島田荘司のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
時代に取り残された男の悲劇
満州で生まれ、家族と共に日本に帰り着いた秋好であるが、不運につきまとわれ、戦後の好景気に取り残されたために貧困のスパイラルにとらわれ、それが後の犯罪につながったのではないだろうか。むろん、全てが本人の責任ではないが。
その原因は主に病弱の(かつては神童と呼ばれた)母、次々と死んでいく弟妹、父の突然死など…。
無論家族が悪いわけではない。だが、これらのどれがひとつでもなかったら、真面目な性格だった秋好英明は、ごく普通に人生を送ることができたかもしれない。
とは言え、本人がいくら真面目に働いても、いい加減な親戚や周囲の関係者たちが足を引っ張る。(いい人間もいるが…)
そして本人の内気で断れない性格や、厳しく叱責されたことがなかった経験(この辺りは現代の人にも当てはまりそう?)から、謝罪や都合の悪いことは口にできず、また、それらから何度も逃げる。
そして、自分に借金があることを隠して金遣いの荒い妻を娶り、ようやく借金を返し終わったと思ったらまた金をピンハネされたり浪費癖のある妻が数十万もする時計を勝手に買ったりと、要するに彼の人生は貧しさと、流されやすい性格、また逃亡癖、逮捕、投獄により最愛の娘を失い…と、とにかく積もり積もって人生の坂を転げ落ちていく。
英明はしょっちゅう金をなくす。落としたり騙されたり立て替えたのを返してもらえなかったり、盗まれたり…。最終的にはスロットマシンに手を出し、のめり込んでしまいには借金に追われる羽目になる。(とは言え、借金は踏み倒さずなんとか返していこうというのが彼の真面目さを表しているが…)借金を誤魔化すために嘘に嘘を重ねていく。
そして…。
内縁の妻となった女性の家族を殺害したとして死刑囚となるが、未だ執行されないのは何か理由があるからなのか。
秋好英明の凄絶な半生も緻密に書いてあり、また、逮捕されてから裁判、判決までについて、実に1/4近くを費やしている。
この本に書いてあることが全て真実かどうかはわからないが、文庫にすると、全編800ページ近くもあるという。
推理作家の島田荘司にこのような著者があるとは知らなかった。
司法の裁きが妥当か、戦後頻発した冤罪については、もしやこれもそうなのか…と色々と考えさせられる。
興味があれば、是非一読を。 -
Posted by ブクログ
短編集ですが内1編だけ「糸ノコとジグザグ 」という作品にシリーズものの探偵御手洗潔が登場します。★5というのは1編だけでも嬉しいといファンの評価も含まれています。
その「糸ノコとジグザグ」においても御手洗潔の登場は多くありませんが、少ない描写であってもしっかり御手洗潔らしさに溢れており、またシリーズの他作品との繋がりも見逃せない理由になっています。もちろんファンサービスだけでなくミステリとしても楽しめます。
本短編集はとてもバラエティに富んでいるのが特徴で、そこに1編だけシリーズものが入るのもキレイです。共通した特徴を挙げるとすれば、相変わらずのとても読みやすい文章と、当時の世情などの描写が盛り込まれていて、発刊から長い現在に読んでも、またどんな世代が手に取っても、とても興味深い作品となっています。
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Posted by ブクログ
推理ものを鑑賞していると、科学技術が進歩した現代では未解決事件はすっかり減ったなと思う時がある。
『占星術殺人事件』も1936年に起きた怪事件に40年後の若者たちが挑む作品で、なるほど事件当時は解明が難しかったであろう真相が秘められている。
主人公の御手洗潔も占星術師という何とも胡乱な商売を生業としていて、価値観も古くて度々うざい笑。
しかし読後は「他の誰でもなく御手洗が解決してくれて良かった」という何とも不思議な切なさに見舞われた。
頭を捻って考えれば読者にも解き明かせ(そうな気分にな)る内容の謎が読んでいて楽しくてたまらない。
何でこんなに面白いんだ!!!
