島田荘司のレビュー一覧

  • Pの密室

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    御手洗シリーズは久しぶり。と言っても子どもだけれど。大人になった御手洗なら、主導権を取ってもう少し強引に進めることができるかもしれないけれど、子どもだとなかなか思うように事が進められなくてなんだか歯がゆいね。世の中の子どもってそういう歯がゆさを味わっているのかもしれない。全体的に、時代設定の通り「昭和」を感じさせる物語だなという印象。ただ、やっぱり、大人になってからの変人っぽい御手洗の方が好き。大人御手洗を読んだのはもう10年以上前なので忘れている。榎木津礼二郎みたいなイメージ。

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    2023年04月20日
  • 龍臥亭幻想(上)

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    日照さんと二子山さん

    陰惨な事件が起こっているけれど、日照さんと二子山さんのまるで漫才みたいな神職コンビのやり取りにほっこりする。事件の方はこれからますます佳境。菊川はぜひ懲らしめられてほしい。

    #怖い #笑える #癒やされる

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    2023年04月11日
  • 改訂完全版 異邦の騎士

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    『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』に続く御手洗潔シリーズの長編第3作目。

    必ず占星術▶︎斜め屋敷▶︎異邦の騎士の順番で読むように。
    短編集もダメだ。あとレビューも見るな。
    でないとラストの感動は半減してしまう。

    勿論ミステリーとしても逸品。
    所謂"異邦の騎士"がいなければ完全犯罪となっていただろう。

    島田荘司の圧倒的気な筆力,熱量を思う存分堪能して欲しい。

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    2026年04月30日
  • 改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木

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    四半世紀ぶりに読んだがいい具合に忘れていて、たいへん楽しんで読めました。この人特有の、一見関係ない場面に飛んでしまう構成も、このくらいの間隔や分量であれば効果的。最後のちょっとしたオカルトも高木彬光っぽくていい。

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    2023年04月03日
  • 漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件

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    ネタバレ

    初島田荘司作品。
    Audibleにて。

    シャーロック・ホームズは、映像作品でしか知らないので読んだことないし、漱石も脱落した人間だけど楽しめました。
    自分の好みの文体なのかも。

    本編もいいけど、最後のエッセイが素晴らしくて、少年少女じゃないけど胸にじーんと響いた。
    そして、作者のことが好きになった。
    我ながら単純すぎる。
    だけど本当に、この人の作品をもっと読みたいと思った。
    絶対読む!
    近頃がっかり作品ばかりが続いていたから、余計に感激したのかも。


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    2023年03月02日
  • 改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木

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    長い! 厚い! なんだこの読みごたえは!
    時代をいったり来たりするので、続けて読まないと頭の中にクエッションが飛び交います。休日にじっくり腰を据えて読むことを勧めます。なにより御手洗にぞっこんで長い付き合いになる、彼女の登場回でもあるわけで。
    じっくり読まない手はないのでは?
    ここから40年の付き合いになるなんて当時の読者は考えても居なかったのでは? なんて言葉がチラチラ脳裏をよぎっていました。

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    2022年12月11日
  • アルカトラズ幻想(下)

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    ワシントンDCで女性の連続殺人事件が起きる。警察官のロンとウィリーが事件の謎を追うという、アメリカのハードボイルドもののミステリの空気が漂う。が、突然、"恐竜絶滅の謎”に関する論文が繰り広げられ、気付いたときには、脱獄不可能とされるアルカトラズ監獄からの脱走劇が繰り広げられることに。やがて、脱走した男は、“パンプキン王国”と呼ばれる、ファンタジーとしか思えない場所に迷い込んでしまう。

    大好きな伊坂幸太郎さんがおすすめしたので手に取りました。あらすじを読んでみて、きっとみなさん、訳のわからない、とんでも系ミステリかと思われたかと思います。が、これがめちゃくちゃ面白いんです。

    本作は、四つの章とエピローグで構成されるのですが、それぞれがまったく色が異なっているんです。ただ、一つの章ごとに一つの作品として出してもいいくらい、どれもが面白い。

