あらすじ
謎の浮世絵師・写楽の正体を追う佐藤貞三は、ある仮説にたどり着く。それは「写楽探し」の常識を根底から覆すものだった……。田沼意次の開放政策と喜多川歌麿の激怒。オランダ人の墓石。東洲斎写楽という号の意味。すべての欠片が揃うとき、世界を、歴史を騙した「天才画家」の真実が白日の下に晒される──。推理と論理によって現実を超克した、空前絶後の小説。写楽、証明終了。
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写楽とはだれか?
その人物がその年の江戸に来ているのか
その確証もないまま執筆を開始したという作者のあとがきを読む限り、
ほんとうにその勘と執念だけで掴み取ったんだなぁ、と深い感動に包まれます。
以前いちど挫折してるから
読んだタイミングが良かったのかもしれない。
主人公の佐藤同様に
私も相当に打ちのめされていた時期でした。
なにもかも酷く打つ手なしだと感じていたから
やりたいことに対しても
これになんの意味があるんだ、対価の保証はないって感じでとても苦しかったけれど
半ばで佐藤の息子が幻となって
「パパ、こっちでいいんだよ」(だったかな?)方向性を示唆する部分など
むしろ私が勇気付けられてしまいました。
お陰さまで新規プロジェクトも立ち上げられました。
本当に資料と戦いながら掴み取った結末。
手探りでなにかを作る職業の方は手に汗握ります。
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下巻はとても面白かった。上巻を読んでいるときは、けっこう惰性で読んでいましたが、下巻はすごかったですね。何がよかったかと言うとこの小説の仮説の説得力。後書きまで読むとこの物語のすごさがわかります。伏線やらあのときの話はどこにいかされたの?必要だったの?と思われるところもありましたが、それを含めても読む価値があったと思います。島田さんの作品は初めてでしたし、この仮説の信憑性もわかりませんが、かなりの満足感でした。
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初めての島田荘司作品
浮世絵にも興味が無かったし、写楽の正体が謎だったなんて、この本を読むまで知らなかった。。。
これをきっかけに写楽をもっと知りたいと思った(^^)
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上巻では写楽の通説が一通り紹介された。下巻では作者の独自論が展開されている。
この写楽=○○論は、別の方もしているようだが、アプローチの仕方が全く違う。
作者の方法は、文献学の王道というか、現存する史料を分析して、この結論にたどりついている。
この史料が作者の想像だと、全く物語として成立しないから、下巻の論証はほぼノンフィクションと思っていいと思う。
下巻は一気に読んでしまった。
写楽が、そうだったとはねえ〜。
なるほどねぇ〜。
うぅ〜、正体明かしたい〜。
この本は、小説仕立てではなく、ノンフィクションとして史料の出典を明らかにしながら発表した方が良かったんじゃないだろうか。
特に上巻導入部の無駄が目立つだけに。
NHKでも民放でもいいからテレビ番組にしてくれないかな…
すごく面白いものができるはずだ。
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2013/5 初読時のメモより
作者が提示した、写楽の謎:写楽が誰にせよ(既に知られた人物の変名にせよ)何故出自などが全く伝わって無いのか、接触していた筈の周りの人々が写楽について何故なにも語っていないのか。写楽はオランダ人だったという仮説は、これを合理的に説明していると思う。役者絵は、ブロマイドと芝居の宣伝を兼ねるものなのに、写楽は本来対象にならないような端役も描いていたという事も本作で初めて知った。
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謎の絵師写楽の正体は?
