恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまだ手を出してなかった恩田陸先生のデビュー作。もっと早く読むべきだった。
ジュブナイル小説のようなさわやかさと不安定で綻びがある思春期の青少年たちを描くのがこの頃からうまかったんだなぁと衝撃。
学校という特殊な社会では色んな物事があって、不可解な出来事が起こったりするものだけど蓋を開けてみるとあっけない事実だけがそこにある。何か起こって欲しいとおもっている誰かがいて、何も起こっていないのにそれらしい事象の欠片を周りがはやしたてているだけなのかなとおもった。
文化祭の「六番目の小夜子」の演劇が如実にこの本のあらすじを端的に表していて、わりと普通のストーリーなのに演じる"生徒"たち、サヨコとなった人間が恐怖を感じたからそうなってしまったのだと。
登場人物たちの軽快な会話のやりとりも魅力的でさっぱしていて、こんな友人たちが欲しいと思ったしこんな青春を送りたかった。
美香子は反省して欲しい。
加藤くんだけなににやられたか謎でそこだけモヤモヤが残る。二番目のサヨコにやられたのか...
一言でいうと非常におもしろかったです -
Posted by ブクログ
お手本のようなSFモダンホラーだ。間違いない。未読の方は幸せだ。情報など欠片も仕入れずにこの本を手に取り、頁を開け。夢か現かわからない悪夢にうなされる事は間違いない。保証する。
20年振りに再読してもなお、本書は新鮮だ。奇妙な出来事に直面した登場人物たち、彼らが追っていく事件の一つ一つ、そして明らかになっていく真実と事件の姿……この様に静かに悲鳴をあげたくなった。大口を開けて悲鳴をあげるのではない。息を押し殺して心の中で叫ぶのだ。このねっとりとした、まとわりつくような恐怖は詩的で、郷愁を誘い、魅力的だからタチが悪い。一度取り込まれたら最期だ。もう引き返せない。 -
Posted by ブクログ
●所感
2025年、最も、考えさせられる小説かもしれません。
いや、小説という括りが適当ではない書籍といえるかもしれません。
感想は後日改めます。
簡単には、書けないからです。
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●2025年12月記録 感想
1.世界観
『月の裏側』は、私たちを日常の裏側に潜む不確かな世界へと誘い込む、冷たくも美しい傑作です。
物語の根幹を成す不可解な現象――人が唐突に失踪し、しばらく後に記憶を失ったまま戻ってくるという出来事と、街の至るところに溢れる水源という異様な設定から生まれています。
2.テーマ
この小説が提示するのは、「見えているものの本来の姿は何なのか?」という、哲学的な問いかけです。
物語の舞台となる街は、失踪と水源という二つの「異界の兆候」を抱えながら、あたかも何も起こらなかったかのように日常を営んでいます。
この不気味な状況は、私たちが生きる「自分」という存在の基盤を揺るがします。
それは、私たちは、生きているが、「どこまでが己なのか?」「肉体と精神の境界は何なのか?」という根源的な問いです。
3.得体の知れない怖さ
記憶を失って帰還した者たちの姿を通して鮮烈に突きつけられます。
それは、自分の肉体が知らない時間を過ごし、精神が空白を抱える状況に、、、です。
私たちが「私」だと認識しているアイデンティティは、いかに脆く、曖昧な境界の上に成り立っているのかを痛感させられるのです。
4.恩田陸さん
日常の隙間から滑り込む「月の裏側」のような異世界を、恩田陸さんは圧倒的な想像力と創造力で具現化しています。
あり得ないはずの現象を、あたかも現実であるかのように描写する筆致に、ただただ圧倒されました。
この作品を読み終えて痛感したのは、AIが論理的な「物語」を構築できても、恩田さんのような作家が作り出す、読み手の存在そのものを問い直す「作品」は生み出せないのではないか? というものでした。
以上
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●2025年11月内容
このレビューでは、なぜそのように考えたのか?
