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天文十八年、悪魔はフランシス・ザヴィエルに従う伊留満に化けて、日本にやって来た。マルコ・ポオロの旅行記とは様子が違うし、誘惑する相手も見当たらない。暇つぶしに園芸でもやろうと、畠に種を播いた。花をつけたその植物の名を問うた牛商人に悪魔は――。(煙草と悪魔) ご存知、短篇の名手として知られる芥川龍之介の、ミステリ作品集が登場!
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Posted by ブクログ
”何?「芥川龍之介のミステリ作品集(by裏表紙)」だと・・?” ・・と、“探偵モノ”的な内容なんかな?と、期待して手に取った本書。 えー・・まず申し上げますと、“探偵モノ”的なミステリではないです~。(ただ、例外の作品があるのでそれは後述します) そうですね・・“奇譚集”といったところが正直な印象...続きを読むですね。 とはいえ、各話ミステリアスな雰囲気を存分に堪能できる、珠玉の作品集となっております。 収録されている作品の中には「藪の中」「魔術」といった有名作から本書で初めてお目にかかる話まで、端正な文体で綴られる、“謎(mystery)”に包まれた短編18話が収録されていて、既読の話でも改めて読んでみるとまた違った印象で楽しめちゃうのが流石ですよね。 全話面白いのですが、個人的に特に惹き込まれて読んだのは「妖婆」で、ハラハラドキドキの展開で読み応えもありました。 そして、この「妖婆」をアッサリ風味にした感じの「アグニの神」も面白かったです。 他には「疑惑」「報恩記」なども、話の流れの巧みさに唸らせるものがありましたね。 さて、冒頭で本書は“探偵モノ”ではないと書かせて頂いたのですが、実は「未定稿」という作品(作品名?)には探偵が出てくるのです・・・ただ、惜しむらくはこれが未完の話なんですよ~・・“え?ここで終わっちゃうの?”という感じで、マジで途中で終わってしまうので、これは残念でした。 ところで、前述の「未定稿」に出てくる本多探偵と「開化の殺人」「開化の良人」に登場する本多子爵って何か関係があるんですかね?・・これって“本多三部作”ってこと?と、気になるあまり余計な詮索をしてしまった私です。 ・・そんな訳で、一つ一つの短編が濃密で、その幻想的な世界にどっぷり浸れる作品ばかりがチョイスされた本書。 私のような“芥川ライト層”からコアなファンの方まで楽しめる一冊だと思います~。
芥川のミステリ風の作品というと「藪の中」や「開化の殺人」が挙がると思うのですが、「未定稿」を収録してくれたのが嬉しいです。この魅力的な物語の冒頭の書き方、さすが探偵小説も読んでいた芥川と感心しますし、『新青年』辺りに掲載されてたんじゃ?と思わせる完璧な探偵モノのお作法にのっとった設定で、ほんとうにこ...続きを読むの冒頭部分だけで続きが書かれていない未定稿…ってのが残念な作品で。 他には、「奇怪な再会」「妙な話」「報恩記」辺りも面白くて私の好きな作品です。 あとがきにある通り、このラインナップで、とある事情により「奉教人の死」が収録できなかったのは残念です。あれも面白い良い作品なので、本当はここに収録される筈だったんだな、と思いながら併せて読むのオススメです。(青空文庫で読めますので)
編者解説に曰く(p.350) > ミステリが探偵小説と呼ばれていた時代 > (大正期から昭和二十年代まで)に > 活躍した作家の作品を対象にした > 光文社文庫の新シリーズ《探偵くらぶ》第二弾 で、芥川作品のうち推理、 あるいは怪奇幻想要素の濃い短編を集めた一冊。...続きを読む 収録作は 開化の殺人 開化の良人 黒衣聖母 影 奇怪な再会 春の夜 三右衛門の罪 煙草と悪魔 西郷隆盛 未定稿 疑惑 妖婆 魔術 アグニの神 妙な話 お富の貞操 報恩記 藪の中 未定稿は1920年『新小説』掲載の、 「明治12~13年頃、《朝野新聞》に務める小泉青年が 同僚の素人探偵・本多保氏の助手役に」 ――というミステリになるはずが未完の原稿。 これ以外は青空文庫でも読めるが、 やはり纏まっていると圧巻。 美しい従妹を愛した医師の狂おしい胸の内「開化の殺人」、 史学科の学生だった本間さんが京都から戻る際、 食堂車で出会った老紳士の話、 プラクティカルジョークの一種「西郷隆盛」、 倫理学者が岐阜県の大垣に滞在した際の 異様なエピソード「疑惑」が特に面白かったが、 やはり何度読んでも「魔術」の出来は素晴らしい。 ちなみに、芥川にインスピレーションを与えたと言われる 元ネタ、谷崎潤一郎「ハッサン・カンの妖術」は 同シリーズ第一弾『白昼鬼語』にも収録されている由。
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