、異世界から人間界を風刺、批判しているような作品である。芥川龍之介という人はこういう作品も書いていたのだ。面白かった。
「或阿呆の一生」は多分死を決意し、作品を友人の久米正雄氏に託している。自叙伝みたいなものらしいが、詩的で私には分かりにくかった。
短い生涯だったが、年代によって作品の色が随分変わったいるのだろう。今度は若い時の作品を読もう。
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ネタバレこの短編集で印象に残った作品は、2つある。「秋」と「杜子春」だ。
「秋」
芥川龍之介の作品としては、珍しいストーリーであった。愛人を妹に譲り、自分は文学の才能を犠牲にする。自己犠牲は、読者を辛い気持ちにさせる。しかし、この手の話はドラマチックなところもあり、何となく共感できてしまうところに惹かれてしまった。
「杜子春」
「蜘蛛の糸」と共に名作と言われる作品である。小学生以来に読んだが、新たな気持ちで読むことができた。人は薄情だと言う杜子春の気持ちは、痛いほど分かってしまった。人より優れたものを持っている時は人気者になれるし、それが失くなれば離れていく…上辺だけの付き合いではなく本当の友達を見つける時、そういうやり方で見つけたりするものだ。人間らしく正直な暮らしをしたいと願った杜子春に、一軒の家と畑という最後で最高の贈り物を渡した鉄冠子は素敵な仙人だと思った。