そのきっかけの原文を転記しておきます。
なお、□は、私側で勝手につけた分類である。
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●お願い
もしも、どれか一つでも、皆様の心を捉えるならば、ぜひご一読をお願いしたい
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『月の裏側』は、生物史であり、人類史であり、哲学であり、そしてそれらの上でのミステリーであるのかもしれない。
-----以下は原文-----
□男のひと、女のひと
「男はさ、たまにバラバラな奴もいるけど、だいたい同じ方向向いた矢印がいっぱいぶら下がってるんだよ。
でも、女の子って、向きの違う矢印がいっぱいぶら下がってるのね。
だから、男は自分の矢印と女の子の矢印の向きを合わせようとするんだけど、女の子の矢印は全部方向が同じわけじゃないから、いつのまにか他の矢印と正面衝突したり立体交差になっちゃてたりする」
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□人類
「なあんで、こんなに複雑な生き物になったのかなあ、人間って。僕らのサブカルチャーなんて、人類の進歩には全く貢献してないよねえ。人間って無駄なことばかりする方向に向かってるけど、これも何か戦略と関係あるのかなあ」
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□進化
「この一世紀、人間はどんどん身体を使わない方向に向かってますよね!!乗り物が発達して足を使わない。道具が発達して手も使わない。首から上ばかりを使う。話す、聞く、読む。
つまり、目に見えない部分、言い換えれば『意識』をどんどん発達させて、イメージを広げて頭の中のものを目に見えるようにしたいと思っているわけです。これがさらに進んでいくと、テレパシーに近い状態になっていく。意識だけで他人と交信する。」
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□共同体
『ひとつ』になりたいという誘惑だ。宗教も、家族も、社会も、我々の「ひとつ』になりたいという誘惑が生み出した形式なのではないかと思うことがある。なぜなら、個々に自分の戦略を探るのは大変なストレスが伴うが、「ひとつ』になるのは楽だし何も考えずに済むからだ。
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□同化、多様性
我々は無意識のうちに他者と同化することを避け、恐れてきた。なぜならば、多様性こそが我々の生物としての戦略だからだ。
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□日常への観察と認識
みんながどっぷり平凡な日常に浸っていて変化に気付かない。または、頭から変化を否定して気付かないふりをしている。
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□生命の歴史
人間が意識を獲得し、社会を作り、倫理や哲学を確立して自らの行く末を模索してきた歳月も、生命というもの自体の巨大で冷徹な流れには何の関係もない。
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Posted by ブクログ
あ〜おもしろかった!
恩田陸さんのあの終盤に向かって全体が明らかになっていく疾走感がたまらない
前作の「MAZE」が本当におもしろかったので期待を込めて読んで結果やっぱりおもしろい
今回は特徴的で魅力的な主人公恵弥にけっこう視点を向けた作品になっている
北海道H市にいる双子の妹、和実を東京に連れ戻すため赴いた恵弥
和実は不倫相手の若槻を追いかけてH市にいたのだが、恵弥が到着した頃若槻は亡くなっており、その葬儀の日であった
恵弥の目的は和実を東京に連れ戻すこと、そして若槻博士が関わっていたと見られる「クレオパトラ」を探すことだった
クレオパトラとはなんなのか?博士、和実、本妻の慶子、その親戚の多田、意味深な登場人物が次々と現れ、より分からなくなっていく… -
Posted by ブクログ
ネタバレ「なぜこの結末を書いたのか?」
この問いから逃れることはできない。これと向き合わなければこの本は終われない。
本作の描写はあまりに柔らかく美しい。蒲公英草子とはよく言ったもので、麗らかな光が降り注ぐ日本の原風景のような楽園が広がっている。
淡い恋があったり、”にゅう・せんちゅりぃ”を生きる人々の葛藤と情熱の描きっぷりも巧みで、風景から心の描写まで筆が乗りに乗っている。
本当にこの美しい夏の記憶だけをずっと味わっていたかった。
だが、結末はどうだ。起承転落だ。それも深い深いところに突き落とされる。楽園で解きほぐされた剥き出しの心をガツンとやられて、問いを渡されたまま終わる。
だからこそ、「なぜこの結末を書いたから」これを考えなければいけない。
“「この国で生きていくことを決めた時から、僕たちはみんなを『しまう』ようになったんだ。みんなの思いをこの先のこの国に役立てるために。僕は、自分の一族に生まれついたことや、この生活を後悔してないよ」”
→これだ。多分これなんだ。僕たちも生きていく上で「しまう」ことをし続けなければならないんだ。美しいことを「しまう」ことは簡単だけども、苦しいことも悲しいことも「しまって」それでも前を向いて生きていかなければいけない。そういうことを言っているのだと思う。
辛い読書体験だったが、どうにかこの本を僕の中に「しまい」、少しでも「響く」ものにしたい。