    物語自体が誰も読んだことのないものに仕上がっているし、すべてが結びついたとき衝撃。圧巻でした。この本を読むことでしか絶対に味わえない感覚。

    上下巻で長編で手を出しづらい方もいるかとは思いますが、興味がある方はぜひ、手に取ってみてくださいね。

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    2022年10月28日
  • 占星術殺人事件 改訂完全版

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    占星術殺人事件

     探偵小説を読んだのは何十年ぶりだろう。子供のころは、シャーロックホームズや明智小五郎を読んでいたけど、大人になると、トリックを使って殺人するなど荒唐無稽で非効率的に思え、敬遠していた。
     昭和11年の科学力を念頭において読まないと「そんなのありえないだろ」となってしまうが、犯人は完全犯罪をしようとしてトリックを労したのではなく、母を思ってつかわざるをえなかった設定に哀愁を感じ、他の推理小説には感じなかった何かを感じる。
     この事件、御手洗潔は犯人を許しても杉下右京は許さないだろう。このような事件を題材にした、2人の共演(対決?)を見てみたい。

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    2022年07月05日
  • アルカトラズ幻想(下)

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    上巻で、これからどうなっちゃうんだ〜と思った結果、下巻はミステリーから脱獄サスペンスになり、ファンタジーになり、エピローグで突如全てがまとまった!
    歴史ある劇場で、正統派クラシックを聴こうとかしこまっていたら、はちゃめちゃで楽しいラプソディーが始まり、最後には天井も壁も飛んで行っちゃった!というような読後感。なのに、奇妙な切なさ、なつかしさのようなものが残る。
    巻末の解説で伊坂幸太郎さんが「とにかく、色んな世界を旅する冒険譚だと考えるべき」「島田作品なわけですから、ミステリー的な理屈を付け加えている」「そこがもう、異様といいますか、誰にも書けないもの」と書いてますが、まさにその通りだと思った。面白かったです。

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    2022年06月12日
  • アルカトラズ幻想(上)

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    不思議に魅惑的なタイトルや装丁に負けない、まさに奇想天外なミステリー。なんと途中に「重力論文」が差し込まれる。
    凄惨な猟奇殺人の動機に恐竜の謎が絡んでいることが分かり、多分犯人も分かり、既に満足の内容なのに、まだ上巻とは!下巻はいったいどうなっちゃうんだ〜。
    なんとなくワシントンの空気を感じる(行ったことないけど)刑事たちの軽妙なやりとりも良い。

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    2022年06月02日
  • 改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木

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    西洋館の屋根に跨がった死体が発見される。その前には昔少女を飲み込んだという伝説を持つ大楠があった。
    現在と過去、日本とスコットランドの謎を御手洗が解く!
    久しぶりの御手洗シリーズ。ものすごく雰囲気があるホラー?ミステリー。いやもう、最高でした。→

    御手洗は変わらずかっこいいし(一本筋が通った感じ、最高に好き)石岡は相変わらずかわいい(サイトシーイングのくだりとか最高でしょ)ラストのしんみり感もいいなぁ。余韻がすごい。
    なかなか悲しい物語だよね……。

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    2022年05月06日
  • 御手洗潔のダンス

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    ネタバレ

    奇想天外!

    謎解きは、可能性が全く0でなければ、「あり得る!」と僕には面白く読めてしまう。

    現実界でそれが本当に実現可能か?

    そこまで僕には分からない。

    読んで、「おおっ!」と思えるかどうか、それが総て。

    【謎の概要】
    ①山高帽のイカロス
    地上数十メートルの電線の間で飛ぶような格好で死んでいた画家と・・・。
    ②ある騎士の物語
    秋元静香と4人のバイク便の男たち。大雪で交通手段が遮断されていた夜、彼らの恨みを買う1人の男が十数キロ離れた場所で射殺されていた。
    ③舞踏病
    家族に頼まれ老人に二階を間貸ししたが、この老人が夜になると狂ったように踊り出す。
    ○近況報告(4話目)
    これはミステリーではなく、御手洗潔シリーズを愛読する人へのファンサービス。