(自分で推理するのは苦手だが作者の解説が上手い事もあり、途中で犯人とアゾートのトリックが分かったのを少し誇らしく思っている。) -
Posted by ブクログ
探偵と助手?(友達)が最初は40年以上未解決だったアゾート殺人の解決を依頼されて事件の詳細を聞く。
ずっと未解決だったんだしそれだけ聞いてもわかんないよーってなってたら、新しく手記が出てきて解決できるかなってなるんだけどできない。
この時探偵がずーっと解ける感出すからはやく答え教えてって思うけど解けなくてちょっと焦ったいw
その後現地調査にいって解決ってなるんだけど、
作者の挑戦文が差し込まれていて、実は最初から答え出てますと言われる。
めっちゃむかつく、ほんまか?
自分はミステリーを自分で考えず探偵の答え聞いてなるほどねーって思うタイプだから余計やめてよって思った。
けど答え聞いたらめっちゃ単純なことだったし本当に最初の情報で全部でててびびった。
解決後、下世話な感じがなくしっとり終わっていくのもなんかよかった
京都の嵐山行きたい。琴きき茶屋あるらしい
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Posted by ブクログ
ネタバレおもしろすぎた。小さな頃から古代エジプト(正確には3大ピラミッドとミイラ)が好きすぎて、今でも考古学者を夢見ている私の心を見事につかんで離さなかった。そして、小学生の頃にはやみねかおる先生の本でミステリにのめり込んだ人間からしてみると、余りにも聖地巡礼だった(恐らくピラミッドキャップ編はこの本が元ネタとしてあるよね?)。前半の石岡君の創作(?)の部分からとてもおもしろかった。まさかタイタニックも使うとは...石岡君結構節操がないな、と思って調べて見たら映画の方が6年も後だった。ごめん石岡君。レオナ強すぎる。御手洗は格好良すぎる。エジプトに益々行きたくなってしまった。ポンプ説はなんとなく予想付いていたけど、実際に実験し始めたときは開いた口が塞がらなかった。まあ冷静に考えたらおかしいのは分かったけれども。ミステリってこの人頭良ってなる快感を味わいたくて読んでいるところがあるので、非常に満足だった。
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Posted by ブクログ
完全な犯罪、完全な人形に残った思いとは
占星術殺人事件は自分が高校生くらいの時に一度読んだことがある作品で、そのときにそのトリックに度肝を抜かれた作品でもあった。作品の時代設定、遺体の見つかる場所やその順番の意味づけ、どうやって殺人を行ったのか、全てに繋がりや意味があり、震撼させられたのを覚えている。
再読するにあたりトリックは知っているものの、ここまでに多くのミステリー作品を読んできたこともあり、殺害状況や家系図などから薄々と焦点が絞りやすくなっている作品でもあるんだなということがわかり、何度読んでも新しい発見があると思った。
こういったバディー探偵ものとしては珍しいのかワトソン役がホームズ役に意外とずけずけと言う姿、意外と今作品は同行しない姿などがあり、そういった意味でも新鮮味を感じ、これから先の御手洗シリーズも読んでみたいなと思った。
色々とネタバレになるからトリックなどには触れられないが、作者にとって日常の何気のない一コマを自分の作品の重要なトリックに昇華しているところが創作性の高さを感じた。これは我々日々働いている身にも必要な力。何気ないことを自分の強みに活かす力を読み通した中で自分ももちたいなと感じた作品であった。 -
Posted by ブクログ
御手洗シリーズ2作目の今作は、1作目の占星術殺人事件とは結構作風が変わります。1作目の、登場人物による特異な内容の手記から始まり、占星術の専門的な説明により難解に感じた方でも、今作を読めば、こんなにも読みやすい文章を書く作家さんだったんだと驚くと思います。
今作は探偵と助手の登場が遅めなのですが、その分登場してからは御手洗潔の人としての魅力と探偵としての能力の高さを爽快に味わえます。更にその爽快さに合わせたかのように、今作のミステリは作者がちょくちょくかましてくる、とんでもトリックです。登場人物も多くなく、舞台である屋敷の見取り図を見ながら、肩肘張らずに王道のミステリ的な楽しみもできます。
なので読みやすさ優先であれは1作目より先に今作を読むのもありですが、気になってネット検索などした時に有名すぎる1作目のネタバレをくらわないように注意が必要ですし、少なくとも御手洗潔シリーズ中盤までは順番通りかが推奨されています。