朱川湊人のレビュー一覧
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短編5編収録の作品集。
最も印象に残った短編は「昨日公園」息子と遊んでいた父親が、子どもの頃時間を巻き戻し親友を助けようとした記憶を回想する短編です。
親友を救うため一途に行動し続ける少年の姿、悲しい決断、そしてラストたるや涙を流しそうになってしまいました。読み終えた時登場人物たちに対する愛しさと、切なさがこれ以上ないくらいこみあげてきました。名作の多い朱川さんの短編の中でも一・二を争う完成度の高さと切なさ、悲しくてだけど美しい短編だったと思います。
ホラー系の作品では「死者恋」もかなりの完成度です。朱川さんらしく人間のもつ歪んだ感情を見事に表現しています。朱川さんのホラーは血み -
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同じ団地のおじいさんからオルゴールを鹿児島まで届けるよう頼まれた小学生のハヤト。オルゴールの処遇をめぐり、ハヤトは大阪に暮らす父に休みを利用して相談に向かう。
この作品も朱川さんらしい登場人物への温かい視点、そしてオルゴールをめぐっておこるちょっと不思議な出来事が、美しい結末へ綺麗につながっているように感じます。
この作品の一番の読みどころはオルゴールをめぐってハヤトが成長していく姿でしょう。初めの方こそなかなかのいけ好かないガキなのですが(笑)初めての一人旅、大阪での出会い、鹿児島までの旅を通して彼はさまざまなものを目にし、考えそして人間的に成長していくのです。
新幹線に乗るのにドキド -
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文庫本になってすぐに読んだけど、
いまだにふと思い出して
読み返したくなるくらい、
郷愁を誘う作品。
この小説は短編集だけど、
最初に読んだ時は
そのバラエティーに富んだ
作品の完成度の高さに
ホンマに新人が書いたの?って
ビックリしたし、
妖しい世界観の冒頭から
一気に引き込まれました。
本書は朱川さんのデビュー作であり、
ちょっと不思議でどこか懐かしい
妖しい世界観の短編集が
五編集められています。
見せ物小屋で出会った不思議な少女との淡い恋心と
河童のミイラの謎…、
帰省先の神社で
少年が迷い込む異世界を
ノスタルジックかつ官能的に描いた
「アイスマン」
親友を事故 -
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ネタバレおもしろい。読書好きの友人に勧めてもらって読んでみたけど、予想以上におもしろかった!
一話目からぐぐっと引きこむ世界観。
昭和のかおり漂う何とも言えない不思議な雰囲気に引き込まれて、ぐいぐい読んでました。
全5話、すべてが完成されてて、これぞ「短編集」って感じで大満足。
不思議な感じから始まって、最後にがらっとひっくり返す手法。
前半の話はラストまで不気味なままだったけど、最終話、「月の石」はラストに救いがあってよかったなぁ。
「死者恋」はエロチズムがなんとも言えないし、「アイスマン」の不気味さったらすごすぎた。この話、ちょっと江戸川乱歩っぽいよね。おもしろい。
「昨日公園」は切なすぎる展開に -
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ネタバレ表題作について。
この作品のホラー要素はいったいどれか。未練の残った霊たちの醜い執着のありさまか。それを操ろうとする霊能者とその弟の歪んだ心理か。
霊が怖いというよりは、そこまで執着してしまう人間という存在そのものがホラーだと思えてくる。ジュンという主人公が発する違和感の正体が最後でわかるようになっているが、そういう事がある、ということよりも、やはり、そんなことをしてしまうシシィという霊媒師の精神のほうがよほど恐ろしい。
そして、この作品の底に流れる「生きるとはどういうことか」という問いが、もうひとつの「鉄柱(ハガネノミハシラ)」でくっきりと描かれる。
初読の時は、主人公と同じように、「自殺な -
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表題作の『白い部屋で月の歌を』は選評を先に読んでしまいまさかのネタばれ…
やってしまった…と思いながら読み始めたものの、文章の美しさやアイディアに惹かれつつ読めました。ホラーらしい不気味さもあるものの読後に残るのはやりきれなさや切なさ。ネタばれしていたもののオチにそういうものが詰まっていてよかったです。
もう一編収録されているのは『鉄柱』田舎町へ越してきた夫妻の話。この出だしでホラーということで話の展開は大体予測できたのですが、こちらも切なさややりきれなさの残る作品。表題作以上の名作だと思います。
個人的には主人公がある行動をとった後の心情や町民たちの様子のあまりの切なさに泣きかけました。命 -
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タイトルから「赤煉蛇(ヤマカガシ)」を想起させられた。
ひやりとしているが温度も感じられる、という爬虫類的特徴は本作ぴったり。
恋焦がれる「モノ」への倒錯的な愛が低温・高熱で描かれた短編集。
愛の形については、いわゆる「フィリア」であって、マニアとかフリークとか
とは異なるもの。ただ、そこに帯に書かれたような絶対的な「おぞましさ」を
感じることはなく、綺麗さが伴っているのがさすが。
作者にしては珍しいエロチズムがそこかしこに書かれていて違和感はあるが、
得意とするレトロスペクティブな情景描写で上手くコーティングされていて
そんなに卑猥な感じは受けず、これもまた手腕によるものかと。
見たくな