中村航のレビュー一覧
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アンソロジーは「名前も作品も初めて知った」作家のほうが断然面白く感じる。この本では坂井希久子『色にいでにけり』がそれで、普段読まない時代ものだがとても面白かった。主人公の境遇と芯に持つ矜持、江戸の色名と和菓子の描写が実に生き生き、しみじみと描かれていて、このシリーズが読みたくなった。
他は伊吹有喜『夏も近づく』、深緑野分『福神漬』も滋味があってよかった。井上荒野『好好軒の犬』はラストが上手い。柚木麻子『エルゴと不倫鮨』はトップバッターとして勢いがあり好印象。柴田よしき『どっしりふわふわ』はラストが安直な気がしたのと、中村航『味のわからない男』は好みが合わなかった。 -
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Posted by ブクログ
面白い小説の書き方のエッセンスを凝縮した一冊。
勿論、これ読んだだけで小説が本当に簡単に書けるわけではなく、本書内でもある通り、努力は必要。ただ努力すべき方向性は示してくれる。過去と未来とのプロットの交差、日常から非日常そして日常への回帰と成長、また転じると比喩の重要性など。小説を書きたい、という人の裾野を広げる内容になっている。
何より小説は、読者に読んでもらうもの、どうやったらページをめくってもらえるかを意識することが大事。小説のみならず、他の文章の書き方としても役立つ。
本書の内容を知っていると、小説のみならずテレビ、映画の「物語」も深く味わえるようになると思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ好きな作家さんなのでこの作品は単行本でも読んでいて、航さんの久しぶりの小説新刊というのと、こういう題材の小説を応援したい気持ちで今回文庫でも買っちゃいました。
正直、単行本で初めて読んだときは(アセクシャルの人が恋するようになる、という結末だけは絶対やだ、と思っていたのもあって)結末にいまいち納得がいかなかったのだけど、今回は素直にいい物語だったなと思えました。
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デビュー作『リレキショ』の冒頭で「大切なのは意志と勇気。それだけでね、大抵のことは何とかなるのよ」という台詞があって、「意志と勇気」というのは航さんの作品に度々登場するのだけど、アセクシャルを扱った今作では「意志と勇気ではどう -
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Posted by ブクログ
ふわりと淡く優しい印象な作品でした。
オーソドックスと言えばそんな感じも、しかしながら最初から最後まで雰囲気は崩さず、淡く甘酸っぱいお話に、おっちゃんは惹かれました。
淡い黄色、ないしは黄緑色な色彩を思わせる本作、またしておっちゃんのお気に入り候補にあがる著者様を見つけました。
涼しくなりつつある秋の夜長、センチメンタルにふけるには良い塩梅の作品でした。
ちなみに気に入ったワンシーンが一つ。修学旅行編の白原母娘が梅酒を酌み交わすシーン、ここが好きですね。娘が少しずつ大人になりつつある会話を交わすシーンには、ホッコリとしました。
「あのね、不思議ちゃんはやめてよね。どうせなら小悪魔ちゃ