    フォロワーさんのレビュー「斜め屋敷の犯罪」を読んで、週1程度は無意識に眺めているこの作品の背表紙を思い出し、19年ぶりに手に取った。

    面白かった。

    フォロワーさん、ありがとうございました。すみません。

    本作はシリーズ6作目(あゝ・・・)なので、次、島田荘司さんを読むときは、「占星術殺人事件」(1作目)を読むことにします。

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    2022年04月28日
  • 漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件

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    吉敷シリーズを数冊読み、緻密な謎解きを堪能してからこの作品に来た。
    面白い!構成が楽しい!
    こんなにユーモアあふれる作風だとは、開いてみるまで分からなかったから、ものすごく得した気分。
    ホームズも漱石も、大満足だろう。
    巻末の特別エッセイは、島田荘司ファンのみならず、小説を愛する老若男女にとって、これだけでお金出して買う価値あり。

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    2022年04月23日
  • 夏、19歳の肖像

    ネタバレ

    一読惚れ…。

    もうかれこれ30年近く経ったんですかね、この作品が出版されてから…。

    確かその頃自分は高校生だったと記憶していますが、テスト勉強そっちのけで読破し、正に「一読惚れ」してしまった作品です。懐かしいなぁ…。

    島田先生は改版がお好きで(これはこれで愛読者にとっては迷惑w)、自分が読んだ頃とは大分変わってる気はしましたが、このロマンチックなストーリーを読むと、熱中していたあの頃の自分を思い出して、恥ずかしくもあり懐かしくもありで、忘れられない作品です。確か直木賞の候補作には入ったんですよね、これで。

    賞とは何故か縁遠かった島田先生ですが、今やミステリ界の大御所と成った今を考えると、コレか「占星術…」で乱歩賞を獲れなかった事は、未だに残念な想いが脳裏を過ります。

    中高生ぐらいの方(特に男子!)が読んだら、胸キュン必至の素敵な小説です。だから「『異邦の騎士』と似てるね」とか、言っちゃダメなんですよ、ファンの方はww!!!

    #ドキドキハラハラ #切ない #胸キュン

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    2022年04月02日
  • ロシア幽霊軍艦事件―名探偵 御手洗潔―(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

    幽霊船とロシア皇女の話がどう繋がるのか気になって、早くページを捲りたいとワクワクしたのは初めてかもしれない。
    好奇心に急かされながら読み進めていった。
    随分変わった名前だったから、その名前には何かしらの意味合いはあるだろうと思っていたけれど、まさかそのような意図があったのだとは思わなかった。
    読みながら自分なりに予想してみたのだが、掠りはするものの「ああそっちか⁈」となってもう楽しくて楽しくて。すっかり御手洗の世界に惹きこまれていた。

    平八はずっとアナスタシアのことを思っていたんだな…と僅かなすれ違いに心がギュッとなってしまった。時代が時代でなければ二人は幸せになれたのだろうか、いや、多分出会わなかったんだろうな。その時代だから出会えたんだろう。

    アナの不可解な言動について自分なりに考えていたけれど、どうしてそんな事をするのか理解できずにいた。
    母国語も話せず記憶も曖昧で、嘘をついているようにしか見えない。それなのに自分は王族だと言い続ける。
    私は多分この人は本当にお姫様なのだろうとは踏んではいたがまさか怪我によるものだったなんて。ましてや脳の損傷のせいだなんて考えすらしなかった。
    言えない秘密があるのだろう、としか考えなかった。

    調べてみたら実際にいるようだ、ちょくちょく調べながらもう一度読んでみると面白いかもしれない。

    石岡と御手洗が安定に面白くて可愛くて。
    そして御手洗の推理の素晴らしさは相変わらずだった。

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    2022年01月10日
  • 鳥居の密室―世界にただひとりのサンタクロース―(新潮文庫)

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    最高の贈り物

    いつもながらの繊細さと重厚さ。
    悲しく切ない背景があるけど、ちゃんと救いがある。
    現実には救われずに終わることもある弱き者を救いたいという作者の思いがあるのかな。
    島田作品は予想外のトリックに翻弄されるんだけど、
    そのトリックに埋もれないストーリーがいつもある。
    楓があの朝受け取ったプレゼントも素敵だけど、
    最後に国丸が受け取ったものこそ素晴らしい贈り物だった。

