あらすじ
恋がもたらした痛恨の一撃!?人気写真家ニキのアシスタントになったオレ。一歳下の傲慢な彼女に、心ひかれたオレは公私ともに振り回されて…『人のセックスを笑うな』以来の待望の恋愛小説。第145回芥川賞候補作。
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写真家のニキと、アシスタントの加賀美の恋愛の物語。
仕事中は昭和なカメラマン然とあろうと(中川家のコントに出てきそうなああいうやつ)厳しく当たるのだけれど、とあるときに言い返されたことをきっかけに、恋愛関係に発展し、そして別れるまでが描かれる。
『自分の写真とは何か』を見つけ、制作に没頭し、ある時、加賀美は師匠を超えた存在になる。(師匠というのものは弟子を育て、弟子に超えられる存在ではあるよね)
それとは別に、ニキのような女性にとって女性性って難しいよね、っていう話でもあると思った。
素直に女性性を受け入れられればいいのだろうけど、それを拒否してしまうと、愛する人との関係がうまくいかなくなってしまうし、女性性を弱さと捉えると仕事がうまくいかなくなる、みたいな。
女子カメラ写真問題みたいなところにも繋げられそうな話でした。
Posted by ブクログ
#1
劇中の中盤で最も心を惹かれたシーンがある。加賀美とニキが新宿の路上で写真をとる家族に遭ったあと、ニキが言う。
「さっきのお母さんの、『美人に撮ってよ』ってセリフ、良かったね。結局のところ、写真ってそういうことだよね」
ニキは不器用で、人間関係の機微よりも無機質な被写体を得意とする写真家だと自称し、それが写真にも表れていた。そしてそれを自身の姿、アイデンティティだと信じ込むために気を張っていた。それでも、物語の終わりについにニキは自身の人間ぽさに向き合った。
『美人に撮ってよ』のシーンは、二人がきっとその感覚に気がついていたんだとおもわせる瞬間だった。あのときに何かが起きていれば結末は変わっていたかもしれないし、あるいはそれのおかげで迎えた結末だったのかもしれない。
#2
初めて読んだ山崎ナオコーラ作品。巻末の解説も良かった。作者の気負わなさ、「何者でもない」という柔らかさが成し得た作品というのは大変に適った表現だ。「浮世離れした」アーティストの物語でありながら、それを気取ってるわけでもなく、天に向かって唾を吐き、それを自身の顔に浴びながら生きるサラリーマン生活の私にも優しく染み込んできた。
「ナオコーラなんてふざけた名前は、軽薄なエッセイを書いてるのかな」と思って読まず嫌いでごめんなさい。その柔軟で自然な感覚、最高です。他の作品もどんどん読みます。
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すごく読みやすいし、最近山崎ナオコーラさんばかり読んでる。
山崎ナオコーラさん好き。
ニキの想いとか、かわいかった。
加賀美くんは
前半のニキに対する感じよかったけど、やっぱり仕事絡むと難しいのかな。
きっと男女で違うんだろうな。
Posted by ブクログ
世界一好きな本屋で見つけて、即購入。タイトルと作者にキュンときたから。結果、大当たりの本だった。
ニキはひどくめんどくさい性格だけど、どこか共感できる部分もあった。恋愛してる自分は友達や家族に見られたくないとか。向こうから自分を好きになったのに自分がどんどん相手を好きになってしまうニキのことが好きだ。
加賀美はどうしようもない奴だけど現実的でそこが好き。
加賀美の頭ん中には恋愛ごとしかないのかもしれない、って思った瞬間もあったけど、彼が仕事にのめりこんでいく姿はカッコよかった。だけどやっぱり気持ちの悪い奴だとも思った。
喧嘩のときに加賀美がニキの喜ぶことを“してあげていた”と言ったのは良かった。愚かさが全面に出ていて非常に愛しい。ニキも中々に欠落しているし、その二人が合わさっていく感じ、そしてまた分解していく感じが、なんというか、すごく好き。
この小説を読めて良かった。私はこういう話を待っていたんだな、と思ったほど。また読み返そう。
Posted by ブクログ
ここ最近で1番スピーディーに読み終えてしまった1冊。芸術家、若くして成功、格差、才能、自由などなど20代の若者がきっと憧れる仕事に就いている人の話。もともと誰もが人間だということ、「好き」になると怖くなったり、いつも通りができなくなるということ。加賀美の美しい!と思う瞬間が素直でまっすぐで伸びていく光のようで、いいなあと思いました。
Posted by ブクログ
物凄い共感と既視感と。
