島田荘司のレビュー一覧
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1987年に出た本らしい。
ということは、タイトルの「網走発」というのは、当時全盛だったトラベルミステリーを踏まえてということなのだろう。
ただ、この改訂版が出たのは、3話目(本の中では三章と表記)の「乱歩の幻影」の映画化がきっかけだったようだから。
であれば、これを機会にタイトルも「乱歩の幻影」にした方が時代に即してたんじゃないのかな?
もっとも、江戸川乱歩が関係したお話は、その「乱歩の幻影」だけだけど。
4つのお話で構成されている、この本だが。
それは、あるお話に出てくる登場人物が、別のお話の主人公になっていたりするからで。
だからなのか、第一話、第二話…ではなく、一章、二章、三章、四章という風に表記されている。
ただ、あくまで、あるお話の登場人物が別の章の主人公になっていたりするというだけで、一章〜四章全部を貫く何かがあるわけではないし、個々の章のテイストもビミョーに違う。
短編集というと、最近は連作短篇集みたいに最後のお話で全話がつながるカラクリが示される、“映え”る「芸」を持て囃す傾向にあるが。
個人的には、求めているのは面白いお話であって。
ツマンナイ映え芸に心血注ぐんなら、面白いお話を一つでも二つでも増やしてほしいんだけどな?と思っていることもあり。個々のお話のテイストがビミョーに異なる、この連作短篇集(著者としては一つの長編として捉えているのかもしれないけど)はよかった。
それこそ、「一章 丘の上」のテイストで全話通されたら、あまりいいイメージは持たなかったんじゃないかな?
そんな「一章 丘の上」だけど、こういう「短編」として読むんなら全然面白いお話だ。
ある意味、今風の「イヤミス」テイストのお話wなんだけどー、あ、「イヤミス」って、もしかしたらこういうのを言うんじゃないのかな?
日常の人間関係の中で感じる他人からの「圧」の煩わしさを描いたミステリーが「イヤミス」というんだとしたら、これは違うんだろう。
自分がこれを「なんか嫌な話だな…」と思ったのは、ストーリーの暗転(取り返しのつかなさ)にあるんだけど。
主婦が窓から毎日みかける近所のお爺さんが笹の葉を集めているという謎の行動に疑問を持つという、自分が最も好きなタイプのお話が悪い方に転がってしまうから嫌だなぁーと思うのもあるんだろう。
「二章 化石の街」も、新宿の地下街に出没するピエロがしていることに疑問を持った主人公がそのあとをつけていくと……、みたいな自分の好みのお話の始まり方なのだが。
これはストーリーもさることながら、出てくる所が全部知っている場所で(職場が都心にある人ならほとんど馴染みがある場所だと思う)。
ピエロがそれをしている情景がパッと浮かぶところがよかった。
「三章 乱歩の幻影」も舞台が馴染みの場所だったりするんだけど、これは最初の乱歩云々がちょっと長かったかな?
まー、「乱歩の幻影」だからしょうがないんだけど(^^ゞ
ていうか、中盤以降はすごく面白い。
「素人が壊せるもの?」とも思うけど、まー、それはそれw
「四章 網走発遥かなり」は、一章〜三章のお話と比べると、個人的にはイマイチかな?
いや、面白いのは面白いんだけどね。
あの辺は学生時代に行ったことがあるから、風景のイメージも浮かぶし。メロドラマの部分もいいと思う。
もしかしたら、トリックの部分がちょっとクドいと感じちゃったのかもしれない。
これは「改定完全版」で、最後に「改定完全版に寄せて」という23ページにわたる著者の解説がついているんだけど、これが興味深くて面白かった。
前に著者の『火刑都市』を読んだ時、当時流行っていた、旅情を売りのトラベルミステリーが求められるからこそ、著者が書きたい本格ミステリーとの兼ね合いで生まれた傑作(自分はそう思う)なんだと思うんだけど、そこにある東京という都市へのこだわりがイマイチわからなくて。
当時の変わっていく東京の風景と情緒への憧憬をミステリーに落とし込みたかったのかな?なんて思っていたんだけど、なるほど。著者は当時、都市論みたいなものに傾倒していたということなのか!
