山崎ナオコーラのレビュー一覧
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表題作よりも、最後の「社会に出ない」がとても好きだった。
P.158
スマートフォンで住所を調べよう、ということを言いださないのと同じように、私たち全員が心の中で思いながら、何年も誰も言わないことがある。
それは、山崎くんがおそらく、働いていないだろう、ということだった。
大学にいるとき、山崎君は就職活動を一切していなかった。大学を出たらバンド活動をする、と言っていた。卒業後にライブが三回あって、私は三回とも聴きにいった。
しかし、そのバンドは一年ほど経つと、メンバーのひとりに子どもができて、その人が就活のために音楽をやめると言い出した、という理由で、解散してしまったらしい。その後の山崎くん -
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ネタバレ久しぶりに山崎ナオコーラさんの小説を読んだ。等身大の文体で、恐らくナオコーラさんが感じたこと、考えたことを丁寧に描写しているのが好きだ。ナオコーラさんは、世間の常識や暗黙の了解に疑問を持って、「こういう考え方があってもいいんじゃないか」と小説を通じて投げかけている気がする。
本書で言うと、
・働かなくても、胸張ってご飯を食べていい
・趣味でも社会参加できる
みたいなこと。
自分にない考え方に出会うと、反発することもあれば、癒しや救いになることもある。ナオコーラさんはいつも私に新しい道を示してくれる。私がその道を歩むわけでもないけど、人生の選択肢が増えて気が楽になる。
鞠子との生活を通じて、 -
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ネタバレ結婚に対するネガティブな感情(女としての役割を押し付けられる、自分の負担が増えるだけ等)を少し改めた。
お互いを社会人として尊重し合う、2人の関係はとても素敵だ。
愛する妻のために働き方を工夫しながら看病する主人公は、献身的とも言えるが多分違う。彼は好きな人と一緒にいたくて、少しでも力になりたい一心だけど、自分が属する社会、妻が属する社会両方を大事にしている。
私もそんな人生のパートナーがいたらいいなと思った。
妻の死の場面では号泣した。段々と呼吸の間隔が大きくなり、息をしなくなる描写がとてもリアルだった。
死んだ途端に向こう側の住人として、神様のように扱われることに主人公は違和感を抱いてい -
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一昨日読んだ山崎ナオコーラさんの「可愛い世の中」
なんだか私には縁のない性格や特徴、人生の渡り方をする主人公。結婚を軸に進んでいくのに全くハッピーじゃないし五本の指に入るほど好きな作家さんだけど今回は残念だった、と思ってた。けれど、さっき。ふわふわ考えていたらいきなり腑に落ちた。豆子が香水の事業を始めるパートナーとして夫とは別に彼を選んだように、結婚のお手伝いを家族に頼んでしまったように、パートナーは目的ごとに存在して、全てを相方一人に抱えさせることは間違いだったと。例えばライブハウスや読書やカレーや音楽、同じものが好きなひとなら無理させず共に隣で楽しむことができるし、ふたつの脳みそで考えごと -
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帯を見て、反射的に
切ない感じを想像していたけど
そうじゃなかった。
がん患者と家族の心のうち、
医師をはじめ、そこに関わってくる人たちとのやりとりで感じるさまざまな思いや葛藤、
どう社会と関わっていけるのか…
登場人物に名前がないぶん、
彼らが着ている服の色や仕草を
何度も描写しているのが印象的だった。
それが、淡々と物語が進んでいくように感じた
理由の1つかも。
主人公が、
がんを患った妻の入院先へ向かうところから
物語は始まる。
がん患者が考える仕事への思いと距離感。
がん患者家族とそれ以外の人たちとの距離感。
逝ってしまった大事な人との距離感。
とても冷静に綴られているなぁ
何 -
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あなたは、『がん』で死にたいと思いますか?
