朱川湊人のレビュー一覧
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「花まんま」が面白かったので、朱川湊人をもう一冊読んでみた。これも短編集で、前半は花まんまと同じように少年少女の不思議な物語が二篇続く。この人は子どもたちの話しか書かないのかな?と思いながら読んでいたけど、その後の作品からは大人も登場してくる。
どの話もなんともノスタルジックで、幼さゆえの悲しさや歯痒さがうまく描かれていて、もの悲しさの中にファンタジーの要素が組み込まれている。そのバランスがとても上手くて、不思議と引き込まれる力があり、読後にも余韻が残る物語ばかりだった。これが朱川湊人の魅力なんだと思う。
それにしても、幼い頃に両親のどちらかが家を去ったのかな?と考えずにはいられない設定が多くて、読者にそんな推察までさせてしまうんだから、作家というのは業が深いよね。
作中で何度か「人生の黄金期」という言葉が出てくるんだけど、これはあくまで主人公たちのセリフなのか、それとも朱川湊人自身にもそう思える時期があるのか、そんなことも考えながら読んでいた。俺自身は、あの頃が黄金期だったとはあまり思わない。でも、そういう感覚を持っている人だから、こんな物語が編めるのかもしれないなと思った。面白かった。 -
Posted by ブクログ
映画の花まんまの話を聞いて買ってみたら短編集だった。どの短編も10歳くらいの子どもが主人公で、一応連作っぽくつながっている。どれも不思議で不穏で、郷愁と背徳が同居しているような感じがしてゾワゾワして面白い。映画化された「花まんま」も良かったけど、やはり俺は子どもに大人の記憶や欲望を宿す設定は本来きわめて危ういと思うので、フィクションとして楽しみながらも心底は楽しめなかったな。この設定ってドラマ性に引きずられて、その倫理的負担や危険性に無自覚なまま感動できちゃう構造なんだよな。
「トカビ」はトッケビのことだろうとすぐにピンときたし、「妖精生物」は奇妙に背徳的でややグロテスクでよかった。「摩訶不思議」は素直に楽しめて、「花まんま」はすごくうまいんだけどやはりモヤモヤが残る。「送りん婆」が不思議で、もしかしたら一番面白かったかもしれない。「凍蝶」は、さすがに小学2年生にこれは無理だろって常識が働いて楽しみきれず。 -
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連休にプライムで映画を見たので。
昭和30~40年代の大阪の下町で小学生が体験した話の短編集。
大阪ではないけど近しい子供時代だったので、時代背景がめっちゃわかる~!
「トカビの夜」もう苦しくなくなって飛び回ってるなんてよかったね~!って思っちゃう
「妖精生物」いたいた~学校帰りにヒヨコとか売ってた人!そして正体がこわ!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
「摩訶不思議」女好きなおっちゃんの話。これは笑ったし、女たちが仲良くなるのもいい話だぁ~
「花まんま」会いに行くエピソードが映画まんまで映像が蘇った
「送りん婆」呪文が途中まで読み上げられたところでまさかとは思うがもしホントだったら…とゾゾっとした(Audibleだったのでw)
「凍蝶」自分ではどうにもならない出自のせいで友達がいない子の忘れられない出逢い
小学生くらいだとこういった不思議なものやオカルトちっくなものに惹かれちゃうのよね~
小学生の時の感覚をちょっと思い出した -
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オゾン層を修復するために開発された化学物質「ウェアジゾン」で太陽光線から特定の波長が散乱され、「夕焼けの色」が地球上から消えてしまう世界が舞台。「当たり前の日常」が奪われたとき、人はどう感じるのだろうか。個人的には夕陽がなくなるのは耐え難い。その化学物質の開発者と本物の笑顔を失った少年が旅を通じてそれぞれの心が解けていく話。
朱川さんが登場人物や読者に“日々の営みの大切さ”を再認識させる、とどこかに書いてあったが、そこまで読み込むことはできなかった…。
登場人物の説明が飛ぶし、中途半端なところもあったけど、後半に向けて物語が収束していく中で、まぁ、別にいいや、関係ないか、と静かな納得が残った。
何でもかんでも科学的に考えてしまう主人公が最も非科学的な愛やら赦しなんかを原動に動いている感じも悪くなかった。 -
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映画「花まんま」のスピンオフと聞いて紐解いた。4篇の短編集。多分主人公以外の誰かにスポットが当てられるのだろう。読む前に予想を立てた。映画の中で個性豊かなのに、全然深められていないといえば、フミ子の婚約者で鳥の言っていることがわかる太郎くん(鈴鹿央士)か、彦根の家族の一員で何故か太郎くんのことを知っていた大学教授の人(六角精児)、或いは彦根家族近くのお店を営んでいた女性。或いはお好み焼き屋の駒子(ファーストサマーウイカ)かと踏んでいた。
結果は、駒子しか当たらなかった。しかも、映画でヤキモキした駒子の恋が実るかどうかという話ではなくて、駒子の幼馴染で、あまりにもお人好しの瑠美ちゃんが主人公。最後、悲しいけど、ちょっと不思議なことが起きる。不思議なことは、起きなくても話は完結するけど、想いは、起きたからこそ心に響くものになった。翻れば、映画も似ている。
映画は兄妹二人っきりのフミ子が遂に結婚する。その前に、彼女が長いこと持っていたある秘密が明らかになるという作品だった。別にネタバレしてもいいかなと思うけど、一応秘密の内容は秘密にしておく。流石にこの秘密がなければ、話は展開しないけど、登場人物たちの「人の良さ」は秘密がなくても、ストレートに伝わってくる。そして、それこそが作品の命だった。綺麗な花が、物語に花を添えていた。
他3篇も、不思議なことは、実は殆ど起きないけど、「人当たりのいい」関西弁が紡ぎだす「人の良さ」だけは全面に出ていた。それが、本書の命だろう。
…結局、映画の紹介になってる? -
Posted by ブクログ
先に出版された『花まんま』の、ちょっと変則的スピンオフ作品といえる。
映画『花まんま』の撮影現場を訪れた朱川湊人氏は、後に新たな世界を思い浮かべて『花のたましい』を執筆されたとのことだ。
もし『花のたましい』を先に読んでも、何ら問題はない内容だと思う。
『花まんま』で綴られた雰囲気はそのまま引き継がれ、4篇の短編集は朱川氏独特の世界が綴られている。
相変わらず朱川作品は、不思議な世界の中に切なさと優しさが同居していた。
切なく寂しい思いもあるのだが、同時にほのぼのとした温かさも伝わってくる。
特に「初恋忌」では、逢いたくとも会えない切なさ、相反してほのぼのとした気分も伝わってくる。
何故に朱川氏は涙を誘う切なさと、ほっこりとした優しさをシンクロさせながら描き上げることができるのか、摩訶不思議な作家さんである。