読書感想文に、パッと読めて面白い本を僕に薦めて欲しいと息子に言われて手渡したこの本。
どれ私も久々に読むか、と読み出せば止まらない。
100年以上前に書かれたはずなのに読みやすい。
「蜘蛛の糸」:独善的な振る舞いをする人の成れの果てをみた。
「羅生門」:生か、死かの極限の2択を迫られたときの人間が描かれる。そういった極限においては善悪の定義など無意味に等しいのかも。平和を享受してきた私たちには想像し難いものがある。高校の時、何を思いながら読んだんやろ。
「鼻」:自分より常に不幸でいて欲しい存在として、内供は周囲から認識されていたという残酷な真実。人の悪意というか無意識に見下す気持ち、それに翻弄される内供。今も昔も人の本質は変わっていない。後味が悪かった。
「地獄変」:まさに地獄絵図。大殿様と良秀、2人の男のエゴイズムに命を弄ばれた娘が不憫でならなくなった。せめて天国に召してやってくれ。
それにしても娘を丸焼きにされた衝撃や憎しみよりも、それを目に焼き付けてきっちり描きたい欲が勝ってしまうだなんて。何かを究めることは何かを犠牲にしなければ成し得ないのか?
きっとラストに良秀が自殺したのも、娘を喪ったからではなく「もう地獄変を超える作品を描けない」からに違いない。
「藪の中」:コナンくんに言わせれば、真実はいつも一つなはずなのに、当事者それぞれに語る内容が違う不思議。見る人によって真実や物事は変わるということ?あるいは自分に都合よく解釈してしまう無意識のフィルターみたいなものが誰しもあるよ、っていう教え?
真相は藪の中、という言葉はこの作品由来の言葉と知った。
「秋」:切な。
これを機に芥川先生の作品をもっと読みたくなった。し、どのような生涯であったかが気になって調べたら、先生の恋文に辿り着いた。
とても素敵な文章を書く方でした。