【感想・ネタバレ】奇想、天を動かす~吉敷竹史シリーズ11~のレビュー

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Posted by ブクログ

島田荘司さんの作品は御手洗シリーズばかり読んでましたが、吉敷シリーズはこの作品が良いということで読んでみたところ、めちゃくちゃ引き込まれました。
江戸川乱歩風の気味の悪い導入から始まり、そこからこの先どうなっていくのかと気になってしまい、どんどん読み進めてしまいました。

読み応えありの非常に満足の一作でした!

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2021年09月02日

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警視庁捜査一課吉敷竹史ものの傑作。有名なトリックでドラマや漫画でもパクられているが話の作り方がオリジナルだけに素晴らしい。島田荘司は時に社会派ミステリを書きたがりますが、読者にはどうでも良いことで、どの方向に進んでも奇想があれば面白さは保証される。

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2021年04月29日

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関東シャカミス課題本。

のっけから不可解で奇怪な連続、大風呂敷に身を委ねる。読み終えてここまで充実したのは初めてかもしれない。 話はこうだ。浮浪者風の老人が消費税12円に逆上し、店の女をナイフで刺殺した。黙秘の真実を知るため、捜査がはじまる。

ピエロに巨人、大事故に奇想のオンパレードを地道な捜査(踏み入った場所の歴史的背景を説明するの大好き人間)で徐々に紐解いていく。
過去の事実を問題提起し、社会派として物語包み込みながらも、メインのトリックは「あぁ…これ大好き」

とっ散らかった妄想と着想が身を結ぶとタイトルの意味が浮かびあがり、途轍もない感動が待ち受けます。 文句のつけようがない傑作です。
とうとうGODに触れてしまったようだ…

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2018年10月29日

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 今では当たり前になってしまいましたが、消費税がはじめて導入されたときは、価格にプラスしていくらかお金を払うことが不自然で、結構戸惑いました。本の値段のところに「+悪税~円」などと表記する気骨のある出版社があったりもしました。
 その消費税が導入された1989年、消費税分12円が足りないと言われた老人が、請求した店の女性を刺殺する事件が発生します。逮捕された老人は完全黙秘に徹します。当初、消費税という新しい制度が理解できない老人の単純な衝動殺人に見えた事件には、実は壮大な歴史的背景がありました。踊りながら列車から消えるピエロ、列車を持ち上げる巨人、歩く首なし死体等、本当に面白い小説とはこういうものだという見本のような小説です。

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2016年08月16日

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島田荘司の吉敷竹史刑事シリーズ、第11作。本格ミステリと社会派を巧みに融合させた、読みごたえのある作品です。
物語は平成元年、春の浅草で起きた殺人事件で幕を開けます。仲見世の乾物屋の女主人が、消費税の支払いを拒否した浮浪者に衆人環視の中で刺殺されるという、一見けちな事件。消費税の導入が始まったばかりで話題性があることを除けば、特別に難しい事件ではないと思われました。
念のために捜査を開始した吉敷はしかし、よだれを垂らしてにやにや笑うばかりのぼけ老人としか見えない容疑者を前に、ふと疑念を抱きます。これは本当に、消費税のコンセプトを理解できないぼけ老人が、(商品の値段以上のものを要求されて)カッとなって衝動的に犯した殺人という、それだけのことなんだろうか?
そこから、壮大なスケールの物語が展開します。
老人の身元を探る旅、容疑者と被害者との過去の接点を見つける旅。
宮城から岩手、静岡、かと思えば江戸の面影を残す東京のあちこち、そして北海道。小さな手がかりを頼りに、「何かもっと過去の因縁があるはずだ」という勘を信じて地道な捜査を続ける吉敷。
その過程には、作者お得意の各種ウンチク(東京に残る江戸の遺構、冤罪被害の実態、戦時中の日本軍の罪など)が展開し、さらには奇妙なホラーともファンタジーともつかない挿入話が五編ほど加わり、複雑な謎を編み出します。
そして終章、まさに衝撃の事実が明らかになります。壮大なスケールの悲劇に、読者は息を呑むでしょう。
(この作品、最初に読んだのは20代の頃。細部をほとんど忘れてしまった状態で、ン10年ぶりに再読したのですが、あたりまえだけど初見の衝撃は返って来ませんでした。この作品をまっさらな気持ちでこれから読むひとが羨ましい!)
まさに奇想、天を動かす。細かい箇所で突っ込みを入れたくなるところもあるけど、そんなのはどうでもいい。一気読み必至の傑作だと思います。

