朱川湊人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
昭和四十六年、立花信悟は原因不明の頭の発達の遅れを持つ弟の将悟と東京の下町、三崎塚で過ごす小学三年生。つい最近、超能力のような不思議な力を使えることに気付いた。そんな信悟の通う学校に、ひとりの女性教師が赴任してくる。綺麗で優しい菜美先生は児童たちからすぐに好かれていくが、彼女が来て以来、三崎塚で様々な事件が頻発するようになる。
三崎塚自体は架空の町ですが、物語と大きく三崎塚で十年近く前に起こった死者160名を出す鉄道史上に残る大惨事というのは、私もあまり知らなかったのですが、国鉄戦後五大事故のひとつとされる三河島事故をモデルにしたもののようです。そしてなるほど〈現在〉の事件とこういう関わり方をするのか、と信悟がそれまで知らなかった事実を知るにつれて、物語自体も壮大さも増していきます。アクションシーンあり、街全体を揺るがす大騒動あり、後半、特にラストの展開あたりは好き嫌いがかなり分かれそうな気もしますが、(どこか懐かしい感じもする)SF的な要素も含んで、悠久の時を超える規模の話になっていきます。
いま過去のその場にいるような感覚になる当時の街並みの雰囲気の描写も楽しい小説で、関わる大切なものをひとつずつ失っていきながら、残酷な真実を目の当たりにしながらも、得体の知れない存在と闘っていく少年の姿を描いた大作ホラーです。 -
Posted by ブクログ
人間ってのも まぁ なかなか
いいもんだね
と 思わせてもらえる
朱川湊人さん
少し前に マリ共和国の友達と話していて
彼が 初めて日本に来た10数年ほど前に
初めて新幹線に乗ることがあったそうな
その時に 新幹線の駅のホームで待っていた時
目の前を ものすごい速さで何かが通過していった
横にいた連れ合いに 今のは 何ですか?
と聞き、それが 自分の乗るモノだと教えられたときに
あぁ それには 僕は乗ることができない
と 強く思ったそうです
人の常識、常態を飛び越えてしまったものに対する
畏怖を 我々はもっと感知すべきかも知れない
私たちは 誰でも そういう畏怖の心を
持ち合わせているはず
朱川さんの小説を読んでいると
そういう気持ちを取り戻せるような気がします -
Posted by ブクログ
朱川湊人さんの本は3冊目。
その中で一番好きです。
都電の走る「琥珀」と言う下町が舞台。
5話の連作だが、その繋がり方が絶妙。
物語が進むごとに町の人々が繋がってゆき、いつしか自分もこの町の住人のような感覚がしてくる。
全ての物語に白い犬がちょこっと登場するのだけど、これがまた不思議な存在で。
突然現れて助けてくれたり、またある時にはそっと寄り添ってくれたり。
勇気を授けてくれたり……
作中に
“世の中のすべての人たちは、みんな死にゆく運命を背負っている。長い短いの差はあっても、どんな人でも必ず死ぬのだ。”
という一節がある。
当たり前だけど私達の周りには「死」が存在する。
それが苦しみや哀しみとなり、心に抱える事となる。
それを包んでくれる周りの人達の優しさ。
あぁ、やっぱり人って温かいな。
誰でもいろいろな過去があるけれど、生きているのは「今」だから、ちょっと勇気を出して前を向こう。
そんなふうに思える作品です。
この本を教えてくれたshukawabestさん、素敵な作品でした。
ありがとうございます! -
Posted by ブクログ
大河ドラマでやっている「鎌倉殿の13人」は見たことないが、時代背景は似ているんじゃないかな?
