無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
何の変哲もない日常を描いているはずなのに、不思議と読後に強く残り続ける一冊だった。
もちろん物語そのものも素晴らしいのだが、ナオコーラさんは何より表現が素敵だ。花見のラストシーンなんて、文章を読んでいるだけなのに、僕は完全にエリちゃんと一緒に代々木公園を歩き回っていた。あの日の空も人混みのざわめきもエリちゃんの坊主頭も感じながら読み進めた。
キャラクターも魅力的である。
梅田さんやエリちゃんのような、大人になっても自分の欲求や衝動に素直でいられる人に惹かれる感覚はすごくわかる。
大人だから、もういい歳だからと、自分で勝手に制限をかけながら生きてしまう中で、彼女たちは軽々とその線を飛び越えてくる。夜中に大学へ忍び込むこと。深夜2時に遠方の恋人へ別れを告げに行くこと。そんな無茶苦茶さに振り回されたい。
一時は「死ねばいい」といったカツラさんを笑った常連客の顔面にエリちゃんがグーパンチをお見舞いするシーンはさすがに笑ってしまった。
特に印象に残っている一節がある。
「男女の間にも友情は湧く。ーー友情というのは、親密感とやきもちとエロと依存心をミキサーにかけて作るものだ。ドロリとしていて当然だ。恋愛っぽさや、面倒さを乗り越えて、友情は続く。走り出した友情は止まらない。」
よく、女性は知り合った男性を「彼氏候補」か「男友達候補」かで分類し、一度その枠に入るとなかなか覆らないと言われる。
一方の男にとっての女性は、彼女候補兼女友達である場合も多い。友情としての親密さを感じながらも、彼氏ができれば少し嫉妬し、肌の露出にエロさを感じてしまう。その曖昧で、不純で、それでも確かに友情である男の感情を、なぜここまで理解して言語化して描けるのだろうと感心した。
少し変わった誰かの日常を覗いただけなのに、自分の感情まで掘り返されるような小説だった。
Posted by ブクログ
なんだかタイトルが妙に気になった。
きっとどこかにこんな人たちがいて、こんなふうに過ごしているような気がした物語だった。
風来坊で破天荒な梅田さんが、引っ越してきたばかりの淳之介を、散髪と花見に誘ったことから始まったつながり。淳之介が気になったエリとは、時間がたち、色々なやり取りをするうちに、恋心がいつの間にか友情に変わっていったように思えた。
桂さんがカツラを被って仕事をしていることに、皆が敬意を払っていることがわかったところは、とてもよかった。このときばかりは、ある意味わがままなエリに、拍手といった感じだった。
大人になると、人間関係は余計に相手の心を探りつつ、どこまで踏み込んでいいのか考えてしまう。ちょっとしたことで、躊躇してしまったりする。そんなこと思いながらの読書だった。
「相手の心を覗くことは、相手の心を予想することとは違う。ただひたすら注意深く、全身を耳にして耳を澄ますのだ。答えは出さない。相手の心がわかることはないから。ただ、自分たちが平均台の上にいるということを知っておく。理解は不可能で、誤解だけが可能。知らないということを深めたくて、心を覗くのだ。」
なるほど、と思った。
Posted by ブクログ
引っ越し当日、主人公は友人の梅田さんに誘われて商店街にある「カツラ美容室別室」で髪を切ることになった。
そこでカツラを被った店長に、同い年のエリ、年下の桃井さんと出会う。
エリと友達以上、恋人未満になりながら、主人公は気儘で孤独な生活を続けていく。
言葉にできないもやもやとして感覚的なことを、上手に文章にするなーと思った。
特に
「しかし、会社を辞めて、上司や同僚と飯食うのを止め、友人とべたべた会うのを止めたら、どうなるか。オレは他人によってなんとか自分の形を保てている。他人と会わないでいたら、オレはゲル状になるだろう。」っていう部分が好き。
主人公は自分のことが好きなくせに他人の軸で行動しようとしてうまくいかなくて、結局傍観者にしかならない。
人に必要とされたいけども、自分は人を必要とはしない。
結局、わがままな寂しがりやのまま。
だから、逆に人が大好きで自分の軸で行動している梅田さんがまぶしく見えて、自分が大好きで自分の軸で行動しているエリが時々めんどくさく見えてしまうんじゃないかなー。
世の中は得てしてどろどろとねっとりしてるもの。
それを書くのがとても上手でおもしろかった。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。