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2014年01月28日

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密室から消えるピエロの死体、脱線事故を引き起こす白い巨人、動くバラバラ死体…。不可能としか思えない難攻不落のピースを、理詰めで解決する様は圧巻です。
そして、その事件の裏にある社会的背景へのやるせなさが強く読者に訴えかけます。本格ミステリーと社会派ミステリーが見事に融合した傑作で、数ある著者の作品群の中でも間違いなく5本の指に入るクオリティーだと思います。

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2015年12月27日

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素晴らしいとしか形容しようがない!事件があまりにも奇妙で不可解、謎だらけ。それが徐々に真相に近づいていく様にミステリー小説の醍醐味を味わえる。犯人の素性、生い立ちに絡む社会的メッセージも話を更に興味深くしている。島田荘司の作品でもっと評判が高いと思われる「異邦の騎士」「斜め屋敷…」「占星術…」よりもこちらの方が断然面白かった。

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2013年02月18日

購入済み

世界に誇れる「本格推理小説」!

この小説が、現代においてこんなに過小評価され続けていること自体が信じられません。
冒頭の「幻想(妄想?!)の様な事象」を、全て論理的に解明していくこのスゴさ!
電車を乗り継いだり、日本の観光名所を辿っているだけの「つまらないミステリ」とは、格段に違い、海外への翻訳も進めて欲しい作品です。

日本の推理小説の世界に〝革命を起こした〟島田荘司先生の「本格推理の金字塔」だと思います。
〝無冠の帝王〟呼ばわりされた時期も有りましたが、今の日本の世に、これだけ種類の豊富なミステリ小説が溢れているのは、ほぼ全て「島田荘司と云う先達(今も活動中ですがw)有ってのお陰」だと、老若男女を問わず自信を持ってお奨めします。

何から読んでも構いませんが、『占星術殺人事件』や『斜め屋敷の犯罪』を読んでからの方が馴染み易いかと思います。

島田先生も、ここ数年間は大分「落ち着いて」こられましたがw、たまにトンデモ無い短編等を突然撃ってくる、未だに「要マーク」な偉大な推理作家で有ることは変わりません。

島田先生、御手洗潔シリーズだけは、最後に大きな花火をお願いしますね!!!

#アツい #ドキドキハラハラ #深い

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2023年06月14日

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読みやすさ ★★★★☆
驚愕度 ★★★☆☆
読後清涼感 ★★★★★
脳内映像度 ★★★★☆
没入度 ★★★★★

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2023年05月29日

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ネタバレ

舞台は平成元年春、ボケた浮浪者が導入したばかりの消費税3%を巡って店員ともみ合いになった末に刺殺した――と週刊誌をしばらくの間だけ騒がして終わりと思われた事件は、薄皮1枚1枚剥がした先に昭和三十二年に起きた北海道の列車内の怪事件と繋がっていく、と言うストーリー。はじめチョロチョロ中パッパ、中盤で提示される5つの事件はまさに奇想天外。

犯人は冒頭で現行犯で捕まっており、これは最後まで覆ることはない。よって平成の刺殺事件の動機と昭和の事件のトリックがメインの謎として描かれる。ピエロの死体消失トリックは(これ金田一少年の某事件を彷彿させるなぁ…)と思ったらまさにその通りで占星術に続いてやってくれた喃キバヤシ…。

