朱川湊人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「こういうの、こういうのが小説だよなぁ」
本を閉じ、思わずそんな言葉が口をついて出た。
私はこういう小説が、たまらなく大好きだ。
「そうそう、小説って本来、こんなものだったよな」と、思い出させてもらった。
昨今、時代を反映した、社会的メッセージ性の込められた小説がウケるけれども、もうそんなのはいいんだよ。
『なんだか少し頭がよくなったような気がする小説』、そんなのはもうよくて。
普段の仕事の中で、殺伐とした労働の中で、現実というものをしっかり体感している。私たちはすでに十分すぎるほど「現実」と対峙している。
時代を切り取った作品を読めば、そりゃ当然「現実」を知ることができる。でも私が小説に求めるのは、「現実」ではなく、「現実逃避」なのだ。作者の紡ぐ豊かな空想の世界に連れて行ってほしい。夢を見させてほしい――ただ、それだけなのだ。
ノスタルジー、ほんのり漂うホラーの気配、純真な子供の目線、集合住宅の空気感、クオリティの高い短編が紡ぐ、心温まるストーリー……。朱川作品を構成する要素のすべてが、この一冊に凝縮されている。
ポケットに忍ばせておきたくなるような短編集、私にとってご褒美のような一冊だった。 -
Posted by ブクログ
忙しい時こそ短編集♡
ずっと気になってたこの作品
予想以上に良かった〜:.゚٩(๑˘ω˘๑)۶:.。♡︎
不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。
各章の主人公は商店街やその近所に住んでいる人々
それぞれが不思議な体験をするが哀しい話あり、ゾワっとする話あり、ホッコリ話もある。
それぞれの話に出てくるのは芥川龍之介似の古書店の店主と寂れた寺。
不思議な体験をした人達は何かに引き寄せられるように店主と関わるんだけど…話が進んでいくうちに店主のことが次第にわかってくる。
そしてラストの話でスッキリウルウル(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
なんだか優しい話を書く方だなぁ…
あ!!「オルゴォル」の作家さんだった!
朱川さんちょっと他作品も読んでいきます♡
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Posted by ブクログ
昭和30〜40年代の大阪の下町。子どもたちの飾り気のない目線で描かれるのは、活気あふれる暮らしのすぐ裏側に、ふとした拍子に地続きになったような異界が顔をのぞかせる物語だ。
決してそれが当たり前にあるわけではないけれど、当時の路地の暗がりや、誰かの強い思いが重なったとき、ふとそう感じてしまう瞬間が鮮烈に描かれている。
一番のお気に入りになったのは、「摩訶不思議」。
女にだらしなくて、死んでからもなお未練を残して周りを困らせるおっちゃん。火葬場の炉になかなか入ろうとしない往生際の悪さに呆れつつも、どこか憎めない愛嬌を感じてしまう。
愛人のカオルさんがアキラに「これ、誰にもわからんように、あの人のお棺に入れて」と、ちり紙に包んだものを差し出した、あの瞬間。中身が何であるか、その時点ですぐにピンときてしまった。あのちょっとセクシーで笑える「ブツ」の正体には、おっちゃんの人間臭さが凝縮されていて最高だった。最後に見せるほっこりしたオチも、また良し。
そして、「トカビの夜」
病気で亡くなった少年が、夜明けの空を自由自在に飛び回る姿。それを見送る主人公の純粋な優しさと、作者のどこまでも温かい筆致に触れたとき、たまらず涙があふれた。あの夜、空へ還る少年の姿を見送ることで、主人公自身も「許された」のだと感じる。
この小説には、少しのユーモア、少しのホラー、そして人間の業。それらが大きな愛に包まれて描かれている。
読み終えたあと、自分の記憶の底にある「あの日」の景色をそっとなでたくなるような、切なくも美しい傑作短編集だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ差別されていた家の子供が病気で亡くなった後に現れて一緒に遊ぶ『トカビの夜』では、親の気持ちを思い涙ぐみ、不思議な生き物を飼う少女の話『妖精生物』では、ダメだよ!と思いながらも怖いもの見たさでドキドキし、遊び人だった叔父の葬式で霊柩車が動かなくなり愛人たちが呼ばれる『摩訶不思議』は笑い事ではないけれどなんだか笑ってしまい、生まれ変わる前の夢を見るという妹と前世での父親に会いに行く『花まんま』で、妹を思う兄や、娘を亡くした父親の姿に涙が溢れ、言葉で人をあの世に送る『送りん婆』では、この力で世界を平和にできるのではないかとの誘惑を感じ、仲間はずれにされていた少年が南の方から働きに来ていた若い女性と墓地で遊ぶ『凍蝶』で女性の幸せを強く願った。どの物語も少し不思議だけれど、描写が細やかなので映像を見ているように惹き込まれて、切なくなったりドキドキしたり、時に笑ったりしながら読み終えた。