山崎ナオコーラのレビュー一覧
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「来たよ」
カーテンから覗いて、片手を挙げる。
「来たか」
笑って片手を挙げる。
こうした2人の、2人だけのやり取りがとてもあたたかくて、やさしくて、今でも心に温もりを宿らせています。
「ありがとう。気をつけて帰ってね」
「大好きだよ」
小さな声で耳元に囁いてみた。
夫と妻、そして、父と母やお客さん。
それぞれの、それぞれなりの心づかいや愛情が心に響きました。
また、"余命の物語“や「妻が死んだ時に距離の開きが決定したのではなくて、死後も関係が動いている。」といった言葉も印象的でした。
"余命の物語"はネット上などで時々目にする美談化的な営みの中に似たも -
Posted by ブクログ
サンドイッチ屋を営む妻が末期がんになった。
夫は勤務先での理解を得ながら介護をし、妻の社会性と向き合い、どのように接するのが良いのか、妻が何を望むのか、深く深く考えながら残り少なくなった妻との時間を過ごす。
闘病中の友達と家族の気持ちを少しでも理解したくて、手に取った。
繊細な心情がとても良く表現されていて、まるで自分も家族になったかのような気持ちになる。
そういう意味でも読んで読んで良かった。
人生の最期をどうやって、誰と関わって、迎えるのか。
深く考えた話だった。
友達は今どんな事を望んで思っているのだろうと思いながら本を閉じて3日後、天国へと旅立ってしまった。
最後の会話は、あれ -
Posted by ブクログ
仰天する表題のデビュー作は知ってましたが、山崎ナオコーラさんの著作は今回が初読みでした。
共に40代前半なのに、末期がんに侵された妻。本作は、優しく温かく寄り添う夫の視点で描かれる物語です。
平凡な夫婦を描く一つの手法なのでしょうか、中心人物の固有名詞が現れず、発話者が明かされません。夫婦の自然な関係のリアルさを、誠実に伝えている気がします。
闘病と介護の壮絶さや劇的な展開を避け、どこまでも夫の内面の心情変化が淡々と綴られます。医師、妻の母、見舞客たちの、機械的だったり無神経な態度や言葉に大いに違和感をもち、心が波立ちます。それでも、夫は痛いくらい他へ配慮し、自分が考え得る適切な距 -
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なんだかタイトルが妙に気になった。
きっとどこかにこんな人たちがいて、こんなふうに過ごしているような気がした物語だった。
風来坊で破天荒な梅田さんが、引っ越してきたばかりの淳之介を、散髪と花見に誘ったことから始まったつながり。淳之介が気になったエリとは、時間がたち、色々なやり取りをするうちに、恋心がいつの間にか友情に変わっていったように思えた。
桂さんがカツラを被って仕事をしていることに、皆が敬意を払っていることがわかったところは、とてもよかった。このときばかりは、ある意味わがままなエリに、拍手といった感じだった。
大人になると、人間関係は余計に相手の心を探りつつ、どこまで踏み込んでいい -
Posted by ブクログ
ベランダ園芸についてのエッセイ集だなぁくらいの気持ちで読んでみた。違った。植物と一緒に生きる1人の作家の人生が書かれていた。
「あとがき」を読んでナオコーラさんのその後の境遇に胸が苦しくなり、「そのあとのていたらく」でほっとした。
読み終わった後にカバーを外した表紙を膝に、感想を書いていて気がついた。
タイトルが「ベランダ園芸で考えたこと」。
ちゃんと「考えたこと」が書かれているよ、と表現されていた。
ナオコーラさんの文章は小説、エッセイ集どちらでもすっきりとしていてどこか爽やか。好みの文章を書かれる作家さんなので、他のまだ読んでいない著書も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
小林聡美さんの著書で紹介されていた本。
山崎ナオコーラさんの作品は読んだことがないので
これが初となった。
園芸が趣味とのことで、植物が育つ様子と
日々の暮らしを交えたエッセイ。
旦那さんの収入とか、家賃のこととか
割とリアルに書かれていた。
最後の章の『さようなら、私のベランダ』は
なんだかこれまでの章と雰囲気が違っていた。
旦那さんの収入レベルに生活を合わせろって
いう世間の反応が嫌だったのかなあ。
ご自身で活躍されているんだから、世間の妬みとか
僻みなんて気にしないでほしいなあ。
いろんな”ごみ”として捨てられていく野菜や果物の種を
植えると、育つってなんだかおもしろい。