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Posted by ブクログ
人物名などの詳しい説明がほとんどなく、妻の看護中に感じた違和感や出来事を淡々と語った小説でした。名前を呼び合わないっていうのが家族っぽいなぁと思いました。
亡くなった奥さんに手を合わせることなどできない、と固まってしまった場面は泣けました。
自分も死ぬときは妻と同じがんがいいと思い始めている、というのは看病する中でもはやがんは妻の命を奪った憎いものという存在ではなくなったんでしょう。
故人との距離は死後も遠くなったり、近くなったりする。距離が変化することは悪いことではない。悲しい話なのに悲観的ではなく、先の未来も感じられる静かな小説でした。
Posted by ブクログ
帯を見て、反射的に
切ない感じを想像していたけど
そうじゃなかった。
がん患者と家族の心のうち、
医師をはじめ、そこに関わってくる人たちとのやりとりで感じるさまざまな思いや葛藤、
どう社会と関わっていけるのか…
登場人物に名前がないぶん、
彼らが着ている服の色や仕草を
何度も描写しているのが印象的だった。
それが、淡々と物語が進んでいくように感じた
理由の1つかも。
主人公が、
がんを患った妻の入院先へ向かうところから
物語は始まる。
がん患者が考える仕事への思いと距離感。
がん患者家族とそれ以外の人たちとの距離感。
逝ってしまった大事な人との距離感。
とても冷静に綴られているなぁ
何度も思った。
がんに対して明るいイメージを持てた、と
主人公は言う。
あたしは、正直そこまでの変化はなかったし
最期の瞬間もあたしには大事なものだった。
だけど、
抱きがちながんへの悲観的なものは
なんか違うんじゃないかって思う。
がん患者だって可能な限り、
社会と関わっていたい。
仕事だってしたい。
延命治療をしないからといって、
全てを諦めているわけじゃない。
病室のロッカー、テレビカード、
横長の白いテーブル、
仕切りのカーテン…
自分もがんで父を亡くしているから
ものすごくリアルでに感じられ、
まるで自分の記録、のような一冊だった。
Posted by ブクログ
医者が用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしい
この言葉の本当の意味が、小説全体を通して段々とわかってきます。
医療職として終末期をみることもある者としては、この小説の医療者の見え方はかなりショックなものでした。特に、医師との噛み合わない話の場面では、医師側の気持ちも大いにわかってしまいました。トラブルを避けるために、事実ベースかつ最悪の想定を常に話しておき、それを理解してほしいという思いが先走ってしまうのです。
仕事を効率よくこなすことに躍起になり、疎かになっていた、病気ではなくそのひと自身をみるということを思い出させてくれる、苦しい読書となりました。
ネガティブなことばかり書いてしまいましたが、
「来たよ」
カーテンから覗いて、片手を挙げる。
「来たか」
笑って片手を挙げる。
このやり取りに、二人の関係が凝縮されているようで、憧れました。
Posted by ブクログ
最後まで読むとタイトルの良さが分かる。とても良い、とてもマッチしたタイトル。まさに美しい。
近い時も遠い時も、近づく時も遠のく時も、相手を想うことで「美しい距離」となるのだなぁと。
この小説の紹介文に“がん患者が最期まで社会人でいられるかを問う病院小説”とあったのだけど、読んでみると印象は全く違うなぁと思った。視点がそのがん患者の夫だからそう感じたのかもしれないけれど。
豊崎由美さんの解説に、“小説は書かれた言葉だけで成り立っているのではない。書かれていないことにも語らせる力を持った小説こそが、いい小説なのだと、わたしは思う。”とあった。「まさに」!
この小説は、静かな中にも、ひしひしと夫の深い愛情を感じるし、妻自身の仕事への思いだとか、両親の我が子を思う気持ちだとか、いちいち書かれていないこともしっかり伝わってくると感じた。
死ぬって、実はそんなにドラマチックなことでもなく、いつか誰にでも訪れることで、“その瞬間”も案外普通のように訪れてしまう。それを静かに受け入れられる物語だった。
愛犬を見送るときは必死すぎて自分の中にしか物語がなかったけど、いつか大切な誰かを見送るときには、この小説を思い出したい。
p25 習慣は意味を越える。一度身につけたものは死ぬまでやり遂げたい、なんとなく毎日続けていることで「ああ、今日も自分は自分として生きている」という感じを味わえる
p52 配偶者というのは、相手を独占できる者ではなくて、相手の社会を信じる者のことなのだ。
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