恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりの恩田陸。どうしても海外作品を優先してしまうが、先日買ったガイド本で気持ちが再燃。
明日にはアパートから引っ越す男女。ある事件について、それぞれが相手に罪があると考えており、どこか油断ならない最後の夜が始まる…
この不穏な感じ。最初は何が起こっているか全くわからないが、徐々に霧が晴れるかのような展開。恩田陸の特徴の一つでもあり、ハマるととことん面白くなる。今作は見事にハマった作品ではないか(たまにボヤッとしたまま終わり、拍子抜けする作品もあるが笑)。
まず秘密を抱えた男女が、最後の夜に語り明かす設定が良い。予想外の着地も用意されており満足。積読を後悔した作品となった。
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Posted by ブクログ
ネタバレたぶんこれは、一枚の写真についての
物語なのだろう。
むろん、ある男の死を巡る謎についての物語でも
あるし、山の話でもあるはずだ。そして、一組の
男女の別離の話という側面も持っている。
僕は、この表情を見たことがある。この写真と
同じように、複数の人間がこんな表情でこんな
ポーズで僕を振り向いていたことがある。そんな
確信が身体を強く揺さぶったのだ。
今夜、最後の一晩をこの部屋で過ごし、明日は
めいめい別の場所へと出て行く事になっている。
季節は初夏。窓を開け放っていると、時折いい
風が入ってきて快適だ。夜に窓を開けていると
外の空気が繋がっていて不思議な胸騒ぎのする
解放感がある。
荷 -
Posted by ブクログ
月は夜空に浮かぶ。いつも月を見ているが、しかし、地球から月の裏側は見えない。それでも、月を見て、月は知っているような気になる。しかし、見えていない月の裏側で何が行われているのか?
この物語は、見えていることだけでなく、実は見えていないものが、知らない間に存在し、それが現在の見えている世界に関与しているという。認識の不確かさと日常生活の脆さがあらわになる。随分前に、月の裏側に置き去りにされた夢を見たことがある。荒涼とした月の原野に見えるのは漆黒の空だった。本書は、堀と川が多い街で、人が忽然と姿を消し、数日後に記憶を失った状態で戻ってくるという不可解な事件を巡る物語。その事件の謎解きは、はっ -
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Posted by ブクログ
話が大きく動き出すのは、文庫本で180ページくらいから、それまではゆるやかに主要なキャラクターの人となりが描かれていきます。掛け合いの楽しさや文章の読み心地の良さもあって、導入が終わるまでにそんなページが掛かっていたことに驚きました。とはいえ、ネタバレとは言えないものの、ここからの展開を語ってしまうのは若干ためらいがあります(文庫本の裏表紙には書かれていますが)
すこし伏せながら伝えるとしたら、本作は空港の入管で別室に案内された性別も年齢もバラバラの11人の日本人が、彼ら同士で議論して、「この中にたったひとりいるある思惑を持った人物」を導き出すミステリです。緊迫した状況の中に、登場人物同 -