この作品は「方丈記」と「平家物語」のアレンジ。時は平安、平氏が栄華を極めている頃から始まり源氏が取って代わる頃まで、当時の都の生活を鴨長明こと無明の視点から描いている。疫病、戦、地震など。猫丸と雨里の話がぐっとくる。朱川さんの物語はいつもなんだか切なく儚い。虚無と無常。浮き沈みする泡沫の世。
その時代に生きる人たちの生活と今の生活を比べてしまう。比べることに意味はないのかもしれないが。どうしても源氏が正義みたいな印象も拭えない。加々麻呂の物言いが自分と似ていた。鴨長明の選んだ道、今の世では逃げに当たる気もする。でも羨ましい。 -
購入済み
世にも奇妙な…
実際に世にも奇妙な物語で使われた「昨日公園」以外のお話も全て世にも奇妙な物語でした。
朱川さんの作品を初めて読みましたが他の本も読んでみたくなるようなワクワクする作品ばかりなのでオススメです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初読み終えたときは、子供の頃、数回味わったあの感覚が蘇ってきた。
相手に殴りかかって行って・・・。
衝撃で目をあけると、目の前、数センチに地面がある。
ああ・・・
グイッと、現実に戻される、今、目覚めたような孤独の感触。
怒りの恍惚から冷めて、ケンカが滅法弱く、そのくせ気が短い自分、に思い至る。
そのときの感触とこの本の読後感がそっくりだった。
二度目の今回は、あらすじも覚えているので、ラストに囚われず、じっくり読み込むことができた。
「本日、サービスデー」から繋がっているんだ、ということ。
取り返しのつかない人生の過ちを犯さない、犯させないために・・・。
それでも、どうしようもない選択肢の中で犯してしまったときは・・・。
読み終えて、決して楽しい作品ではないし、文学作品でもないので、事象の描写は表面的かもしれない。
でも・・・。
この作品を単なるSF・娯楽小説の範疇に留め置くのは勿体無いと思う。それだけの深さがある。傑作。
また、読み返すと思う。
【あらすじ(最初だけ)】
宿なしの幸慈が薄暗い街を歩いているとき、変わったカツアゲ現場に遭遇した。
スタイル抜群の女が、若い無抵抗な男に膝蹴りを入れ、小銭を巻き上げていたのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ特に好きな一冊。
5篇とも大好きだが、①は「普通の良作」の5年前の初読後の印象から、「朱川湊人といえばコレ」と、自分の頭の中での焼き付き度合いが強くなっている。
他の4作は、登場人物の中に自分も入ってみたいと感じる。密接で穏やかな空気感。
本の題名になっている白い犬「プチ」が、各編で助演的に登場し、登場人物の巡り合わせや、会話の深さ(決心)を、ふと、させてしまっているところもおもしろい。
好きなのは、①、②、③、④、⑤。(^^;;
読み終えた後、
力をくれる。
①追憶のカスタネット通り
35年前、尚美と住んでいた街、僕が「罪」から逃げ出した街を久しぶりに訪れた。
②幸せのプチ
自分と友達、そして畏怖していた大きな大人や野良犬との交流。こみ上げてくる子ども時代の懐かしい記憶。
③タマゴ小町とコロッケ・ジェーン
パン屋の美佐子の店に来る客は初恋の相手にソックリ。でも、近所の幼馴染、和美はその客に「ガブッ」(私の先約済)宣言。
④オリオン座の怪人
ラジオで聞いた、深夜に徘徊する「謎の怪人」話。まさか自分の町だったとは。
⑤夜に旅立つ
大阪に旅立つ前に、勇治は琥珀の町で世話になった人たちに挨拶に行き、バッタリ村田のお姉さんと出会う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ楽しかった。
不思議な昔話というのはわくわくする。
8篇とも「日本霊異記」(西暦822年成立?)をヒントにしているらしい。
④はこの著者、景戒が書きながら頭を悩ませているという設定で、40年近く前の受験勉強中、「南総里見八犬伝」執筆中の滝沢馬琴を描いた問題文が出てきて、「続きが読みたい!」と思ったことを思い出した。
注文をつけるとしたら⑥くらいかな。⑤くらいならクスッと笑えるけど、⑥はちょっと淫靡に過ぎるかな。でも、「日本霊異記」との距離感を朱川さんがどう取っているかで、見え方も変わるかもしれない。
単純に不思議な昔話として、①、③、④、⑤、⑦、⑧ 面白かった。
また、読みたくなるんだろうなぁ。
①サカズキという女
目の前を横切った金色の光は、狐ではなく、豊満な渡来人女の髪であった。
②髑髏(ひとがしら)語り
無骨なかんざし職人の兄は母と2人暮らし。そこに口の達者な弟が放蕩の末帰ってきたのが不幸の始まり。
