朱川湊人のレビュー一覧
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どの話も面白くて、考えさせられましたが、特に響いた作品が、「気合入門」と「蒼い岸辺にて」です。
前者では、気合一つがあるか、ないかで、見ている世界が変わってくるということ。
怖がったり、避けたりしていても、何も変わらない。気合を入れて、目を逸らさずに、最後まで立ち向かうことで何かを得られることもある。
後者では、自分の未来を自分で決めつけてはいないだろうかということ。
誰かに言われたままを真に受けてはいけない。夢があるなら夢に向かって突き進むことが大事だし、ありのままの自分に誇りを持ち、自分が好きでいられる自分でいるということは素敵なこと。
生きていくのに、大切な、普段の生活の中では -
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ネタバレわくらばシリーズの2冊目。
光あるところ影があるように、白魔術と黒魔術があるように、ブラックジャックにドクターキリコがいるように、好敵手登場ってのは読者にとってワクワクするもんだ。また良き理解者の造反と復活、なんていう常套手段の展開もあり、結構盛り上がりのある巻となっている。
昭和30年代を語るのに「戦争」と「貧困」を忘れたらアカンと思う。その時代をリアルに生きてきた人は忘れても良いかも知れんけど、後で生まれた人が、その時代が背負ってたものを意識せずに「あの頃は良かった」と語るのは、魂が入っていないノスタルジーにしか過ぎなくて薄さを感じてしまう。
その荷物を重すぎず、でも決して忘れることの -
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ネタバレノスタルジーには希望だけでなく悲劇前の哀しげな追憶も含むことがあって、最近の昭和ものにはその暗い側がないがしろにされてるよなぁ。
って思ってたんだと、改めて思い出さされた本でした。
主人公と幸薄そうな美人の姉、厳しくとも優しい毅然とした母の家族に、娼婦あがりの茜さんという女性たちが、まだまだ戦争の傷跡が残る昭和の日本で生きていく姿は読んでいて心に沁みる、ミステリー要素や姉の能力がまた絶妙に効いた小道具で飽きさせない
父親の謎、予想される悲劇(なんだろうなぁ)と続編にも期待できる。
ただ、やっぱり、それでも楽しい話が好きなんだよなぁ俺は… -
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表題作の中編一編と短編四編収録
一日だけどんな願いことも叶えれることを知った男の一日を描いた『本日サービスデー』、三途の川での橋渡し役と女性のやり取りを描いた『蒼い岸辺にて』。
どちらも設定や展開はベターな作品だと思うのですが、朱川さんの語り口の巧さ、ベタな設定にも一つのスパイスといえるアイテムやルールを加えることで、見事に朱川さんらしいオリジナリティが加えられていると思います。どちらの作品もちょっと元気をもらいたいときに読むにはピッタリな作品です。
この作品集の中で最も朱川さんらしさを感じたのは『あおぞら怪談』。バイト先の先輩のアパートの部屋に出現する、女性の腕だけの幽霊との不思 -
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主人公の小学校4年生の少年が、近所のお爺さんに頼まれ、東京から鹿児島にオルゴールを届ける話。
大阪に住む離婚した父親とその再婚相手のミチコさん、そしてその友人で少林寺拳法三段の女性サエさん。そうした人に助けられながら目的地を目指します。
最後の頃にちょっと霊的な雰囲気のところがありますが、朱川さん得意のホラーではありません。
福知山線の事故、広島の原爆、鹿児島の知覧、重い話題も多いのですが、全体には軽いイメージです。少々子供向きの雰囲気ですかね。ややキャラが立ちすぎていたり、予定調和的なストーリーも感じますが、全体には読みやすく爽やかな話でした。
改めて気づいたのですが、講談社文庫の紹介には「