前知識ほとんどゼロで読んだのだが消費税、冤罪、強制連行など令和元年の今現在もタイムリーな話題がいくつか含まれていて何やら奇妙な縁を感じた。昭和が終わり平成も過ぎてもまだ終わらない悲しみと怒りが根底に残っている。あと出番はほんの数ページだが昭和の腐った警察のヘドロの塊のような便山のインパクトは絶大だった( ゚д゚)、ペッ

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2019年07月19日

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ネタバレ

これシリーズものだったのね。
でも単体でも楽しめる作品なので
あまり気にしなくても大丈夫。

すごく突き刺さる作品でした。
事件の怪奇さもそうだけれども、
その殺人の裏には不条理も不条理な歴史が
隠されていたわけで。

そんなことしないと、と思う人たち。
この登場人物の真相を
よく見てごらんなさい。
嫌悪を示す人もいるでしょ。
所詮そういうことなの。

でもね、便田のようなクソッタレとか
主任のようなうんこはどうにもならんよ。
木そのものを見ようとしないやつね。
こいつらがいる限り人は争うばかり。

決して解決しても
満足感は得られない作品。
ただ、たった一人の刑事が
その男の悲しき心の内を
見透かしてくれた…

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2019年06月07日

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再読。
本格ミステリと社会派の融合を味わう。

消費税のために起こったとされる殺人事件に隠された、ある男の人生を探る社会派的側面から、消えるピエロ、動く死体といった、遥か昔に起こった列車での一連の不可思議事を解き明かす本格ミステリ的側面までを、見事に織り交ぜた長編。

島田荘司ならではの不可解さを帯びた出来事を、吉敷刑事が社会派的テンポで解き明かしていく姿は心地よいBPMで読みやすい。

ただ、解決編のテンポがいわゆる"名探偵によるワンパン"ではない上、社会派の部分でも同情を誘う度合いが時間的障壁等の関係から薄くなるため、読みやすい分強烈なインパクトはなく、一読で満足する印象。

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2022年11月27日

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謎解きパートで何故か笑ってしまいました。"こんな手の込んだ事しなくても良くね?"と笑。

今でも日本を悩ませている"例の問題"をベースに刑事が聞き込みを続けて行き、同事に占星術殺人事件よろしく島田先生の大掛かりなトリックを味わえると言う一粒で2度美味しい作品です。

個人的には、刑事が靴を擦り減らして事件の真相や社会問題を炙り出して行く社会派(松本清張路線)とアッと驚く奇抜な出来事を論理で解明して行く本格ミステリは混ぜるな危険、と言う感想を持ちました。

でも、創作の心意気に脱帽したので☆4つです!

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2023年08月14日

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ネタバレ

ツラい過去があった犯人が復讐しました。この本筋にたどり着くまでに謎が多く、じわじわと解き明かされていき爽快でした。
しかしこの犯人はなんとも浮かばれませんね。

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2023年05月30日

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島田荘司、第二の代表作。
12円の消費税のために、ボケ老人が店主の女性を刺した。あまりにもつまらないこの事件に、ある男の魂が詰まっているだなんて誰が思うだろう。
島荘の名にふさわしい現実離れした謎と、露わになる奇想。そこに浮かび上がる、一人の韓国人の人生。

「この事件を通じ、天が自分に何かを語ってくるような気がした。昭和という時代、そして日本人の過去の罪、あるいは今も犯しつつある罪、また、この人種の本質、といったものではあるまいか。警察官である自分に、これに気づけ、そして把握しろ、天がそう促している気がした。」

奇想、天を動かす。読み終えたあとに見ると、このタイトルもなんと意味深いことだろう。この本は、僕の心のどこかを、静かに、そして熱く、揺さぶってくる。

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2022年02月15日

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自殺したピエロは密室から姿を消し、首無し遺体は突如として動き出す。そして天に向かって飛び跳ね脱線する列車…
奇天烈な事件の数々に解決の糸口すら見出せない。どうしたらこんな難解な謎が解けるのだろうか。物語の主人公はもちろん、読者ですら同じ思いを抱いてしまう本書。少しずつその謎が解き明かされ、全貌が明らかになる展開に、ミステリー特有のワクワク感を楽しむことができました。

