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Posted by ブクログ
毎日2時間あまりの通勤。同じ立ち食いそば屋で朝ごはんを食べて会社に向かう。うだつの上がらない営業課の課長として毎日夜遅くに帰る。そんなある日、一人で夕食を食べながら映画のビデオを見ていると「明日は一生に一度のサービスデーなの」という女性の声が聞こえてくる…。
少し懐かしいノリの怪談メインのSF短編集。5本収録されているが、最初の3本がメインで、あと2本はちょっと毛色の異なる話。最後の三途の川はそこまで違わないか。
表題作から、ちょっと長いもの、天使と悪魔との戦いに、人間が巻き込まれるという、星新一のショートショートのような話。ただ、オチは割とウェットでご都合主義的なところは有るが。
2作目から、おそらくこの作者の本領発揮という感じで、昔ながらの幽霊の話を核とした怪談ベースの話。怪談を描くといきいきした雰囲気を感じるので、こちらが本物なのだろうと思う。ただ、いずれも最後はふわっと終わるんだな。
星新一のドライなショートショートの感覚と、阿刀田高の怪談のちょっとどんよりウェットな感じの中間を行くような話で、短編として楽しむにはなかなか良いのではないかと思われる。電子書籍としても読みやすいだろう。
ただ、もうちょっと無慈悲にどうしようもないバッドエンドなどが有っても良かった。
余談。
ちょくちょく、ちょっと昔の時事ネタを具体的に入れた、情景比喩のような表現が見られ、作者なりの照れかくしのようなものなのだろう。また、小ネタとして入れている部分も有るのだろう。ただ、たとえば1984年に、大学生がバイト先のおじさんからCDを借りるなど、実際には+2~3年は必要な部分が見られたり(CDが一般家庭に普及するのは1986~7年)、ネタに組み込むのに必死で、裏付けが取れていないのはちょっとね。
Posted by ブクログ
どの話も面白くて、考えさせられましたが、特に響いた作品が、「気合入門」と「蒼い岸辺にて」です。
前者では、気合一つがあるか、ないかで、見ている世界が変わってくるということ。
怖がったり、避けたりしていても、何も変わらない。気合を入れて、目を逸らさずに、最後まで立ち向かうことで何かを得られることもある。
後者では、自分の未来を自分で決めつけてはいないだろうかということ。
誰かに言われたままを真に受けてはいけない。夢があるなら夢に向かって突き進むことが大事だし、ありのままの自分に誇りを持ち、自分が好きでいられる自分でいるということは素敵なこと。
生きていくのに、大切な、普段の生活の中では忘れてしまいがちな教訓を教えてもらった小説でした。
Posted by ブクログ
表題作の中編一編と短編四編収録
一日だけどんな願いことも叶えれることを知った男の一日を描いた『本日サービスデー』、三途の川での橋渡し役と女性のやり取りを描いた『蒼い岸辺にて』。
どちらも設定や展開はベターな作品だと思うのですが、朱川さんの語り口の巧さ、ベタな設定にも一つのスパイスといえるアイテムやルールを加えることで、見事に朱川さんらしいオリジナリティが加えられていると思います。どちらの作品もちょっと元気をもらいたいときに読むにはピッタリな作品です。
この作品集の中で最も朱川さんらしさを感じたのは『あおぞら怪談』。バイト先の先輩のアパートの部屋に出現する、女性の腕だけの幽霊との不思議な交流を描いた話。
幽霊が出てくるのにほのぼのとした話の展開、そして何より見事だったのが、先輩の最後の一言。こういうオチの見事さもあるから朱川さんの作品を読むのはやめられません(笑)
『気合入門』はザリガニ釣りに来た少年を描いた話。あっさりした話ながら、爽やかさな少年の心情の変化がすがすがしく心に残る短編でした。
『東京しあわせクラブ』は作家の主人公があるマニアたちが集まる寄合に参加する話。
この短編集の中では少しテイストが違う作品ですが、語り口の軽妙さが絶妙で不思議と浮いている印象は受けませんでした。それでもしっかりダークさを含んでいるあたりもさすがです。
朱川さんらしく今回の短編集も安定感抜群で、安心して読むことができました。
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