あらすじ
25歳の広田と岸、佐々木、26歳の別所、27歳の魚住と津留崎。6人は、大きな会社の中の小さな班「夕日テレビ班」で毎日深夜まで地味な仕事をしている。(ちなみに非正社員が3名、正社員が3名)恋人でも友達でもない、立場も微妙に違う、けれど同じ職場の同僚として会話を交わし笑いあう。仕事を詩的に描いた著者初の「職場小説」。平等とは何かを問う『ああ、懐かしの肌色クレヨン』も収録。
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Posted by ブクログ
小市民の職場での会話や人間関係がとても愛しく、私は大好きな作品だった。
・ジューシーってなんですか?
新聞のラテ欄を作る多忙な部署の人たちの話なのだけど、仕事のつらさよりも、その合間の何気ない会話や、ちょっとした息抜きなんかが中心に書かれている。
そんな中で、ふと浮かび上がる思考がぽこぽこと間に挟まる感じ。
職場ってこういうさりげなく優しい交友関係がいいんだよな、私もこういうのが楽しくて働いてるな、と思う。
「先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へと向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。」という文章が作中にあり、とても素敵な言葉だと思った。
普通の人の小さな営みを肯定してくれるような。
・ああ、懐かしの肌色クレヨン
主人公であるアルビノの鈴木さんの言動がとてもキュートなので、かわいいお話だなあと読み終わったものの、違和感はいろいろあったので2周目も読んでみる。
これ、もしかしたら今村夏子さん「ピクニック」と同じ構造…?
告白や精一杯の口説き文句を受け流されたり、美術館のチケットを自分の分だけ金券ショップで調達されたり、挙げ句の果てに館内では勝手にどこかに行かれちゃうの、おかしいよね…?
結局、主人公は、はっきりとはわからないくらいに、差別され、距離を置かれていたということなんだろうか。
そう考えると物語の印象が180度変わる。
とても面白い読書体験だった。
Posted by ブクログ
サクサク読める
ほとんどが職場の描写なので、登場人物の深いところまではわからない
あー職場って感じ
それぞれがいろんな思いを抱えながら、日々働く
みんな、えらい
Posted by ブクログ
ナオコーラさんの小説によく出てくる、新聞の校正をする会社の人たちの話し。
ジューシってなんですか、というタイトルと、
文庫本の表紙の組み合わせがとても本の内容とマッチしていると思う。
日常生活で、
ジューシーとかマッチとかエンジニアとか最適化とか
よくわからない言葉をつい使ってしまう。
なんですか、それ。
Posted by ブクログ
大きな会社の中の小さな班の職場小説。その班には正社員と契約社員がいて、それぞれ立場や生活は違うのだけれども、みんな働いている。思い思いに一生懸命に働いている。
納得いかないことの方が多いし、大変が当然。
でも仕事って内容が良いにこしたことはないと思うが、何より人間同士の付き合いが何より重要なのではないかと思う。
職場に好きな人たちがいる。尊重し合えたり、思いやりを持てたり、優しくしてもらったり。
きっと仕事の内容なんてそこが良ければ、どんなに面倒であろうが、地味な作業であろうが、頑張れるのではないだろうか。
社会ってそんなに居心地の悪い場所ではない。
Posted by ブクログ
詩的な文章。スルスル読めて、心に残るとかそういうのではなく淡々とした職場小説ではあるが、また読みたくなる文章。解説が羽田圭介さんでこれも面白い。
Posted by ブクログ
ナオコーラさんの本は「人のセックスを~」、「指先からソーダ」に続いて3冊目。
ものすごくこの人っぽい小説。
短く詩的な文章をリズムよくつないでく。
内容もすごく良い。”職場小説”と書かれてたんだけど、まさにこれ。
特定の職業をテーマにした”職業小説”ではなくて、職場の小説。
どんな職場で働いている人にも共感できるものなのかはわからないけど、少なくとも東京でサラリーマンやってる20代の男子としては共感する部分も多かった。
仕事って、まぁ何かを成し遂げたり、向上していったりみたいなところが強調されることが多いというか、強調されるべきみたいなところもあるけれど、やっぱ現実問題として、起きてる時間の大半を過ごす「生活の場」である訳です。
そこは楽しいとか楽しくないとか、幸せだとかそうじゃないとか、
「どうなの?」って聞かれて「こうです」って