本書はそんなミステリーでありながら、冤罪や戦中日本が起こした暴挙などに目を向ける社会的な側面もあります。解説を読むにむしろこの社会的な側面こそ重視されたようですが、ミステリーと社会性が絶妙にマッチした作品でした。

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2020年11月04日

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ネタバレ

なるほど。島田荘司らしい、ドラマチックで派手なストーリーだった。タイトルも含めて。
吉敷シリーズの傑作をつまみ読みした中で、本作品が一番好き。

浮浪者が12円の消費税を払いたくなくて女店主を発作的に刺した、という一見下らない事件の、隠された背景に迫るストーリー。いわゆるホワイダニットになるのかな。
真相が明かされたところで、浮浪者が女店主を刺した、という事件の表層は変わらないんだけど、昭和の闇の犠牲になった哀しく壮絶な背景は、読み応えあった。
死体が消えただの轢断死体が歩いただの白い巨人が云々だの、昭和三十二年の北海道札沼線に起こった奇天烈としか言いようのない事件は、これさすがに合理的な説明無理だろ、と思った。
(車内トイレの便器の穴は人の頭だけなら通るってことでいいのか)
桜井佳子はクソ女だけど、呂泰明が殺されたことは知らずじまいだったんだろうなぁ。

平成という年号が出てきて、昔の小説だと思っていた吉敷シリーズが一気に現代に飛んできたような錯覚に見舞われた。って言ったって平成元年はもう三十年以上前だった。
携帯電話ないし。
吉敷は確かに有能な刑事だけど、それより牛越の優秀さが光った。久しぶりって言い合ってたけど自分が読んだ吉敷シリーズに牛越全部出てきたから、自分的にはすっかりレギュラー。

ミステリの多くは事件の捜査が進むと第二の殺人とか起きて連続事件に発展するのに、吉敷シリーズは事件は事件として最初に完結してるところと、捜査で浮かび上がった断片的な事実をもとに吉敷が力技で推理しちゃう強引さが、却って新鮮。
足を使った地道な捜査は、民俗学のフィールドワークに通じる。
でも、吉敷は正義感からというより自分が納得できないからという自己中心的な理由で動いてる気がして、そこのところはちょっと苦手。

吉敷は相変わらず生活感のないイケメン設定だけど、今回は外見の描写がほとんどなかった。吉敷、歳取ったね…

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2020年10月18日

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名ミステリとして挙げられていたので。
北海道を走る夜行列車の中、踊るピエロが自殺して、その死体が消えた。同時刻に飛び込み自殺があり、またその死体が消えた。そして起こる爆発と、列車を見下ろす白い巨人。50年後の浅草の12円の殺人との、繋がりは。
ずっと読み進めていてもおどろおどろしく謎だらけで、繋がりがさっぱり分からなかったのが、過去をたどっていくと老人の刑務所の悲惨さや悲しい過去がわかっていく。
最後に真相が見えたときは、なるほどなーと思った。

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2019年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

奇想、天を動かす。
現在、島田荘司氏を語る時、「冒頭における幻想的な謎と最後におけるそれらの論理的解決。それが本格だ」という持論を証明すべく書かれたのが本書であり、そのタイトルがその意欲を物語っていると評される。
しかし、自分には今回最も苦慮したのがタイトルではないかと思えるのだ。
今回はとても痛い。老人が余りに痛いのだ。救われないのだ。
最後に故郷に妻がいるという衝撃は悠久の心痛を想起させる。
テクニックと云えばそれまでだが、やはり最後は微笑みたい。

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2019年09月19日

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島田荘司はすごい。冤罪、強制連行という社会的な問題を取り上げながら、物語をうまく奥深くさせている。それでいてどんどん読ませる。描写が巧みだから、それぞれのシーンをありありと想像できる。結末はやるせないけど、壮大な物語を大いに楽しめたし、島田荘司の文章力に感嘆した。