実在する歴史上の謎に対し、小説の体をとりながらも、作者の膨大な下調べと長年の考察による新説をぶち上げる。このような小説を読むのは初めてかもしれない…
自分は写楽について知識がないので、これが写楽論争に一石を投じ得るものなのかは分からないが、
読んでいる限り状況証拠もいくつかあるしとても面白いと感じた。もちろん小説家ならではの創造力がその合間を埋めているのはわかっているが。
なによりこのようなチャレンジングな小説を読んだのが初めてなので単純に感動した。
実在しない絵師をでっち上げて完全フィクションを作ったのならこんなに感動しなかったろう。
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生き生きと描かれる400年ほど前の江戸町人に、羨ましさを感じる。著者の作品は初めて読んだが、歴史考証が飽きずに読める筆力。重くなりがちな歴史的な謎を、写楽作品への想い入れを消すことなく、娯楽作品として描いておりワクワクしながら読むことが出来た。他作品も読みたい。
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名前を聞いたこともあるし、絵も見たこともある。
でも知っているようで知らない『東洲斎写楽』。
そもそも写楽別人説が色々語られるほどの謎の人物で有名ってのも初めて知った。
それ以外にも浮世絵で知っている有名どころ葛飾北斎や安藤広重、喜多川歌麿がある程度近い時代の人達で顔見知り的な存在であったことも。
読んでる最中から『ゆっくり浮世絵を鑑賞してみようかな?』と興味が湧いてきた。
物語はその写楽の謎が解き明かされていく流れだけど、まったく予備知識の無い私でも引き込まれていくほどしっかりとした作りの小説。結局は違ったけれど、初期に出てきた『写楽=平賀源内』説はすっかり信じてしまうほど。
また作品は主人公のいる現代の話と、写楽が活躍した江戸時代を蔦谷重三郎を軸とした話を交互に進められる。その蔦谷をはじめ江戸時代の人々のやり取りがテンポの良い江戸っ子口調で、それに馴染みのない私でも活気の溢れるお江戸に混ざった気分になれる。
この小説における写楽の正体もしっかり合点がいきました。私より浮世絵などに興味を持つ父に薦めてみたい一冊です。
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写楽について何の知識もなかったけど、すごく面白かったし、写楽の謎は本当に興味深かった。
蔦屋と写楽の関係や、蔦屋さんが命を賭けてでも一石を投じなきゃ気が済まなかった政府や時代をひっくるめた鎖国中の日本そのものへの憤りは、私の胸にもじわじわ来るものがありました。
作者後書きを読めば多少は納得もできたけど、子供の事故は必要だったのか。なくても良かった気はします。
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写楽とは誰だったのか?を追い求め、やがて大胆な説にたどり着く。
説は非常におもしろい。過去にこのような説があったのかどうかはわからないが、色々なピースがよくもうまくはまっていったなと感心する。と言うか、実在の資料でさらにこの話で取り上げられている日付などは本当のことなのか、よくわからない。けど、本当ではあってほしいと思うぐらい。
しかし主人公は病弱すぎる。すぐ倒れる。それらの原因がたび重なる不幸なのだが、それらは必要だったのか?不幸じゃないとたどり着けない説だったのか?
話は現代と写楽が登場する時代の江戸と交互に展開する。江戸のほうは現代の不幸な感じとは違いテンポが良く、登場人物たちが生き生きとしている。
江戸のほうで出てきた「遠くから来た異人さんとも友達になれるなんて楽しいなぁいいなぁ」というセリフがとても良い。
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多分外人なんだろうなーと思わせる個所はあったので、正体には然程驚かなかったものの、こういう解釈を持ってくるのが凄いなぁと。
実際のところどんな風に落としているのかな??
美術史研究の面白さを見つけられた本だった。
正直ラストはもうちょっと食い込んで欲しかったけど。
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下巻も佐藤さんの欝々した状態と長々した説明に苦戦を強いられる。
しかし。蔦重がお上や千両役者達に対する鬱憤や怒りを、命がけで写楽を世に出すエネルギーにしたように、現在編のなかなかなストレスがあるからこそ、江戸編の蔦重達の心意気の清々しさや夜の歌舞伎場面の艶やかさが、よりイキイキと感じられるのかも。
とにかく読み終わったーーーって、開・放・感!!
