朱川湊人のレビュー一覧
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ネタバレ不思議な、でも、読後感はちょっと切なくなる物語が多いのが朱川さんの作風。そして、物語の所々に白馬にまたがり、時空を超えて旅する少年の影がちらつく。
彼のような存在は旅行者(トラベラー)と呼ばれている。
そんな彼のような存在と『唯一無二の絶体真理』という本のがこの短編集を貫く縦糸と言えるだろう。
この本の内容を理解した者が手にすることができる目の前の空間をめくり上げて別の次元に行くことができる能力は、その描写ととも強く印象に残ったが、切なさという点では、『秋の雨』が一番だろうか。
いつ果てるともわからぬ旅行者の旅は今しばらく続くようだ。 -
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ネタバレ異論があること大前提、あくまで俺の好みとしてなんだけど、朱川作品にホラーは求めていない。
夕暮れ時の赤い空、地面には曼殊沙華、泣きながら空を飛ぶカラス、日暮れまで15分とない時間なのに家に帰る道を忘れ迷子…サーカスの子飼いにさらわれそうな不安感
この程度の怖さがあれば、朱川ワールドは十分に広がってくれるはず。ほんまにTみたいな展開や、誘拐犯がででくる必要はないのだ。
この作品集は、ホラー感を極力排して、ノスタルジーとファンタジー感をしっかり味合わせてくれるのがよい。「夕暮れ時は寂しそう、とっても一人じゃいられない」こそが朱川小説の真骨頂だと、俺は勝手に思っている。 -
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「生きる」ことにまつわる2つの作品からなる。
それぞれの作品のストーリーは独立している。
ホラーというジャンルだが、決して「おどろおどろしい」いわゆるホラー小説ではない。
一作目は、霊を剥がすことを生業とする霊能力者の話。そこに登場する憑坐(よりまし)の仕事をする『青年』が本当の主人公。
体の自由がきかないその青年は、ある仕事を通じて知り合った女性に恋をすることで、自分の生い立ちに疑問を感じ始める。
そこからストーリーは一気に進んでいくのだが、「生きている」ということはどういうことなのか、人間・霊・魔・人形、様々な存在を登場させることで、「人として生きる」ことの意義を読み手に問いかける、 -
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ネタバレ表紙が違う。。。
女性が片手を伸ばしているイラストだったのだが、該当なし。
なかなかぶっ飛んだ題材を扱っているのに、 さらりさらりと表現してしまうのが毎回凄い。
性的な関係も絡むので、中高生にお薦めできるのと出来ないのがあるが。。
3作目は読んで欲しい。
『死体写真師』
→写真師の動機は何なのだろう。。あくまでも、その後のシステムは商売人である葬儀社の思惑から来ているのだろうし。
『レイニー・エレーン』
→これまた、主人公は何故にそういった行為に走ったのか。。。本当、子供がいる人はそちらを優先して欲しいと思うのは綺麗ごとなのだろうか。。
『アタシの、いちばん、ほしいもの』
→欲しいもの -
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ネタバレ『白い部屋で月の歌を』『鉄柱(クロガネノミハシラ)』
以外にも、タイトルの方が短編。
巻末に第10回ホラー小説大賞についての批評があって
『姉飼』『相続人』『ぼっけえ きょうてえ』『光 A Light』『蜥蜴』も気になる。。
タイトルの作品のラストの月は、きっと青くて白いのだろうなぁ、と、イメージが浮かぶ。
大どんでん返し、な激しい展開なのに、ラストは静かな余韻が残るというか。。
『鉄柱』は再読すると主人公以外の隣の奥さんや町内会長が気になる。
主人公は…
妻の「こんな静かなところにきても、この病気からは解放されないのね」コレって、主人公の事を指しているのでは??と思ってしまう。
これ -
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ネタバレ2004年から2005年にかけて雑誌『ミステリーズ!』に発表された短編5編からなる短編集。
5編のうち1編はネクロフィリア(死体性愛)、もう1編はアクロトモフィリア(四肢欠損性愛)、更にもう1編は アポテムノフィリア(身体欠損性愛)、というなかなかド変態な内容ですが、朱川湊人氏の筆にかかると、ダークなファンタジーになります。
5編のうちもう2編は幽霊もので、変態性はありません。
5編に共通してバッド・エンディングですが、イヤーな感じのするエンディングではなく、切なくホロ苦く哀しい、という感じです。
この感じ、何かに似ていると考えると、解説の中の「特撮」というキーワードから、市川森一脚本に思い当 -
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タイトルを見れば、何について書かれているかすぐ分かる。
手を繋いでいる表紙の絵も、読み終えてみれば重要なポイントを突いている。
トモローって良い名前だな~
男の子がいたらつけたかったな。
小説家志望の斉藤知朗。
編集に携わっていた美術誌が突然廃刊となり…実質クビ?
そんなタイミングで、恋人の美智子は「結婚しよう!」と言った。
美智子の夢はインテリアデザイナーとして独立すること。
彼女の両親も進んだ考え方の人たちで、愛娘が好きな仕事を思いっきりできるよう、トモローくん、主夫よろしく頼む!
と背中を押す。
そんなこんなで、“世間の常識”的には男女逆転、トモローと美智子的には、やりたいこと全部やっ -
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後少しで5年生になるハヤト。
両親が離婚しており、東京で母親と暮らす。
大阪で住んでいる父親の所へ行くのだけれど父親は再婚しておりもう少しで子供も産まれる。
この父親、決して悪い人ではないのだけれど、何だかモヤモヤ。
大事なことをどうして自分の口から伝えないのか。
『自分は父親だ』と言うなら、どうして子供と向き合わないのか。
きっと想像力が足りないのだ。
簡単な事ではないだろうけど、この父親は好かない。
大阪で知り合ったサエと、ハヤトが東京でおじいさんとした約束をはたしに2人で鹿児島へ。
戦争や近年で起きた事件、事故など色々と詰め込みすぎかなぁと思うものの、
それでも良い本だ。
読みやす -
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どんなに幸せの絶頂にいても、先のことはわからないものだ。
一瞬で奪われてしまう人の命とは、なんて儚いものなんだろう。
それでも、幸せな記憶はずっと心に残っていく。
会ったことがない父親に、公園で会ったとうれしそうに話す娘。
自分もその場所にいたはずなのに、何も覚えていないことが切なくて哀しくて涙ぐむ母親。
この世の常識でははかれないことだってある。
こんな奇跡ならあってもいいじゃないか、と信じたくなってくる。
幸せに過ごした時間は戻らないけれど、大切に思える人がいた…その思いはきっと消えることはない。
ちょっと不思議な、だけどとてもあたたかで切ない物語。
おだやかな物語は、いつだって心を優しい