朱川湊人のレビュー一覧
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ほんの一瞬、ちょっとだけ目を離したすきに大怪我を負った亜由美。
その責任をずっと感じながら生きてきた進也。
後遺症が残った亜由美は、片方の足がひざから曲がらない。走ることも出来ない。自転車に乗ることも出来ない。
一番近くでそれを見守ってきた進也は、亜由美への負い目をずっと抱えて生きてきた。
亜由美の怪我が原因で、結局両親は離婚した。
家族の崩壊は自分のせいだ、誰が何を言っても進也はそう思い込んでいる。
何かがあったとき、誰かのせいにして、全部責任を誰かに押し付けてしまうのは楽だ。
だってその誰かを責めていればいいんだから。
進也の父親はきっと弱い人だったんだろう。
いろんなことを受けとめきれず -
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短編集。
宗教というものが本当に人を救うのかどうかはわからない。
でも、きっと心の中の平安を求めて宗教と向き合っているのだろうと思う。
金に執着する宗教はまがいものだ。
昔そんなふうに言っていた人がいた。
もしかしたら、ナカツギさまにはわずかかもしれないけれど本当に不思議な力があったのかもしれない。
でも、会長に利用されるようになってから、少しずつ間違った方向へずれていってしまったように思った。
幸せになりたい。誰でも願うことだけれど、幸せかどうかは自分の心が決めること。
人と比べて羨んだり妬んだりしていては、きっといつまでも本当の幸せは来ない気がした。 -
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昭和30年代。まだ日本が貧しかった頃の物語。
古き良き時代・・・と言っていいのかわからないけれど、今よりも不自由な(当時の人たちにはそんな認識はなかったと思うけれど)中に、人の優しさが息づいていた時代。
現実は厳しく、ときに残酷だ。
けれど反面愛しくて優しくて、ときに泣きたくなるほどに切ない。
ほんわりとした語り口で、穏やかさとあたたかさが描かれている。
不思議な力を持つ姉と、姉を慕う妹。
柔らかな印象なの凛とした美しさも感じさせる姉・鈴音は、病弱なところも含めて憧れ的な存在なのかもしれない。
二人をしっかりと見守る女丈夫な母親の果たす役割も大きい。
そして全編を通して感じるのは、甘く切ない何 -
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導入部から回想という形を採り、時代背景を現在から極端にシフトさせることなく、過去の大きな事件や流行りを背景設定に取り込んでいる。
なので、その”過去”の方を体験している人の方が実感を伴って読めるだろうが、全く知らない人でも楽しめる作品になっているのではないかな、と思う。
突然に表れた突飛な人物から、印象を変えつつ影響を与え合いつつ、止まっていた時間の側面が癒されつつそっと動いていく。 そしてある日、その人物はいなくなり...
何だか呆気ないほどの終盤だったが、消えてしまった人物はしっかりと確実に、良い変化を残していったのだ。...ということなのだろう。
途中で展開が急変しスピード感が上がる。後 -
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(「BOOK」データベースより)
「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、ハヤトは一路、鹿児島を目指す。奇跡の、そして感動のクライマックス!直木賞作家による感動の成長物語。
我が家で大流行している朱川湊人の作品の中でも異例の長編で、いつも短編か連作なので長編はどうなのかなと若干心配していましたが、結果杞憂でした、とても良い本でした。
少々作者 -
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私もきっとこんな風に見てしまうのかも知れない。
パパが毎日娘を公園に連れてくるのを見たら
眉をひそめてしまうのかもしれない。
事情も知らないのに、奥さんを働かせてと
無責任な噂にのっかってしまうのかもしれない。
後に奥さんになる美智子さんと
人生のいいとこ取りをして、イッヒッヒと笑いあうために
大奮闘するトモローさんのお話。
自分で保守的だなぁ、と思ってしまいました。
知ってみればこんなに素敵で、こんなに幸せな家族は
そうそうないんじゃないかと思います。
温かかったですね。間違っていないことなら
頑張っていれば必ず道がつながっていく。
風当たりが強くとも家族を第一に考えていれば
必ず -
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失業してしまったことをきっかけに
専業主夫の道を選ぶことになった25歳のトモロー。
男の人が家事・育児に専念するなんて・・・という好奇の眼差しの中
子どもと共にしなやかに成長していく男子の物語です。
25歳の男に成長という言葉は似合わないのかもしれないけれど、
子育てって、自分の成長過程を追体験することができる
絶好の機会なのだ。
忘れていた子どもの頃の気持ちを思い出したり、
反感を持っていた親へのわだかまりが消えたり。
こんな機会を女性が独り占めしてしまうというのは
なんとももったいないことなんじゃなかろうか。
とはいえ、子育て中に感じる
孤独感や閉塞感、公園デビューやママ(パパ)友との軋轢 -
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人や物がもつ記憶を読み取る能力がある“姉さま”とその妹“ワッコちゃん”。昭和30年代の東京を舞台に、人と人とのつながりや温かさ、少しの哀しみが沁みる連作短編小説。
時を経て、40年ほど前の子ども時代を、ワッコちゃんが柔らかな語り口で回想するかたちでストーリーは展開していきます。盗難事件や殺人事件、悲しい出来事が続きますが、姉さまやワッコちゃんを始めとした人間味溢れる登場人物のおかげで悲しいだけは終わりません。
この作品には「善か悪か」を読み手に問うシーンが多く登場し、ひとつの大きなテーマになっています。犯罪自体は悪です。しかしなぜ犯罪に手を染めなければならなかったのか、その背景には本人が苦し -
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ネタバレ前作の冒頭から、昔の友、雪華を懐かしんでの語りという体裁をとっているから、もう戻らない時の話であるとは分かって読んでいるのだけれど、何とも切ない気持になる幕切れだ。
前作は、怪しい体験も、なんだか若者の冒険ぽく、楽しげな要素も多かったのだが。
『鬼蜘蛛の讃美歌』
夢二経由で…西塔光児との出会い
『汝、深淵をのぞくとき』
のぞきからくりの世界
眠りの中で見る夢、将来の希望とか「望み」と言い直せる夢があるが、どちらにも該当しない第3の夢が、人にはある
『黒のコスモス少女団』
こういう子供たちは、この時代、多くいたらしいです。
今回の本は、女性の境遇を扱ったものが多い
『幽鬼(おに)喰らい』 -
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40代半ばとなった中年男性が少年時代のある時期に一緒に過ごした"謎の少年"との思い出を回顧するところから物語は始まる。朱川湊人お得意の当時の流行りや時代背景がマニアックに描写されており、空き地、探偵団、冒険、秘密基地等のキーワードは暗くなるまで遊び倒した"あの頃"を痛烈に思い出させる。子供同士の絆や友情、頑張っても頑張っても子供故の非力さにより世の中に対して何も出来ない悔しさが絶妙に描かれており、その苦味を噛み締めながら成長していくさまは涙を誘う。SFチックな要素を含んだファンタジー作品で全体的には陽気な内容ではあるが、貧乏、親の離婚、虐待、人の死、