【感想・ネタバレ】奇想、天を動かす~吉敷竹史シリーズ11~のレビュー

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舞台は平成元年春、ボケた浮浪者が導入したばかりの消費税3%を巡って店員ともみ合いになった末に刺殺した――と週刊誌をしばらくの間だけ騒がして終わりと思われた事件は、薄皮1枚1枚剥がした先に昭和三十二年に起きた北海道の列車内の怪事件と繋がっていく、と言うストーリー。はじめチョロチョロ中パッパ、中盤で提示される5つの事件はまさに奇想天外。

犯人は冒頭で現行犯で捕まっており、これは最後まで覆ることはない。よって平成の刺殺事件の動機と昭和の事件のトリックがメインの謎として描かれる。ピエロの死体消失トリックは(これ金田一少年の某事件を彷彿させるなぁ…)と思ったらまさにその通りで占星術に続いてやってくれた喃キバヤシ…。

前知識ほとんどゼロで読んだのだが消費税、冤罪、強制連行など令和元年の今現在もタイムリーな話題がいくつか含まれていて何やら奇妙な縁を感じた。昭和が終わり平成も過ぎてもまだ終わらない悲しみと怒りが根底に残っている。あと出番はほんの数ページだが昭和の腐った警察のヘドロの塊のような便山のインパクトは絶大だった( ゚д゚)、ペッ

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2019年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これシリーズものだったのね。
でも単体でも楽しめる作品なので
あまり気にしなくても大丈夫。

すごく突き刺さる作品でした。
事件の怪奇さもそうだけれども、
その殺人の裏には不条理も不条理な歴史が
隠されていたわけで。

そんなことしないと、と思う人たち。
この登場人物の真相を
よく見てごらんなさい。
嫌悪を示す人もいるでしょ。
所詮そういうことなの。

でもね、便田のようなクソッタレとか
主任のようなうんこはどうにもならんよ。
木そのものを見ようとしないやつね。
こいつらがいる限り人は争うばかり。

決して解決しても
満足感は得られない作品。
ただ、たった一人の刑事が
その男の悲しき心の内を
見透かしてくれた…

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2019年06月07日

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ネタバレ

ツラい過去があった犯人が復讐しました。この本筋にたどり着くまでに謎が多く、じわじわと解き明かされていき爽快でした。
しかしこの犯人はなんとも浮かばれませんね。

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2023年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なるほど。島田荘司らしい、ドラマチックで派手なストーリーだった。タイトルも含めて。
吉敷シリーズの傑作をつまみ読みした中で、本作品が一番好き。

浮浪者が12円の消費税を払いたくなくて女店主を発作的に刺した、という一見下らない事件の、隠された背景に迫るストーリー。いわゆるホワイダニットになるのかな。
真相が明かされたところで、浮浪者が女店主を刺した、という事件の表層は変わらないんだけど、昭和の闇の犠牲になった哀しく壮絶な背景は、読み応えあった。
死体が消えただの轢断死体が歩いただの白い巨人が云々だの、昭和三十二年の北海道札沼線に起こった奇天烈としか言いようのない事件は、これさすがに合理的な説明無理だろ、と思った。
(車内トイレの便器の穴は人の頭だけなら通るってことでいいのか)
桜井佳子はクソ女だけど、呂泰明が殺されたことは知らずじまいだったんだろうなぁ。

平成という年号が出てきて、昔の小説だと思っていた吉敷シリーズが一気に現代に飛んできたような錯覚に見舞われた。って言ったって平成元年はもう三十年以上前だった。
携帯電話ないし。
吉敷は確かに有能な刑事だけど、それより牛越の優秀さが光った。久しぶりって言い合ってたけど自分が読んだ吉敷シリーズに牛越全部出てきたから、自分的にはすっかりレギュラー。

ミステリの多くは事件の捜査が進むと第二の殺人とか起きて連続事件に発展するのに、吉敷シリーズは事件は事件として最初に完結してるところと、捜査で浮かび上がった断片的な事実をもとに吉敷が力技で推理しちゃう強引さが、却って新鮮。
足を使った地道な捜査は、民俗学のフィールドワークに通じる。
でも、吉敷は正義感からというより自分が納得できないからという自己中心的な理由で動いてる気がして、そこのところはちょっと苦手。