どきどきして、ひりひりして、もうなんか…
眩暈がするほどでした。
このタイミングで読めてよかった。
ありがとう山崎ナオコーラ。
クリエイターとかアーティストって実はただの職業で、
結局の中身はただの人間なんだよね。
その肩書きや役割に、羨望とか嫉妬とか傲慢とか
歪んだフィルターを通して見てしまいがちだけど。
ニキみたいな自分もいれば、加賀美くんの気持ちも分かる。
どちらも責められない。
それでいいんだと思うけれど。
Posted by ブクログ
ニキの、自分に自信がない人特有の感じが、見ていてつらい。
愛されていることを素直に自覚できたらかなり生きやすくなるだろうが、そのニキを加賀美が好きになったはわからない。
加賀美がニキを可愛く見えなくなったこと、恋は盲目だと思った。
二人の生活の空気感をしっかり感じれたと思う。
そして、写真を撮りたくなった。
Posted by ブクログ
すごく良かった。
今まで読んできた、山崎ナオコーラさんの小説の文体(あの、なんとなくカタコトっぽいんだけど自然なセリフたち。すごくすき)とは、すこし違う感じがした。
恋愛小説と聞くと、なんとなく主人公が女性であることをイメージしてしまうが、本作はあくまでも、男性であるアシスタントの加賀美の視点を中心に、若くして成功したカリスマ女性カメラマン村岡ニキを映し出しているような、そんな感じ。新鮮。
自分の信じるものが強くあって、でも時々自信がなくなって。ひと以上に敏感に、ひとからの見られ方を気にするけれど、大切なひとを心から信じられない不器用なニキ。
すごくわかるし、愛おしい。女だからってナメられたくないと、悔しい涙を飲み込んで踏ん張る気持ちは、きっと真っ直ぐな加賀美にはわからないんだろうと思う。
これは予想でしかないけれど、ニキは、誰かに当たってしまう自分の弱さもわかっていて、それを省みてまた苦しくなったりしているんだと思う。
加賀美が、自分を恋人として周囲に紹介してくれないニキに不満を持つシーンがある。
これに対するニキの言い分には、首がもげるほど頷けた。
女性=恋バナが好き という図式に、私はいつも迷惑している。
自分の中での恋愛というのは、誰かに伝えるものじゃなくて、恋人との中だけで共有されるものだと思っている。ので、距離を縮めようと恋愛話をしてくる人がニガテで、そういうプライベートなことをずかずか聞いてこない人としか、友人関係は築けない。(自ら、自分の恋愛話をする分には大いに結構)
なんで恋バナがキライなんだろうと考えた時に、自分が鼻の下を伸ばしているさまを友人に見られるのがイヤだし、その逆もまた然り、なのだった。平たく言うと、『オンナの顔』が見え隠れするのが嫌なのだった。
ナオコーラさんの小説では、この人のジェンダーに対する考え方が織り交ぜられていることが多く、そのどれもが自分を肯定してくれる材料になるから、安心できる。
心に残ってしまう部分は、筆者の意図したところではないかもしれないけれど、芸術家同士の恋愛を描いた、なんてそんなあっさりすぎる感想は言いたくないと思った。そんな小説。大好きだった。
Posted by ブクログ
人前では強がるけど彼の前ではか弱くて自信がないニキ。自分の全てを加賀美に受け入れてもらえると思ったのかな。ニキの甘えが加賀美には辛かったのかな。失恋が自分のことのように辛い。素直になれないせいで大好きなのに相手を傷つけちゃう人は反省必至の小説。
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芸術家同士男と女同士の関係を上手く描かれてるなと思った。ニキがどんな女の子か想像するのが楽しかった。恋する姿を知り合いに見られたくないってすごく共感できる。
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写真家同士の格差恋愛小説。作中に出てくる「フラットな間柄に対する憧れが強いからこそ、関係が上下に揺れるところに、どきどきを強く感じてしまうのだ。」という一文が格差恋愛の妙味を表しているように感じたけど、じゃあフラットになったら、もしくは上下が逆転したらどうなるか。社会的に女扱いされるのは嫌だけど、たった一人には可愛い女の子として大切にされたいニキの不器用さが愛しくて痛くて、彼女の幸せが永遠に続いてほしいと思うと同時に、加賀美は良くも悪くも"男"なんだと強く感じた。だからこそのラストに切なくも納得。
