山崎ナオコーラのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
世界一好きな本屋で見つけて、即購入。タイトルと作者にキュンときたから。結果、大当たりの本だった。
ニキはひどくめんどくさい性格だけど、どこか共感できる部分もあった。恋愛してる自分は友達や家族に見られたくないとか。向こうから自分を好きになったのに自分がどんどん相手を好きになってしまうニキのことが好きだ。
加賀美はどうしようもない奴だけど現実的でそこが好き。
加賀美の頭ん中には恋愛ごとしかないのかもしれない、って思った瞬間もあったけど、彼が仕事にのめりこんでいく姿はカッコよかった。だけどやっぱり気持ちの悪い奴だとも思った。
喧嘩のときに加賀美がニキの喜ぶことを“してあげていた”と言ったのは良かった。愚かさが全面に出ていて非常に愛しい。ニキも中々に欠落しているし、その二人が合わさっていく感じ、そしてまた分解していく感じが、なんというか、すごく好き。
この小説を読めて良かった。私はこういう話を待っていたんだな、と思ったほど。また読み返そう。 -
Posted by ブクログ
読み始めて少しして、あ、わたしこの本読んだことがあったと思い出した。「手」のハードカバーを過去に読んでいたのだ。文庫化にあたって改題されていたことに気付かずに購入してしまった。
吉祥寺の某書店にサイン本があると聞いて、ふらっと立ち寄ったら最後の一冊になっていたので、迷わずレジに持って行った。開くと、内表紙の裏のページに見覚えのある金色のペンでサインが書かれていた。"毎朝、目覚めるだけで表現になる。"と。いい言葉だな、と思った。
この言葉は表題作「お父さん大好き」の一節だったのだ。そのページに辿り着くまで思い出せなかったのだけれど。
男と女の会話だったり、妙にドライな視点で語られる心情だったり、そういうものに惹かれて作品を追って来たのだけど(たぶん、うまく説明できないけど)、「お父さん大好き」は特に何かが起こるわけでもなく、関係に深入りするでもなく、ただひとりの男のまわりで起きた出来事を淡々と描いている。何もないようでいて、その中で交わされる会話やモノローグになぜかとても救われたような気持ちになる。
"どうして、古今東西のたくさんの人間がすでに悩み切ったことを、俺が改めて悩み直さなくてはならないのか。こんなことなら、全員で長生きすればいいのに。初めから、決まった数の人間が存在して、そのままみんなで成長し続けた方が、効率が良いはずなのに。古い老人が死に、新しい子どもが生まれて、また一からやり直すとは、世界のシステムはなんとばからしい。"
"毎朝、目覚めるだけで、表現になる。「俺は、この世に生きています」それを体中が叫んでいる。「まだ、生きたい」「世界を、味わいたい」。まばたきするだけで、世界を受け取れる。"
生きているだけで、えらい。俺は、生き続けるだけで、えらい。
最後の一行の絶対的な肯定に、ふっと肩の力が抜けるようなそんな気がした。 -
Posted by ブクログ
なぜかすごくドキドキする文章。
「リアルについて」書かれている文章がいくつかあったけれど、私はこのエッセイを読んで「リアルだな」と思った。
例えば、
「黒いストローでジュースを飲むのが好きである。
理由は蝶々の仕草に似ているような気がするからだ。」
という書き出しで目が止まった。
そこに山崎さんがいて、黒いストローでジュースを飲みながらその言葉をさらりと言ったのを、目で見て耳で聞いたかのような生々しい感触があったのかもしれない。
本当は一瞬静止した理由が自分でもちゃんと分かってないけど、すごくドキッとしたという感覚だけが強烈に残っている。
そして1番は「あきらめるのが好き」。
ドキドキを超えて、目と頭だけが動いて呼吸も心臓も止まっちゃったんじゃないの?って思うくらい1語1語に集中して読んだ。
すごいと思った。
「あきらめてもあきらめても、しぶとく私が残る。」
「私」の輪郭が明確になるような、逆にぼやけて溶けていくような、不思議な感覚。
山崎さんが使う言葉と同じ感覚じゃないかもしれないけど、「リアルだ」と思えた。
山崎さんの小説がすごく読みたい。