吉敷は相変わらず生活感のないイケメン設定だけど、今回は外見の描写がほとんどなかった。吉敷、歳取ったね…

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2020年10月18日

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奇想、天を動かす。
現在、島田荘司氏を語る時、「冒頭における幻想的な謎と最後におけるそれらの論理的解決。それが本格だ」という持論を証明すべく書かれたのが本書であり、そのタイトルがその意欲を物語っていると評される。
しかし、自分には今回最も苦慮したのがタイトルではないかと思えるのだ。
今回はとても痛い。老人が余りに痛いのだ。救われないのだ。
最後に故郷に妻がいるという衝撃は悠久の心痛を想起させる。
テクニックと云えばそれまでだが、やはり最後は微笑みたい。

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2019年09月19日

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推理というよりは二時間ドラマ的な話の構成で、その人の人生を掘り下げていく謎解きが砂の器を彷彿させる。

さすが『昭和という、強引な急成長の時代の歪みとかつけといったものを抉り出す』とうたわれた本格社会派ミステリー。

初めから犯人分かっている状態なのだが、400ページにわたり一切口を開かなかった犯人が、真相をつきとめた吉敷刑事の独白で真実を語り始めるシーンは震えた。
人間の尊厳を踏みにじるお偉方に激昂するシーンは感動もの。
それは今現代であっても変わらないというのは情けないものなんだろうけれど。

謎に至っては小麦粉による粉塵爆破だけしか謎は解けなかったが、面白かったな。
というより、「小麦粉を投げつけた」というシーンだけで、思いつきだけど粉塵爆破では?と思った俺は、ある意味迷探偵。

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2014年11月27日

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ちゃんとワクワクしながら最後まで楽しめたので★4つ。

浅草で、老人が店の女主人を刺殺した。一見、消費税分の12円を催促されたことに腹を立てた老人が思い余って殺してしまったように見えるが、この老人と女主人との過去を吉敷刑事を追及するという話。

舞台は北海道。謎は5つ。
・札沼線の1両目が突然上に持ち上がり脱線事故を起こす
・ピエロが札沼線のトイレで自殺するが30秒後に死体が消える
・札沼線に飛び込んだ人間の死体が歩き出して最後には消えてしまう
・同時刻、函館本線で暴力団組員が銃殺されるが犯人が挙がっていない
・脱線時赤い目をした白い巨人が現れた

小説では上記5つとは違う謎を提示しているが、わたしはこの小説の解くなぞは上記5つであると思う。きちんと最後には現実的(?)なオチがつくのだが、最後の白い巨人だけはどうも...???という感じ。

え、そういうオチでいいの? ずっと謎だったのに??と思ったけれど、兎にも角にも、そこそこ複雑でそこそこ丁寧・緻密で、読書というものを楽しめた満足の一冊。

戦前戦後における日本人の朝鮮への仕打ちに対する慚愧や、急成長を遂げる日本社会の中で犠牲となった冤罪の被害者達。そういう側面もあったので社会派小説とも表現されているようだ。

でも、もう島田荘司はいいかなぁ。とも思った。やっぱり懐かしい感じが目立ってしまう。

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2013年12月12日

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島田作品は大好きで、再読を含め、いま出版順に読んでいる。

本書はとても面白いミステリ作品。

ただ一点、どうにも腑に落ちないところがあった。
ミステリとしては致命傷とも思えるもので、好きな島田荘司作品なだけに残念でしかたがない。

腑に落ちない点は動機だ。
「犯人はなぜ“消費税殺人”を犯すに至ったのか?」という動機におかしな点がある。

なぜ桜井佳子を殺した?

「弟の復讐に決まってるだろ!」

そんな声が多くの読者からあがりそうだが、それはおかしいと思う。読者の視点で見るから(読むから)そう思ってしまうのだ。

兄の視点で(兄になったつもりで)現場の状況を想像してみてほしい。さて、どう見える?

