Posted by ブクログ
2012年07月03日
文庫本になってすぐに読んだけど、
いまだにふと思い出して
読み返したくなるくらい、
郷愁を誘う作品。
この小説は短編集だけど、
最初に読んだ時は
そのバラエティーに富んだ
作品の完成度の高さに
ホンマに新人が書いたの?って
ビックリしたし、
妖しい世界観の冒頭から
一気に引き込まれました。
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本書は朱川さんのデビュー作であり、
ちょっと不思議でどこか懐かしい
妖しい世界観の短編集が
五編集められています。
見せ物小屋で出会った不思議な少女との淡い恋心と
河童のミイラの謎…、
帰省先の神社で
少年が迷い込む異世界を
ノスタルジックかつ官能的に描いた
「アイスマン」
親友を事故で失ってしまった少年が
何度も過去に戻り、
彼を助けるために奔走する姿を描き
“世にも奇妙な物語”にて
実写化もされた名作
「昨日公園」
フクロウの化身に自らがなり、
都市伝説を作ることに溺れていく愚かな男の狂気を描いた
オール讀物推理小説新人賞受賞作の
「フクロウ男」、
今は亡き作家に恋をした
女たちの狂気を描いた
正統派ホラー
「死者恋」、
など
どれも甲乙付けがたいほど
完成度が高い作品ばかり。
この朱川さんという作家は
地味なんやけど、
淡々とした語り口調で
読者を引っ張りながら、
最後の最後で
物語をひっくり返すうな
オチが本当に上手いんです(≧∇≦)
そして全編を切なく貫くのは、
朱川さんの作品すべてに息ずく
「昭和の香り」であり、
昭和だからこその
おどろおどろしさなのです。
ホラーと言ってしまうと
敬遠する人もいるだろうし、
それで敬遠するには
本当に勿体無い作品なので、
ちょっとノスタルジックな
不思議で切ない話が好きなら、
(また妖しい江戸川乱歩の世界観が好きなら)
または昭和を感じたい人、
昭和の匂いに浸りたい人、
30代以上の人、
先入観抜きで
読んで欲しい作品です(^_^)v