恩田陸のレビュー一覧
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『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集。
どの話も「○○と○○」というタイトルで統一されていて、それぞれ2人の人物を軸に描かれているのが面白かった。
「祝祭と掃苔」で始まり、「伝説と予感」で終わる構成、その本のタイトルが「祝祭と予感」なのも含めて、一冊全体のまとまりが綺麗。
一番好きだったのは「竪琴と葦笛」。ナサニエルとマサルの師弟コンビ(このお話ではまだ師弟ではなかったけど)の二人ともちょっと子供っぽいところが見られてとても微笑ましかった。
最後の「伝説と予感」だけ、それまでとは少し異質で、夢を見ているような不思議な話だったのも好き。『祝祭と予感』というタイトルに繋がるような、ふわっとした余韻の残る終わり方だった。
『蜜蜂と遠雷』がとても好きだったので、もう少しこの世界を味わえて嬉しかった。 -
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音楽を愛し、何より「ピアノ」に導かれし者たちの多様に折り重なっては交錯していく物語。丁寧かつ表現豊かな筆致で綴り上げていく。
恩田氏の音楽に対する造詣の深さがあってこそではあるのだろう。
描かれる“音楽”にまつわる物語―それぞれの輪郭そして色彩はいずれも鮮明で生き生きとしていた。例えば音楽に携わる者たち(プロ・アマチュア問わず)でさえもその内界を充分に満たすほどだ。
中でも驚いたのは、「文字が音を奏で、眼で旋律を愉しむ」ことになろうとは……。物語の扉を開けるまでつゆほどにも思い至らなかった。
これほどの驚きと感動は、転び落ちた涙の数を比べただけでも、記憶の限り他には見当たらない。そう言っても過言ではなかろう。
恩田陸、恐るべし。改めてそう思わせてくれる一作であった。
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ネタバレまったく違うところで、いろいろなことが起きている
数ページで別の人物と場面に変わるのはまるで映画を見ているようで楽しい
登場人物が多いのに混乱しないのは、それぞれの登場人物の設定や特徴に際立つものがあるからだと思う。
最初は違う場所にいた人同士がつながったところで思わず「あー!」と声を出してしまった。
『ひとじち』になっているのに、今夜お寿司食べられるのかな(257p)と呑気で緊張感のない麻里花や、警察がわらわらと囲んでいるのに『どらや』のお菓子の方が気になる優子。
3つある『どらや』の行方や如何に!まじでおもしろい。
エンタメ角川はやっぱりおもしろい! -
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贅沢な感想かもしれませんが、まだ終わってほしくなかった、もっと亜夜、塵、マサルの3人の演奏を聴いていたいと思ってしまうほど、作品の世界観に深く引き込まれた1冊でした。上巻の勢いそのままに、3人の演奏はさらに磨きがかかり、その凄さを客観的な視点で伝えてくれる奏や明石の存在も、物語の構図としてとても良かったです。コンクールという設定上、最終的には順位がつき物語は終わりに向かいます。しかし3次予選までとは異なり、あえて結果発表という形を取らず、亜夜の演奏も細部まで描ききらない余白を残した終わり方にしたのは、亜夜のこれから、そして3人の関係性を読み手側で自由に想像させるために、恩田陸さん自身が用意した“カデンツァ”なのではないでしょうか。直木賞と本屋大賞のW受賞も納得の、圧倒的な完成度を持つ作品です。
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青春ノスタルジー×音楽の恩田陸が送る最高傑作。かつて何かを目指して夢を見た方にはとっても刺さる1冊です。努力、才能、時の運。音楽で生きていくために、死屍累々を乗り越えて芳ヶ江に辿り着いたコンテスタントたち。プロとして光を浴びるのはほんの一握りに限られるからこそ、目の前の一瞬に懸ける登場人物たちの描写が感動的でした。明石、塵、亜夜、マサル、チャンと全く異なるキャラクター像も競技こそ違えど当て嵌めてしまうぐらいリアリティがあり、とても良かったです。本作は文字だけで音楽、しかも旋律を語るという一見無茶な試みに見えますが、流石は恩田陸さん、抽象•具体の波状描写でコンサートホールを見事に再現、演奏が自然と頭に入って来ます。本当に素晴らしい1冊でしたし、2次予選の行く末、下巻の展開が楽しみです。
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上巻で驚かされた「音楽を文章で表現する力」は、下巻に入ってさらに熱を帯びていく。
とりわけ演奏シーンは圧巻だった。
奏でられる音の中に、その人がこれまで生きてきた時間、出会った人、失ったもの、抱えてきた感情までが凝縮されているように感じる。一回の演奏が、その人物の人生そのものとして立ち上がってくる。
だからこそ、これは単にコンクールの結果を追う物語ではないのだと思う。それぞれの音楽家が他者の演奏に触れ、自分自身の音楽と向き合い、互いに影響を与えながら変化していく。その過程そのものが豊かだった。
読みながら音が聴こえ、音が観える。
最後までその感覚は失われなかった。
音楽という、形のないものを、言葉によってここまで鮮やかに立ち上げることができるのか。驚きと感動を覚えながら読み終えた。
演奏する人の人生が凝縮されたような音楽を、文字を通して「聴いた」一冊だった。 -
Posted by ブクログ
音楽を文章で描くということが、ここまで成立するのかと驚いた。
当然ながら本から実際に音が鳴るわけではない。それでも、演奏が始まると音が聴こえるように感じる。時には、音の色や形、広がりまで見えてくるような感覚さえあった。
ピアノの響きを直接説明するだけではなく、風景や記憶、感情、空気の動きにまで変換しながら音楽を描いていく。その表現の豊かさに何度も引き込まれた。
また、同じ曲であっても、演奏する人物によってまったく違う音楽として立ち上がってくる。それぞれが歩んできた人生や、音楽との距離、抱えているものが演奏に滲み出ているからなのだと思う。
「読む」のに「聴こえる」。
「文字」なのに「観える」。
そんな不思議な読書体験を味わわせてくれる上巻だった。続きを聴くような気持ちで、下巻へ進みたい。