そういう背景がわかると、『火刑都市』がどんな風な構想のもとに書かれたのかも理解しやすい気がするかな?
その他、「改定完全版に寄せて」では結構愚痴が書かれていたり(^^ゞ
また、「乱歩の幻影」に出てくる本のことなんかは、江戸川乱歩のファンからしたらすごく興味を引く話だと思う。 -
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ネタバレ歴史に疎い私でも、興味がそそられる内容で夢中になり、仕事の隙間時間に2日で上下巻読んでしまった。
既読の再読であったが、何度読んでも御手洗シリーズは面白い。
話の展開が御手洗シリーズは最高。
最初は島に流れ着く謎の死体たち
次は女優を目指す女と流される男と看護学生の話
この二つが全く話が変わるのであるが、それぞれがまたかなり興味をそそられる内容になっている。いつかどこかで繋がるんだろうとドキドキしながら読み進めるも、今度は大学教授と歴史の話、そして造船所の社長と飲み屋の母を持つ子供の話になり、最後の最後で全てが繋がっていく。
それぞれの登場人物の描写が繊細で、とても感情移入しやすい。情景が浮かんでくる。さすが島田荘司さんといったところ。本当に読んでて楽しい。
想像の産物である星籠であるが、本当に存在したらいいなと思ってしまう。そのくらい時代背景や歴史に違和感なく練り込まれている。
そして御手洗シリーズを読むと、そこに出てくる女性陣の『女の嫌なところ』が明確に描かれていて、これは御手洗の視点から見た女なんだろうなーと思い苦笑いしながら読むのも好きだ。 -
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松崎レオナが精神科医と話す冒頭から話はエリザベート・バートリー伯爵夫人の物語へ。読み応えのある「長い前奏」の先にはレオナ主演の映画「サロメ」のロケ撮影風景が始まり……
全ての謎を解き明かす御手洗に酔いしれるシリーズ屈指の逸品!!→
めちゃくちゃ面白い!!979ページと言ういわゆる「鈍器本」なんだけど、読みやすい文章、見事なキャラ立ちでいつまでも読んでいたくなる。
特に、バートリー夫人の話は最高……最高だよ!
冒頭のレオナも合間に挟まる中国の人魚も心臓の血を吸う描写も、全部!全部島田御大は回収するから!!!→
もう、安心して読んでくれ!
750ページぐらいまでは全体に靄がかかっていて不安になるかもしれんが、御手洗が出てきたら視界がクリアになりそこからのリアリティ感がやばいから。
上手すぎるよ御大……文章の雰囲気すら変えてくる……コレは……癖になる……
タイトルの意味もすごいよ……マジかよ -
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つい先日、あるTV番組で伊根の舟屋を観た。
今の日本にもこんな舟屋があるなんて知らなかった。
伊根ブルーと言われる海の透明さに驚き、舟屋の並んでいる光景に何故か郷愁を感じた。
…で、この「伊根の龍神」が積読になっているのを思い出し速攻で読む。
石岡先生と麗羅が、伊根の舟屋に泊まりUMAだろうと思われる怪物を見ようとするまでは軽快な感じで進むのだが、この伊根に伝わる海の守り神が龍神という伝説だろう…と思われたが。
1970年のよど号ハイジャックや拉致事件などに触れつつ進んでいくのは、工作員絡みでもあったのだが、最後の最後になり御手洗登場でさらさらっと全ての謎を解いてしまう。
南吉さんの人生は、本人にとってどうだったのかと考えてしまった。
妻の嘉さんと一緒にいるときは幸せだったと思いたい。
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ネタバレ中年刑事が連続放火と幻の女の謎を追う内に、大都市東京が抱える孤独や歪み、ひとりの女の悲哀に満ちた人生が浮かび上がる。
わずかな手掛かりを元に、幻の女の身元を捜査する過程は、古き良きトラベルミステリーのようで心踊るものがあった。
女の姿がはっきりした像を結び始める頃には、どこかこの女の境遇に同情し、シンパシーを感じ始めていることに気づかされた。
