島田荘司のレビュー一覧
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ネタバレ中年刑事が連続放火と幻の女の謎を追う内に、大都市東京が抱える孤独や歪み、ひとりの女の悲哀に満ちた人生が浮かび上がる。
わずかな手掛かりを元に、幻の女の身元を捜査する過程は、古き良きトラベルミステリーのようで心踊るものがあった。
女の姿がはっきりした像を結び始める頃には、どこかこの女の境遇に同情し、シンパシーを感じ始めていることに気づかされた。
主人公もその想いを抱いていて、彼と共になんとかこの女の罪が見過ごされ、このまま捕まらないことを祈ってしまった。
女の動向には東京という大都会の性質のようなものが隣り合わせで存在していたし、事件にも深く東京が影を落としている。
現代社会が生 -
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ネタバレ島田荘司の作品にハズれなし。素晴らしいホームズ・パスティーシュなだけでなく、夏目漱石のユーモア溢れる文体までそっくりに書いていて、尚且つしっかりと本格ミステリの醍醐味を味わえるのだから恐れ入る。
謎がとても魅力的。密室状態の部屋で死体が一瞬でミイラ化、外からの侵入は不可能、果たしてトリックは如何に? ミステリ好きなら涎が垂れるであろう。私は垂れた(笑)。
巻末のエッセイは島田さんの少年期のエピソードが知れて興味深かった。私も世代は全く違えど、小学生の頃の愛読書は江戸川乱歩の少年探偵シリーズだったので共感である。
本作を「総ルビ版」として再刊行した意義についても触れられており、推理小説 -
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世田谷区成城。世間では高級住宅街というイメージが強い場所だが、そのはずれ、〈私〉は、世間のイメージからはほど遠い建売住宅が密集した地域に住んでいる。成城学園前駅方向は小高い丘になり、丘の中腹から高級住宅街がはじまる。だから私は、荒んだ気持ちを抱えながら、そのあたりを『丘の上』と呼んでいる。〈私〉と同じように〈丘の下〉に住むとある老人がいて、認知症の疑いもあるその老人は奇行を繰り返していた。老人の真意とは――「一章 丘の上」
ということで、本作は独立した短編としても読める三つの短編と、その短編が繋がり、ひとつの大きな輪をつくる「終章 網走発遙かなり」の全四章で構成された物語になっています。 -
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ネタバレ動物好きとして表紙に惹かれて読破(^^)
中国の作者さんが書いてる?ということで要所要所で中国っぽい漢字の使い方が出てきますが個人的には全然気にならなった。逆に独特なキャラ名の人が結構いたように思えたので新鮮な気持ちで読み進めることができました。
気に入った点として深くは描かれてはいなかったですが、知能を得た動物VS人間という構図を上手く使っている。それでいて実際には人間がほぼ登場しない!そして知能を得たからこそ人間っぽくなってしまっている動物達の苦悩も描けている(動物の種類で下に見るような感じ)。こういった話は~という国があって…~という戦いがありましたと記号だけで世界観を広げる手法が多いで -
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ネタバレ記憶喪失モノって、なんでこうもドキドキするんだろう。九広の家の「生まれる前の胎児の泣き声のような、糸を引く不安の叫び」「生まれる前と死んだ後とはこんなふうに結ばれ、繋がっているのかと誰もを気づかせずにはおかない、悲しみとも嘆きともつかぬ霊波の躍動が、輪を作り、ひゅうひゅうと音をたててこの息の詰まるような空間を駆け巡っていた」の描写など、読んでいて、実際胸の窄むような思いがした。一体何なんだという興味と不安と、好奇心にドキドキする感じがたまらない。
好きなシーンについて
一つ目は、
「ねえ君、一目惚れって信じるかい?」
「信じるわ。だって私も経験あるもの」
「そう?」
「うん」
「いつ?」
彼