朱川湊人のレビュー一覧
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朱川湊人さんの本は3冊目。
その中で一番好きです。
都電の走る「琥珀」と言う下町が舞台。
5話の連作だが、その繋がり方が絶妙。
物語が進むごとに町の人々が繋がってゆき、いつしか自分もこの町の住人のような感覚がしてくる。
全ての物語に白い犬がちょこっと登場するのだけど、これがまた不思議な存在で。
突然現れて助けてくれたり、またある時にはそっと寄り添ってくれたり。
勇気を授けてくれたり……
作中に
“世の中のすべての人たちは、みんな死にゆく運命を背負っている。長い短いの差はあっても、どんな人でも必ず死ぬのだ。”
という一節がある。
当たり前だけど私達の周りには「死」が存在する。
それが苦しみ -
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大河ドラマでやっている「鎌倉殿の13人」は見たことないが、時代背景は似ているんじゃないかな?
この作品は「方丈記」と「平家物語」のアレンジ。時は平安、平氏が栄華を極めている頃から始まり源氏が取って代わる頃まで、当時の都の生活を鴨長明こと無明の視点から描いている。疫病、戦、地震など。猫丸と雨里の話がぐっとくる。朱川さんの物語はいつもなんだか切なく儚い。虚無と無常。浮き沈みする泡沫の世。
その時代に生きる人たちの生活と今の生活を比べてしまう。比べることに意味はないのかもしれないが。どうしても源氏が正義みたいな印象も拭えない。加々麻呂の物言いが自分と似ていた。鴨長明の選んだ道、今の世では逃げに当 -
購入済み
世にも奇妙な…
実際に世にも奇妙な物語で使われた「昨日公園」以外のお話も全て世にも奇妙な物語でした。
朱川さんの作品を初めて読みましたが他の本も読んでみたくなるようなワクワクする作品ばかりなのでオススメです。 -
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ネタバレ最初読み終えたときは、子供の頃、数回味わったあの感覚が蘇ってきた。
相手に殴りかかって行って・・・。
衝撃で目をあけると、目の前、数センチに地面がある。
ああ・・・
グイッと、現実に戻される、今、目覚めたような孤独の感触。
怒りの恍惚から冷めて、ケンカが滅法弱く、そのくせ気が短い自分、に思い至る。
そのときの感触とこの本の読後感がそっくりだった。
二度目の今回は、あらすじも覚えているので、ラストに囚われず、じっくり読み込むことができた。
「本日、サービスデー」から繋がっているんだ、ということ。
取り返しのつかない人生の過ちを犯さない、犯させないために・・・。
それでも、どう -
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ネタバレ特に好きな一冊。
5篇とも大好きだが、①は「普通の良作」の5年前の初読後の印象から、「朱川湊人といえばコレ」と、自分の頭の中での焼き付き度合いが強くなっている。
他の4作は、登場人物の中に自分も入ってみたいと感じる。密接で穏やかな空気感。
本の題名になっている白い犬「プチ」が、各編で助演的に登場し、登場人物の巡り合わせや、会話の深さ(決心)を、ふと、させてしまっているところもおもしろい。
好きなのは、①、②、③、④、⑤。(^^;;
読み終えた後、
力をくれる。
①追憶のカスタネット通り
35年前、尚美と住んでいた街、僕が「罪」から逃げ出した街を久しぶりに訪れた。
②幸せのプチ
自 -
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ネタバレ楽しかった。
不思議な昔話というのはわくわくする。
8篇とも「日本霊異記」(西暦822年成立?)をヒントにしているらしい。
④はこの著者、景戒が書きながら頭を悩ませているという設定で、40年近く前の受験勉強中、「南総里見八犬伝」執筆中の滝沢馬琴を描いた問題文が出てきて、「続きが読みたい!」と思ったことを思い出した。
注文をつけるとしたら⑥くらいかな。⑤くらいならクスッと笑えるけど、⑥はちょっと淫靡に過ぎるかな。でも、「日本霊異記」との距離感を朱川さんがどう取っているかで、見え方も変わるかもしれない。
単純に不思議な昔話として、①、③、④、⑤、⑦、⑧ 面白かった。
また、読みたくなるんだろう -
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ネタバレ父親の退職記念のハワイ旅行の帰り、167センチ、124kgの坂木龍馬(さかきりょうま)は飛行機事故に遭った。
意識を取り戻したのは砂浜。家族の姿はなく、金太郎を含む子ども達に囲まれ、「海坊主!」と罵られ、棒切れで叩かれ、突かれているところだった。
なんとか村長に救われて時代を聞くと、そこは「宝命19年」。鎌倉や室町時代のような電気やお店もない世界であった。
朱川さんの作品としては、他の評価、読者の感想にもあるように異色中の異色。
9年ぶりの再読。不明瞭な部分が消えて、ストーリーやメッセージが腑に落ちた。
かなり笑わされたが、難点は、「下ネタはズルい」と感じた点のみ。
ファンの身贔屓 -
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ネタバレ東京の下町、アカシア商店街の7話。
僕は朱川さんの紡ぐ、別の物語がちょっとだけつながっている、その構成が好み。③、⑤、⑥、⑦が特にお気に入り。
①紫陽花のころ
初読はそれなりに楽しめたんだがなぁ、なんだかなぁ、そんな結末だったとは。
②夏の落とし文
電柱の貼り紙に自分の未来が予見されていたら。いいお兄ちゃんだな、せつないな。
③栞の恋
ひねりも不思議さもあってとてもいい。結末が意外だったが2読目以降も飽きない。
④おんなごころ
かわいそうだが、悪い作品とは思わない。他の編ではケバい初恵の正気さのためか。
⑤ひかり猫
猫2匹と「私」と古本屋の店主しか登場しないが、朱川さんらしい味わいの短編。
⑥ -
購入済み
胸の奥をツンと刺激してくれる話
少しコワイ話も含まれた短篇集。
昔知っていた大事な気持ちをふと思い出させてくれるような作品です。
少し毒があって、少し救いがある。
きっと時々読み返してしまう1冊になると思います。
表題作の「花まんま」もいいですが、「凍蝶」も好きです、さりげない最後の数行に感慨があります。 -
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ネタバレ朱川湊人の一番得意なボールをど真ん中に真っ向勝負で投げてきたような短編集。舞台は昭和中期から後期のマンモス団地。団地があこがれだった時代から古くさくなる半世紀弱。
それぞれの物語が少しずつリンクして、短編集を読み終わったら全体の俯瞰構造がうっすら見え出すという構成を仕組み。
ひとつひとつの短編に題名のとおり「名残」を惜しむ登場人物たちと、その時々の歌が織り込まれて、うっすらとしたホラー(いやノスタルジー範疇の幻想)をちりばめて…。
特に我々みたいな世代にとってはドンピシャ。そういや、スーパーカーブームとデレクアンドドミノスってほぼ同じ年代の流行やったんやねぇ。とか、新しい発見もあったりで