あらすじ
「キミはもしかして、大切な人を亡くした経験があるのかい?」
昭和40~50年代の景色の中で語られる、涙腺決壊必至の物語。
若い日の罪が眠る、懐かしい町・琥珀。
当時と変わらない喫茶店「青猫」で僕は、この世でもっとも聞きたくない最悪のひと言を聞いた。
彼女と通った銭湯、名物コロッケサンド、赤い公衆電話、サンダーバードのプラモデル、そして妖精のような白い犬。
昭和40、50年代を舞台に繰り広げられる、ひとりひとりの切実な人生模様。追憶と感動の連作集
文庫化で大幅に修正加筆!
※この電子書籍は2016年11月に日本経済新聞出版社より刊行された単行本の文庫版を底本としています
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
朱川湊人さんの本は3冊目。
その中で一番好きです。
都電の走る「琥珀」と言う下町が舞台。
5話の連作だが、その繋がり方が絶妙。
物語が進むごとに町の人々が繋がってゆき、いつしか自分もこの町の住人のような感覚がしてくる。
全ての物語に白い犬がちょこっと登場するのだけど、これがまた不思議な存在で。
突然現れて助けてくれたり、またある時にはそっと寄り添ってくれたり。
勇気を授けてくれたり……
作中に
“世の中のすべての人たちは、みんな死にゆく運命を背負っている。長い短いの差はあっても、どんな人でも必ず死ぬのだ。”
という一節がある。
当たり前だけど私達の周りには「死」が存在する。
それが苦しみや哀しみとなり、心に抱える事となる。
それを包んでくれる周りの人達の優しさ。
あぁ、やっぱり人って温かいな。
誰でもいろいろな過去があるけれど、生きているのは「今」だから、ちょっと勇気を出して前を向こう。
そんなふうに思える作品です。
この本を教えてくれたshukawabestさん、素敵な作品でした。
ありがとうございます!
Posted by ブクログ
特に好きな一冊。
5篇とも大好きだが、①は「普通の良作」の5年前の初読後の印象から、「朱川湊人といえばコレ」と、自分の頭の中での焼き付き度合いが強くなっている。
他の4作は、登場人物の中に自分も入ってみたいと感じる。密接で穏やかな空気感。
本の題名になっている白い犬「プチ」が、各編で助演的に登場し、登場人物の巡り合わせや、会話の深さ(決心)を、ふと、させてしまっているところもおもしろい。
好きなのは、①、②、③、④、⑤。(^^;;
読み終えた後、
力をくれる。
①追憶のカスタネット通り
35年前、尚美と住んでいた街、僕が「罪」から逃げ出した街を久しぶりに訪れた。
②幸せのプチ
自分と友達、そして畏怖していた大きな大人や野良犬との交流。こみ上げてくる子ども時代の懐かしい記憶。
③タマゴ小町とコロッケ・ジェーン
パン屋の美佐子の店に来る客は初恋の相手にソックリ。でも、近所の幼馴染、和美はその客に「ガブッ」(私の先約済)宣言。
④オリオン座の怪人
ラジオで聞いた、深夜に徘徊する「謎の怪人」話。まさか自分の町だったとは。
⑤夜に旅立つ
大阪に旅立つ前に、勇治は琥珀の町で世話になった人たちに挨拶に行き、バッタリ村田のお姉さんと出会う。
Posted by ブクログ
懐かしさと切なさと温かさで胸がぎゅっとしながら最後まで一気に読ませていただきました。琥珀は架空の町ですが、本のなかでこの先もいろんな人生を抱きながら続いていくような気がします。
2020.6.6
Posted by ブクログ
正直に書きます。
初めの一章を読み終える頃は、この本選んで失敗だったかなと思ってしまいました。。
でも、それは私の大間違い。
読み終えた頃には、私の大切な一冊となり、本棚にずっと存在するであろう本になりました。
私はこの時代には生きていなかったけど、こんなに懐かしいのは何故だろう?
コロナ終息後は、こんな暮らしに戻るのではないかとすら思ってしまう。
Posted by ブクログ
ひさしふりの読書。病院の待ち時間の暇つぶしの為にふと手に取った積読の中の一冊。読んでみたら、え?止まらない。
ちょっと不思議な世界観が散りばめられていて朱川さんらしくもあり、登場人物がそれぞれ魅力的で続きが気になりあっという間に読んでしまいました。
頭の中の琥珀の街並みが読み進めるごとにどんどん繋がっていき、自分の子供時代の昭和の町並みを思い出してしまった。
犬を飼っているせいもあり題名にもなっている幸せのプチが1番好きでした。
Posted by ブクログ
涙腺崩壊…はしなかったけど、じんわり温かい話だった。
琥珀という架空の町。昭和40年代、50年代という時代と下町と人情が嫌味なくマッチ。
きれいなお姉さんや、感じ悪いおじさんや、優しい大人、貧しさも心の豊かさでカバーみたいな、100%良い人ばかりじゃなく、弱い人もずるい人もいて、それでも皆で補いあい、昔はよかったなぁ的なんだけど、押しつけがましくなくて、素直によい。
ところどころ現れる白い犬ぷちもよい。
Posted by ブクログ
昭和の高度成長期から平成にかけて、都電が走る町を舞台に人間ドラマを描いた連作短編集。
全体を通して、温かくおおらかな昭和の雰囲気が伝わってきて、どこか懐かしい気持ちになりました。
失敗や後悔を乗り越えるストーリーが多く、救いはあるものの切なくも感じました。
冒頭の「追憶のカスタネット通り」は、街の描写が細やかで、世界観がすっと頭に入ってきました。
「やり直したい過去は誰にでもあるけれど、後悔の種は自分と関係なく進んでしまう」という作者の視点に、ハッとさせられました。
一番心に響いたのは「オリオン座の怪人」です。
優しい気持ちになるラストシーンが秀逸でした。
「人間はコップにすぎない。おいしい水が入るか、粗悪な酒が入るかはコップの持ち主次第」というフレーズは心に留め置き、自分のコップを美味しい水で満たせるような人になりたいと思いました。