③射干玉(ぬばたま)国
死んだ父が蘇った。その父が言うには、3年前に沼に身を投げた母は、黄泉の国で厳罰を受けていると言う。
④夜半(よわ)の客
千年の時を超える書「日本霊異記」。その書の執筆中、まだ無名の著者は自室で一人頭を抱えていた。そこに出現した4人の死霊たち。
⑤狐と鞭
狐と人間の合いの子の末裔「美濃狐」は女ではあるが、その圧倒的な力で暴虐の限りを尽くす。見ているしかなかった10歳の多須岐は、昔、尾張国にいた百人力の道場法師の話を思い出す。道場法師はもういないだろうが、その孫ならひょっとして。
⑥蛇よ、来たれ
男勝りの16歳、佐々伎売は病気の母に桑の葉茶を飲ませるため桑の木に登った。そのとき、木に潜んでいた大蛇が彼女に巻き付き締め上げたまま一緒に落ちた。佐々伎売は喘ぎ苦しんでいるように見えたのだが。
⑦塵芥(ちりあくた)にあらず
阿久多は自分のことを名の通りゴミ(芥)だと思って生きてきた。しかし、いつも阿久多の金でタダ酒を飲もうとする磐嶋が、「ゴミの名」に込められている「思い」を話し、それが阿久多の光となったのだが。
⑧舎利菩薩
人間ではなく肌色の肉玉として妻の身体から生まれた「もの」を広公は山に捨てた。もう死んでいるはず、6日後、妻と供養のためにそこを訪れたが、それは顎のない赤ん坊となり、まだ生きていた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ父親の退職記念のハワイ旅行の帰り、167センチ、124kgの坂木龍馬(さかきりょうま)は飛行機事故に遭った。
意識を取り戻したのは砂浜。家族の姿はなく、金太郎を含む子ども達に囲まれ、「海坊主!」と罵られ、棒切れで叩かれ、突かれているところだった。
なんとか村長に救われて時代を聞くと、そこは「宝命19年」。鎌倉や室町時代のような電気やお店もない世界であった。
朱川さんの作品としては、他の評価、読者の感想にもあるように異色中の異色。
9年ぶりの再読。不明瞭な部分が消えて、ストーリーやメッセージが腑に落ちた。
かなり笑わされたが、難点は、「下ネタはズルい」と感じた点のみ。
ファンの身贔屓と受け取られるかもしれないが、傑作だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東京の下町、アカシア商店街の7話。
僕は朱川さんの紡ぐ、別の物語がちょっとだけつながっている、その構成が好み。③、⑤、⑥、⑦が特にお気に入り。
①紫陽花のころ
初読はそれなりに楽しめたんだがなぁ、なんだかなぁ、そんな結末だったとは。
②夏の落とし文
電柱の貼り紙に自分の未来が予見されていたら。いいお兄ちゃんだな、せつないな。
③栞の恋
ひねりも不思議さもあってとてもいい。結末が意外だったが2読目以降も飽きない。
④おんなごころ
かわいそうだが、悪い作品とは思わない。他の編ではケバい初恵の正気さのためか。
⑤ひかり猫
猫2匹と「私」と古本屋の店主しか登場しないが、朱川さんらしい味わいの短編。
⑥朱鷺色の兆(ときいろのしるし)
おっさんの一人称の語り口。予兆モノはいくつかあるがハッピーエンドで一安心。
⑦枯葉の天使
他の6作全てに登場する幸子書房の店主が実は主役。締め括りとして珠玉の作品。 -
購入済み
胸の奥をツンと刺激してくれる話
少しコワイ話も含まれた短篇集。
昔知っていた大事な気持ちをふと思い出させてくれるような作品です。
少し毒があって、少し救いがある。
きっと時々読み返してしまう1冊になると思います。
表題作の「花まんま」もいいですが、「凍蝶」も好きです、さりげない最後の数行に感慨があります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ朱川湊人の一番得意なボールをど真ん中に真っ向勝負で投げてきたような短編集。舞台は昭和中期から後期のマンモス団地。団地があこがれだった時代から古くさくなる半世紀弱。
それぞれの物語が少しずつリンクして、短編集を読み終わったら全体の俯瞰構造がうっすら見え出すという構成を仕組み。
ひとつひとつの短編に題名のとおり「名残」を惜しむ登場人物たちと、その時々の歌が織り込まれて、うっすらとしたホラー(いやノスタルジー範疇の幻想)をちりばめて…。
特に我々みたいな世代にとってはドンピシャ。そういや、スーパーカーブームとデレクアンドドミノスってほぼ同じ年代の流行やったんやねぇ。とか、新しい発見もあったりで…。
これは朱川湊人の代表作なんじゃないかな?
「何事もゆっくり、ゆっくりでいいんですよ」まさしく至言!