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2019年01月05日

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社会派として、本格として、どちらもハイレベルなものではあるんだろうけど、やっぱり両者は相容れないものなのかなと思ってしまった一冊。
要するに社会派チックな背景を持った頭の切れる犯人が、奇怪な発想で事件を起こした。という構図なわけで、必ずしもそこに“本格”は要らないのでは?と。
社会派で本格を書く必然性を生み出すのは、早坂吝『誰も僕を裁けない』のように社会派をガジェットとしてネタ扱いするしかないのか…
島田荘司の小説を書く上手さと、本格を書く巧さが個々で際立ったための世間での高評価なのだと思う。
いろいろ言ったけど、めっちゃ面白いし引き込まれるからやっぱ島田荘司すげぇ!
ただ一つ、高木彬光の傑作トリックを丸パクリというのは気に入らない。まさか島田荘司ほどの作家が読んでないわけ無かろうに……

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2016年12月14日

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初めての島田荘司作品、今さらながらであり今年は島田作品を読み進めることに決めた。

今作は御手洗シリーズと双璧を成す吉薮刑事シリーズである。タイトルだけは知っていて評判の良さも知っていて、安価であったため初読みをこれにした。安易な理由であり島田作品に申し訳なく思う。が、評判通りのできばえで非常に面白かった。

作品世界は平成になったばかりの頃、もうけっこうな昔になってしまったが自分には馴染み深い。その頃に30年以上前の未解決事件を追うという筋立てである。ファンタジー然とした挿話が挟み込まれたりして、どんな着地を見せるのか?とはらはらしながら読み進めるも最後はしっかり全てのピースがはまり、謎が解かれ物語は終幕する。島田作品の共通項として「冤罪」があるようだ。そちらにも興味をもった、今後出会えればさらに理解が深まるのだろうか?島田作品をさらに追いかけてみるしかないようである。

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2016年03月05日

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ネタバレ

推理というよりは二時間ドラマ的な話の構成で、その人の人生を掘り下げていく謎解きが砂の器を彷彿させる。

さすが『昭和という、強引な急成長の時代の歪みとかつけといったものを抉り出す』とうたわれた本格社会派ミステリー。

初めから犯人分かっている状態なのだが、400ページにわたり一切口を開かなかった犯人が、真相をつきとめた吉敷刑事の独白で真実を語り始めるシーンは震えた。
人間の尊厳を踏みにじるお偉方に激昂するシーンは感動もの。
それは今現代であっても変わらないというのは情けないものなんだろうけれど。

謎に至っては小麦粉による粉塵爆破だけしか謎は解けなかったが、面白かったな。
というより、「小麦粉を投げつけた」というシーンだけで、思いつきだけど粉塵爆破では?と思った俺は、ある意味迷探偵。

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2014年11月27日

Posted by ブクログ

トラベルミステリーと思いきや、かなりの本格物かつ、社会派。あとがきにもあったが、本格と社会派が高いレベルで融合されている、傑作。

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2014年06月29日

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好きではあるけど、普段全く読まないジャンルの本格ミステリ。
冒頭は江戸川乱歩かと思いましたが。。。

ぐっとくる部分も多々あり、金田一少年、コナン君とかはこういう流れを模倣したのかなぁと。
こんなに重い設定は少年誌は難しいけど。
噂の占星術事件も読むべきか。。。!?

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2015年07月15日

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ネタバレ

ちゃんとワクワクしながら最後まで楽しめたので★4つ。

浅草で、老人が店の女主人を刺殺した。一見、消費税分の12円を催促されたことに腹を立てた老人が思い余って殺してしまったように見えるが、この老人と女主人との過去を吉敷刑事を追及するという話。

舞台は北海道。謎は5つ。
・札沼線の1両目が突然上に持ち上がり脱線事故を起こす
・ピエロが札沼線のトイレで自殺するが30秒後に死体が消える
・札沼線に飛び込んだ人間の死体が歩き出して最後には消えてしまう
・同時刻、函館本線で暴力団組員が銃殺されるが犯人が挙がっていない
・脱線時赤い目をした白い巨人が現れた