何か一言で括ってしまえるほど単純な場所ではなくて、
楽しかったり楽しくなかったりたまには幸せや充実も感じたりしながら辛いこともけっこうあったりしつつでも大半はなんてことなくて、みたいなごちゃ混ぜだよね。
っていうことを素敵なリズムで読ませてくれる小説。
そういうリズムや雰囲気であったり、ところどころに散りばめて登場人物に吐かせる日常の真理であったりがこの小説にとって大切なところだと思うんだけど、レビューを眺めてると、”何事も起こらない小説”として切り捨てられてることもけっこう多いのね。
大好きな吉田修一の小説もおんなじようにばっさり言われてるのをちょくちょく見かけるんだけど、いやもうそれはもうあなたにとっては価値の無い小説だった、でもこの言葉に救われる人だっているんですよ。「芸術は弱い人のためにある」ってこと。
ということでおそらく人を選ぶ小説です。
面白かったのでこれを読み終わった帰りに「カツラ美容室別室」も買ってみた。楽しみ。
Posted by ブクログ
「ここに消えない会話がある」でした。タイトルが変わって、中身も修正を加えたものらしいです。
そして、前読んだときよりも、ぐっときました。
さらっとした職場の人間関係の中にも体温を感じました。
辞めれば途切れてしまう関係でも、人は人を想う。
岸がミスをしたときの出来事に、心がざわつきました。理不尽な組織の仕組み、でも優しい人もいて、だから少しがんばれる。とても大切な気がする。
広田の良さは、半年くらい働いてわかる、と書いてあるけど、小説でもほんとにじわじわときます。
Posted by ブクログ
はたらくひとの小説。
職場の風景と、そこでの会話、ひとりひとりの心情が微妙なバランスでかかれていて楽しい。
急に格言めいた言葉や、詩的な表現があらわれたりする。
Posted by ブクログ
何か大きな事件が起きるわけではない。
テレビ欄を作る仕事をしている人たちの日常を書いている。
会話の雰囲気や考えていることがなかなかリアルで好きです。
同時収録の「ああ、懐かしの肌色クレヨン」のストレートな好意を伝える表現や、それを聞いての淡々として脈のない相槌も悲しくなるほど現実的です。
Posted by ブクログ
山﨑ナオコーラってこういう感じの小説を書く人らしいので、この本もまさに「らしい」感じだった。
でも主人公の広田くんが好青年なので、やっぱり普通のお話のようにもっと掘り下げた内容の方が好きだな。
解説に、「職業小説」というよりは「職場小説」と書いてあったけどまさに。
正社員と契約社員の微妙な関係がムムムだった。
Posted by ブクログ
文字通り「投げ出したい」と生まれてはじめて思った小説。それは私がまだちゃんと働いたことがないからで、でも働くっていうことを、それなりのレベルでは知っているからだと思う。極端と極端の間の、中間の小説に、中間の自分がだぶって見えたからだと思う。
Posted by ブクログ
え、主人公って広田だったの?
と、思った。
同じくらい岸の目線でも書かれていたし、岸の話のほうがもっと真情の吐露であり、広田のそれは、彼の見た日常の記録に近いので、そう思ったんだろうか。
岸は~、広田は~とか固有名詞でその人物の目線から書かれる視線の切り替えが、時系列ではないので目は回らない。
ただ、すごくまったりしている日常の描写だったし、岸から見てくだらない!と憤る仕事内容が、あたしからするとよくあるんじゃん?としか思えなかったので、感情移入は出来なかった。
広田はあまり感情を述べずに事実だけを伝えるし、岸はすごく心情を語るけどその心情がわたしのそれにマッチしないので、なんとなくしゅわしゅわして、終わった感じ。
「職業小説は数あれど、本作ほど優れた職場小説はない」と、帯で羽田圭介が書いていたが、正直あまり意味がわからなかった。
ところどころ挟まれる、狙ったようなすこし外した表現が面白い(けど正直鼻につく)と思えた程度。
羽田圭介は17歳で黒冷水で文藝賞を受賞している。その彼だからこそもしかしたら、作者の狙いが読めたのかもしれない。
あたしには軽すぎて、なんか栄養にならないですよ?って思えちゃったな。残念でした!人には勧めん。
Posted by ブクログ
起承転結で言えば、起だけで終わるような作品。
相変わらず、大きな事件もなく、更に言えば何も完結しないお話。
いいね!
やっぱりそこがいい!
しかし、逐一名前を呼びながら挨拶するのには違和感。
そういう、微妙な空気感みたいなものを冒頭から感じさせたかったのかな?
そして、ラテ欄を作る会社って、本当に存在してるのか・・・?