恩田陸のレビュー一覧
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『愚かな薔薇』英題を訳すと永遠に咲く薔薇と訳せる。作中では「聡いバラは、咲いて、散って、ちゃんと枯れるの」「だけど、愚かなバラは枯れない。咲いたまま、永遠に散らないし、枯れない」と言うセリフが書名の意味でもあり本書の核でもある変質体の比喩である。
血切りと言う行為から私はドラキュラを想像していたのだが読み進めていくうちに萩尾望都の「ポーの一族」を連想した。ただし舞台は西洋から日本の地方都市として描かれているのも恩田陸らしさが際立っている。地球の終焉後も宇宙に存在する為に虚ろ船乗りを増やそうと長旅が可能な変質体に進化すると言う壮大なストーリーなのだ。ホラーでもありSF的要素もありの私好みの小説である。
上下完結なんだけどあっという間に2冊読んでしまいました。 -
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ネタバレある男の死という出来事が序盤で出されるも、なかなかその事件が起きず、それまでがとても長く感じられてもどかしかった。
しかし、主人公2人の血の繋がりについてが仄めかされたり、その男の死の出来事が登場してくると、一気に面白くなり、最後は一気に読み切った。
他の作品でもあったが、やはり血の繋がりがあることを知らずに、血の繋がりのある人に出会うと、運命だと勘違いして恋心が芽生えてしまうものなのか。でも当人達にとっては死を選びたくなるほどの大きな悩みになってしまうことに、すごく不思議な気持ちになった。
「私が彼を好きだったのは、彼が私を好きだったからだ。私は私を好いてくれる彼が好きだったのであって、彼を好きだったからつきあっていたわけではなかったのだ。」という文章が、私にもすごく当てはまっていると感じて刺さった。私自身も、自分から誰かを好きになることはなく、誰か好きになってくれる人の中で、付き合うと好きになったような気になるし、その人からの愛情が無くなったり裏切られたりすると、どうしてその人のことを好きだと錯覚してしまっていたのだろうと疑問に思うほど冷めて一気に感情を失う。私もまだまだ子供なのかと思わされた。
また、「死は生のひとつ」というフレーズも心にすごく残った。
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『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集。
どの話も「○○と○○」というタイトルで統一されていて、それぞれ2人の人物を軸に描かれているのが面白かった。
「祝祭と掃苔」で始まり、「伝説と予感」で終わる構成、その本のタイトルが「祝祭と予感」なのも含めて、一冊全体のまとまりが綺麗。
一番好きだったのは「竪琴と葦笛」。ナサニエルとマサルの師弟コンビ(このお話ではまだ師弟ではなかったけど)の二人ともちょっと子供っぽいところが見られてとても微笑ましかった。
最後の「伝説と予感」だけ、それまでとは少し異質で、夢を見ているような不思議な話だったのも好き。『祝祭と予感』というタイトルに繋がるような、ふわっとした余韻の残る終わり方だった。
『蜜蜂と遠雷』がとても好きだったので、もう少しこの世界を味わえて嬉しかった。 -
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音楽を愛し、何より「ピアノ」に導かれし者たちの多様に折り重なっては交錯していく物語。丁寧かつ表現豊かな筆致で綴り上げていく。
恩田氏の音楽に対する造詣の深さがあってこそではあるのだろう。
描かれる“音楽”にまつわる物語―それぞれの輪郭そして色彩はいずれも鮮明で生き生きとしていた。例えば音楽に携わる者たち(プロ・アマチュア問わず)でさえもその内界を充分に満たすほどだ。
中でも驚いたのは、「文字が音を奏で、眼で旋律を愉しむ」ことになろうとは……。物語の扉を開けるまでつゆほどにも思い至らなかった。
これほどの驚きと感動は、転び落ちた涙の数を比べただけでも、記憶の限り他には見当たらない。そう言っても過言ではなかろう。
恩田陸、恐るべし。改めてそう思わせてくれる一作であった。
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ネタバレまったく違うところで、いろいろなことが起きている
数ページで別の人物と場面に変わるのはまるで映画を見ているようで楽しい
登場人物が多いのに混乱しないのは、それぞれの登場人物の設定や特徴に際立つものがあるからだと思う。
最初は違う場所にいた人同士がつながったところで思わず「あー!」と声を出してしまった。
『ひとじち』になっているのに、今夜お寿司食べられるのかな(257p)と呑気で緊張感のない麻里花や、警察がわらわらと囲んでいるのに『どらや』のお菓子の方が気になる優子。
3つある『どらや』の行方や如何に!まじでおもしろい。
エンタメ角川はやっぱりおもしろい! -
Posted by ブクログ
贅沢な感想かもしれませんが、まだ終わってほしくなかった、もっと亜夜、塵、マサルの3人の演奏を聴いていたいと思ってしまうほど、作品の世界観に深く引き込まれた1冊でした。上巻の勢いそのままに、3人の演奏はさらに磨きがかかり、その凄さを客観的な視点で伝えてくれる奏や明石の存在も、物語の構図としてとても良かったです。コンクールという設定上、最終的には順位がつき物語は終わりに向かいます。しかし3次予選までとは異なり、あえて結果発表という形を取らず、亜夜の演奏も細部まで描ききらない余白を残した終わり方にしたのは、亜夜のこれから、そして3人の関係性を読み手側で自由に想像させるために、恩田陸さん自身が用意した“カデンツァ”なのではないでしょうか。直木賞と本屋大賞のW受賞も納得の、圧倒的な完成度を持つ作品です。