朱川湊人のレビュー一覧
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初めて読む、朱川湊人さんの作品。
7つの連作短編集。
舞台は昭和40年代の東京下町、“アカシア商店街”というアーケード通りとその周辺の街。
この時代は子供も沢山いて、商店街も大変賑わっている様子。
レコード屋のスピーカーからは古い歌謡曲が流れている。
私の頭の中は、セピア色の古い昭和の街にタイムスリップした感じ。
でもこの作品は、そんなノスタルジックなだけの作品ではない。
黄泉の国と繋がっているらしいお寺があり、7編それぞれ、死や霊にまつわる不思議体験のお話。
どの登場人物も、幽霊を普通に受け入れている(怖がらない)のが良い。
本来こうした“不思議”は私達の身近なところあり、共存している -
Posted by ブクログ
昭和40年代半ばくらいかな、アーケード商店街を持つ東京下町。その周辺に住まう住民たちと死にまつわる短編集。
下町で日常を暮らす人と不思議な存在との共存。昭和のどこかまでは、まだそんな雰囲気があったようです。郷愁という言葉が、一番しっくりくる作品でしょうか。
“栞の恋”は、古本屋(この作品全体の主要舞台ですね。)の一冊の古本で、栞を使った短い往復書簡。素敵な恋の物語です。以前、映像化されましたね。これが、一番好きでした。そのうち電子書籍での恋なんかも書かれるかしら。
朱川さん初読みかなと思っていたら、「白い部屋で月の歌を」ですね!作風違って気が付かなかった。こちらもすごく良かったです。
shuk -
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ネタバレ幻想的。
星新一さんの「午後の恐竜」を連想した。
物語は、夕焼けの中、戦地に出向く恋人ケンを見送る20歳のテレサのシーンから始まって、
メインの話はその60年以上あと、科学者となったテレサが発明したウェアジゾン(たぶん造語)・・・オゾンホールの拡大を食い止める薬品を世界中に散布するところから始まる。
夕焼け・・・たしかにオレンジ色の空は美しいが、それがなくなったとしたら世界中の人は実際にどんな反応を示すだろう・・・。
別に、と答える人も多いかもしれないが、「朱川湊人」というペンネームが、「朝焼けでオレンジ色に煌めく荒川の水面」を車窓から眺めていた大学通学時の思い出に起因しているそう。 -
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ネタバレ「情」の爆発力と悲哀の中に混じる温かみかな。
僕が朱川作品に惹かれてしまうのは。
この本で言うと、それは②。
たまにしか出会えないから、必死になって追いかけてしまうのだろう。
⑤も好きだなと感じる温かい作品。
そのほかの3作は、好きかと問われると疑問だが、作品としてはとてもしっかりしていると思う。
【あらすじ(始めの部分)】
①アイスマン
25年前、16歳の夏、精神を病んで叔父の家に預けられた僕は、夏祭りの見世物小屋に入ろうとしたとき、傍らの少女に手を引っ張られ、別の見せ物を見に行くことに。
②昨日公園
遠藤は息子とキャッチボールをする。三十数年前、親友のマチを見捨てざるを得なかっ -
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朱川さん最新作で初の児童書だそうです。
先週、良作とはいえ、「狐と鞭」で艶かしい短編をいくつかぶつけらましたので、本当に子どもたちが楽しんで読めるのか、検閲気分で読ませていただきました。
検閲後の判定でございますが、全国の御父兄の皆さま、お子さまが「時間色のリリィ」を目の前に持ってこられた際には、どうぞためらわず、読ませてあげてください。
数作のホラー、淫猥なものや理不尽な作品もある朱川さんではございますが、本作に関しましては、表紙のイメージ通り、お子さまにも充分、安心感を持って読んでいただける内容になっております。
ついでと言ってはアレですが、54歳のわたくしも小学生のときの夏休み朝 -
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ネタバレ①は朱川作品の中で一番繰り返し読んでるかな。おめでたい、ご都合主義と言われようが自分には心地よいのだろう。④さえ、オチがつけられていれば五つ星でも良かったのだが・・・。オススメは①と⑤。
①本日、サービスデー
家庭でも会社でも冴えない中年鶴ヶ崎が迎える奇妙な一日。天使も悪魔も出てきて。
②東京しあわせクラブ
「事件」の証拠品を競いに集うマニア達。最高に悪趣味だが朱川さんしか書けない。
③あおぞら怪談
昔、チャンピオンに連載されていた「手っちゃん」の女版。最後の台詞、味がある。
④気合入門
マッカチン(アメリカザリガニ)に勝った!と叫んだ瞬間、中途半端さがとても残念。
⑤蒼い岸辺にて
目覚めると