    #深い #感動する #切ない

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    2021年12月29日
  • 改訂完全版 火刑都市

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    ネタバレ

    久しぶりに、いいミステリー小説だったなぁ…、って感じ。
    でも、それが島田荘司なのが面白い。
    島田荘司というと、ピタゴラスイッチみたいな殺人事件wを書く人というイメージだったけど、こんなシブいミステリーも書くんだなーと。
    江戸っ子じゃないけど、おっそれ入谷の鬼子母神!とか言いたくなる。←意味不明(^^ゞ


    以下、内容に触れています。

    そういえば、『暗闇坂の人喰いの木』の感想で、“この人はドラマは書けても、メロドラマは書けないんだろうな”なんて書いてしまったが、それ、全面訂正!
    なんだよー! こんないいメロドラマ書けるんじゃん。
    なんで、『暗闇坂の人喰いの木』の後半でそれを書かずに、ピタゴラスイッチで遊んじゃうんだよー!
    と言いたい(^^ゞ

    とはいえ、そうか。これって、1986年に出た本なんだね。
    定かじゃないけど、1986年っていったら、たぶんトラベルミステリーが全盛だったと思うのだ。
    売れたんだかどうかは知らなけど、例の「占星術」でお札切り刻んだところで、当時はピタゴラスイッチが放送されてなかったこともあって(?)、「ミステリー小説といったら旅情どすぇ~」なあの頃では、著者も食い扶持としてこういうのを書かなきゃならなかったということなんだろうな。
    でも、そのせいでこんな大傑作(と評価しない人が今は多いみたいだけどw)が生まれたかと思うと、人間なんてもんは逆風下でいかに試行錯誤するかなんだなーと、勇気をもらえる気がするかな(^^♪

    そんな『火刑都市』だけど、今は本格にあらずばミステリーにあらずの傾向があるから、人気ないのはしょうがないんだろう。
    というか、島田荘司といえば本格の大御所だから。そのイメージで読んじゃって。全然そうじゃない内容にガッカリしちゃうっていう面もあるんだろうな。
    変な話、この小説の著者名が島田荘司ではなく松本清張だったら、「名作」になっていた可能性はあるんじゃないだろうか?
    いやいや。島田荘司と松本清張、どっちが上とかそういう話ではなくて。読者というのは、どうしたって先入観で読んじゃって。先入観からくるイメージと合わなければつまらなく感じてしまう、そういうもんなんじゃないのかな?って話w
    逆に言えば、自分がこの小説を良いと思うのは、“島田荘司=ピタゴラスイッチみたいな殺人事件を書く人”というネガティブな先入観が覆された、そういうことなんだと思う。

    そう書いていて、思い出したけど、そういえばこの小説って、自分は読んでいる間、ずっと「いいじゃん、これ…」と思いながらも、「でも最後はピタゴラスイッチみたいなおバカトリックでシラケるんだろうな」と決めつけていた(^^ゞ
    でも、ま、密室にする必要あるの?とか。確かにそれで火は点くだろうけど、でも、消えちゃうことも多いよね?みたいなのはあったとはいえw、「私はあの人以外、誰も愛したことがありません」にはガツーンときたし。
    最後の、“中村は、いつか喫茶店で由紀子が泣いたのは、どういう理由だったかなと思い出そうとした。しかし疲れ切った彼の頭では、結局思い出せなかった”は、しんみりとした優しさがある。
    そういえば、解説で川本三郎という人が、“私見では「秀れたミステリ」とは、読者にこの人は捕まってほしくないと思わせる主人公を登場させることにある”と書いているけど、それには思わず「それ、それ。まさにそれ!」とうなずいてしまった。

    この由紀子って、『火車』のあの女の人とイメージがダブるんだよね。
    『火車』は、その女の人の哀しさをどんどん遡っていく話だったが、この『火刑都市』もそういうところがある。
    中盤で描かれる新潟の海沿いの集落の凍えるような風景と、ラストで語られる“母がこっちに出てきた時、店で売っていた品物をいっぱい、おみやげだと言って持ってきて……」という言葉。
    でも、1986年なのだ。この小説が出版されたのは。
    (物語の設定は1982年の暮れから83年の晩秋)
    1986年といったら、まだバブルの前夜だが、それでもその兆候はそこかしこにあった。
    それなのに、日本って、こんなにも貧乏だったんだなぁ…って。
    なんだか、ため息が出てしまう。