主人公もその想いを抱いていて、彼と共になんとかこの女の罪が見過ごされ、このまま捕まらないことを祈ってしまった。
女の動向には東京という大都会の性質のようなものが隣り合わせで存在していたし、事件にも深く東京が影を落としている。
現代社会が生んだ影を照らす島田流都市論と瞠目の真相に唸らされる、「刑事が靴底擦り減らす」系ミステリの傑作であった。
主人公の刑事は確か、「占星術殺人事件」にも登場していたような気がする。島田作品の、今風で言うところの「ユニバース」展開も楽しみのひとつだなと感じた。 -
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ネタバレ島田荘司の作品にハズれなし。素晴らしいホームズ・パスティーシュなだけでなく、夏目漱石のユーモア溢れる文体までそっくりに書いていて、尚且つしっかりと本格ミステリの醍醐味を味わえるのだから恐れ入る。
謎がとても魅力的。密室状態の部屋で死体が一瞬でミイラ化、外からの侵入は不可能、果たしてトリックは如何に? ミステリ好きなら涎が垂れるであろう。私は垂れた(笑)。
巻末のエッセイは島田さんの少年期のエピソードが知れて興味深かった。私も世代は全く違えど、小学生の頃の愛読書は江戸川乱歩の少年探偵シリーズだったので共感である。
本作を「総ルビ版」として再刊行した意義についても触れられており、推理小説(探偵小説、本格推理小説)の読者の裾野が広がって欲しいという願いには賛同しかない。 -
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世田谷区成城。世間では高級住宅街というイメージが強い場所だが、そのはずれ、〈私〉は、世間のイメージからはほど遠い建売住宅が密集した地域に住んでいる。成城学園前駅方向は小高い丘になり、丘の中腹から高級住宅街がはじまる。だから私は、荒んだ気持ちを抱えながら、そのあたりを『丘の上』と呼んでいる。〈私〉と同じように〈丘の下〉に住むとある老人がいて、認知症の疑いもあるその老人は奇行を繰り返していた。老人の真意とは――「一章 丘の上」
ということで、本作は独立した短編としても読める三つの短編と、その短編が繋がり、ひとつの大きな輪をつくる「終章 網走発遙かなり」の全四章で構成された物語になっています。一個の短編として一番印象的だったのは、謎めいたピエロの行動を追う「二章 化石の街」で、意外な犯罪計画が浮かび上がってきて、その大胆さも含めて、とても面白かったです。
そして、すべてが繋がり、終章にいたって、ひとりの人間の生きた証が立ち上がるラストは、鮮やかな情景とともに心を打たれるものがあります。 -
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ネタバレ動物好きとして表紙に惹かれて読破(^^)
中国の作者さんが書いてる?ということで要所要所で中国っぽい漢字の使い方が出てきますが個人的には全然気にならなった。逆に独特なキャラ名の人が結構いたように思えたので新鮮な気持ちで読み進めることができました。
気に入った点として深くは描かれてはいなかったですが、知能を得た動物VS人間という構図を上手く使っている。それでいて実際には人間がほぼ登場しない!そして知能を得たからこそ人間っぽくなってしまっている動物達の苦悩も描けている(動物の種類で下に見るような感じ)。こういった話は~という国があって…~という戦いがありましたと記号だけで世界観を広げる手法が多いですが、この作品はちゃんとミステリー要素に全振りしてくれて有り難かった。
探偵のブレーメン(ロバ)と助手のアグア(カエル)のホームズとワトソンとはまた違った相棒感も良かったですしブレーメンの推理披露場面も犯人を貶める追い詰め方ではなく「どうしてこうなったのか!!」と心情に訴えかけるのがイイね。
トリック(というか伏線回収)に文句がない…ちょっと胸にくるオチではありましたがこの事件を経て動物と人間がどこまで歩み寄れるのか気になるところでした。