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タイトル名が面白かったので読んでみました。『ニキの屈辱』なんて、なかなか秀逸なタイトルですね。
性別を離れて一人の「写真家」として生きたいニキが「女性」となった時、下剋上となってしっぺ返しを喰らった・・・という感じなんでしょうかね。
そのニキの人物設計は、上に媚びて下に厳しいという、いかにもフリーランスの仕事人間という感じが出ていてなかなか良かったです。それに反して、一人称目線の加賀美は今風の若者っぽさを演出しているようで、ちょっと共感しづらかったかな。(笑)大体、将来を目指してがんばっているなんて、ありきたり過ぎる。(笑)そして、すんなりいくところなんかも。(笑)この加賀美の存在が物語全体として軽いノリの雰囲気となってしまった可能性もあります。ですが、今時風の、そして、一見陳腐な関係を装いながら、実はこんな2人の関係なんて現実にはあまりないような気がして、こういう設定自体はなかなか面白かったと思います。
しかし如何せん、こんな恋愛関係って本当に成り立つんかいな?と思えるような展開になっていて、いまひとつニキの変節にも理解し難たくて、こんなところにも共感しづらい部分がありました。どうせなら、関係性を維持したままSMっぽく突っ走った方が面白かったかも。(笑)
本書では2人の会話が重要な流れを形作っているのだと思いますが、その会話や情景描写は、山崎ナオコーラならではの読みやすさと文章の感性が上手くフィットしていたように思います。ともすると軽い関係性の物語のようにも思えてしまいますが(笑)、本来は展開が難しい、移り変わる2人の関係性を何気ない形で表現できていたとも思います。
しかし如何せん、メインの流れがね・・・。(笑)
ラストの場は良かったですね。
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こわい恋愛小説でした。
わたしも恋をするとそうなりがちで、ああ鬱陶しがられる、捨てられるんだろうなぁというのがわかって、読んでいて辛かったです。
山崎ナオコーラの恋愛小説はどれもそんな感じで、自分の未来もきっとこうなるっていうのが想像しやすくて嫌ですね。
Posted by ブクログ
ニキは痛々しい。
全編を通して痛々しい。
使っている言葉が汚いし
人間関係を上下で考えているところが(映画のポスター写真を撮るチームで、身分が最下位だったというシーン)がばかばかしい
似合わないお化粧してもう写真撮らない宣言をしてしまうところに到ってはみじめだ。
だから、タイトルは「ニキの屈辱」
でもニキは強いから大丈夫だ。
Posted by ブクログ
芸術とは自由なことだ。自由なことは捕らわれないことだ。捕らわれないことは慮らないことだ。
そんな芸術家二人の恋愛模様。感性に生きる芸術家たる主人公が付き合うことを言葉で確かめあい、写真で思われていたことを理解するってのはなかなか。
主人公のとる写真は見てみたい
Posted by ブクログ
若くして成功した女性写真家のニキ。
単に写真家として見られることに執着し、若く可愛い女性として扱われることに強い拒否感を示す。増長と見られることを恐れ仕事では低姿勢。一方、アシスタントの加賀谷に対しては非常に高圧的。
しかし、そんな彼女が加賀谷を恋人関係になると、2人の時は猫の如くカワイイ女性に変身する。
いわば極端なツンデレキャラで、なんか微笑ましくも有りますが、ちょっと「過ぎる」かな。
やがて加賀屋の写真家としての成長とともにその関係は変化して行きます。
なんだかありがちなストーリーかもしれませんが、ニキの造形の面白さと山崎さんのちょっと不思議な雰囲気をもつ文章とあいまって、なかなか読ませます。
でも最後は。。。ちょっとかわいそうだな。
Posted by ブクログ
ニキと加賀美くんが距離を縮めてく過程に幸せな気持ちになる反面、片方の気持ちが離れてからはリアルで胸がキリキリしてしょうがない。
「私は、人間として自信がないことに集中していて、他人を愛そうということを思いついていなかったのかもな」というニキの言葉がガツンときた。読みやすいのに、自信が持てない人間にはとても胸に堪える恋愛小説だった。
Posted by ブクログ
読み進めて結末まで至るとなんて安直な展開に脆弱な構成の物語だったのだろうかと唖然として、ありきたりな凡作を読んだ印象しか残らなかった。もちろん気持ち良く読ませてくれたし、加賀美とニキの会話や態度はいじらしくてかわいかったのに、そのままの良い読後感はなかった。タイトルやカバーデザインは絶品なのに中身は伴わない残念作。