小説では上記5つとは違う謎を提示しているが、わたしはこの小説の解くなぞは上記5つであると思う。きちんと最後には現実的(?)なオチがつくのだが、最後の白い巨人だけはどうも...???という感じ。

え、そういうオチでいいの? ずっと謎だったのに??と思ったけれど、兎にも角にも、そこそこ複雑でそこそこ丁寧・緻密で、読書というものを楽しめた満足の一冊。

戦前戦後における日本人の朝鮮への仕打ちに対する慚愧や、急成長を遂げる日本社会の中で犠牲となった冤罪の被害者達。そういう側面もあったので社会派小説とも表現されているようだ。

でも、もう島田荘司はいいかなぁ。とも思った。やっぱり懐かしい感じが目立ってしまう。

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2013年12月12日

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社会派ミステリ。

吉敷シリーズは初めて読んだ。

巨大な犯罪の構図,トリック...とにかくすごい。

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2013年05月03日

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①ジェネレーションギャップ
②何度も演算したような、確かなミステリー

感想はこの2つです。

①のジェネレーションギャップ
 とは、私は2021年にこの本を読みましたが、この本は1993年に発売していたようです。
私が生まれるよりも昔にできた本は、時代背景が大きく異なっていることが、非常に面白い点です。
この本の大きなテーマは、消費税が1989年から3%徴収という形で世間に浸透し始めた時期に、消費税を払いたくない老人が人を殺す という社会的で衝撃的な始まり方なのです。
当時の世間での消費税へのネゴは凄まじいものだったと、本を読んだり、歴史を調べてみても思います。
今でこそ当たり前となっている消費税 という認識を持ったまま、この本を読むと色々なギャップを楽しめると思います。


②の確かなミステリー
 とは、非常に細かく、何時何分、どの場所に誰がいて、アリバイは完璧だ というようにかなり具体的に時間と人物と場所が終始書かれています。
私はミステリーが好きで良く読みますが、ここまで具体的に書かれているのは初めてだったように思います。
(凄いとは思いましたが、具体的に記載内容の検証とかはしてないですが)
好みの問題かとは思いますが、私はもう少し簡素にテンポ良く話が進む方が好きなので、くどく感じましたが、丁寧に練られたストーリーで、トリックであることは読んでてひしひしと感じていきました。

奇想、天を動かす。
古いミステリーと思って読んでみたら、日本と韓国の関係や、消費税導入などの社会的議論を生む話題にも繋がっていて、面白かったです。

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2021年02月05日

Posted by ブクログ

本格と社会派の融合、まさに奇想が天を動かす名作。およそ不可能に思える死体消失や白い巨人の謎。そして消費税導入に際した衝動的殺人と思われた事件の背後にある深く長い苦痛と執念の物語。あまりに奇怪な謎が、社会的テーマを取り込みながら一挙に解かれていく様が見事な作品だった。「本格」部分にあたる謎解きはそう難しいパズルではないが、そこに社会的テーマや時代、風土の「ドラマ」が織り込まれることで非常に重厚感のある物語になっている。作者の個人的想いが投影され過ぎたきらいがあるが、それが登場人物を立体的にしている。

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2018年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

島田作品は大好きで、再読を含め、いま出版順に読んでいる。

本書はとても面白いミステリ作品。

ただ一点、どうにも腑に落ちないところがあった。
ミステリとしては致命傷とも思えるもので、好きな島田荘司作品なだけに残念でしかたがない。

腑に落ちない点は動機だ。
「犯人はなぜ“消費税殺人”を犯すに至ったのか?」という動機におかしな点がある。

なぜ桜井佳子を殺した?

「弟の復讐に決まってるだろ!」

そんな声が多くの読者からあがりそうだが、それはおかしいと思う。読者の視点で見るから(読むから)そう思ってしまうのだ。

兄の視点で(兄になったつもりで)現場の状況を想像してみてほしい。さて、どう見える?

