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しがないサラリーマンの鶴ヶ崎のもとに、ある日、女の姿をした悪魔が現れた。今日は神さまがくれた、一生に一度の「サービスデー」。どんな願い事も叶う一日だというのだが……。この大チャンスを、彼はどう生かすのか?(表題作) アパートに現れる女性の右手首だけの幽霊と住人の、不思議で心温まる交流(「あおぞら怪談」)。短編の名手が贈る、心に元気をくれる傑作集。
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Posted by ブクログ
久々の朱川さんの作品でした。 かなりゾクッとするものやしんみり涙するものが多かったですが、今回はタイトル作のように結構笑えるパターンがありました。 人生で一度でもこんなものに巡り会うチャンスがあったらいいなと思います。
表題作を含む短編集。最後の「蒼い岸辺にて」が秀逸です。 自殺した若い女性と、あの世への渡し守との会話で構成されるこの作品。これからの可能性が卵の形であらわれますが、彼女には必要ないものであり、渡し守はそれを<未来ゴミ>と呼びます。可能性に満ちた未来が、自分が死んだことでゴミになってしまう。それを知っ...続きを読むた彼女は――。 読み終えて、温かな気持ちに満たされました。 明日はいいことあるかも、世の中捨てたもんじゃない、そんな希望が見えてくる短編集です。
毎日2時間あまりの通勤。同じ立ち食いそば屋で朝ごはんを食べて会社に向かう。うだつの上がらない営業課の課長として毎日夜遅くに帰る。そんなある日、一人で夕食を食べながら映画のビデオを見ていると「明日は一生に一度のサービスデーなの」という女性の声が聞こえてくる…。 少し懐かしいノリの怪談メインのSF短編...続きを読む集。5本収録されているが、最初の3本がメインで、あと2本はちょっと毛色の異なる話。最後の三途の川はそこまで違わないか。 表題作から、ちょっと長いもの、天使と悪魔との戦いに、人間が巻き込まれるという、星新一のショートショートのような話。ただ、オチは割とウェットでご都合主義的なところは有るが。 2作目から、おそらくこの作者の本領発揮という感じで、昔ながらの幽霊の話を核とした怪談ベースの話。怪談を描くといきいきした雰囲気を感じるので、こちらが本物なのだろうと思う。ただ、いずれも最後はふわっと終わるんだな。 星新一のドライなショートショートの感覚と、阿刀田高の怪談のちょっとどんよりウェットな感じの中間を行くような話で、短編として楽しむにはなかなか良いのではないかと思われる。電子書籍としても読みやすいだろう。 ただ、もうちょっと無慈悲にどうしようもないバッドエンドなどが有っても良かった。 余談。 ちょくちょく、ちょっと昔の時事ネタを具体的に入れた、情景比喩のような表現が見られ、作者なりの照れかくしのようなものなのだろう。また、小ネタとして入れている部分も有るのだろう。ただ、たとえば1984年に、大学生がバイト先のおじさんからCDを借りるなど、実際には+2~3年は必要な部分が見られたり(CDが一般家庭に普及するのは1986~7年)、ネタに組み込むのに必死で、裏付けが取れていないのはちょっとね。
朱川湊人さんの本、先日、2015.6発行の「今日からは、愛の人」を読みました。猫の家を営むデリヘル嬢のところに男5人がやっかいになってる話で、セクシーな女性の魔女とちょっととぼけた男性天使が登場したりで、奇想天外な物語でした。読後、この本が2009.1刊行、2011.11文庫化の「本日、サービスデー...続きを読む」の続編と知りました。「本日、サービスデー」、この作品は、テンポも良く、キレもあって、なかなか面白かったです(^-^)
どの話も面白くて、考えさせられましたが、特に響いた作品が、「気合入門」と「蒼い岸辺にて」です。 前者では、気合一つがあるか、ないかで、見ている世界が変わってくるということ。 怖がったり、避けたりしていても、何も変わらない。気合を入れて、目を逸らさずに、最後まで立ち向かうことで何かを得られることも...続きを読むある。 後者では、自分の未来を自分で決めつけてはいないだろうかということ。 誰かに言われたままを真に受けてはいけない。夢があるなら夢に向かって突き進むことが大事だし、ありのままの自分に誇りを持ち、自分が好きでいられる自分でいるということは素敵なこと。 生きていくのに、大切な、普段の生活の中では忘れてしまいがちな教訓を教えてもらった小説でした。
表題作の中編一編と短編四編収録 一日だけどんな願いことも叶えれることを知った男の一日を描いた『本日サービスデー』、三途の川での橋渡し役と女性のやり取りを描いた『蒼い岸辺にて』。 どちらも設定や展開はベターな作品だと思うのですが、朱川さんの語り口の巧さ、ベタな設定にも一つのスパイスといえるアイ...続きを読むテムやルールを加えることで、見事に朱川さんらしいオリジナリティが加えられていると思います。どちらの作品もちょっと元気をもらいたいときに読むにはピッタリな作品です。 この作品集の中で最も朱川さんらしさを感じたのは『あおぞら怪談』。バイト先の先輩のアパートの部屋に出現する、女性の腕だけの幽霊との不思議な交流を描いた話。 幽霊が出てくるのにほのぼのとした話の展開、そして何より見事だったのが、先輩の最後の一言。こういうオチの見事さもあるから朱川さんの作品を読むのはやめられません(笑) 『気合入門』はザリガニ釣りに来た少年を描いた話。あっさりした話ながら、爽やかさな少年の心情の変化がすがすがしく心に残る短編でした。 『東京しあわせクラブ』は作家の主人公があるマニアたちが集まる寄合に参加する話。 この短編集の中では少しテイストが違う作品ですが、語り口の軽妙さが絶妙で不思議と浮いている印象は受けませんでした。それでもしっかりダークさを含んでいるあたりもさすがです。 朱川さんらしく今回の短編集も安定感抜群で、安心して読むことができました。
あーーーー満足。朱川さん、こんな楽しい感じのも書くんだー。幅があっていい!短編五作。どれも独特で面白い。 「あおぞら怪談」のるり子さんってあの妖怪アパートのるり子さんとはまた別手ですよね?!次の朱川さんがどんなのかとっても楽しみ。
表題作を含む短編集。不思議な世界に誘われる。「あおぞら怪談」が出色。これだけなら☆5つ。性欲とは無縁な純愛が長年とりついて離れなかったるり子の魂を天空に解き放つ。人を思いやる愛情に心が揺さぶられ、青空の青が目にしみた。「気合入門」、「青い岸辺にて」は子供たちに読ませてやりたいような仄々と心温まる作品...続きを読むだ。行動も起こさず早々に諦め、可能性という卵が無造作に割れてゆく様にただただ罪悪感。
とにかく、どの作品もおもしろく目の付け所が良い。作者は、『もしも...』という 非日常を書くのにこだわっており、読みやすかった。 ただ、どの作品ももう少し長くなると更に肉付きがよくなり、ボリューム感がでると感じた。
一生に一度のサービスデーを返還したことで、多くの命が 救われた。 人に感謝されるようなことって、 なかなかできないので、 感動的。
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