島田荘司のレビュー一覧
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ネタバレ(上巻の感想からの続き)
そういった中でも大トリックを仕込んでいるのが非常に嬉しいし、また、菱川幸子の殺害方法が運命の皮肉さを伴っているのが単なる推理ゲームに堕してなく、小説として余韻を残してくれるのがプライドを感じて嬉しい。
連続殺人が続くのも、最後の最後まで御手洗を登場させず、石岡という凡人に解決させることにより、不自然さが無い―よく名探偵がさんざん人が死んでおきながら犯人は貴方だ!と誇らしげに指摘する厚顔無恥さがこの作品には無い。昭和初期の殺人事件に基づいて連続殺人が成されたというのも島田氏がこだわる日本人論、昭和論をほのめかしており、しかも忘れ去られるであろう事件を再認識させてくれた -
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これは新たなる島田氏の代表作だと云っても過言ではないだろう。『秋好事件』のノンフィクションタッチがこの作品でいかんなく発揮されており、島田氏がただ単純にノンフィクションを書いたのではないことも判った。
巨匠にして新たなる手法を生み出す、この貪欲さは新本格第1期組の、なかなか新作を出さない輩共に見習って欲しい姿勢である。
『津山30人殺し』をモチーフに、というかそのものを題材にかの御手洗潔のパートナー、石岡和己を主人公にして陰惨な連続殺人事件を繰り広げるというこの設定からして斬新だ。最初は単なる横溝正史へのオマージュだと思っていたが、いやいや、やはり島田氏、オリジナリティー溢れる作品となってお -
購入済み
ずっと探していました。
毒を売る女の内容を15歳の時に読み
46歳になっても内容が印象的でまた読みたかったのですが、当時の記憶がなく
作者、題名もわからないままでした。
やっとそれらしき題名を見つけたので、
購入しました。
まさに、読みたかった本でした!!
当時の印象通り、最高の内容です。 -
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ネタバレ御手洗潔5歳と小学2年の時の事件。幼馴染の橘えり子さんとひょんなことで知り合った石岡君が聞き書きしたというお話二本。御手洗の生い立ち、その人格の基礎となるような出来事などが分かるような内容ながらミステリとしてもきっちり構成された二作。とても面白かった。ただ、石岡君、鈴蘭事件の発表の仕方といい、なんというか関係者に何の了解もなくどんどん書いちゃってるの大丈夫なの……と思ってしまった。御手洗もスウェーデンでびっくりなのでは。まあ、そんな細かいことは気にしないのかな、彼……。
あと、鈴蘭事件の出だし、里美のボーイフレンド?の刑事との関係にやたらとこだわる石岡君、相当アレでは。君たち、キスとかしたの? -
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ネタバレ面白かった。上巻で二宮佳世が退場したのがこう効いてくるとは。暗闇坂の森さんの例があるから、また物語の導入だけに使われた女性キャラだと思い込んでたら良い意味で裏切られた。
津山事件についてページ割きすぎとは少し思ったけど、樽元の死際の言葉に石岡くんが忠実だったと思えば納得できる。
むかでの間での二回の殺人と小野寺殺しのトリックは、斜め屋敷的な感じもあり島荘ならでは。
ページ数が多いのも、事件の大きいのにも、石岡くんの頑張りにも、全部満足した。おもしろかった。
私御手洗が好きなんだと思ってたけど、そうでもないのかなぁ。助手が事件に振り回されながらも地道に頑張っていく姿に共感するのかも。探偵の -
ネタバレ 購入済み
面白かった
あっと驚くトリックでそのまま爽快に終わる、のではなくあれだけの事を成し遂げながら何ひとつ思い道理とならず悲しみの中を孤独に生きてきた犯人への憐憫が尾を引き、すっかりそちらに引き込まれてしまった
平吉の手記が偽物、までは予想してたんだけどトリックは全然わからなかった。面白かったです。 -
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旅先で読むことになり、読みやすい薄さにも関わらず時間をかなり費やしてしまった。
梗概にも書かれてあったが本作は島田作品の中でも異色の物で、作者本人でさえあとがきで全く予想外に生まれた副産物であると述べている。内容的にはミステリではなく云うなれば幻想小説のテイストを含んだ中間小説とでもなるだろうか、不思議な読後感の残る作品である。
そして私はこのような作品に弱い。
島田ミステリに通底する弱者への真心とロマンシズム、これが一貫して物語のBGMとして流れ、進んでいく。最後には珍しく悲劇的な結末で無機質に締められ、読者の心には冤罪に対してのほろ苦さが色濃く残る。
最後に門脇春男は救われたのか、それは判 -
購入済み
名探偵、大不調
シリーズでも、もっとも不調な御手洗の
姿が記憶に残る一冊。
実際ヘンクツな面は色々な作品でも出てき
ますが、鬱々とした描写が続くのは珍しい
のでは?
解決も一捻りあったり、ピラミッドの不思議
を御手洗が石岡くんに解いて見せたり、色々
豪華。
それでも真相が解ると見えてくる登場人物
の背景なども印象深い -
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ネタバレ舞台は平成元年春、ボケた浮浪者が導入したばかりの消費税3%を巡って店員ともみ合いになった末に刺殺した――と週刊誌をしばらくの間だけ騒がして終わりと思われた事件は、薄皮1枚1枚剥がした先に昭和三十二年に起きた北海道の列車内の怪事件と繋がっていく、と言うストーリー。はじめチョロチョロ中パッパ、中盤で提示される5つの事件はまさに奇想天外。
犯人は冒頭で現行犯で捕まっており、これは最後まで覆ることはない。よって平成の刺殺事件の動機と昭和の事件のトリックがメインの謎として描かれる。ピエロの死体消失トリックは(これ金田一少年の某事件を彷彿させるなぁ…)と思ったらまさにその通りで占星術に続いてやってくれた