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このミスベスト10、2011年版2位。作者もあとがきで書いてるとおり、現代編は全然中途半端だし、途中退屈な部分が続き全体のバランスも悪く小説としてはダメなんだけど、作者が長年あたためてた、写楽が誰かについての新説にはとても説得力があるし、仮説にもとづいた江戸編は小説としてもしっかり書き込まれてて、無茶苦茶面白い。後半はなんだかすごく泣きました。ただ、前半は現代編の方がやや面白いが写楽の説明が長く、江戸編は時代の背景説明に終始ばかりでしんどかった。この本が出た1年ぐらいあとに、NHKのドキュメントで長年謎であった写楽が誰だか分かったって言いきってる番組があって、それ観た記憶があったから、こっちの説は学者さんとかには相手されてないってことなんかなーと不思議でした。当時はNHKのドキュメントで結構新説をバシバシ取り上げて言い切ってる番組あって、NHK強気だなって思ったりしたけど。まあ、この本の続編も出てないようだしやっぱあかんかったのですかね。
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上巻を読み終わって、ちょっとどうしようかという気持ちだったけど、
下巻は楽しく読めた。
上巻に比べて、江戸編のボリュームが多く、
この江戸編がものすごく面白く、よく出来ていて
島田作品特有の作中作の面白さは健在だった。
江戸編だけで良かったんじゃないかと思わざるをえない。
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そこで終わりますか!感がすごかったです。
江戸編の描写は好き。
高橋克彦や夢枕獏の同時代の作品を読んでると特に。
現代編はどうも煮え切らない感じがな~。
子供の事故とか夫婦仲とか謎の美女あたりが消化しきれなかった感じ。
最初の切っ掛けになった絵もなんだかうやむやだし、それに対する教授の態度も微妙だし。
続編あるのかなぁ…。
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上巻に興奮しすぎただけに、下巻は冷静な評価になったかな。後半のもたつきとすっきりしない感じはちょっと残念。でも上下巻通しての評価はやはり良いです。
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東洲斎写楽の謎を解き明かす歴史ミステリ。
島田氏自身が導き出した独自の考察なのだろうか、これまで著者の御手洗シリーズなどを読んできただけに、江戸時代の浮世絵や歌舞伎などの分野にも造詣が深いことを知り、驚嘆した。実際の考察についても、素人ながら十分説得力があるように思えたし、読んでいて楽しかった。作中にもチラと名前が出てくる高橋克彦さんの浮世絵シリーズといい、私はこの時代の文化とか歴史がすこぶる好きみたい。
にしても、後書きを読むと、というか後書きをつけないといけなかったくらい、現代編のストーリーが中途半端。いろいろ裏事情があったみたいだけど、、、連載時はともかく、単行本として出版する際はもうちょっとキチンとしてほしかったかな。この状態で出版に踏み切ったのが正直驚き。まぁ、私は写楽の謎についてしか興味がなかったので、本書の内容で十分満足しましたが。
Posted by ブクログ
写楽はオランダ人のスケッチをベースに浮世絵の工程に載せたものだった。なるほどと思わせる推論は楽しめる。ただその推論と、並行して流れる江戸時代編が長くなりすぎて、もともとあった、子供の事故の裁判、主人公夫婦はどうなる、など宙に浮いたトピックも多い。続編が出てくる気もする。
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上巻に引き続き、現代と江戸時代を織り込ませながら、写楽の謎を追求する展開。
そもそも「写楽の謎」すら知らなかった自分には、「写楽は誰か?」ということに、この小説での結論が一つの説として、本当であれば・・・と思わせる奇想的な結果には驚かさせられた!!
まさか、でも、真実なのか・・・一読された方々にはどう写っただろう。
一読必須の面白いオススメ本でした!!
Posted by ブクログ
この作者らしくなく、構成もエンディングも冗漫だが不思議な魅力のある本。「後書き」が本当のエンディングで、主人公、蔦屋、そして作者の三つの視点で構成されている小説だと思った方がいいだろう。「新説」は意外性もありながら充分説得力もある。
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二回目。それを承知で読み始めたがすっかり忘れていた。途中で思い出した。
初めて読んだときは興奮した。でも二回目で思い出すと写楽の正体はわかっている。興味は半減。面白味も半減。となると小説部分の粗が目立つ。子供の死亡事故なんて何の関係もないやん。現代のドラマは収束もせずお粗末。江戸時代のドラマはまあ面白いが台詞が鬱陶しい。洒落本を研究しているのはわかるけど、そんな話し方はせんやろ。洒落本風に書いたのかもしれないが、知識のひけらかしにしか感じられない。
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面白くないわけじゃないんだけど、なんとも読みにくいというか、ページをめくる手が進まない本だった。
島田荘司といえばやっぱり占星術殺人事件の印象が強いけど、こういう本も書いてるんだ!という驚きはありました。
比べるのも違うかもしれないけど、『永遠の0』なんか(思想は賛否あるけど、)本当に描きたい歴史のエピソードを物語として展開するための”現代パート”の読みやすさ(あれはあれで空っぽすぎるかもだけど)があって、少なくとも読者が読み進めるための推進力を持った小説で。こちらは、その推進力を読者自身が持たないといけないので、よっぽど興味がないとなかなか進めない。そんな印象です。。
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幻の画家写楽の正体が明かされる?下巻。作者の考えは下巻のはじめの方でわかるのだが、作者自身が認めているように、写楽にしろ、片桐教授にしろ謎がたくさん残されたまま終わっており、正直なところ未完。写楽第一期はよいとしても、作者説だと二期以降はどうなるのか。仮に別人が描いたとして、中見でないのはなぜなのか。片桐教授はなぜ佐藤の手助けをするのか。見つかっていた肉筆画と教授の関係は?