2021年の厚生労働省”人口動態統計”によると、この国で亡くなった方の死因は
第一位: 悪性新生物 26.5%
第二位: 心疾患 14.9%
第三位: 老衰 10.6%
という順位になるようです。悪性新生物、つまり『がん』が死因の四分の1を占めるという現実。60歳代に限るとその割合は45.2%にも上ると言いますから、『がん』という病が私たちにとって極めて身近にあることがよく分かります。この大きな割合を考えるとあなたの周りにも『がん』で亡くなられた方がいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな『がん』は昔から小説の題材にもな -
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ネタバレ山﨑ナオコーラさんと白岩玄さんによる、子育て交換エッセイ。(「往復書簡的な」とも書かれている)
山﨑さんと白岩さんは同じ年にデビューしたそうで、山﨑さんは唯一の「同期」と呼んでいる。年齢は山﨑さんの方が年上だが、2人とも同じ頃に子どもを持ち、作家業をしながら子育てをすることについて、「before corona」と「under corona」の二部編成で綴られている。
私は子どもがいないので、子育てには直接関係がないのだけれど、だからこど、自分には直接的に関わらない分野だからこそ、読みたいと思って手にとった。タイトルに「コロナ」という言葉があったことで、コロナ禍の子育て事情かな?とも思った。 -
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小市民の職場での会話や人間関係がとても愛しく、私は大好きな作品だった。
・ジューシーってなんですか?
新聞のラテ欄を作る多忙な部署の人たちの話なのだけど、仕事のつらさよりも、その合間の何気ない会話や、ちょっとした息抜きなんかが中心に書かれている。
そんな中で、ふと浮かび上がる思考がぽこぽこと間に挟まる感じ。
職場ってこういうさりげなく優しい交友関係がいいんだよな、私もこういうのが楽しくて働いてるな、と思う。
「先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へと向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。」という文章が作中にあり、とても素敵な言葉だと思った。
普通 -
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なんだろう、読みながら自分が愛しくてたまらなくなった。
カサカサした心になってしまった時も、持ち前の「トライアンドエラー」精神で物事をぐるぐると考え直し、何かに気付いたり、考えがうねうね変わりながらモヤモヤしたままだったり…。
そんなナオコーラさんの日常がエッセイから透けて見える。
特に大好きだったのは、"栞が導くいろんな世界たち"。
「本離れ」を問題視して、「子どもに本を読ませなくては」と言う人がいるが、大人が読書のメリットを提示して勧めても、子どもはきっと読む気にはならない。ナオコーラ氏が本好きの理由は「現実逃避ができるから」。
それってほんとうに、真理だ。
私が今 -
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ネタバレ前作に続いて白岩玄さんの著書を読んだ。
今回は小説ではなく正確には白岩玄さんと山崎ナオコーラさんの往復エッセイだ。
『『野ブタ。をプロデュース』の白岩玄と『人のセックスを笑うな』の山崎ナオコーラ。共に20代で作家になり、現在二児の親でもある二人が、手紙をやりとりするように綴る、子育て考察エッセイ!』河出書房新社HPより
タイトルからわかる通り、これはコロナ禍での育児を綴ったエッセイだ。
特に白岩さんは二番目のお子様の出産がちょうど丸かぶりしたとのことだった。出産に立ち会う予定だったそうだがそれが叶わず、また上の子と一緒に面会することもできなかったらしい。
私の友達にもコロナ禍で出産した子が -
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ネタバレ#1
劇中の中盤で最も心を惹かれたシーンがある。加賀美とニキが新宿の路上で写真をとる家族に遭ったあと、ニキが言う。
「さっきのお母さんの、『美人に撮ってよ』ってセリフ、良かったね。結局のところ、写真ってそういうことだよね」
ニキは不器用で、人間関係の機微よりも無機質な被写体を得意とする写真家だと自称し、それが写真にも表れていた。そしてそれを自身の姿、アイデンティティだと信じ込むために気を張っていた。それでも、物語の終わりについにニキは自身の人間ぽさに向き合った。
『美人に撮ってよ』のシーンは、二人がきっとその感覚に気がついていたんだとおもわせる瞬間だった。あのときに何かが起きていれば結末は変