恩田陸のレビュー一覧

  • 愚かな薔薇 上

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    十四歳の少女、高田奈智は四年ぶりに訪れた磐座の地でキャンプに参加する。キャンプの目的は、「虚ろ舟乗り」を育てることであった――という筋。
    帰省途中の寄り道で何気なく購入したものの、図らずも夏が舞台なので、盆の実家で一気読みするのが楽しい作品だった。

    SF・ミステリ・ホラー・青春小説…という触れ込みだけど、ベースは青春小説、他ジャンルはあくまでトッピングかなと思う。恩田陸って面白い原風景ありきの構成(と、当人もどこかのエッセイで書いてた気がする)が楽しい半面、辻褄合わせのために風呂敷が萎んでいく様が悲しい作品も多いのだけど、SF設定を利用して風呂敷が無限に膨らんでいく本作はひたすらに楽しかった。ただ、あくまで原風景の味付けにSF的モチーフがあるだけで、「虚ろ舟乗りの存在意義」やら「社会構造への影響」みたいなSF的発想の追求はかなり淡白で、あくまで成長譚がメインに据えられている印象。これをSF小説と呼ぶのはちょっと誇大広告かな……。

    血切り関係のくだりは結構露骨な性体験のアレゴリーで、少女視点のそれはだいぶ生々しい。このあたりの少女漫画的味付けは結構評価が分かれる気がする。男としては少し居心地の悪さを感じる部分あり。思春期の我々はその点バカで能天気で気楽なのでね。

    全体的としては『六番目の小夜子』『夜のピクニック』の正統進化、恩田陸集大成かなと思う。やっぱり恩田先生好きだな。

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    2025年08月18日
  • 愚かな薔薇 下

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    愚かな薔薇とは、枯れない薔薇
    永遠の命
    身体が変化するためには
    キャンプ生たちが血を吸わないと
    生きていけないという設定が
    西洋のドラキュラ伝説を思わせる

    ホラーであり、ミステリーであり、SFであり
    少年少女の成長を追う青春小説でもある

    地球のこれからをいつかは考えなければいけないのだろうけれど
    こんなふうに歴史は動くのかもしれない
    恩田陸の世界に浸ることができた

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    2025年08月18日
  • 七月に流れる花

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    なるほど、『八月は冷たい城』がサイドBならこちらはサイドAといったところか。どちらにも謎は描写してあるけれど、これといった答えは出ていない。この辺を意地悪と取るか、はたまた「この不可思議こそ恩田陸」と取るかで評価は変わる。
    どちらとも合わせて読んでも今ひとつハッキリしない。繋がりすらない。ディストピア的でありながら、夏休みのようなワクワクする気持ちが同居している。もう少し踏み込んでくれても良かったのでは? と思いつつ、この世界観にはいつまでも浸っていたい、そんな心地良さがあった。

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    2025年08月15日
  • ドミノin上海

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    ドミノの続編です。
    前作で気になっていたあの子が亡くなるところから始まり、え~と思っていたのですが、あれよあれよと面白くなって、何度かグフッと笑ってしまいました。名前が読めないなんて気にならなくなる位、キャラが強く、直ぐにイメージできたのもグッド!前作越えの面白さでした。

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    2025年08月14日
  • こわい話の時間です 六年一組の学級日誌

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    恩田さんの秀逸。
    「象の眠る山」田中啓文
    「とりかえっこ」木犀あこ
    「誕生日のお祝い」田中哲弥
    「おぼえているかい?」黒木あるじ
    「能面男」恒川光太郎
    「爪に関するいやな話」牧野修
    「骨もよう」篠たまき
    「猫屋敷に気をつけて」我孫子武丸
    「六年一組の学級日誌」恩田陸

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    2025年08月13日
  • 球形の季節

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    日常が得体の知れない不気味なものに変質していく様は『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』にも繋がってくるのではないか。初版出版が31年前、今回再読したが改めて構成の巧みさ、日常に何かが忍び込んできて我々の知っている日々が何か異様なものに取って代わられている描写の上手さには舌を巻いた。
    怖さはとは本来、血まみれの殺人鬼でも、巨大な怪物でもなく(もちろんそれも怖いのだが)、日常がひっくり返る事でもあるのではないか。
    本作は日常が一気にひっくり返りはしない。少しずつ少しずつ、引き返せないところに向かっていくのだ。この緊張感がたまらない。

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    2025年08月07日
  • 黄昏の百合の骨

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    麦の海に沈む果実の続編。
    個人的には世界観に浸る3月の国編の方が好みだったが、本編は主人公である理瀬の他者分析や明晰な思考が読み取れる点が興味深い。
    事件の展開は多いが、それだけでなく常に文章から溢れ出る奇妙な不安や刹那的な美しさが心地いい。

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    2025年07月31日
  • スキマワラシ

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    お…面白かった〜〜!
    伏線を回収しきらないのが大得意な恩田陸、これはとても良い方向に作用していたと思います。

    解体現場に現れる不思議な少女、
    触ると過去が見える能力をもつサンタ、
    引戸集めが趣味のタロウ。
    そしてむせかえるような夏の空気。
    現実と不思議な世界の狭間のような作品、
    わたしはこの手の合間を曖昧に描かれた話が大好物なのだと気づきました…本当にありがとう、恩田陸。