函館線の列車内で弟が殺された時、兄は眠っていた。
だから、何が起こっていたかなどまったく知るはずがないのだ。

殺人現場にいた男(ヤクザ者)を見つけ、とっさの状況判断で、
「こいつが弟を殺したヤツに違いない」と瞬時に判断したとしてもおかしくはない。
でも、その時点でその場所からはもう消えていた桜井佳子に対してはどう考えるものだろう?

眠っていた兄の身になって想像してみた。
目を覚ますと、弟と女がいない。不安になり探しに行くと……。

女連れの弟がヤクザ者に絡まれ、弟が女を他の車両に逃がした上で争い、結果殺されたのか? 
たとえば、そんなふうに考えたか。
あるいは、ヤクザ者に仲間がいて、他の車両に女を連れていった。そう考えたか。
女が列車から飛び降りたと考えられたか。その考えはあり得なさそうだが、あったとしても、なぜ飛び降りることになったのかはわからなかっただろう。

いずれにせよ、兄はあの段階で女が弟を裏切ったとはわからないはず。疑いくらいは持つかもしれない。勘で、女が裏切ったと思ったかもしれないし、初めから嵌められていたと思ったかもしれない。
でも、疑いとか勘だけのこの時点では、絶対に女に復讐する、殺す、なんていう考えに至ったわけがない。
確たる証拠もなしに、あの犯人は殺人を犯すような人間ではないからだ。
吉敷が犯人について調べ、その人間像をどう理解したかを思い出さなければいけない。

そこで、どうやって知り得たのかと色々と考えてみた。でも、どうしてもわからない。
のちに、兄が躍起になって調べたのだろうということも当然考えたが、これも刑事たちの捜査であり得ないことがわかった。

結局、どう考えようとも、犯人が殺意を抱くに至った過程が謎のままなのだ。

しかし、犯人の動機が非常に重要な事件だと吉敷刑事は確信している。にもかかわらず、

「呂泰永は桜田佳子の裏切りをどうやって知ったのか?」

それを調べない吉敷刑事はおかしいと言わざるを得ない。

だから、吉敷刑事が上司に激しく反抗してしまったことには、かなり驚いた。今の段階でそれは、浅はかな行動だと思ったのだ。
取調べで、殺すに至った経緯を呂泰永本人から聞き出せたのならともかく、最後までその部分は解明できていないのだから。

それから女の裏切りについて。
女は裏切ったといっても、サーカス団から夜逃げするために兄弟を利用しただけ。夜逃げに成功したら、弟の呂泰明をフルつもりだったのは確かだろうが、まさか弟の呂泰明が殺されるなどとは夢にも思っていなかっただろう。
まして、源田組のチンピラの話によれば、事件は突発事故のようなものだったではないか。
それらのことを鑑みたとき、はたして女は殺されるほどの罪を犯したといえるだろうか。
吉敷刑事が調べだした呂泰永の人柄をもう一度思い出したい。
呂泰永は確証も得ずに人を殺す人間とは思えないし、だからといって確証を得たはずはない。やはり矛盾がある。

そんなわけで、本格と社会派のミステリを融合させるという意欲作ではあるが、ミステリとしては、う~ん……。

賛否両論ある作品だと知ったが、トータルとしてはどちらかといえば賛、指摘した点や歴史的な記述の扱い方には問題があると思うので否。
でも、作品のすべてを否定するわけではなく、その部分だけに疑問が残るということ。残った疑問点というのが事件のキーポイントに関わることなので、かなり大きなマイナスポイントに繋がった。

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2013年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

吉敷竹史シリーズ

消費税12円を請求されたことで桜井佳子を刺殺した行川郁夫。事件に不振を抱いた吉敷の捜査。行川が書いた童話。列車の中で踊るピエロ。列車のトイレから消えたピエロの遺体。白い巨人に脱線させられた列車。飛び込み自殺の遺体が甦り逃走する。牛越刑事の捜査であきらかになる実際に起きた事件。サーカスから駆け落ちした呂兄弟と桜井佳子。函館本線で射殺されたチンピラの荒井。札沼線から消えたピエロ。冤罪で服役していた行川の過去。


新装版 2007年3月25日初読

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2015年03月01日

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