    最後の、“中村は、いつか喫茶店で由紀子が泣いたのは、どういう理由だったかなと思い出そうとした”というところ。
    その喫茶店の場面に戻ってみると、“疲れているんだな、と中村は思った。この娘は疲れている。たった一人で連日を闘い、疲れ切っているのだ”とある。
    その由紀子に限らず、日本人は戦後からこのかた、疲れ切るまでして、やっと今の豊かな暮らしを得たのになぁ……って。
    ため息が出てしまうのは、たぶんそういうことなんだろう。
    というか、ため息に浸っていてはダメなんだろうけどさ(^^ゞ



    それはそれとして、著者にとってこの小説の主題は何だったんだろう?
    そこにすごく興味がある。
    この時期、著者は、本来であれば本格ミステリー、つまり御手洗モノのような小説が書きたかったんだと思うのだ。
    でも、時代はトラベルミステリー全盛で、本格モノは売れなかった(か、どうかは知らないが、たぶん)。
    つまり、中盤で出てくる新潟の寒村なんかは、小説を売るためにトラベルミステリーにある旅情趣味として出したように思うのだ。
    でも、著者にとっての主題は、やっぱりその時代(バブル前夜)で変わっていく東京の風景と情緒への憧憬にあるんじゃないかって思うからだ。
    だからこそ、東京ではなくて、「東亰」なんだろうし。また、それに沿っての放火なんだろう。
    いや、それに沿うなら「東亰」より「江戸」なんじゃない?って気がするしw
    なんで放火?という気がしないでもないんだけど、でも、まー、頭のおかしな犯罪者がやることを理解出来ないのは普通にあることだから、むしろリアルなのかもしれないけどね(^^ゞ

    でも、著者は、時代(バブル前夜)で変わっていく東京の風景と情緒への憧憬というテーマをストレートにはミステリー小説にしなかったわけだ。
    それは、たぶんそれを前面にミステリー小説に落とし込んでも読者にウケないと考えたからで。
    読者にウケるようにするには何が必要か?という部分が、由紀子と、由紀子に代表される人たちが抱える背景なんだと思うのだ。
    でも、この小説の主人公は、ほぼ由紀子だ。
    そう考えると、由紀子や新潟の寒村って、著者はこの小説を書くにあたって、どの時点で出てきたんだろう?と、そこが不思議な気がするのだ。
    たぶん、変わっていく東京の風景と情緒への憧憬をミステリーとして書こうと構想する中で、由紀子という登場人物が出てきたような気がするんだけど、そうではなくて。最初から東京の風景と情緒への憧憬と、由紀子のような人という2つのテーマがあって。
    それを一つにしたような気もする。

    ただ、どっちだとしても、それって、まるでスティーブ・ジョブズじゃん!って。←意味不明w
    いやー、マジそれ、島田荘司に聞いてみたい(^^ゞ

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    2021年11月13日
  • 龍臥亭事件(下)

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    実際起こった事件だけに。

    最後に犯人が判明するまで、ドキドキさせられました。
    複雑なトリックにも感心しましたし、偶然にも重なった殺人事件により物語に深みが増し、充足感が得られたように思います。
    本小説の関連本も読んでみたいです。

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    2021年10月12日
  • Pの密室

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    「鈴蘭事件」と「Pの密室」が収録されています。

    鈴蘭事件は御手洗が女嫌いの理由がわかる話でした。

    Pの密室はトリックよりも犯人の動機と最後の切ない終わり方が印象的でした。

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    2021年08月27日
  • 改訂完全版 異邦の騎士

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    面白い

    気がつけば、記憶喪失の男。それが、結構長く記憶喪失のままで、だんだん話しが進んでいって、一体どうなるのかと。完全に騙されてました。作者らしい面白さでした。

    #ドキドキハラハラ

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    2021年07月14日