函館線の列車内で弟が殺された時、兄は眠っていた。
だから、何が起こっていたかなどまったく知るはずがないのだ。

殺人現場にいた男(ヤクザ者)を見つけ、とっさの状況判断で、
「こいつが弟を殺したヤツに違いない」と瞬時に判断したとしてもおかしくはない。
でも、その時点でその場所からはもう消えていた桜井佳子に対してはどう考えるものだろう?

眠っていた兄の身になって想像してみた。
目を覚ますと、弟と女がいない。不安になり探しに行くと……。

女連れの弟がヤクザ者に絡まれ、弟が女を他の車両に逃がした上で争い、結果殺されたのか? 
たとえば、そんなふうに考えたか。
あるいは、ヤクザ者に仲間がいて、他の車両に女を連れていった。そう考えたか。
女が列車から飛び降りたと考えられたか。その考えはあり得なさそうだが、あったとしても、なぜ飛び降りることになったのかはわからなかっただろう。

いずれにせよ、兄はあの段階で女が弟を裏切ったとはわからないはず。疑いくらいは持つかもしれない。勘で、女が裏切ったと思ったかもしれないし、初めから嵌められていたと思ったかもしれない。
でも、疑いとか勘だけのこの時点では、絶対に女に復讐する、殺す、なんていう考えに至ったわけがない。
確たる証拠もなしに、あの犯人は殺人を犯すような人間ではないからだ。
吉敷が犯人について調べ、その人間像をどう理解したかを思い出さなければいけない。

そこで、どうやって知り得たのかと色々と考えてみた。でも、どうしてもわからない。
のちに、兄が躍起になって調べたのだろうということも当然考えたが、これも刑事たちの捜査であり得ないことがわかった。

結局、どう考えようとも、犯人が殺意を抱くに至った過程が謎のままなのだ。

しかし、犯人の動機が非常に重要な事件だと吉敷刑事は確信している。にもかかわらず、

「呂泰永は桜田佳子の裏切りをどうやって知ったのか?」

それを調べない吉敷刑事はおかしいと言わざるを得ない。

だから、吉敷刑事が上司に激しく反抗してしまったことには、かなり驚いた。今の段階でそれは、浅はかな行動だと思ったのだ。
取調べで、殺すに至った経緯を呂泰永本人から聞き出せたのならともかく、最後までその部分は解明できていないのだから。

それから女の裏切りについて。
女は裏切ったといっても、サーカス団から夜逃げするために兄弟を利用しただけ。夜逃げに成功したら、弟の呂泰明をフルつもりだったのは確かだろうが、まさか弟の呂泰明が殺されるなどとは夢にも思っていなかっただろう。
まして、源田組のチンピラの話によれば、事件は突発事故のようなものだったではないか。
それらのことを鑑みたとき、はたして女は殺されるほどの罪を犯したといえるだろうか。
吉敷刑事が調べだした呂泰永の人柄をもう一度思い出したい。
呂泰永は確証も得ずに人を殺す人間とは思えないし、だからといって確証を得たはずはない。やはり矛盾がある。

そんなわけで、本格と社会派のミステリを融合させるという意欲作ではあるが、ミステリとしては、う~ん……。

賛否両論ある作品だと知ったが、トータルとしてはどちらかといえば賛、指摘した点や歴史的な記述の扱い方には問題があると思うので否。
でも、作品のすべてを否定するわけではなく、その部分だけに疑問が残るということ。残った疑問点というのが事件のキーポイントに関わることなので、かなり大きなマイナスポイントに繋がった。

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2013年04月11日

Posted by ブクログ

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吉敷竹史シリーズ

消費税12円を請求されたことで桜井佳子を刺殺した行川郁夫。事件に不振を抱いた吉敷の捜査。行川が書いた童話。列車の中で踊るピエロ。列車のトイレから消えたピエロの遺体。白い巨人に脱線させられた列車。飛び込み自殺の遺体が甦り逃走する。牛越刑事の捜査であきらかになる実際に起きた事件。サーカスから駆け落ちした呂兄弟と桜井佳子。函館本線で射殺されたチンピラの荒井。札沼線から消えたピエロ。冤罪で服役していた行川の過去。


新装版 2007年3月25日初読

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2015年03月01日

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