芥川龍之介のレビュー一覧
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近代日本文学の面白さのひとつが、東洋と西洋の文化のぶつかり合い、そこから発するところを知ること。
鷗外や漱石もその文脈から読み解くと面白いし、そのスタンスは各々特徴がある。
また、白樺派や社会主義者もキリスト教の影響を受けているが、宗教として定着したかは疑わしい。
芥川龍之介のこの短編集は上記にある時代背景から、テーマを切支丹物とし描く。ただ、キリスト教の良し悪しきを問うものではなく、且つ一方的な視点から描いているものでもない。読者側の解釈が求められるので、それが面白い。
芥川龍之介自身は、聖書を常に身近に置いていたようだ。彼にとってのキリスト教がどのような位置づけにあったのか、これはもう -
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ネタバレ妖精や神話が好きだったので、より面白く読めた。物語に出てきた紅帽子の精霊が特に印象に残った。アイルランドの赤帽子と同じ存在なら、悪い妖精なので老人は騙されたのかもしれない。
そもそも老人が求めたような永遠の命というものはなくて、生命や自然の美しさがあり、それらが最盛の状態である事を春の心臓と表現し、永遠と続く生命の繋がりや重なりを現しているのかもと思った。
戸口を葉っぱでふさいでいた老人はその美しさを見ることもなく死に、夢見た青春もなく寂しく終わっていく。それに対して少年は脈々と続く生命の美しさを感じ、答えを見つけた。
願望を追い求めすぎて閉じ篭もると、答えが見えなくなるのかもしれない。日々に -
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日本人の国民的図書である。大正を代表する小説家である芥川龍之介の短編集だ。その中でも最もポピュラーな「羅生門・鼻」を読んだ。この本には「羅生門」「鼻」「芋粥」「好色」「邪宗門」「俊寛」などが載っている。数ある短編集の中でも、有名どころをまとめた作品だ。まあ邪宗門と俊寛はちゃんと読んだわけじゃないのだが、別にいいだろう。今昔物語という作品がベースになっている作品ばかりなので、そっちを知らないと楽しめないかと思ったのだが、別にそんなことはなかった。タイトルにもなっている羅生門と鼻は本当に皮肉が効いていて面白い。ただ流石大正の作品というだけあって、言葉遣いが今と若干違うが、かといって読みづらいような
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ネタバレ短い絵本むきの話がたくさん載っており、起承転結がくっきりしていて読みやすい。芥川龍之介の文章は本当に読みやすい。
「蜘蛛の糸」あまりにも有名な話なので、芥川の作品とは知らなかった(仏典やロシア版もあるようだけど)。
「杜子春」別の話と勘違いしていた。仙人になるための試練の話だけど、「封神演義」を彷彿とさせた。
「猿蟹合戦」童話の後、裁判になったらどうなるか、という話。「昔話法廷」と同じ形式。
「白」主人公の犬自体は不幸だけど、人助けをする伝説の犬みたいになってる!
巻末に芥川の人生の概要が載っている。子供の頃から読書が好きで本当に利発なようだけど、母親も義兄もそして芥川も精神を病んでいる様子 -
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何十年ぶりに芥川を手に取ってみた。
まずは、芥川龍之介の写真。ここまで印象にのこる作家も珍しいが、それほど、心に残る何かがあるのだともおもう。
羅生門の人の中にある曖昧な善悪の境界、生と死の混在する現実は、妙な納得を強制的にさせられる感じ。
鼻と芋粥も、望んだものが手に入ることが、自分自身の中の何かを失くすことでもあるという矛盾の可能性を見せてくれる。
地獄変は、純粋さと、美しさと、悪意とが、人間臭さのなかに見出される。クライマックスが派手であるが故に、心に残る。
奉教人の死もまた、人の感情や世俗のなかに埋もれる純粋さと、集団の犠牲にはその集団が意味づけしていく不条理さに気付かされる。
舞踏会 -
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ネタバレ古文の問題集で『地獄変』の元になった作品がでてきて興味深かったから芥川の創作も読んでみた。全て古典作品を元にした短編集。
『偸盗』
ただ面白いなと思いながら読んでいたが、徐々に多くの人の愛が複雑に交わり、美しい兄弟愛の話でもあることが浮き彫りになってきて良かった。芥川の作品で一番好きかも。ただ解説によると芥川はこれを一番の悪作としているらしい 笑
『地獄変』
原作よりも主人公良秀の性格が狂っている。良秀の愛娘を彼の前で焼き殺して見せることを決めた大殿様も恐ろしいが、それを微笑みながら眺める彼も相当恐ろしい。直後に自殺をしてはいるが。
『藪の中』
数人の証言で構成されるが結局事実が分からな