芥川龍之介のレビュー一覧
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『蜘蛛の糸 杜子春・トロッコ』
「父」「酒虫」「西郷隆盛」「首が落ちた話」「蜘蛛の糸」「犬と笛」「妖婆」「魔術」「老いたる素戔嗚尊」「杜子春」「アグニの神」「トロッコ」「仙人」「三つの宝」「雛」「猿蟹合戦」「白」「桃太郎」「女仙」「孔雀」
解説-中村真一郎
「トロッコ」について。
家にたどり着いた良平の、わっと泣き出さずにはいられない気持ち。たった一人で、町まで駆けもどる時の緊張感、家々にともる灯りのほのかな温かさや人々の「どうしたね」という掛け声、寂しく緊張した場面からほのかに温かく安心できる場面への転換が素晴らしい。これほどまでに、主人公の安堵を感じることのできる小説はあまりないだろう。 -
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これは…何度も読んでるんだけど(なんてったって、小学生の時に買ったものだし)、授業で紹介するために、「藪の中」の正確な内容を復習しようと思って。
なんで文学じゃなく、社会学の授業でそれを紹介するかっていうと、質的調査の分野では、「藪の中」は「Rashomon」という名前で世界的に有名な手法となっているからです
(黒澤明が映画「羅生門」で、芥川の「羅生門」と「藪の中」を混ぜちゃったから、海外では、「藪の中」は「羅生門」の一部だと思われているらしい)。
で、「Rashomon」あるいは「羅生門的手法」とは、あるひとつの出来事に対して、複数の語り手からインタビューを得る、という方法、、、なんで、 -
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今までに「羅生門」や「鼻」や「蜘蛛の糸」などといったものは読んだが、どれも特に思うことはなかった。でも本作の「河童」は「蜃気楼」「三つの窓」を含め、始めてなんだこれはと当惑した。これが芥川が評価される根源なのか、といった具合に。もちろん他にもその要素はあるんだろうけど、少なくとも、この皮肉か嫌味か愚痴か呆れか後悔のような混沌とした感情を織り込んだ物語は他ではそう見られない。それも内容はすべて――この三篇において――は、気分が落ち込むでもなく、ただの日常とも思える出来事の中での話。哀しいことに、作者が伝えたかったことは解らなかった。が、この世界はどれをとっても狭く深い。
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私が買ったのは、小畑健の表紙だったのですが。同じ「地獄変」でも随分と雰囲気の違うイラストでした。
久々の文学ものでしたが、やっぱり流石、の一言に尽きると思います。12編の小品が納められていますが、中でも特に心に残ったものたちの感想をば。
「芋粥」読んでいて、悲しくなりました。涙が出るほど、という意味ではなくて、ただただ「哀れ」とはこういうことなのか、と。
「地獄変」お殿様の口の端からこぼれていた涎が、ぱっと見えるほどに、業火と呼ぶにふさわしい火の熱さを感じるほどに、生々しいお話でした。終わり方も素晴らしい。
「蜜柑」ここまでの短編で、これほどまでに鮮やかに日常の一瞬を切り取って、なおかつ普遍的