山崎ナオコーラのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいつ来るかもわからない死が迫る入院中の妻を、
お見舞いや世話をする夫の目線でつづられたモノローグ。
この小説は、精神的に繋がりの強い人の死と向き合い始める良いきっかけになる。
印象に残ったフレーズが2つある。
1つめ。「配偶者というのは、相手を独占できる者ではなくて、相手の社会を信じる者のことなのだ」
家父長制と比べればモダンな考え方だ。この意見に賛成だし、配偶者とはこういう関係を築いていきたい。その方が面白いと僕は感じるから。
2つめ。「死ぬための準備期間のあるがんという病気に、妻のおかげで明るいイメージを持てるようになった」
配偶者の死に準備期間があることは、準備のできない突然死よりも -
Posted by ブクログ
気になっていた山崎ナオコーラさんの短編集。男性が父乳(母乳)を出せるようになったら?テクノロジーの発達で筋力差がなくなり、性別による役割分業が減ったら?もし男性に生理がくるようになったら?性別を非公表とし、人の数だけ性別はあると仰る山崎ナオコーラさんが描く性差が少なくなった未来を描いたユーモラスな短編集。あえて男や女という言い方をせずにここまで描けるものなのかと驚いたし、自分のなかにある抜けきれないジェンダーロールのせいか読んでいる途中で混乱することもあり、まだまだ自分のなかに根付くものの深さに唸った。自分の頭のなかはを暴かれるのは痛くて気持ちいい
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Posted by ブクログ
作家として、社会を変える使命を持って文章を紡いでいると感じるエッセイでした。
序盤は、「うーん、主張が強いなぁ」とちょっと疲れる印象を感じながら読んだ。読み進めていくうちに、後半には、うんうんと頷きながら読めた。
だんだんと、主張が染み込んできて、なるほどなぁと納得できる読書となりました。
著者のナオコーラさんは、自分のことをブスと認識している。そして、ブスによって誹謗、中傷を受けた経験を持つ。が、ブスによって自信を失っているわけではなく、克服したいとも思っていない。
ブスと言われる人が、ブスを克服し、自信を持って前向きに生きようと主張したいわけではない。そういうエッセイでは、全くなかっ -
Posted by ブクログ
源氏物語の、ご都合主義な部分や現代の価値観にはそぐわない部分も認めつつ、それだっていいじゃない、または、それはおかしい、という点を、テーマごとにポイント解説している本。と書くと参考書みたいだけど、実際こういうのが高校の古文の授業であれば面白かったのにと思った。
平安時代、天皇を頂く貴族の男性中心社会で、(貴族の)女性はその道具でしかないというのは、今の価値観で考えるとひどいけど、世界史を振り返ればどこの王国やら帝国やらでも婚姻関係で繋がりまくりだった、そういえば。
一部の権力者や政治家等は、今も引き続きその伝統を守っていそう。
平安時代に限らず、結構最近まであったと思われる「夜這い」につい -
Posted by ブクログ
著者の強めの文体や夫を「経済力も判断力もない」などと表現をすることにやや馴染めなさがあり、途中で読むのをやめそうになった。ただ、後半に著者のフェミニズムや夫に対する考えなどがまとまって書かれている箇所があり、それを読んで著者の視点がようやく少し理解できた気がした。「女性が弱者のように言われるが実は逆なのでは」といった趣旨の指摘は面白い。確かにと思いつつも、政策決定の場面においてはまだまだだとも思う。
来月に出産を控え、このフレーズは折に触れて思い出したい。
「新生児にとって私は親ではなくて、世界だ。世界を信用してもらえるように、できるだけ優しくしようと思った。」