芥川龍之介のレビュー一覧
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現実的な生々しい小説を読んでいて、目を背けたいぐらい頭が混乱していたので、河童のようなある意味、設定が人間世界と逆の話を読むと、風刺とは思えないぐらいホッとした気分だった。勿論意味を全てわかって読んでいたわけではないが、河童と言う、人間世界に似ても似つかない、不合理な世界が日本でも何となく起こっていたことが垣間見えた。河童の世界でも、色んな小説家や哲学者が頻用されていたのが面白い。
或る阿呆の一生、歯車と3作品全て読んだ。
河童を読むと、そこまで辛い描写は出てこなくて、児童が読んでも飲み込めるような作品だと思う、
或る阿呆の一生から自伝的要素が強くなっていき、
歯車では最後のシーンで下界か -
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芥川龍之介は「鼻」や「羅生門」など平安に材を取った作品が知られているけれど、江戸から明治を舞台にした作品も魅力的です。
「或日の大石内蔵助」は討入後、肥後細川家にお預かりになった大石の心理に新しい解釈を与えるもの。「枯野抄」は芭蕉臨終の場に集まった弟子たちの心理を丹念に描いた作品。
いずれも松本清張の初期犯罪小説を読むように人間心理の複雑さ、玄妙さに触れ得た気持ちにしてくれます。
表題作の「戯作三昧」は、江戸天保期に活躍した戯作者、南総里見八犬伝の作者で知られる滝沢馬琴が主人公。日々の社交、自作への世間の毀誉褒貶、生活にまつわる様々な気がかりを描き出しながら、創作に打ち込む主人公に、芥川自 -
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子供の頃の記憶がふと蘇る時がある。それは印象的なものの時も何気ないものの時もある。時間を経るにつれて忘れていく一方で、記憶に残り続けている出来事は宝物である。思い出は、写真などで形として残さなくても、意外と脳裏に焼き付いているものです。写真を撮ることに夢中になって大切な風景も人物も見失っては勿体ないですよ。記憶はふとした時に蘇るはずです。
良平は過去の焦りや心細さや絶望を今の疲弊した状況から思い出したのです。そんな風に、過去と似通った体験をすることで、当時の記憶が引き起こされるという現象に共鳴しました。 -
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ネタバレ読み応えすごい。
最初はつまんないと思った。或る日の大石内蔵之助(最初の話)が読みづらい。
その後の戯作三昧からおもしろい!
開化の殺人からいくつか、登場人物が被ってるみたいだけど前の話で経験してるはずの衝撃をスルーしてて、なんか不思議な感じで良かった。
雛はお兄ちゃんと母の関係に切なくなった。お父さんも本当は雛売りたくないんやな。
あばばばばは、娘さんの変化がわかりやすくて、恋ではない視線でその変化を冷静に捉えてるのが新鮮で良かった。
一塊の土はお民さんが先に亡くなるとは思ってなくて、お住さん可愛そう、家事全部やるのもおばあさんにはきついだろうなぁと思ったけど、それを抜け出せないつらい -
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芥川は、小説から構造を廃すべきと言ったわけではない
ただ小説の前提には作家の個性がなければならず
作家は、その自己表現を面白く読ませるための技法として
構造を用いなければならない
もちろんまた一方では個性が技法となり
二代目○○、三代目○○と積み重ねられていきもするわけだが
それを扱って作品とするのはあくまでも個人だ
そうでなくては、詩はスローガンに
小説はプロパガンダに堕していくしかないだろう
それに対する谷崎は
東京と大阪の文化性の違いなど挙げて
要は受け手の個性が作品を完成させるという立場を取っているようだ
もちろんそれもひとつのあり得べき解釈である
しかしやがては
スノビスト達の鼻持 -
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侏儒の言葉には覚えておきたい言葉も惹かれるフレーズも多くあった。生前に掲載されたものと遺稿に分かれるが、どちらを読んでも文学者としての目指すところや考え方に触れることができるように思えたし、これを読んだ後にその作者の自殺について考えるとなんとなく頷けてしまうのが正直なところ。
芥川のイエス論である西方の人は、イエス・キリストにも聖書についても知識が乏しい私にはいまいちぴんとこなかった。聖書からの引用も多いし、説いてるのがイエス・キリストの話なので。かといって、当分は聖書を読む気もないのでこのままで放置に決定。またいつか、聖書を読めた際にでも読み直してみたい。 -
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以前、映画化されたオムニバス作品の原作。玉石混交の短編集。
『BUNGO 文豪短編傑作選』角川文庫
鈴木梅太郎が脚気の原因がビタミンB1の不足だと特定し、年間死者数万人と言われた国民病を劇的に改善したのに、陸軍軍医総監の森鴎外はエリート根性から百姓学者が何を言うかと馬鹿にしてそれを取り入れなかったため、陸軍兵士はバタバタ死んだ。というエピソードをかつて知ったばかりに鴎外は読まず嫌いだったので、この中に所収の『高瀬舟』が初鴎外だった。生き方は共感できないが、作品は実に面白かった。
弟殺しの罪で島流しになる罪人を護送中の同心は、どうしてもその男が肉親を手にかけるような罪人に見えなかった。男 -
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芋粥がとても良い。マリッジブルーの話と解釈した。人間は目標の達成という事実よりも目標を達成する努力や憧れなどプロセスを好む。夢が叶いそうになる時の一瞬の戸惑いはよくわかる。鼻は素晴らしい。コンプレックスという人間には切っても切り離せない問題をうまくついている。アイデンティティというものは、欠点も含めて存在している。その人にとってどんなに嫌な体の一部や考え方の癖などは、実はなくなってしまうと意外に寂しいものであったりするのである。
ひょっとこ。これは、仮面をつけている間に、元の自分に戻れなくなってしまった人間の話である。最近、ジキルとハイドを読んだせいか、なんだか近いものを感じた。人間の内面を感