芥川龍之介のレビュー一覧
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前回読んだ「蜘蛛の糸・杜子春」とはうって変わる世界観
うひゃーたまりません!
完全にこちらが好み♪
■偸盗
偸盗…盗人団
京の都が荒れ果てていた頃、二人の男兄弟がおりました
兄の太郎は疑い深く斜に構えたような卑屈な性格
見たくれは痘痕で片目の潰れた醜い男
一方の弟、次郎は優しく目鼻立ちの整った好青年
以前は仲の良かった兄弟が一人の偸盗の頭である女に翻弄され、盗人仲間に加わるのでした
そして女は兄弟ともに関係を持っているため、当然ながら兄弟はお互いを探り合い、妬み合い、ギクシャクし出すのでございます
そんな異常な美しさを持った娘は平気で嘘をつき、殺しも行い、多くの男に身を任せるような悪女でござ -
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芥川、晩年の作品。芥川の神経のすり減っていく様、精神のバランスが崩れていく様が描かれている。
産まれたばかりの自分の子を見て「何のためにこいつも生れて来たのだろう?」と思いそれをわざわざ書き残す深刻さといい、なぜこの人はいつも何かに打ちひしがれているのか。なぜこんなに罪悪感に駆られているのか。と正直度が過ぎており理解の範疇を超えていると思っていた。しかし、小林敏明氏の評論に或る「露出する神経」というワードがしっくりきて、腑に落ちた気がした。
小説というより彼の遺書のようで、重々しい内容だった。この精神状態を書き残せること事態が並々ではないからこそ、後世に伝えられる作品なのかなと感じた。 -
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ネタバレ表題作「杜子春」は幼い頃に読んだ記憶はありますが、今読むとより胸にくるものがありました。子供のころより、両親の死を近く感じるからかもしれません。
他の話で印象的だったのは「南京の基督」と「影」。あとは随筆も楽しく読みました。
「南京の基督」は娼婦、娼館が題材なわりにさすが芥川!と言わざるを得ない美しい文章で感嘆しました。夢物語のようで背景には暗澹たる現実が広がっている、でもそれに娼婦は気づくことなく朗らかに笑っているその対比がよかったです。
「影」が印象に残ったのは、私自身が乱歩が好きで、ミステリ小説に惹かれたからです。
ミステリとしては、あまり出来がいいとは言えないかもしれませんが…芥 -
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芥川のミステリ風の作品というと「藪の中」や「開化の殺人」が挙がると思うのですが、「未定稿」を収録してくれたのが嬉しいです。この魅力的な物語の冒頭の書き方、さすが探偵小説も読んでいた芥川と感心しますし、『新青年』辺りに掲載されてたんじゃ?と思わせる完璧な探偵モノのお作法にのっとった設定で、ほんとうにこの冒頭部分だけで続きが書かれていない未定稿…ってのが残念な作品で。
他には、「奇怪な再会」「妙な話」「報恩記」辺りも面白くて私の好きな作品です。
あとがきにある通り、このラインナップで、とある事情により「奉教人の死」が収録できなかったのは残念です。あれも面白い良い作品なので、本当はここに収録される筈 -
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偸盗は黒澤明が映画にした藪の中(映画のタイトルは羅生門)よりも、よほど活劇にしたてあげられる作品ではないか。登場人物の悪役がみな生き生きしているし、荒廃した京都の描写も羅生門に匹敵する。ぜひ映画化してほしい。
地獄変は高校の教科書以来だが、絵師の良秀が絵の題材にしたくて好んで牛車に載った娘を焼き殺したのでなく、大殿からの命令で見たものしか描けない絵師なのでやむなく娘を火にかけたものの、その有り様を見ているときに恍惚を感じてしまったという作品だったのですね。竜は嘘から出た実という寓話、藪の中はタイトルとおりの事象を読者としては受け入れるしかない技巧の極致のような作品、六の宮の姫君は男性に捨てられ -
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ネタバレ読みやすかったし面白かった!芥川が書いたのは今からおよそ100年前?人間の普遍性を感じた。
ひとこと感想
⚪︎大川の水…日常のほんの一部の話をこんなにも豊かに書くことのできる表現力おそるべし。
⚪︎羅生門…アイデンティティとは
⚪︎鼻…コンプレックスを受け入れることの大切さ
⚪︎芋粥…人は簡単に手に入れられるものには惹かれない、努力して手に入れられるものに憧れる
⚪︎地獄変…欲望によって理性のコントロールは効かなくなる
⚪︎蜘蛛の系…自分だけ徳をすることを望むと返り討ちにあう
⚪︎奉教人の死…偏見という悪
⚪︎蜜柑…一瞬で人を判断してはいけない、一瞬で人の評価は変わる
⚪︎舞踏会…儚くて美し -
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芥川龍之介、最晩年の作品集。
「大導寺信輔の半生」という、冒頭の小説の書出しが好きだ。自叙伝的なものだと思うのだが、「大導寺信輔の生まれたのは本所の回向院の近所だった。彼の記憶に残っているものに美しい町は一つもなかった。…」で始まり、生まれた辺りには、穴蔵大工や古道具屋や泥濘や大溝ばかりで美しいものが何もなかったにもかかわらず、信輔は物心ついた時からその町を愛していたこと、毎朝、父親と家の近所へ散歩に行ったことが幸福だったことが書かれている。
美しくないと断言しているのに、幼い時から愛着を持った町は、回想することが美しい。映画の回想シーンのように、淡い光に包まれている感じがする。
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