最後まで描ききってほしいけど、難しいのかな。自説を丁寧に説明したいからだろうけど、佐藤の推理→皆で討議→江戸編と、同じような話が繰り返されるのがちょっとしつこいので、そこをコンパクトにして三分冊で最後まで書ききっていれば、本格ミステリ大賞だったのでは。
Posted by ブクログ
またも歴史にアクロバティックに切り込む。
いつもの日本人批判も含みつつ。
現代編の答え合わせをするかのような江戸編。
現代編の回収されない要素たち。
構成の粗がやや眼につく。
備忘録。
どうしてだか、写楽=シャーロック・ホームズだった! というネタバレをどこかで読んだ気になっていたが、これは自分の夢だったのね。
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ミステリの巨人の奇想がついに歴史を捉え、真実を掴み、常識をひっくり返したか。
あまりにも膨大な歴史のテーマは、到底ミステリ小説1冊に収まりきれるものではなく、そこは島田節といつもの力業で何とかエンタメ小説の体裁を整えた感が強い。
写楽の謎を解明する目的の達成を優先したのために、ストーリーや人物たちがほとんど着地できずに終わってしまった。
島田ファン、ミステリファンの読み手としては不完全燃焼この上ない。
新潮の責任でしょ。
ライフワークとして積み上げていってもよかったのじゃないか。
船戸さんの満州国演義みたいに。
テーマが許さなかったのかなあ。
とりあえず出しとかなきゃみたいな、作中の出版と同じような事情があったかな。
実に素晴らしいがもったいない感がいっぱいの傑作です。
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東洲斎写楽の正体に迫った歴史ミステリー。
鎖国であった当時の江戸文化の様子、歌麿や京伝、そんな絵師などを取り仕切る蔦屋重三郎たちの交流の様子がとても良く伝わって来る。
そして描き出される写楽の正体。
「閉じた国の幻」まさのこの副題の通り、閉じられかつ規制された不満が高まっていた時代に、蔦重を中心に国内外関わった全ての者たちが紡ぎ出した幻こそが写楽だったのだろう。
と面白かったのはこの作中にある「江戸編」まで。
正直「現代編」はいらない、江戸編の合間に解説があるだけで良かった。
説明を兼ねているが物語にしてしまったために冗長過ぎてわかりずらい。
回転ドア事件も風化させてはいけないという思いはあろうが、それはそのテーマで書けば良いわけで、写楽とは一切関係ない。
この現代編のせいでものすごくつまらない物語になってしまった。
だって江戸編、全体の3分の1もないぐらい短いから。
江戸編が非常に感動できる物語なだけに、ただただ残念。
(下)で正体に迫るので、江戸編もそれなりに分量があったので(上)より楽しめた。
江戸編だけだったら間違いなく★5つだった。
Posted by ブクログ
写楽は誰なのかと言う謎解きに関しては、斬新な解釈で説得力もあると思う。
学会での反応とかはどうだったんだろう。資料的な裏付けが弱いから、やはり無視されてるのかな?
ただ、小説としては著者も認めてるが、現代での様々な事柄の整理がついてないし、新発見の浮世絵の謎もそのまま放置。とても、完成されてるとは言い難い。続編なり、完成版を期待します。
Posted by ブクログ
<下巻あらすじ>
【江戸編Ⅱ】
蔦屋重三郎が写楽の絵に出合う
【現代編Ⅲ】
佐藤は様々な調査を経て、写楽=平賀源内ではなく
オランダ人ではないかと推察する
【江戸編Ⅲ】
ラスというオランダ人が写楽の正体だった
【エピローグ】
佐藤は、オランダとインドネシアのハーフでオランダ商館の館長を務めた
ウィレム・ラスが写楽の正体だと結論し本を執筆することにした
おわり。
【後書き】
著者が本作の執筆過程を語る
【オランダ商館長の江戸参府日記】
著者が本作を書くのに参考にした実際の日記(13P)
<オチ>
回転ドア事件は訴訟とか一切進展せず棚あげ
話の発端となった肉筆画も写楽じゃない?みたいな話のまま棚あげ
佐藤が本を書くぞ!ってとこで突然おわり。一切完結していない