    絶対夏に読むべき。
    ナツイチに選んでくれてありがとう、集英社。

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    2025年07月27日
  • 夏の名残りの薔薇

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    大好きな本です
    各々の登場人物の中にある想い、嘘、幻想…。その3つが全て混じり合い、一つの物語を作りあげる。

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    2025年07月27日
  • 慄く 最恐の書き下ろしアンソロジー

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    まさに「戦慄」の如き作品の応酬。
    特にやはり注目は、北沢陶さん。大阪舟場を舞台にさせたら、右に出る人はいません。御本人も昔の人の言い回しや、当時の表現にこだわって書いているだけあって、時代小説のような雰囲気ですが、説明や描写表現は現代語を極力使っているので、どっちらけになることはありません。

    どれも短いながらも、天下一品でした。

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    2025年07月16日
  • チョコレートコスモス

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    ネタバレ

    こんなにも面白い作品に出会えた感動と、続編の刊行が止まったままである事実の衝撃。
    ガラスの仮面の新刊と同じくらい、「ダンデライオン」「チェリーブロッサム」を永遠に待ってます。本当にお願いです。先生、見てますか?

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    2026年08月23日
  • 上と外(下)

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    下巻、ハラハラドキドキしました。
    このまま悪い結果になって終わるはずは無いと思いつつ、読みながら冒険ゲームに
    迷い込んだような錯覚に陥ったりして
    ネタバレになるからこれ以上か書けませんが大変感動しました。

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    2025年07月09日
  • 上と外(上)

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    壮大な物語です。
    初めは退屈な物を読んでいる感じが
    途中からの展開がハラハラして本から目が離せなくなりました。
    このまま彼らの運命はどうなるのだろう?
    下巻に続く

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    2025年07月07日
  • 蒲公英草紙 常野物語

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    再読。
    常野物語、どんな話だったかと思いながら読み返しました。
    古き良きのどかな時代の話かと思ったら聡子様の最後のくだり、そして戦後に繋がるエピソード。爽やかな青春と重たい現実に胸が塞がるような後味でした。対比によって、主人公と聡子様たちが過ごした時間がより一層懐かしく、引き立っていました。

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    2025年07月06日
  • 黄昏の百合の骨

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    前作の続きということで理瀬シリーズすっかりハマってしまいました♡
    今回は、亡き祖母の遺言により魔女の館と呼ばれる、祖母が住んでいた家に叔母2人と一緒に住むことに。
    近所では気味悪がられているこの家で祖母は不可解な死を遂げている。
    そして祖母と血のつながりがない叔母2人は何かを企み腹の探り合いをしながら理瀬は過ごしていく。
    百合の匂いが漂うこのグラバー邸ではどんな秘密が待っているのだろうか?

    2作目も不穏なミステリー。
    今回は理瀬の従兄弟の亘や稔が登場し、
    前作と違う覚醒した理瀬にドキドキします☺️
    昔や次の理瀬が知りたくなり、3作目も買ってしまいました。
    理瀬ワールド中毒になって抜け出せないです!笑

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    2025年06月22日
  • 夜明けの花園

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    通勤帰宅時にオーディブルで聴きました。
    とても好きな雰囲気の作品でした。
    聴き始めてすぐにシリーズものだってことに気づくも面白くて最後まで聴いちゃいました。
    理瀬シリーズちゃんと最初から読みたくなりました。

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    2025年06月16日
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

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    この小説を読んで、YouTubeで動画見ました!
    素敵な寝台列車でした!
    私もいつか未来の旦那さんと泊まってみたいなと思いました!

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    2025年06月13日
  • 蒲公英草紙 常野物語

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    静かで上品で、風に揺れる草花のように趣深い作品だった。
    登場人物の佇まいや世界の描き方、そのすべてが柔らかくて清らかで、読み終えたあとも心に残り続ける。
    この本が似合うような、静かな気品をまとった人間になりたい。

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    2025年06月01日
  • 薔薇のなかの蛇

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    少し生々しいグロテスクな描写があってお昼休憩中に読むには失敗と思ったところもあったけど、やはり理瀬シリーズは間違いなかった

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    2025年05月30日
  • 消滅 VANISHING POINT (上)

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     話が大きく動き出すのは、文庫本で180ページくらいから、それまではゆるやかに主要なキャラクターの人となりが描かれていきます。掛け合いの楽しさや文章の読み心地の良さもあって、導入が終わるまでにそんなページが掛かっていたことに驚きました。とはいえ、ネタバレとは言えないものの、ここからの展開を語ってしまうのは若干ためらいがあります(文庫本の裏表紙には書かれていますが)

     すこし伏せながら伝えるとしたら、本作は空港の入管で別室に案内された性別も年齢もバラバラの11人の日本人が、彼ら同士で議論して、「この中にたったひとりいるある思惑を持った人物」を導き出すミステリです。緊迫した状況の中に、登場人物同士の和んでしまうやり取りが随所、挟み込まれているのが印象的です。登場人物たちの様々な隠し事が明かされていく中で、真相が明らかになり、『消滅』とともに、希望のヴィジョンが描き出されます。それに対する〈彼女〉の反応も良いなぁ、と。とても余韻の良い小説でした。

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    2025年05月27日